被害届の出し方|警察署の手続き・持ち物・受理されない場合の対処法
「警察にどう伝えればいいかわからない」「相談したのに被害届が受理されなかった」など、対応に悩むケースも少なくないと考えられます。
被害届は、犯罪被害の事実を正式に警察へ伝え、事件として認知してもらうための第一歩です。
この記事では、刑事事件を数多く取り扱ってきた法律事務所の実務経験をもとに、
- 被害届の出し方
- 警察での手続きの流れ
- 提出前の準備と不安解消Q&A
- 被害届が受理されにくいケースとその対策
について、わかりやすく解説します。
警察への相談や被害届の提出を検討している方が、落ち着いて行動するための参考にしてください。
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目次
被害届とは?警察に提出する目的と受理されるメリット
被害届の出し方を理解するためには、まず「被害届を提出することで警察の対応や事件の扱いがどのように変わるのか」という目的を整理しておくことが重要です。
被害届とは何か|警察が事件を認知する仕組み
被害届とは、犯罪被害の事実を警察に申告し、事件として認知してもらうための手続きです。
なお、被害届の受理自体が直ちに捜査開始や犯人逮捕を意味するものではなく、捜査の要否は警察の判断(裁量)によって決まります。
【手続きの流れ】
- 警察官が被害内容を聴き取り
- 書面で被害届を作成
- 被害者が署名・押印
受理されると、警察は事件として把握し、捜査の可否を判断します。
被害届を出す意味とメリット
- 事件の認知:警察が捜査を開始するきっかけになる
- 各種手続きで利用可能:盗難や当て逃げなどでは、一部手続き(保険金請求など)の際に被害届の受理番号を求められることがある
被害届を出すデメリットと注意点(負担・リスク)
被害届にはメリットだけでなく、一定の負担も伴います。
- 事情聴取に時間がかかる:詳細説明に数時間かかる場合がある
- 虚偽申告は処罰対象になり得る:虚偽の内容を申告した場合、状況によっては刑法上の虚偽告訴罪(刑法第172条)などに該当する可能性があります。もっとも、事実関係の認識違いや記憶違いが直ちに処罰対象となるわけではなく、故意に虚偽の犯罪事実を申告した場合に問題となる点には注意が必要です。
【補足】告訴・告発との違いについて
被害届の提出と似た制度として、「犯人の処罰を求める意思表示」を行う告訴・告発という手続きがあります。
これらはいずれも刑事訴訟法に基づく制度ですが、被害届とは目的や法的効果が異なります。
告訴・告発の手続きとの違いは記事後半で詳しく解説します。
被害届を出すタイミングはいつ?【原則は早いほど望ましい】
被害届は、一般的にはできるだけ早く提出することが望ましいとされています。
法律上、提出期限は設けられていませんが、時間が経過すると証拠収集が難しくなり、結果として事件の立証に不利に働く場合があります。
ただし、一定期間が経過していても、被害届が受理されるケースもあります。
「時間が経ったから無理」と判断せず、まずは警察や弁護士に相談して提出の可否や進め方を確認することが大切です。
時間が経過すると生じやすい影響
- 防犯カメラやログが消去される可能性
- 目撃者の記憶が曖昧になる
- 事実確認に時間がかかる
ネット犯罪・誹謗中傷は特に早期対応が重要
SNSの投稿やアカウント、通信履歴などは短期間で削除される可能性があります。
被害に気づいたら、迅速に証拠を保存し、できるだけ早く警察に相談することが重要です。
被害届の出し方|提出先と警察署での基本手続き
被害届の出し方としてまず重要なのが、どこに提出するかという点です。
提出先を誤ると、対応までに時間がかかることがあるため、基本的な考え方を押さえておきましょう。
基本は犯罪が発生した場所を管轄する警察署へ
被害届は、法律上、全国どこの警察署でも提出することができます。
実務上は、犯罪が起きた場所を管轄する警察署に提出するのが最もスムーズです。
管轄外の警察署や交番で相談した場合でも、内容自体が無駄になるわけではありませんが、最終的には管轄警察署に引き継がれることが多く、改めて説明が必要になるケースがあります。
警察署と交番の違い
交番でも原則として被害届の提出は可能ですが、事件の規模や内容によっては、警察署を案内されるケースもあります。
最初から警察署に行く方が、比較的スムーズに手続きを行えます。
所轄警察署の調べ方と事前連絡のポイント
所轄警察署は、「〇〇市 警察署 管轄」などと検索し、各都道府県警察のホームページなどで確認できます。
事前に警察署へ電話し、「被害届を出したい」と伝えておくと、担当者の在席状況を確認でき、当日の対応がスムーズになることがあります。
参照:警視庁
被害届は郵送・オンラインで提出できるか
被害届の郵送は禁止されているわけではありませんが、一般的な方法ではありません。
また、オンライン申請には対応していません。 一般的に、被害届は警察署での対面提出が原則とされています。
これは、警察官が本人確認を行い、その場で被害状況を詳しく聴き取る必要があるためです。
郵送で送った場合には、一度警察署へ来るよう求められる可能性もありますから、対面での提出が推奨されます。
被害届提出当日の流れと不安解消Q&A

事前準備が整ったら、警察署へ向かいましょう。
当日の流れを、よくある疑問への回答とともに解説します。
ステップ1|受付(総合窓口)
警察署の入り口にある総合窓口で「被害届を出したい」と伝えます。
Q1.被害届の提出に費用はかかりますか?
