起訴状とは|起訴状が届いたらどうする?起訴状の内容は?いつ届く?

もし裁判所から起訴状が届いた場合、それはあなたが刑事事件の裁判で訴えられて被告人となったことを意味します。

起訴状が届いた場合、1~2か月後に刑事裁判が行われることになります。なお、起訴状は、民事裁判で訴えられた場合の訴状とは異なります。

この記事では、起訴状について下記の点をわかりやすく解説します。

  • 起訴状とは?起訴状の内容について
  • 起訴状が届いた場合に確認すべきこと
  • 起訴状が届いた後の裁判の流れ

起訴状を受け取った場合は、放置をせず、すぐに弁護士に相談してください。

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起訴状とは

起訴状とは、検察官が刑事裁判で事件の審理を求める際に、裁判所に提出する書面のことです。

裁判所は起訴状を受理すると、被告人(検察に訴えられた人のこと)に起訴状を送達します。

起訴状を受け取った被告人は、指定された期日に裁判に出席しなければなりません。

刑事事件では、処分によっては、刑務所に収容される可能性があり、被告人にとって大きな不利益となります。

そのため、被告人が裁判に出席しなければ、刑事裁判は開廷できません(刑事訴訟法第286条)。

身柄拘束(勾留)されている場合は留置場に、在宅事件の場合は自宅に、起訴状が届くことになります。

なお、起訴状は、刑事裁判で被告人という立場となり、これから裁判が行われることを通知する書面であり、起訴状が届いただけで有罪になったり、前科がついたりするわけではありません

また、民事裁判で訴えられた人のもとに届く訴状とは異なります。

起訴状に記載されている内容

起訴状には、わかりやすく言えば、被告人の行為は○○という犯罪に当たるので、裁判で審理をして処分をしてくださいという内容が記されています。

ここでは、起訴状に記載されている具体的な内容について解説します。

被告人を特定するための事項

起訴状には、被告人を特定するための、氏名、生年月日、職業、住所、本籍地が記載されています。

また、被告人が黙秘して氏名を明らかにしておらず、詳細な情報がわからない場合は、人相や体格、留置番号(○○警察署留置番号〇番)、指紋、写真などを貼付し、被告人を特定します。

第六十四条 勾引状又は勾留状には、被告人の氏名及び住居、罪名、公訴事実の要旨、引致すべき場所又は勾留すべき刑事施設、有効期間及びその期間経過後は執行に着手することができず令状はこれを返還しなければならない旨並びに発付の年月日その他裁判所の規則で定める事項を記載し、裁判長又は受命裁判官が、これに記名押印しなければならない。

② 被告人の氏名が明らかでないときは、人相、体格その他被告人を特定するに足りる事項で被告人を指示することができる。

一部引用:刑事訴訟法第64条|e-Gov

さらに、裁判では起訴状に書かれている人物と、出席した人物が同一人物であるかどうか確認します。全くの別人を裁いてしまわないためです。

公訴事実

公訴事実とは、被告人が犯したと疑われる犯罪事実のことです。起訴状にはこの公訴事実が記載されます。

この公訴事実には、下記のような具体的な犯罪の事実を示さなければなりません(刑事訴訟法第256条3項)。

被告人は、令和6年7月11日午後6時15分頃、東京都○○区○○1丁目コンビニ「○○」において、菓子類20個(販売価格6,000円相当)を窃取したものである。罪名及び罰条 窃盗 刑法第235条

こうした犯行日時や場所、犯行内容など、検察が裁判で審理したい、議題として取り上げたい具体的な犯罪の事実を訴因と言います。

訴因を定めるのには理由があります。

例えば裁判の最中に、検察から提出された証拠により別の犯罪の疑いが浮上した場合、訴因とは別の犯罪事実に関しても審理を進めると、本来審理すべき事柄からズレてしまい、被告人に対する取り調べのような状態になってしまいます。

そうしたことがないよう、起訴状に訴因を明記して、裁判所に対しては審理する部分に焦点を当ててもらい、被告人に対しては訴因に対して反論や防御を準備させる目的があります。

罰条

罰条とは、適用すべき刑罰のことを言います。例えば、窃盗や詐欺、殺人などです。

こうした内容以外にも、起訴状には、事件番号や裁判所名、起訴をした検察名や検事名などが記載されます。

起訴状一本主義とは

起訴状一本主義とは、起訴状に訴因以外の情報や証拠を添付しないで、起訴状を提出する原則のことです。

起訴状には、裁判官に事件につき予断を生ぜしめる虞のある書類その他の物を添附し、又はその内容を引用してはならない。

引用:刑事訴訟法第256条6項|e-Gov

以前は、起訴状と一緒に捜査資料などが提出され、裁判官は内容を確認してから、裁判を行っていました。

しかし、事前に捜査資料や証拠、検察の主張などを確認してから裁判を行うと、資料から余計な先入観を持ってしまい、被告人にとって不公平な裁判となりかねません。

そのため、現在では、余計な資料の提出や情報を盛り込まず、シンプルな起訴状のみを提出することが決められています。

起訴状はいつ届く?

