罰金が払えない場合どうなる?労役になる?分割払いはできる?

罰金は、金銭を支払わせる刑罰です。罰金は高額になることもあり、中には支払いができないという人もいるでしょう。

罰金が払えなくても、免除されることはありません。労役場留置となり、強制労働が科されることになります。

この記事では、罰金が払えないとどうなるのか、次の点を解説します。

  • 罰金とは?罰金が科されるケース
  • 罰金が払えないとどうなる?
  • 罰金が払えない場合の対処法

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罰金とは

財産を奪う刑罰の一種

罰金とは、刑事事件で有罪判決を受けた場合に、財産を奪う刑罰です。

刑罰には、命を奪う死刑、自由を奪う自由刑(懲役や禁錮)、財産を奪う財産刑があります。

罰金を納めることで刑を執行したことになり、懲役などのように一定期間身柄を拘束されることはありません。

罰金刑が科された場合は、判決後に検察庁に罰金を納めなければなりません。

罰金と似たものに反則金や過料がありますが、違いは次のとおりです。

反則金 交通違反をした際に科される行政処分。軽微な違反に対して科され、支払うことで刑事処分を受けずに済む。納付先は警察。
過料 法令の義務に違反した際に科される罰。民法などに反した場合に科せられるが刑事罰ではないので前科はつかない
過料 1,000円以上1万円未満の罰金

反則金との違いは後述します。

罰金は原則分割払い不可

罰金は、原則一括払いで、分割払いはできません。分割払いができてしまうと、刑罰としての意味や抑止力でなくなってしまうため、基本的には一括払いとなります。

罰金刑が科されるケース

刑罰には、罰の重さが定められており、死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留、科料の順で重い罪となります。

罰金刑は、禁錮刑よりも軽いため、比較的軽微な罪に科されます。

明確に定められているわけではありませんが、経済的利益を目的とした犯罪に、懲役と罰金が定められている傾向があります。

罰金刑のみが定められている犯罪は多くありません。懲役と罰金いずれかを選択するか、両方が併科されることもあります。

交通違反

軽微な交通違反は、罰金刑で処理されることがあります。罰金刑が定められている交通違反の一例は次のとおりです。

速度超過(道交法第22条1項) 6か月以下の懲役または10万円以下の罰金
一時停止違反(道交法第43条) 3か月以下の懲役または5万円以下の罰金
信号無視(道交法第7条) 3か月以下の懲役または5万円以下の罰金
通行禁止違反(道交法第8条) 3か月以下の懲役または5万円以下の罰金

参考:道路交通法 – e-Gov

ただし、これらの違反をしたとしても、ただちに逮捕されて裁判で有罪となり、罰金が科されるわけではありません。

これらの違反をした場合は、まず青切符を切られて、反則金を支払うことになります。

交通違反をいちいち刑事手続きで処理していては手間と時間がかかるため、反則金制度を設け、支払わない場合に刑事手続きに移行します(交通違反通告制度)。

反則金の段階では前科はつきません。反則金を支払わずに、刑事事件に発展して、裁判で有罪となった場合に罰金刑が科され、前科がつきます。

窃盗罪

窃盗罪など、物を盗む犯罪も罰金刑が定められています。

窃盗罪(刑法第235条) 10年以下の懲役または50万円以下の罰金
遺失物横領罪(刑法第254条) 1年以下の懲役・10万円以下の罰金・科料
背任罪(刑法第247条) 5年以下の懲役または50万円以下の罰金

遺失物横領罪は、例えば置き引きなどの行為が挙げられます。背任罪は、他人から職務を任された人が、その職務に背く行為をして、任せた人に損害を与える犯罪です。

窃盗罪は重大な犯罪ですが、中には数百円の万引きのケースもあり、比較的軽微だと判断されると、罰金刑が科される可能性があります。

暴行罪や傷害罪

暴行罪や傷害罪も罰金刑が定められています。

暴行罪(刑法第208条) 2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金、または拘留、もしくは科料
傷害罪(刑法第204条) 15年以下の懲役または50万円以下の罰金

暴行罪や傷害罪は、日常で発生する可能性がある犯罪です。暴行やケガの程度により軽微なものから重大なものまで幅広いため、罰則も広く定められていると考えられます。

性犯罪

性犯罪も、罰金刑と懲役刑が定められているものが多いです。

迷惑防止条例違反(痴漢行為) ※各都道府県による

東京都の場合:6か月以下の懲役または50万円以下の罰金

撮影罪(盗撮) 3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金
青少年保護育成条例違反(淫行) ※各都道府県による

東京都の場合:2年以下の懲役または100万円以下の罰金

児童買春罪(児童買春・児童ポルノ禁止法第4条) 対価を渡し児童と性交等:5年以下の懲役または300万円以下の罰金
児童ポルノ所持(児童買春・児童ポルノ禁止法第7条1項) 1年以下の懲役または100万円以下の罰金

参考:公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例 – 東京都

「淫行」処罰規定 – 警視庁

なお、不同意わいせつや不同意性交等は、懲役刑のみです。

名誉毀損や脅迫

名誉毀損罪や脅迫罪にも、罰金が定められています。

名誉毀損罪(刑法第230条) 3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金
脅迫罪(刑法第222条) 2年以下の懲役または30万円以下の罰金
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罰金が払えない場合はどうなる?