A1.完全に無料です。
相談料や手数料は一切かかりません。
Q2.被害届は夜間や土日でも提出できますか?
A2.被害届の提出は、24時間365日可能です。
ステップ2|担当者による聴き取り
相談内容に応じた部署(刑事課、生活安全課など)のブースへ案内され、警察官から状況を詳しく聴かれます。
Q3.誰かと一緒に行ってもいいですか?
A3.付き添いは可能です。
ただし、聴き取りは原則一人で行います。待合室までは同行できることが一般的です。
Q4.「自分の勘違いかも」と不安ですが…
A4.相談だけでも問題ありません。 事件性が低くても、相談実績として記録され、今後の被害防止に役立ちます。
ステップ3|書類の作成・署名・押印
警察官が聴き取った内容をもとに被害届を作成します。
内容を確認し、間違いがなければ署名・押印(または指印)をします。
ステップ4|受理番号の確認
手続きが終わると、被害届が受理されます。
その場で受理番号を控えておくことが推奨されます。
Q5.受理番号は必要ですか?
A5.はい。保険請求などの一部手続きで使う場合があるので、控えておきましょう。
Q6.捜査状況は教えてもらえますか?
A6.捜査状況は逐一報告されるわけではありません。 進展を知りたい場合は、担当刑事に電話で確認するのが確実です。
可能な範囲で進捗状況を教えてもらえる場合があります。
被害届を出す前の準備|必要な物と証拠整理
被害届の提出では、事前準備が重要です。
被害届の提出当日に落ち着いて対応するために、事前に準備しましょう。
当日の持ち物チェックリスト

※すべて揃っていなくても大丈夫です。
現時点で準備できる範囲のものを持参してください。
証拠として有効になりやすいもの
被害内容によって異なりますが、一般的に次のようなものは証拠として参考にされます。
- 防犯カメラ映像の存在が分かる情報(設置場所・店舗名など)
- メール、SNS、チャットのやり取りの記録
- 銀行の取引履歴、振込明細
- 医師の診断書や受診記録 など
データは削除される可能性があるため、スクリーンショットやバックアップを取っておくことが重要です。
時系列メモの作成(5W1H)
警察官に被害状況を正確に伝えるために、時系列メモ(5W1H)を作成することをおすすめします。

事前に整理しておくことで、警察官が事実関係を把握しやすくなり、結果として手続きが円滑に進むことが期待できます。
被害届の書き方と受理されやすくするコツ【テンプレート付き】
被害届は通常、警察官が聞き取りながら作成しますが、事前に準備した内容を整理して持参するだけで、正確さが向上します。
ここでは、記載のポイントからケース別テンプレートまで解説します。
被害届の書き方|受理されやすくする4つのポイント
被害届を作成する際は、次の4つのポイントを意識しましょう。
- 具体的に書く 2. 事実のみを書く 3. 事件性を正確に 4. 証拠があれば提示
以下、詳しく解説します。
①具体的に書く
- 金額・型番・数量まで明確に
- 例:財布を盗まれた → 「黒色レザー財布(〇〇ブランド)、現金3万2,000円」
②事実のみを書く
「たぶん〇〇」と推測せず、見たこと・経験したことを正確に書く
③事件性を正確に
事件性を正確に伝え、警察が状況を正しく判断できるようにする
④証拠があれば提示
LINEスクショ、目撃者メモ、防犯カメラ映像など
被害届テンプレート(事前準備メモ)
警察署に行く前に、以下の項目を整理して持参すると、書き方で迷うことがなくなります。
①被害届共通テンプレート(事前準備メモ)
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 被害日時 | 202X年○月○日 ○時○分ごろ |
| 被害場所 | 〇〇市〇〇町1-2-3 〇〇スーパーの駐輪場 |
