暴行事件の加害者になったら知っておくべき示談金について解説
腹の虫の居所が悪い日は、普段なら気にならないことが癇に障り、全く知らない人とトラブルになることがあります。実際に筆者は、会社員の男性2人が通勤電車の中で些細なことで言い争いになり、殴り合いになった現場を目撃したことがあります。
どんな理由があるにせよ、暴力をふるった人が暴行罪に問われ、加害者になります。加害者になったら、まずは被害者に謝罪し示談を試みるのが賢明です。
この記事では、その際に知っておくべき示談金について解説します。
目次
暴行罪で示談金を支払うことの重要性とは?
ここでは、暴行罪で示談金を支払うことの重要性について解説します。
そもそも示談金とは何か?
刑事事件における示談金とは、犯罪行為により被害者が負った精神的苦痛や財産上の損害に対して、加害者が支払う損害賠償のことです。
示談によって解消されるのは、あくまで民事上の損害賠償責任ですが、刑事事件の示談金には被害者に許しを得るための謝罪金としての性質があるため、示談金の支払によって被害弁償をして示談した事実は、刑事手続きにおいて検察官や裁判官の心証に影響が与えることがあります。
示談金には、主に下記の2つが含まれます。
精神的損害に対する賠償金
一般的に慰謝料といわれているものですが、暴行されたことで恐怖心を味わったなどの精神的な苦痛に対して支払われる金銭です。こうした心の問題は人それぞれなので、お金に換算することは難しく、事案によっても異なるので、明確な基準はありません。
物的損害に対する賠償金
胸倉を掴んで殴りかかったことで破れた服の修理代や、言い争いになった相手にコーヒーをかけて洋服を汚してしまった場合のクリーニング代が該当します。
暴行罪は、殴る・蹴るなどの暴行があったものの、相手が怪我をしなかったときに成立します。怪我がないので、治療費や休業損害はほぼ発生しません。精神的苦痛に対する賠償金(慰謝料)が損害の大半を占め、あまり高額にならないのが一般的です。
被害者に謝罪して示談金を支払うメリット
被害者に謝罪して示談金を支払うメリットは、下記の3つです。
前科がつかない可能性がある
被害者との示談が成立すれば、前科がつかない可能性があります。
警察に事件が発覚する前に示談が成立し、被害者が被害届を出さなければ、警察が介入する可能性も低くなります。捜査機関(警察・検察官)が事件を認知していなければ、そのまま事件発覚に至らず処罰されずに済むかもしれません。
早期釈放される可能性がある
逮捕された場合も、被害者との示談が成立すれば、早期釈放される可能性があります。
示談は、前提として加害者が罪を認めた上で、被害者に対し謝罪の意を示すものです。加害者が罪を認め、被害者の許しを得ているということは、刑事処分から逃れるために逃亡したり、証拠を隠滅したりするおそれがないことを意味するので、身柄を拘束する必要はないと判断されやすくなるからです。
不起訴になる可能性がある
逮捕されて、起訴・不起訴が判断される前に被害者との示談が成立すれば、不起訴になる可能性があります。
起訴・不起訴を決めるのは検察官ですが、その際に集められた証拠や情状(刑事訴追を行うかどうかの判断や刑の量定にあたって考慮される事情)を総合的に判断します。
示談が成立したということは、被害者の処罰感情が和らいでいると判断されやすいため、不起訴になるための有利な情状といえます。
暴行事件の示談金はどのように決めるか?
ここでは、暴行事件の示談金がどのように決定されるのかについて解説します。
示談金の相場はいくらか?
暴行事件の示談金の相場は、10万円から30万円程度です。他の刑事事件に比べると、比較的低い金額だといえます。
示談金は何を目安に決めるか?
示談金は、主に下記の項目を考慮して決定されます。
- 犯行の状況(暴行の回数や武器の使用の有無など)
- 加害者と被害者の関係性(加害者への処罰感情など)
暴行罪は、被害者と加害者の間でトラブルが起こることによって起きるのがほとんどです。つまり暴行された被害者は、加害者への怒りの感情が大きいと考えたほうがよいです。それに加えて、暴行の回数が多く武器を使用して攻撃していたとなれば、被害者が加害者に対して抱く処罰感情はさらに大きくなる可能性があり、示談金は高い金額になります。
暴行罪で示談金の交渉を弁護士に依頼すべき理由は?