起訴状が届く時期は、勾留が行われている身柄事件と、勾留されていない在宅事件で異なります。

身柄事件の場合 勾留期限の前(勾留から10~20日以内)
在宅事件の場合 起訴されてから数日以内

在宅事件の場合は、身柄事件のように勾留期間が定められていないため、いつ頃起訴されるのか、起訴状が届くのか予測しにくいです。

一般的には、警察から呼び出しを受けてからおおよそ4~6か月ほどで起訴される可能性があります。ただし、これも在宅事件の捜査の進捗次第です。

なお、起訴状は特別送達という方法で郵送されます(郵便法第49条)。

特別送達とは、裁判所の通知を届ける際の郵送方法で、必ず対面で受け取る必要があります。

また、発送や受け取りの記録が残るため、受け取っていないという主張は通りません。

起訴状が届いたら?確認すべきことと流れ

もし起訴状が届いた場合は、中身を確認することが大切です。ここでは、起訴状が届いた場合に確認すべきことや流れを解説します。

起訴状の内容を確認する

もし起訴状が届いたら、まずは訴因を確認しましょう。どういう行為に対して、どういう罪に問われているのかを確認することが重要です。

先述した通り、訴因には審理すべき部分を明確化する目的と、被告人が訴因に集中して反論や防御の準備をうながす目的があります。

犯罪には、犯罪が成立する要件があるため、訴因を確認して、本当に犯罪が成立しているのかどうかチェックすることが大切です。

本来は暴行罪にとどまるものが、傷害罪と過度に重い犯罪で起訴されていないか、あるいは、そもそも犯罪が成立していないといったことも考えられるでしょう。

ただし、こうしたチェックを法律に詳しくない人がしても、わからないことがほとんどですので、弁護士と一緒に確認するようにしましょう。

弁護人を選任する

在宅事件の場合は、身柄事件のように国選弁護人を選任してもらえるタイミングがありません。

しかし、刑事事件の多くは、弁護士がいないと裁判を行えませんし、弁護士不在で裁判をすると不利な判決を受けるおそれがあります。

そのため、起訴状には弁護人選任に関する回答書が同封されています

弁護士には、自分で依頼する私選弁護人と、希望に応じて国が選任する国選弁護人がいます。

弁護士費用を用意できないような場合は、弁護人選任に関する回答書の国選弁護人を選任するという欄にチェックをして、裁判所に返送して国選弁護人を選任してもらいましょう。

国選弁護人と私選弁護人の違いは関連記事でも解説していますので、参考にしてみてください。

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公判期日の決定

起訴から1~2週間程度で、公判期日、つまり裁判が行われる日が決定します。

公判期日は起訴状が被告人に送達された後、裁判官書記官と検察官、被告人の弁護士で調整して決まります。

事案によって異なりますが、初公判は起訴から1~2か月後に設定されるケースが多いです。

公判期日が決定すると、裁判所から出廷日時や法廷番号などが記載された召喚状が届きます。

召喚状は、勾留されている場合は留置場や拘置所に、在宅事件の場合は自宅に送られます。

在宅事件の場合は、指定の日時に裁判所に行きます。

検察官から証拠の開示

起訴からおおよそ1か月ほどで、検察官が裁判で使用する証拠(検察官請求証拠)が開示されます。

検察官請求証拠の閲覧やコピーをとり、弁護方針を組みたてていくことになります。

実は、この検察官からの証拠の開示や、弁護士側で証拠の開示を求めない限り、弁護士は警察や検察が集めた証拠を確認することができません。

弁護士は、刑事事件において圧倒的に不利な立場なのです。

また、検察官が使用するのは、あくまでも今回の訴因において被告人を有罪にできる厳選された証拠だけです。

しかし、開示されていない証拠の中に、被告人に有利な情報が隠されているケースも多いため、弁護士と相談をしながら、他の証拠の開示を求めることになるでしょう。

裁判

証拠の収集や、争点の整理、弁護方針などを準備して、裁判に臨むことになります。

罪を認めていて大きな争いのない裁判であれば、審理は1回で終わり、2回目で判決が言い渡されます。

起訴状が届いた後の裁判はどう進む?