| 犯人の特徴 | 30代男性、身長170cm、黒パーカー、右頬にアザ |
| 被害内容 | 現金5万円入りの財布をひったくられた |
| 被害時の状況 | 背後から自転車で近づかれ、追い抜きざまにカバンを奪われた |
| 現在の状況 | 犯人は北方向に逃走、目撃者なし |
②ケース別|被害届の書き方のポイント
犯罪の種類別に書き方の例を紹介します。
| 以下の被害届の書き方やテンプレート例は、あくまで参考例です。 実際の提出にあたっては、状況や証拠の内容に応じて警察官や弁護士の指示に従うことが重要です。 これらの例をそのまま使用して内容を変更・追加したり、虚偽の情報を記載したりすることは法的責任につながる可能性があります。 必ず事実に基づき、必要に応じて専門家に確認してください。 |
|---|
窃盗・ひったくりの場合
【ポイント:被害品の「特徴」と「価値」を正確に書く】
| 例文(テンプレート) 2026年1月20日午後8時ごろ、JR〇〇駅付近の路上で、後ろから来た人物に右手に持っていたハンドバッグを奪われました。 バッグは茶色の革製(〇〇ブランド)で、中には現金3万円、運転免許証、スマートフォンが入っていました。 犯人は30代くらいの男性で、黒の上着を着用していました。 |
|---|
暴行・傷害の場合
【ポイント:「怪我の程度」を明確に書く】
| 例文(テンプレート) 2026年1月25日午後9時ごろ、〇〇居酒屋で隣の男性と口論になりました。 私は先に手を出しておらず、相手が胸ぐらを掴みました。 その際に顔を打たれ、全治2週間の鼻骨骨折と診断されました(診断書あり)。 |
|---|
詐欺(ネット詐欺など)の場合
【ポイント:「相手が最初から騙すつもりだった証拠」を明確にする】
| 例文(テンプレート) SNSで「限定スニーカーを譲る」という投稿を見て相手に連絡しました。 1月15日に指定された銀行口座へ5万円を振り込みましたが、商品は届かず、連絡も途絶えました。振込明細とやり取りのスクリーンショットを証拠として提出します。 |
|---|
被害届が受理されない理由と対処法
被害届が受理されないケースも一定数あります。
しかし、理由と対策を知っていれば、受理の可能性を高められる場合があります。
被害届が受理されない主な理由
- 事件性がないと判断された場合:単なる紛失や不注意による被害と一次的に判断されたケース
- 民事不介入の原則が適用される場合:お金の貸し借りや親族間トラブルなど、民事上の紛争とみなされたケース
- 証拠不足の場合:犯人の特定が困難であったり、被害を裏付ける物証が十分でないケース
※いずれも警察の初期判断(裁量)によるものであり、状況次第で判断が変わることもあります。
被害届が受理されない時の3つの対処法
被害届が受理されない時の対処法は、次の3つです。
- 証拠を整理・追加して再提出する 2. 弁護士に同伴してもらう 3. 告訴状の提出に切り替える
以下、詳しく解説します。
①証拠を整理・追加して再提出する
警察に「足りない」と言われた証拠を補強します。
- 防犯カメラ映像の場所や時間を特定
- 目撃者の氏名や連絡先を確保
- 診断書や写真など、被害を裏付ける資料を揃える など
②弁護士に同伴してもらう
弁護士が同伴することで、法的な根拠や事件性を整理した説明が可能となり、警察とのやり取りが円滑に進むことがあります。
ただし、弁護士が同席したからといって、必ず被害届が受理されるわけではない点には留意が必要です。
③告訴状の提出に切り替える
犯人の処罰を強く望む場合は、告訴や告発という選択肢が出てきます。
それぞれの違いは以下のとおりです。
【被害届と告訴・告発との違い】
| 項目 | 被害届 | 告訴 | 告発 |
|---|---|---|---|