ここでは、暴行罪で示談金の交渉を弁護士に依頼すべき理由について解説します。
弁護士に依頼することで、示談に応じてもらえる
暴行された被害者は、加害者と直接やり取りをするのを拒む場合が多いです。自分に暴力を振るってきた相手と関わりたくないという感情は自然ですし、何よりも恐怖心が大きな壁になります。そのため、原則として警察や検察は、加害者本人に被害者の連絡先を教えることはありません。
しかし、被害者が対話をしてくれないことには、示談交渉は進められません。弁護士に依頼すれば、被害者の警戒心は少し和らぐ可能性があります。被害者の同意を得て、連絡先を得られる可能性が高くなります。
まずは示談交渉の場を作ることが大切なので、弁護士にきっかけを作ってもらいましょう。
示談交渉がスムーズに進む可能性がある
暴行事件は、被害者の加害者に対する感情が良くないため、第三者である弁護士が間に入ったほうが事はスムーズに進みます。
被害者の加害者に対する悪印象を増幅させないように、弁護士は上手く立ち回れます。示談を成立させるには、被害者と冷静に話し合う場を整えなければいけません。
示談金の減額交渉ができる場合がある
被害者は、暴行を受けたという怒りにまかせて相場よりも高い示談金の金額を要求してくる可能性があります。その場合、暴行事件を多く手がけてきた弁護士であれば、減額交渉ができる場合があります。
減額交渉はテクニックが必要です。減額交渉をしたことで、相手に反省していないのではと不信感を抱かれたら元も子もありません。被害者に相場以上の金額を提示されていると感じたら、迷わずに弁護士に依頼したほうがよいでしょう。
暴行事件の示談交渉を弁護士に依頼した後、示談金を支払うまでの流れ
ここでは、暴行事件の示談交渉を弁護士に依頼した後、示談金を支払うまでの流れについて解説します。
被害者に示談交渉を申し出る
まずは被害者に対して、示談交渉をしたい旨を申し出ます。その際は、反省と謝罪の弁を述べることを忘れずにしましょう。相手の意向を真摯に受け止め、しかるべき金額で示談成立を目指します。
示談書を取り交わす
被害者との間で示談交渉が成立したら、示談書を取り交わします。示談書は示談金の額などを確定する重要な合意書なので、被害者との合意内容に応じて以下の条項を盛り込みましょう。
謝罪条項
被害者に反省している気持ちを分かってもらうために、示談書の最初に記載するとよいです。
示談金の支払いに関する条項
示談金の金額と支払い方法を明記します。
宥恕条項
宥恕(ゆうじょ)とは許すという意味ですので、宥恕条項が示談書に盛り込まれることで、被害者が加害者をこれ以上罰する考えはないととらえてもらえます。宥恕条項があることで、不起訴処分になったり、減刑されたりする可能性が高いです。
接触禁止条項
加害者は二度と被害者に接触しないと約束する条項です。被害者感情に寄り添い、不安を払拭するための条項です。
誓約条項
加害者側は二度と暴力を振るわない、被害者側は被害届を出さないと約束する条項です。
清算条項
示談書で決定したこと以外に請求や債務がないことを記載する条項です。示談成立後に被害者から弁償が終わっていないと言われないための条項です。
秘密保持条項
暴行事件に関して、第三者に口外しないことを約束する条項です。
示談金を支払う
示談が成立し、示談書が交わされたら、加害者は被害者に対して示談金を支払います。
まとめ
日常生活のイライラやストレスを発端にして、暴行事件を起こす人は珍しくありません。お酒に酔ってトラブルに巻き込まれることもあるでしょう。運が悪ければ、見知らぬ人からけんかを売られてしまうこともあります。
しかし、どんな状況でも先に手を出してしまったら負けです。カッとなっても、その瞬間に大切な人を思い浮かべて、こぶしを引っ込めるようにしましょう。
それでも我慢できずに暴力をふるってしまったら、迷わず弁護士に相談することをおすすめします。事件を起こしてしまったら、被害者への謝罪を迅速に行わなければいけません。暴行事件を多数手がけている弁護士であれば、どのような方法を取ればいいか、的確なアドバイスができます。
ネクスパート法律事務所には、示談交渉を含む暴行事件の弁護活動の実績が豊富な弁護士が多数在籍しております。お困りの方は当事務所にご相談ください。