否認事件の刑事弁護について解説

みなさんは「否認事件」という言葉を聞いたことはあるでしょうか?否認事件という言葉を聞いたことが無くても、「容疑者は容疑を否認しているとのことです」という言葉をニュースで耳にしたことがあるのではないでしょうか?

この記事では、被疑者が容疑を否認する事件について解説します。

 

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否認事件とは

否認事件とは何か?無関係なのに被疑者として事件に巻き込まれた時にどうすべきか?等について解説します。

 

否認事件の概要

刑事手続きにおいて逮捕されるのは、「この人物が罪を犯したのではないか?」と捜査機関が疑いを持ったからです。捜査機関が疑っているからといって、逮捕された人が本当に罪を犯した人であるとは限りません。間違えて逮捕(誤認逮捕)してしまうこともあります。

逮捕されると取調官から取り調べを受けます。取り調べで、自分は関係無いです、やってません等と容疑を否認する事件を否認事件といいます。

 

否認事件の場合には捜査機関による取り調べは厳しくなり、取り調べ期間中に釈放されることは滅多にありません。

 

刑事事件の裁判では、被告人が罪を犯したことが疑いを容れない程度まで検察官が立証しなければなりません。否認事件が裁判になると、検察官が提出した証拠類をじっくりと時間をかけて調べる必要があります。そのため公判回数が増え、第1審の期日が100回を超えることもありました。

 

弁護人は被疑者の言い分を詳しく聞き取り、逮捕事実との食い違いを確認し、後々の裁判で使える証拠が有るか無いか確認します。場合によっては罪を犯していない証拠を集めなければなりませんが、警察官や検察官とは違い弁護士に公権力はないので、証拠集めは難航することが多いです。

 

否認事件で黙秘権を行使するべきか?

否認事件の場合には、捜査機関による取り調べが厳しくなります。

取調官は取り調べの最初に、被疑者には黙秘権があることを伝えます。被疑者を取り調べるのは自白調書を取ることが目的です。被疑者が黙秘権を行使して実際に黙秘してしまうと取り調べの目的は達成されません。被疑者が黙秘すると威圧的な態度や脅迫を用いての取り調べがされるようになります。

 

被疑者が罪を認めていない場合には取調官は、雑談に紛れて事件に関連する話をさせようとしたり、事件には関係ないと思われる行動についてさりげなく確認したり、何が何でも証拠となりそうな供述を取ろうとします。

被疑者にとっては何をどのように答えると自分に不利になるかわからないことが多いです。取り調べで話した内容は調書に記録され、裁判の時に自分に不利な証拠として提出される可能性があります。そのため否認事件の場合には、黙ったままでいることが最大の防御になります。

 

黙秘権については以下の記事をご参照ください。

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否認事件の弁護は難しい

刑事事件の場合、被疑者の供述態様が以下3つあり、態様によって弁護活動の内容が変わります。

  • 罪を全て認める
  • 一部否認する
  • 全部否認する

 

罪を全て認める場合

比較的軽微な事件で被疑者が罪を全て認めている場合には取り調べもそれほど厳しいものにはなりません。勾留されずに身柄開放され、不起訴処分で終了する可能性があります。

被疑者がいる事件では被疑者との示談成立が重要です。

 

罪を一部否認する場合

比較的軽微な事件でも、被疑者が一部否認している場合には、否認している一部が罪の構成要件に該当するか否かで、捜査機関の対応も異なります。

一部否認部分が罪の構成要件とは無関係の場合にはそれほど問題視されません。例えば万引き(窃盗)事件で、万引き行為自体は認めるが、万引きしたのは980円のお弁当ではなく780円のお弁当だったと主張する場合などでは、一部否認しても取り調べが厳しくなることはほぼありません。

一部否認部分が罪の構成要件にとって重要な場合には取り調べは厳しくなることが多いです。例えば、捜査機関は強盗だと考えている事件について、被疑者が他人の財物を盗ったことは認めるけれど、物を盗る際に被害者に対し暴行または脅迫はしていないから単なる窃盗だ、と否認した場合には、強盗罪の構成要件部分の一部否認となります。

 

罪を全部否認する場合

比較的軽微な事件であっても全部否認をしている場合には身柄が解放されることはほぼ無く、自供するまで厳しい取調べが続きます。起訴後も身柄拘束が続く可能性が高いです。

 