| 提出できる人 | 被害者 | 原則として被害者 | 被害者以外の第三者 |
| 内容 | 被害の事実を申告 | 犯人の処罰を求める意思表示 | 犯罪事実の申告 |
| 警察の対応 | 捜査は裁量 | 原則として捜査対象 | 原則として捜査対象 |
| 作成の難易度 | 比較的低い | 証拠整理が必要 | 専門的判断が必要 |
被害届を出した後の流れと取り下げ方法
被害届を提出した後も、捜査や手続きの流れを知っておくことで、焦らず対応できます。
ここでは、警察や検察の流れ、被害届の取り下げについて解説します。
捜査の進み方と警察からの連絡
被害届が受理されると、以下のような捜査が始まる場合があります。
- 現場検証:犯行現場の状況を警察が確認
- 加害者の特定・呼び出し:目撃情報や証拠をもとに、加害者の特定や事情聴取
| 捜査状況は逐一報告されません。進展を知りたい場合は、担当刑事や弁護士を通じて確認してください。 |
|---|
送検から起訴・不起訴まで
犯人が逮捕されるか、書類送検されると事件は検察庁へ送られます(送検)。
- 起訴:裁判にかけられる
- 不起訴:検察が起訴せず、事件が終了
検察官の判断により、事件が刑事裁判に進むかどうかが決まります。
被害届は取り下げできるのか
被害届は、一般的には取り下げることが可能です。
ただし、捜査の進行状況や事件の内容によっては、取下げが捜査や処分結果に直ちに反映されない場合もあります。
- 示談が成立し、謝罪や賠償を受けた場合
- 「被害届を取り下げます」という書面(取下書)を警察に提出
状況に応じて、担当刑事や弁護士に確認しましょう。
被害届の提出について弁護士に相談すべきケース
次のような状況では、早めに弁護士に相談することが推奨されます。
特に「いつ相談すべきか」を意識することで、スムーズかつ安全に手続きを進められます。
警察が対応してくれない場合
- 相談タイミング:被害届提出前・提出後いずれも有効
- 受理を拒否された場合、弁護士が法的根拠を示して警察に働きかけることが可能です。
- 被害届を出す前に相談することで、受理されやすい書き方や証拠整理のアドバイスも受けられます。
加害者と直接やり取りしたくない場合
- 相談タイミング:被害届提出前・示談交渉前
- 示談や連絡対応で加害者と接触するリスクを避けられます。
- 弁護士を窓口にすることで、心理的負担の軽減につながります。
- 被害届の提出前に相談すると、加害者と接触せずに手続きを進める方法や必要書類の整理も教えてもらえます。
示談交渉・告訴を検討している場合
相談タイミング:被害届受理後または受理されなかった後
- 弁護士は、事案の内容や証拠関係を踏まえ、適切と考えられる賠償金(慰謝料)での示談成立を目指して交渉を行います。
- 証拠の整理や法的文書作成も弁護士のサポートで正確かつスムーズに行えます。
- 被害届が受理されなかった場合でも、弁護士を通して告訴状の作成・提出や証拠補強を行うことが可能です。
その他、相談を検討すべきケース
- 被害届の書き方や証拠整理に自信がない
- 精神的に不安が強く、一人で警察に行くのが困難
まとめ|被害届はあなたの権利を守る第一歩
被害届の提出は、被害の事実を警察に共有し、解決へとつなげるための重要な第一歩となります。
- 警察や証拠について過度に不安になる必要はありません。
- まずは時系列メモを作り、事実を整理しましょう。
今回ご紹介した時系列メモを、警察署へ行く際の準備としてぜひ活用してください。
「自分の被害が受理されるケースなのか判断がつかない」「一人で警察署へ行くのが不安」という場合には、弁護士のサポートを受けることも有力な選択肢です。
ネクスパート法律事務所では、刑事事件に強い弁護士が多数在籍しています。
初回相談は、30分無料です。
ぜひ一度ご相談ください。


