いじめは犯罪にならないし法律で裁けない?いじめで犯罪になる行為

学校におけるいじめは、被害者が亡くなった場合ニュースとして取り上げられることが多いです。

いじめと聞くと軽く聞こえるかもしれませんが、特定の行為は犯罪に該当しますし、民法という法律では慰謝料の請求が可能になります。

場合によっては、加害者が逮捕されたり、少年院に送致されたりするケースもあります。

この記事では、いじめについて下記の点を解説しています。

  • いじめの定義と犯罪として扱われない理由
  • いじめで犯罪になる行為
  • いじめをした場合に問われる刑事的民事的責任
  • いじめをした場合加害者はどうなるのか

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いじめは犯罪にならない?

いじめの行為の中に、犯罪として定められているものがあれば、それは犯罪になります。

ただし、いじめの行為すべてが犯罪に該当するわけではありません。

ここでは、いじめの定義と種類、犯罪として取り扱われない理由を解説します。

法律上のいじめの定義と種類

いじめは、法律上では3種類に分けられます。

  • いじめ防止対策推進法で定義されていているいじめ
  • 民法の不法行為に該当するいじめ
  • 刑法などの犯罪行為に該当するいじめ

このうち、いじめがどういうものかを明確に定めているのは、①いじめ防止対策推進法です。

法律上いじめは、心理的または物理的影響を与える行為(ネット上の行為も含む)とし、被害児童が心身の苦痛を感じているものと定義しています。

ただし、このいじめ防止対策推進法は、各自治体や学校に対して、いじめの調査や対策を義務づけるためのもので、加害者を罰するものではありません。

犯罪に該当するのは、刑法などに定められた行為を行っているいじめです。

例えば、相手を殴ってけがをさせた場合、傷害罪が成立します。一方で、相手を無視しても犯罪行為には該当しません。

その代わり、事案によっては、民法の不法行為として、相手に慰謝料を請求して解決する方法が考えられます。

参考:別添3 いじめ防止対策推進法(平成25年法律第71号)|文部科学省

犯罪として取り扱われない理由

いじめが発生した場合、学校側は下記のように、いじめ対策委員会を設置して、組織で対応するように定められています。

  • いじめ対策委員会で対応を協議
  • 学校は地方公共団体の長、文部科学省大臣、都道府県知事などに報告
  • いじめの調査
  • いじめを防止策を実施
  • 被害者児童と保護者の支援(場合によっては関係機関の専門家も対応)
  • 加害者児童への指導や、加害児童の保護者への助言
  • いじめに関する情報を双方の保護者と共有
  • 事案に応じて警察と連携

参考:学校におけるいじめ問題への対応のポイント|独立行政法人教職員支援機構

基本的には学校が中心となり、事案に応じて警察と連携しますが、警察の介入が義務付けられているわけではありません

また、集団で無視をするなどの行為は犯罪として取り扱うことはできません。

相手を無視するなどの行為に関しては、当事者だけでなく、学校も含めて、いじめの防止策を講じ、話し合いを行い解決する努力が求められます。

犯罪行為だとわかっていても、おおごとになったり、保護者同士で揉め事を回避したりしたいがために、警察に被害を訴えないケースも考えられるでしょう。

学校側としても、責任を追及されることがないよう、大々的に警察沙汰にはせず内々で処理したいと考えているケースもあるかもしれません。

いじめで犯罪になる行為

いじめの中で、犯罪になる行為は下記のとおりです。

  • 暴力をふるう
  • 物を盗む、物を壊す
  • 脅して言うことを聞かせる
  • 誹謗中傷や侮辱をする
  • 性的な嫌がらせをする
  • 自殺をするようにそそのかす

ここでは、いじめで犯罪になる行為を解説します。

暴力をふるう

悪ふざけやゲームと称して殴ったり、蹴ったりする行為や、衣類を脱がせる行為は暴行罪が成立する可能性があります。

また、殴ったり蹴ったりしたことで、相手がケガをした場合は、さらに重い傷害罪が成立します。

暴行罪と傷害罪の刑罰は下記のとおりです。

暴行罪(刑法第208条) 2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金、または拘留もしくは科料
傷害罪(刑法第204条) 15年以下の懲役または50万円以下の罰金
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物を盗む、物を壊す