弁護人は被疑者と何度も接見し、主に以下を詳しく聞き取ります。

  • 被疑者が何を否定しているか
  • 逮捕容疑との関係
  • 被疑者が否定していることが何を意味するのか
  • 逮捕容疑との相違を裏付ける証拠があるか など

比較的軽微な事件で、罪を認めて被害者と示談が成立すれば不起訴が獲得できる可能性が高い事件であっても、被疑者がやっていないと言っているのに罪を認めさせて不起訴を狙うという弁護はすべきではありません。

 

否認事件で示談すべきか?

罪を認めている場合には被害者と示談をし、不起訴を獲得する、あるいは執行猶予付き判決をもらう、刑を軽減してもらうなどの結果を得られるようにします。示談をするためには加害者が心から反省し、被害者に謝罪することが前提となります。罪を認めていない否認事件でも示談をすべきでしょうか?

 

刑事事件における示談の重要性

刑事事件においては被害者と示談をすることは重要です。被害者との間で示談が成立した事実は、加害者の謝罪・被害弁償等により、被害者が加害者を許したことを意味し、不起訴の可能性が高くなります。起訴されてしまった場合でも、被告人が反省し、謝罪していることが評価され、執行猶予付き判決がくだされる可能性があります。執行猶予が付かない場合には、刑が減軽される可能性があります。

 

刑事事件における示談については以下の記事をご参照ください。

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否認事件での示談は難しい

否認事件の場合には、そもそも罪を犯した事実が無いと主張しているため、罪を犯して被害を与えたことを被害者に謝罪することはありません。自分がやってもいない罪により被害者が被った被害を弁償することも考えられません。

 

全部否認の場合

全部否認をしている場合に、被疑者が被害者に謝罪し被害を弁償することはありえません。被害者としても、罪を認めていない被疑者から示談をもちかけられても応じないでしょう。全部否認の場合にはやってもいない罪を認めて示談をすべきではありません。

 

一部否認の場合

一部否認の場合には、認めた部分の被害に関しては被害者に謝罪し被害弁償の申し入れをすることは可能ですが、被害者がそれを受け入れるかどうかは被害者次第です。

被害者側としては、加害者が罪を全て認めて謝罪し、全ての被害を弁償すべきと考えます。一部否認の場合の示談は可能であればすべきですが、実際には難しいでしょう。

 

否認事件の流れ

ここでは、否認事件の流れについて解説します。

 

逮捕

事件発生後、捜査機関の捜査により被疑者であると考えられる者が逮捕されます。

捜査機関が被疑者であると考えているだけで、必ずしもその罪を犯した者が逮捕されるとは限りません。

 

初回接見

身に覚えのない罪で逮捕された場合には、直ちに接見してくれる弁護士に相談しましょう。逮捕期間中無料で接見に来てもらえる当番弁護士制度があるので、まずは当番弁護士にすぐに接見依頼をしましょう。ただし、当番弁護士はたった1回しか依頼できません。

 

無実の主張をする場合には、刑事事件に精通した弁護士に依頼すべきです。初回の接見はすぐに来てくれる当番弁護士に依頼し、取り調べへの対応について助言を受けましょう。その後、直ちに取り調べ中何度も接見に来てくれる、信頼のできる私選弁護人に依頼すべきです。

 

弁護方針の決定(暫定的に)

私選弁護人が接見に来たら自分は無実である、やっていないと伝え、その事件と無関係と言える理由や、無実の証拠はあるか等を弁護人に詳しく話します。

 

弁護人は被疑者が話す内容を精査し、事実関係やその他の不明点を詳しく聴取し確認します。被疑者が何を「やっていない」と説明するのか、捜査機関側の逮捕事実の主張との相違点の確認をし、弁護方針を決めます。ただし、この時点で捜査機関側がどのような証拠に基づいて被疑者を逮捕したかが不明なため、弁護方針は暫定的なものになります。

 

接見を重ねる(重要)

否認事件の場合には、捜査機関の取り調べについての確認も重要です。捜査機関が何を証拠として持っているか、あるいは持っていないか、捜査機関が手に入れたい証拠は何か等、取調官の言葉によって判明することがあります。

 