罰金が払えないと、最終的には労役場留置となり、強制労働を科されることになります。

労役場留置までの具体的な流れは次のとおりです。

  • 検察庁から支払督促を受ける
  • 財産が差し押さえられる
  • 労役場留置になり強制労働となる

検察庁から督促を受ける

裁判で有罪となると罰金刑が科されますが、その後1週間ほどで検察から罰金の納付用紙が届きます。

この納付期限内に払わないと、その後検察庁から督促を受けることになります。

督促を受けた時点で支払えば、労役場留置は回避できます。

財産が差し押さえられる

検察庁からの督促に応じて罰金を払わないと、検察庁は支払い義務者の財産を調べて、強制執行(差し押さえ)を行います。

第四百九十条罰金、科料、没収、追徴、過料、没取、訴訟費用、費用賠償又は仮納付の裁判は、検察官の命令によつてこれを執行する。この命令は、執行力のある債務名義と同一の効力を有する。

②前項の裁判の執行は、民事執行法(昭和五十四年法律第四号)その他強制執行の手続に関する法令の規定に従つてする。ただし、執行前に裁判の送達をすることを要しない。

引用:刑事訴訟法第490条 – e-Gov

差し押さえは、預貯金や車などが対象になると考えられます。差し押さえられた財産は、換金されて、罰金の支払いに充てられます。

差し押さえをしても罰金額に満たない場合や、そもそも差し押さえる財産がない場合は、最終的に強制労働を強いられることになります。

労役場留置になり強制労働となる

督促に応じず、差し押さえで罰金が回収できなければ、最終的には労役場留置となります。

(労役場留置)

第十八条罰金を完納することができない者は、一日以上二年以下の期間、労役場に留置する。

一部引用:刑法第18条 – e-Gov

労役場留置とは、罰金が払えない人を労役場に留置して、労働を科して、金銭に換算して罰金を納めさせることです。

罰金が払えないと、最終的には検察から呼出状が届き、出頭を求められます。出頭に応じないと、収容状が発布され、身柄拘束を受けて一定期間労役場に収容されます。

なお、検察統計調査によると、2022年に罰金刑が執行された件数は約16万6,596件でした。そのうち、2,731件、1.6%が労役場留置になっています。

労役場留置となった場合の留置期間

労役場留置になった場合、1日の労働を金銭に換算して、罰金を納めることになります。

罰金が数十万円程度であれば、日当は5,000円に換算されることが多いです。

例えば、罰金が30万円であれば、60日間収容されることになります。

ただし、労役場に収容できる期間の上限は2年です。罰金が高額な場合でも、2年以内に支払えるように、日当が高額に設定されます。

労役場留置は、懲役などの刑罰ではありませんが、刑務所や拘置所に併設された場所に収容されるため、刑務所などのルールのもと生活しなければなりません。

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罰金が払えない場合の対処法

検察に分割や納付期限の延長を相談する

罰金が払えない場合は、検察に分割や納付期限の延長を相談するのも一つの方法です。

ただし、前述のとおり、罰金は一括納付が原則です。

単にお金がないから払えないという理由だけでは、容易に認められません。

検察の徴収事務担当者に相談することで、納付期間を延ばしてもらえる可能性はあります。

分割や納付期間の延長を認めてもらうのは非常に難しいですが、支払えないまま放置しても労役場留置となります。罰金を払えないのであれば、相談だけでもしてみましょう。

参考:裁判の執行等について – 検察庁

罰金の一部を支払い労役期間を短くする

刑法や検察庁の徴収事務規程など、法律上は罰金の一部の納付を認めています。

罰金が全額払えなくても、一部払えば、その分だけ労役場に収容される期間を短縮できる可能性があります。

例えば、罰金が30万円でも、10万円だけ納付して残り20万円になれば、労役場の収容期間も60日から40日に短縮されることが考えられます。

定職についていると、短期間でも労役場留置になってしまうと、仕事を続けるのは難しいでしょう。

そのため、家族などにも協力してもらい、できる限りお金を用意することが大切です。

罰金が払えない場合によくある質問

罰金を払えないと家族に支払い義務が生じる?

罰金を払えなくても、家族に支払い義務は生じません。罰金は、刑罰が科された人に納付義務が生じます。

罰金の分割回数は何回まで?

検察庁では、基本的に罰金の分割払いを認めておらず、一括払いが原則です。

ただし、状況によっては分割払いにしてもらえるケースもゼロではないため、一度相談してみましょう。

罰金を払わずに済む方法はある?

警察の捜査を受けた段階で、弁護士から適切なサポートを受け、不起訴を得ることで罰金が科されずに済みます。

不起訴になれば、身柄が釈放され、前科もつかずに済みます。有罪となり罰金刑が科される前に、サポートを受けることが重要です。

罰金刑が科された後に、罰金の支払いを回避する方法はありません。

まとめ

罰金刑は一見すると軽い刑罰のように思われがちですが、支払いができなければ、労役場に留置されて、強制労働を強いられることになります。

労役場に留置されると、刑務所や拘置所のルールで不自由な生活を送らなければなりません。日常生活に影響が生じます。

日当は5,000円とされることが多いため、労役場に収容されるよりも普通に働いて支払った方が効率的です。

分割払いに応じてもらえるとは限りませんが、罰金が払えない場合は検察庁に相談してみましょう。

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