起訴状が届いた後の裁判の流れは大きく分けると下記の通りです。

冒頭手続 被告人の本人確認や公訴事実の確認など
審理 証拠の開示や尋問、検察側の求刑や弁護側の弁論、被告人の意見などにより審理が行われる
評議 裁判員裁判の場合は、裁判員と裁判官が話し合い、処分を決める
判決手続 裁判官が被告人に判決を言い渡す

冒頭手続

冒頭手続きは、下記の確認や告知が行われます。

人定質問 被告人の本人確認をする
起訴状朗読 起訴状にある犯罪行為を読み上げ、審理の対象を明らかにする
黙秘権の告知 裁判官から被告人に黙秘権の説明と告知をする
罪状認否 起訴事実に誤りがないかどうか裁判官が被告人と弁護士に確認する

先述した通り、検察官に起訴された人物と、裁判に出席している被告人が同一人物であるかどうか、誤りがないかどうか人定質問で確認します。

その後は、審理をスムーズにするために、起訴状の朗読から審理の対象を明らかにし、被告人の権利について告知を行います。

審理

審理は基本的に下記の流れで進められます。

①冒頭陳述 検察官が証拠によって証明したい事実を述べる
②証拠調べ 検察官の立証 検察官が証拠を示して、犯罪の事実を立証する
弁護士の立証 弁護士は検察官の立証に対して証拠を提示して反論する
証人尋問 証言してくれる証人に対して、弁護士と検察からそれぞれ質問をする
被告人質問 裁判官から被告人に質問をする
③弁論手続き 論告求刑 検察官から、事実関係や適用する法律、科すべき刑について意見を述べる
弁論 弁護士から、事実関係や適用する法律、刑罰について意見を述べる
被告人の最終陳述 最後に被告人が意見を述べる

まずは訴えた検察側が、証拠などを用いて、犯罪の事実を立証していきます。

これに対して、弁護側は、無罪を争うのか、被告人の事情を理解してもらい、刑罰を軽くするのか弁護方針にしたがって、反論をしていきます。

こうした立証や反論を尽くして、検察と弁護側双方から、裁判官に対して科すべき刑を意見します。

評議

評議は、裁判員裁判の場合に行われます。

裁判員と裁判官が別室で話し合いを行い、被告人の罪について、有罪か無罪か、有罪の場合はどのくらいの刑罰にすべきかを決めます。

裁判員裁判となるのは、殺人や強盗致死傷、放火、危険運転致死傷などの重大な事件です。

参考:評議・評決|裁判所

判決手続

判決手続きでは、裁判官が被告人に対して判決を言い渡します。

しかし、第一審で下された判決に不服があれば、さらに高等裁判所へ控訴することが可能です。

日本の裁判は三審制を導入しているため、3回まで審理ができます。

また、控訴や上告をしても、不利益変更禁止の原則があるため、第一審よりも重い処分が下されることはありません。

これは、控訴したことで、さらに重い処分が下されることをおそれて、被告人が異議申し立てできない状況を防ぐために設けられた原則です。

ただし、控訴することで釈放までの期間が延びたり、費用がかかったりするデメリットもあるため、弁護士と相談して控訴するかどうか判断した方がよいでしょう。

参考:刑事事件|裁判所

起訴状が届いたら弁護士に相談を

起訴状が届く場合、すでに警察に逮捕されたり、事情を聞かれたりするなど捜査の対象になっているでしょう。

何の捜査も行われずにいきなり起訴状が届くことはありません。

もし起訴状が届いてしまった場合は、まず弁護士に相談してください。

刑事事件の多くは弁護士をつけなければ裁判が行えませんし、法律や刑事事件に詳しくない人が一人で裁判をするのはかなり難しいでしょう。

検察は国家の組織であり、膨大な情報を集める能力がありますし、裁判に慣れており、絶妙なタイミングで証拠を提示して、裁判官を納得させる能力にたけています。

一人で対峙するのは困難ですし、人生の一大事を争う局面だからこそ、弁護士をつけるようにしてください

また、刑事事件の実績や熱意のある弁護士を自分で選ぶことで、臨んだ結果を実現できる可能性があります。

一人で抱えずにまずは弁護士に相談しましょう。

まとめ

起訴状は、検察が刑事裁判で事件の審理を求めるために、裁判所に提出する書面のことです。

起訴状は裁判所から、被告人に送達されて、裁判が行われます。

もし起訴状が届いた場合は、慌てずにまず起訴状の中身をチェックして、弁護士と一緒にどのように戦うのか方針を決めましょう。

ネクスパート法律事務所では、刑事事件の豊富な実績があります。起訴状が届いてしまった場合は、迷わずご相談ください。

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