人の物を盗んだり、奪い取れば窃盗罪が成立します。また、人の物を壊す行為は、器物損壊罪に該当します。

窃盗罪(刑法第235条) 10年以下の懲役または50万円以下の罰金
器物損壊罪(刑法第261条) 3年以下の懲役または30万円以下の罰金、もしくは科料
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脅して言うことを聞かせる

相手の身体や生命、金銭や名誉などに対して傷つけると告知する行為は脅迫罪が成立します。

また、脅迫し金銭を巻き上げたり、お金を支払わせたりする行為は恐喝罪に該当します。

脅迫や暴行により相手が嫌がることを強要すれば、強要罪が成立することが考えられます。

脅迫罪(刑法第222条) 2年以下の懲役または30万円以下の罰金
恐喝罪(刑法第249条) 10年以下の懲役
強要罪(刑法第223条) 3年以下の懲役
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誹謗中傷や侮辱をする

相手の評価が下がるような事実を不特定多数の前で言うと名誉棄損罪に該当する可能性があります。

また、相手に対してバカなどと侮辱をすれば、侮辱罪が成立することが考えられます。

これは、直接言った場合はもちろん、ネット上の書き込みも該当します。

名誉毀損罪(刑法第230条) 3年以下の懲役もしくは禁錮、または50万円以下の罰金
侮辱罪(刑法第231条) 拘留または科料

性的な嫌がらせをする

相手の同意がなく体に触れば、不同意わいせつ罪が成立します。

また、相手を脅迫して裸の写真を送らせる行為や、裸をネットにアップロードして拡散する行為は、児童ポルノ禁止法に違反します。

不同意わいせつ罪(刑法第176条) 6か月以上10年以下の懲役
児童ポルノ禁止法違反 所持:1年以下の懲役または100万円以下の罰金
提供:3年以下の懲役または300万円以下の罰金
陳列:ネットにアップロードすれば、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、またはその両方
製造:相手に裸の写真を撮らせれば、3年以下の懲役または300万円以下の罰金
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自殺をするようにそそのかす

相手に自殺をするようにそそのかす行為は自殺教唆罪が成立する可能性があります。

自殺教唆は6か月以上7年以下の懲役または禁錮です(刑法第202条)。

このように軽い気持ちでしたことでも、犯罪に該当する可能性があります。

いじめは法律で裁けない?

いじめは法律で裁けないと思う人もいるかもしれませんが、そんなことはありません。

犯罪行為に該当すれば刑事罰が科され、精神的な苦痛を受けたと認定されれば、慰謝料などの支払いを命じられる可能性があります。

刑法に違反した場合は刑事責任を追及される

先述したように、法律に触れる行為があれば、犯罪として警察に訴えることで、刑事処分が科される可能性があります。

例えば、いじめ防止対策推進法制定のきっかけとなった、2011年に起きた大津市の中学生いじめ自殺事件では、いじめを行っていた同級生らが暴行罪や恐喝罪で刑事告訴され、家庭裁判所で少年審判が行われました。

少年らには、保護観察処分などが下されています。

未成年者の場合は、少年審判という非公開の裁判が行われ、少年院や少年刑務所に送致される可能性もあります。

参考:いじめではなく「ゲーム、遊びだった」…大津いじめ自殺、元同級生らが法廷で語ったこと – 産経新聞

精神的な苦痛に対しては賠償を請求される

無視など犯罪にあてはまらなくとも、民法の不法行為に該当した場合、法律にもとづいて慰謝料などを請求することが可能です。

例えば、いじめが起きた際に学校側が適切な対応をしていなければ、学校側の責任を追及することができますし、いじめをした加害者に対して、賠償を求めることもできます。

前述した大津いじめ事件では、民事裁判で賠償金の支払いが命じられています。

ただし、裁判で訴えるには、いじめ行為と、被害者が受けた損害に対しての因果関係を立証しなければならず、弁護士に相談して進める必要があるでしょう。

ほかにも、加害者の刑事的な責任を追及する他に、刑事手続きとは別の裁判の手続きで、賠償を求めることができます。

裁判で争う以外にも、弁護士を介して交渉を行い、個別で慰謝料を請求する方法もあります。

参考:大津中2自殺 元同級生の賠償確定 いじめと因果関係 – 産経新聞

未成年がいじめで犯罪行為をした場合はどうなる?