依頼された弁護人は被疑者に被疑者ノートを渡し、取り調べの詳細を記録してもらいます。何度も接見し、被疑者ノートを確認した結果、弁護方針に修正を加えることもあります。

 

また、否認事件の場合には自白を迫るために取り調べが過酷なものとなることが多いです。取調官の不適切な取り調べがある場合には、警察署長、公安委員会、検察庁への抗議を行うなどの活動もします。

不適切な取り調べへの対応について、被疑者とも綿密に打ち合せをします。

 

取り調べや雑談に対し、被疑者が話した内容も重要です。被疑事実を認めるような発言をしていないか、話した内容が調書に取られていないか確認します。

 

被疑者ノートについては以下の記事をご参照ください。

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勾留

逮捕後48時間以内に、事件が検察官に送致されます。検察官は送致後24時間以内に、被疑者を勾留するか釈放するかの判断をします。否認事件の場合には、逃亡のおそれや証拠隠滅のおそれがあり勾留の必要性があると判断し、勾留請求される可能性が高いです。

勾留請求を受けた裁判官も勾留決定をする可能性が高いです。

 

勾留決定がなされると原則10日間、更に延長が認められれば最大で20日間勾留が続きます。否認事件の場合には、勾留延長が認められ、20日間勾留される可能性が高いです。

 

逮捕されてから勾留期間満了までの(最大で)23日間は、被疑者・捜査機関双方にとって重要な時間です。

被疑者は23日間、厳しい取り調べに耐え続けなければなりません。23日間厳しい取り調べに耐え、否認あるいは黙秘を続けることは大変です。罪を犯していないにも関わらず23日間厳しい取り調べに耐え続けられずに、虚偽の自白をしてしまう人もいます。弁護人は被疑者が虚偽の自白をしないように精神的にも支えるような弁護活動をします。

 

起訴あるいは不起訴の決定

勾留中検察官は事件について捜査を続け、勾留期間満了前に起訴するか不起訴にするか決定します。

否認事件の場合には、被疑者の自白調書がありません。自白調書以外の物的証拠や被害者や目撃者等の供述証拠だけで公判が維持できると判断した場合には検察官が起訴しますが、自白調書が無い状態では公判維持が困難と判断すると不起訴処分にします。

 

刑事裁判

否認事件の場合には、被疑者・被告人は反省していないので悪質であるとされ(やっていなければ何も反省する事は無いはずですが)、他の証拠だけでも公判維持が可能と判断されれば起訴されます。

起訴されると公開の法廷で刑事裁判が開かれます。刑事裁判の冒頭で、裁判官から被告人には黙秘権があると説明を受けます。

刑事裁判では、被告人がその罪を犯したことが証拠上疑いの余地が無いと検察官が立証する責任を負います。

反対に言えば、検察官には被告人がその罪を犯したことに疑いの余地が無いことを立証する責任があり、少しでも疑いが残る場合には被告人は無罪になります(無罪推定)。

 

否認事件での弁護士のサポート内容

ここでは、否認事件で弁護士がするサポート内容について解説します

 

捜査段階での弁護内容

捜査段階では、取調官の厳しい取り調べがあることが多いです。否認事件の取り調べで大切なことは、とにかく自白と言われるような供述、事件に関連があると思われる供述をしないことです。そのために捜査段階で弁護士がするサポートについてお伝えします。

 

自白調書を作らせないように取り調べへのアドバイスをする

被疑者は、取調官からの質問に対し、どのように回答すると逮捕事実と結び付けられてしまうかわからないまま返事をしてしまい、それが供述証拠として裁判に提出されることがあります。

記憶を頼りに質問に答え、その記憶が間違っていた場合には、「被疑者・被告人の供述が信頼できない証拠である」とされる可能性もあります。

このように、取り調べに対し何かを答えることは大きなリスクがあります。無実を主張する被疑者から自白を引き出すため、取調官は言葉巧みに誘導します。無実を主張する場合には黙秘することが一番の防御です。

雑談に応じて話をしたことが裁判で被告人の内面を示す供述証拠として提出され、裁判官に悪い心証を与える可能性もあります。

自白調書を作らせないためには、黙秘が一番の防御ですが、取調官の圧力が強く黙秘が難しい場面では、何か話す前に必ず弁護士への相談をしましょう。

 

