医師が逮捕された場合特有のリスクとは

医師が逮捕された場合、罰金刑以上医師免許取消になる恐れがあります(医師法7条1項、4条)。

医師免許取消になると、少なくとも5年間は免許の再申請ができません(医師法7条2項)。

今後も仕事を続けるためには、刑務所に入る実刑と行政処分の回避が欠かせません。

医師が逮捕された場合特有の注意点と、弁護士ができる3つのサポート内容をご案内いたします。

起訴前であればまだ間に合うかもしれませんので、ぜひご参考ください。

医師が逮捕された場合特有の注意点とは

医師特有の注意点は以下3点です。

  1. 罰金刑以上で医業停止や免許取消に
  2. 医師免許の再申請までの期間は最短でも5年
  3. 実名報道されやすいため、風評被害を被る恐れも

医師特有の注意点①罰金刑以上で医業停止や免許取消に

医師の場合、罰金刑以上で行政処分が下され、仕事を続けるのが難しくなります。

医師への行政処分の種類

行政処分の種類は次の3つです。

  • 戒告:厚生労働省から注意を受けること。仕事は続けられる
  • 医業停止:3年程度医師としての業務を制限される。期間終了後、再教育研修を受ける必要がある
  • 免許取消:医師免許が取り消される

上記の中では免許取消が最も重い処分です。免許取消をされた場合、最免許申請が通れば再び医師として仕事できます。ただし、再免許を得られるかどうかは厚生労働大臣の裁量次第です。

弁護士寺垣
弁護士寺垣
医業停止・免許取消になると数年間医師として仕事できなくなるので、なんとしても罰金刑以上の刑は避けたいところです

医師特有の注意点②医師免許の再申請までの期間は最短でも5年

免許取消になると一定期間医師として仕事できなくなります。最免許申請までどのくらい期間がかかるのか、少し補足します。

医師免許を取り消された場合の待機期間

免許取消後、一定の待機期間が経過しないと、再申請はできません。

免許取消の対象と待機期間は…

免許取消の対象 待機期間
罰金以上の刑に処せられた者 5年
医事に関し犯罪または不正の行為のあった者
医師としての品位を損するような行為のあった者

参考:医師法第4条、第7条

待機期間以外にも期間の制限がある

刑事罰を受けて場合は、待機期間に加えてさらに一定期間再免許申請できなくなります。

『免許取消の理由となった事項に該当しなくなった』ことが再免許の申請に必要だからです。

具体的には…

対象者 期間
禁錮以上の刑の執行終了もしくは執行猶予を得た人 罰金以上の刑に処されずに10年が経過したとき
罰金以下の刑の執行終了もしくは執行猶予を得た人 罰金以上の刑に処されずに5年が経過したとき
刑の免除を言い渡された人 罰金以上の刑に処されずに2年が経過したとき
執行猶予期間を経過した人 執行猶予期間が経過したとき

参考:刑法第27条、第34条の2

弁護士寺垣
弁護士寺垣

5~15年程度医師として仕事できなくなります。免許取消よりも軽い処分を目指すべきです。

医師特有の注意点③実名報道されやすいため、風評被害を被る恐れも

医師の場合は実名報道されやすい点もリスクです。

実名報道されやすいケースは…

  • 事件の重大性・公共性・社会性が高い
  • 逮捕された人の社会的地位が高い
  • 事件の話題性が高い

逮捕された時点で実名報道されてしまうので、仮に冤罪だったとしても評判の悪化は避けられません。

刑事事件になりそうな場合は実名報道を避けるために早めに動きたいところです。

医師特有のリスクを回避するための弁護活動の内容とは

ここまででお伝えした医師特有のリスクを避けるために、弁護士ができるサポートの内容は主に以下3点です。

  1. 実名報道回避を目指す
  2. 医師を続けるために必要な対策を共有する
  3. 起訴を防ぎ、医師免許取消の回避を目指す

実名報道回避を目指す

実名報道を避けるためにできることは次の2点です。

刑事事件化を避ける

刑事事件化に先んじて被害者と示談交渉をすることもできます。

被害者に謝罪と示談金のお支払いをして、被害者の赦しを得られれば、刑事事件になる前に紛争解決を目指せます。

今後被害届を提出しない旨の条項を示談書に入れる必要があります。

実名報道回避のための意見書提出

弁護士から警察に対して、実名報道をしない旨の意見書を提出できます。

ただし、最終的に実名報道するかどうかは警察やマスコミ次第なので、100%実名報道を回避できるわけではありません。

刑事事件になる前の段階であれば、被害者と和解する選択肢もあるかもしれません。ぜひ早めに弁護士にご相談ください。

医師を続けるために必要な対策を共有

逮捕後は警察・検察から取り調べを受けます。この時に作成される供述調書は後の裁判で証拠になるので、ご自身が不利になるような受け答えは避けたいところです。

逮捕後のなるべく早い段階で、少なくとも以下2点を弁護士とすり合わせて方針を練りましょう。

  1. 犯行を認めるか、認めないか
  2. 取り調べにどのように対応するか

犯行を認める場合は、謝罪や示談を申し入れて、なるべく軽い処分を目指すことになります。一方、犯罪事実がない場合は嘘の自白を避けつつ、犯罪事実がないことを証明できる証拠を集める必要があります(なお、犯罪事実を証明する責任は検察官にあります。)。

事件を認めるか認めないかによって今後の対応が変わってくるので、逮捕後はなるべく早く弁護士と面会をし、事件の状況や当事者の言い分を共有し、対応の方向性を決めたいところです。

弁護士は、犯罪事実がある場合もそうでない場合も、できる限りご依頼者様に有利な結果を目指して弁護活動をいたします。

起訴を防ぎ、医師免許取消の回避を目指す

医師が逮捕された場合は、不起訴の獲得が最も重要です。

日本では起訴されると99.9%有罪になるといわれています。

不起訴を得られれば刑事裁判が開かれないので、刑事罰を受けることなく医師の仕事を続けられます

実名報道・医師免許取消を回避するために一日も早く対応しましょう

ここまでの要点は以下2点です。

  1. 実名報道を避けるには、刑事事件化前の示談交渉が重要
  2. 医師免許取消を避けるには、不起訴獲得が重要
弁護士寺垣
弁護士寺垣
逮捕されてから起訴が決まるまでの期間は、長くても23日間です。刑事事件は時間との勝負ですので、お早めにご相談ください。
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