では、未成年がいじめで犯罪行為をするとどうなるのでしょうか?

少年法の対象となるのは、20歳未満の少年です。

逮捕された場合は、少年事件として扱われ、少年の処分について矯正施設に収容するか、保護観察として指導を受けるかなどが決定されます。

少年事件の流れ引用:少年鑑別所のしおり – 法務省

警察が事情を聞く可能性がある

もしいじめ行為で、警察に被害届が出された場合は、加害者は警察から事情を聞かれることが考えられます。

14歳以上の場合は逮捕される可能性がありますし、14歳未満でも児童相談所に保護される可能性があります。

一時保護される可能性がある

少年の年齢に応じて、一時保護や勾留、勾留に代わる観護措置がとられる可能性があります。

14歳未満の場合 児童相談所に一時保護される
期間は原則2か月
14歳以上の場合 勾留:逮捕後10~20日間警察の留置場に身柄拘束される
勾留に代わる観護措置:少年鑑別所に10日間収容される

また、身柄が保護されたのち、家庭裁判所に事件が引き継がれ、少年審判という非公開の裁判で、少年の処分が決定します。

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少年院に送致される可能性がある

先述したとおり、犯罪行為があった場合は、身柄拘束を受けるなどして、その後家庭裁判所に送致されます。

家庭裁判所では、少年審判により、少年の更生のために必要な処分を決定します。

少年審判で決定する処分は下記のとおりです。

保護処分 保護観察:施設に入所せずに保護司の指導のもと更正する
児童自立支援施設送致:施設で更正を目指す
少年院送致:少年院で矯正教育を受ける
不処分 少年審判不開始、不処分など
処分が不要、事件が終了する

少年院は、刑罰を科す少年刑務所と違い、矯正教育を行う施設です。

しかし、送致されれば、1~2年ほど収容される可能性があり、その後の進級や進学などに影響することが考えられるでしょう。

いじめの被害を受けた場合

いじめの被害を受けた場合、どのように対処すればよいのでしょうか。

ここでは、いじめの被害を受けた場合の対処法を解説します。

学校に通報し対応を確認する

もしお子さんがいじめの被害を受けていると知った場合は、まず学校に通報を行ってください。

これは、いじめ防止対策推進法にも義務付けられています(いじめ防止対策推進法第23条)。

また、学校側は、こうした通報を受けた場合に、担任だけでなく校長を含めた複数の教師が情報を共有し、対策を行います

学校に通報する際は下記の点に注意しましょう。

  • 学校とのやり取りは、メモや録音、書面などの記録を残しておく
  • 担任だけが対応するのではなく、複数の教員やスクールカウンセラーなどで構成されるいじめ対策委員会に対応を求める
  • 学校側の担当者と話す際は、複数人を同席するなどして、状況を把握するとともに、認識にズレがないようにする

通報した際は、適切な対応がとれるよう、担任だけでなく、いじめ対策委員会や他の教員など組織で対応するように求めることが大切です。

また、学校側は通報を受けた場合に、下記の行為が義務付けられています。

  • 被害児童とその保護者への支援と加害児童への指導、その保護者への助言
  • トラブルにならないように、双方の保護者に対していじめに関する情報を共有する
  • 学校は加害児童の状況を確認と配慮を行いつつ、場合によっては被害児童と引き離して学習を行うなど必要な措置を行う