被疑者ノートを差し入れる

弁護士に依頼すると、被疑者ノートを差し入れてもらえます。被疑者ノートは日本弁護士連合会が作成した、被疑者のためのノートです。日々の取り調べについて、主に以下について詳細を記録できます。

  • 取り調べ日時、天候
  • 取調官の名前
  • 誰がどう発言したか
  • 発言時の態度 など

被疑者ノートの詳細な記録から、違法な取り調べが行われていないかを確認し、違法な取り調べが行われた形跡があれば警察署長や検察官等に対し抗議します。

取調官の発言内容から捜査機関が知りたがっている内容等を弁護士が確認し、次の取り調べへのアドバイスをします。

 

嫌疑不十分での不起訴を目指す

自白調書が無いと、公判を維持できるだけの証拠が不足している場合があります。その場合には嫌疑不十分等の理由により不起訴が目指せます。

 

公判段階での弁護内容

起訴されてしまうと日本の刑事裁判では99.9%が有罪になります。否認事件では無罪を勝ち取ることが弁護活動の目的です。

 

否認事件での第1審での有罪率はおよそ98%(H28年)

起訴されると99.9%が有罪になります。平成28年における第1審の否認率は9.6%あり、否認事件での第1審の有罪率は、約98%でした。

参考資料 裁判所HP:

https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/siryo/hokoku_07_hokokusyo/index.html

地方裁判所における民事第一審訴訟事件の概況及び実情78頁より

 

保釈請求を行う

自白事件で逮捕後勾留されていた場合でも、起訴されると身柄が解放される可能性がありますが、否認事件の場合にはそのまま身柄拘束が続く可能性が高いです。

否認事件の場合には証拠調べにも時間がかかるため、裁判も長期化します。逮捕から判決まで一回も釈放されないケースもあります。

保釈の許可が下りないまま実刑判決が言い渡され刑が確定した場合には、刑期が終了するまで身柄が解放されません。

 

起訴後も身柄拘束が続く場合には、逃亡のおそれや罪証隠滅の恐れが無いこと、身柄拘束の必要性が無いこと等を裁判所に対して主張し、保釈請求を行います。

家族や親戚、友人等の協力を得て被告人の監督をする旨の誓約書等が提出できれば保釈の可能性が高くなります。保釈請求が必ず認められるわけではありませんが、やってみる価値はあります。

 

証人に対する反対尋問を行う

刑事裁判における全開廷回数に占める証人尋問および被告人質問に要する公判期日等の割合は、合計で7~8割です。証人尋問には主尋問と反対尋問があります。検察官が用意した証人に対する尋問が反対尋問です。検察官側の証人が何を話すかは事前にわからないため、反対尋問はぶっつけ本番となります。

検察側証人にとっては敵対する弁護人から、自分の証言の矛盾点を突かれるような尋問を受けた時に、素直にその矛盾を認める証人はほぼいません。

反対尋問で検察側証人の証言の矛盾を突き、裁判官に証人の証言の信頼性に疑問を持ってもらうことが反対尋問の役割の一つです。

 

証拠調べを行う

公判では検察官が提出した証拠を調べます。検察官は、被告人の有罪を立証するために証拠を提出しますが、それらが有罪の証拠ではなく他に合理的な説明ができることを弁護士は主張します。

検察官が提出した証拠に合理的な説明ができ、裁判官を納得させられるかどうかが証拠調べで重要です。

そのためには、証拠をしっかり確認し、証拠について被告人からじっくり話を聞く必要があります。

 

まとめ|否認事件で逮捕されたら、ネクスパート法律事務所にご相談ください

否認事件の刑事弁護は難しいです。逮捕されてすぐ、被疑者が不利益な発言をしてしまう前に弁護士に依頼し、弁護士の手厚いサポートを受けながら取り調べの期間を乗り切りましょう。公判では検察官が提出した「証拠の信頼性」を切り崩し、検察官が提出した証拠が「被告人が罪を犯したことを疑いの余地なく証明」できていないと裁判官に判断してもらうことが否認事件での弁護活動になります。

身に覚えのない事件で逮捕されてしまった場合には、出来る限り早期に、刑事弁護を多く手掛けるネクスパート法律事務所の弁護士にご相談ください。

 

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