学校に対しては、いじめ調査の内容の確認や、教育委員会への報告の有無、いじめをした児童への具体的な指導内容などを確認しましょう。

証拠を集めておく

いじめを訴えても、調査でいじめを把握するのが難しいケースもあります。

そのため、いじめを訴える場合は、証拠を集めておくとスムーズです。

例えば、下記のようなものがいじめの証拠として考えられます。

  • いじめや誹謗中傷をされているLINEのスクリーンショット
  • 壊された物があれば、壊れた状態で保管しておく
  • ケガをした場合は、ケガの写真や診断書をとる
  • 実際に受けたいじめについて、いつ・どこで・その時誰が目撃していたかなど具体的に話を聞き、記録しておく など

いじめの相談窓口に相談する

もし学校側が動いてくれない場合や、第一に何をすべきか迷ったら、下記のいじめ相談窓口に相談するのもおすすめです。

弁護士や警察に相談する

もし下記に当てはまる場合は、弁護士や警察に相談するのがおすすめです。

  • 学校に相談したものの、適切な対応をとってもらえない
  • 学校側と交渉するのが難しい
  • 警察に捜査を依頼したい

特に被害者側が弁護士に相談することで下記のメリットがあります。

  • 証拠集めのアドバイスを受けられる
  • 代理人として学校や加害者と交渉できる
  • 調査の働きかけや再発防止の協議ができる
  • 学校側に対する法的責任を追及できる
  • 加害者に対して民事刑事的な責任を追及できる

もちろん、学校側が迅速かつ適切な対応を行ってくれるのであれば問題ありません。

しかし、学校側が適切な対応を行わない場合、弁護士を介することで、いじめの証拠収集のアドバイスや、いじめの調査、学校への適切な指導を求めることができます。

学校側の対応が不適切である場合や、受けた被害が深刻な場合は、学校や加害者に対して法的な責任を追及することも可能です。

いじめの加害者が弁護士に相談するメリット

一方で、いじめの加害者となってしまった場合も、弁護士に相談するメリットがあります。

冤罪防止として適切な調査を求めることができる

いじめが起きた場合、学校からは加害者児童に対して、いじめに対する指導が行われます。

しかし、場合によってはいじめの事実がないにもかかわらず、加害者だと判断されて、不当な指導が行われるケースもあります。

いじめの事実がないのに、いじめをしたと断定され、子どもが学校の行事に参加できなくなったり、周囲から責められたりするケースもあるでしょう。

こうした場合でも弁護士が介入することで、学校側に適切な調査や対応を求めることができます。

少年事件に発展した場合も対応を任せられる

いじめが犯罪に該当する行為であり、警察に事情を聞かれたようなケースでも、弁護士が介入することで、適切な対応を行ってもらえます。

少年事件に発展した場合も、長期間身柄拘束を受けたり、不当な処分が下されたりしないように、警察や裁判官に働きかけることが可能です。

また、被害者との示談の成立や、心から反省をすること、再犯防止を示すことなどで、少年院などへの送致が回避できるケースもあります。

被害者側と交渉してもらえる

いじめ行為があった場合は、被害者から訴えられるリスクもあります。

また、いじめの事実がないのに、相手の保護者から一方的に金銭を支払うよう要求されるケースもあります。

こうしたケースでも、弁護士が代理人となり、直接交渉をしてもらうことが可能です。

弁護士を介することで、そもそもいじめが事実かどうか、学校側に対していじめの調査をしてもらうことができますし、仮にいじめが事実だとしても、適切な範囲で示談金の交渉を行うことができます。

まとめ

いじめは、行為によっては犯罪に該当する可能性がありますし、何より人権を踏みにじる行為です。

被害者になった場合は、まず学校に通報を行い、適切な対応を求めましょう。

また、加害者になってしまった場合も、事実を確認した上で、刑事的な責任や民事的な責任、それとは別にお子さんとどう向かい合うのかを考えなければなりません。

弁護士は、被害者はもちろん、加害者のサポートも可能です。学校や警察などと連携をしながら、再びいじめが起きない環境を作ることが重要です。

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