共犯とは|正犯や従犯や共同正犯との違いと共犯事件の特徴

共犯と聞くと、複数人で積極的に悪事に加担するイメージがあるかもしれません。

刑事事件では、犯罪の実行以外にも、共謀(計画)をした人、そそのかした人、犯罪を手助けした人は共犯として扱われます。

この記事では、刑事事件の共犯について、次の点をわかりやすく解説します。

  • 共犯と共犯の種類
  • 正犯、従犯などの違い
  • 共犯事件の特徴や刑事処分の判断基準

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共犯とは

共犯とは、二人以上の者が、犯罪の実現に関与することです。

一般的な意味合いとしては、複数人が不法行為や不正に関与することを言います。

刑事事件の共犯には、色々種類があります。

必要的共犯 二人以上の行為者が共同して罪を犯すことを要件としている犯罪のこと
任意的共犯 単独で成立する犯罪を二人以上の行為者で実現する場合

犯罪を構成する要件の中で、二人以上が罪を犯さなければ、犯罪として成立しない必要的共犯と、一人でも成立する犯罪を二人以上で行う任意的共犯があります。

例えば、賄賂を贈った側を処罰する贈賄罪と、賄賂を受け取った側を処罰する収賄罪は、必要的共犯です。

同様に、革命やクーデターなどを暴力的に実行した際に成立する内乱罪も、大勢で暴行や脅迫を行う騒乱罪も、複数人が関与することで成立します。

一方、任意的共犯は、二人以上で特殊詐欺や強盗などを行った場合です。

共犯と聞いて連想するのは、この任意的共犯でしょう。

共犯と似た言葉の違い

共犯以外にも、正犯、従犯など似た言葉があります。わかりやすく解説します。

正犯

正犯とは、自ら犯罪を実行する者のことです。

一方、共犯とは、犯罪を実行するように仕向け(教唆)たり、実行しやすいように手助け(幇助)したりした人のことです。

従犯

従犯とは、正犯を幇助(ほうじょ)した者のことです。

後述しますが、犯罪実行の手助けをした幇助犯は、従犯として扱われます。

従犯の場合、正犯の刑罰を減軽した罰が言い渡されます。

(幇ほう助)

第六十二条正犯を幇ほう助した者は、従犯とする。

2従犯を教唆した者には、従犯の刑を科する。

(従犯減軽)

第六十三条従犯の刑は、正犯の刑を減軽する。

引用:刑法第62条、63条|e-Gov

任意的共犯の種類

単独犯でも成立する犯罪を、二人以上で実現した場合、任意的共犯となります。

しかし、任意的共犯であっても、共犯者がどの程度の役割を担ったのかなどによっても、刑事処分が異なります。

ここでは、任意的共犯の種類を解説します。

共同正犯

共同正犯とは、犯罪を共同で実行した者のことです。

共同正犯のイメージでわかりやすいのは、二人以上の人間で積極的に犯罪を実行(全員が同等に罪を犯す)したケースでしょう。

しかし、二人以上の人間が犯罪を共謀(計画)し、その共謀を実現させた場合も、共同正犯の一種として扱われます。

共同正犯の種類
実行共同正犯 共犯者全員が犯罪を実行した場合
共謀共同正犯 共同に犯罪を実行するという意思のもと、複数人が共謀を行い、一部が犯罪行為を実行した場合

例えば、AとBが被害者を殴った場合は、AとBが共同正犯となります。

一方、AとBが被害者を殴ってけがを負わせようと計画し、その計画にもとづいて、Aだけが被害者を殴り、犯罪行為を実行した場合も、AとBは共謀共同正犯という共同正犯の一種となり、Bも正犯として扱われます。

犯罪の計画をし、それを実行したのが一部の人間であっても、計画に参加した人は、実行者と同等の罪に問われる可能性があります。

(共同正犯)

第六十条二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。

引用:刑法第60条|e-Gov

教唆犯

教唆犯とは、人をそそのかし、犯罪を実行させた者のことです。

教唆は、他人に犯罪行為を決意させるだけではなく、それに基づき、他人が実際に犯罪を実行した場合に成立します。

例えば、前述の例で考えます。

A 被害者を殴るようにとBとCをそそのかす 教唆犯
B Aにそそのかされて被害者を殴る 犯罪を実行した共同正犯
C 犯罪を実行した共同正犯

教唆の方法については、法律上で定められていません。

例えば、○○を殴れと指示することから、他人に暴行を依頼する行為、暴行をするように誘導する行為、金銭を支払って暴行させる行為も教唆にあたります。

自分の犯罪として計画に関わった場合は、共同正犯が成立しますし、実務上でも教唆ではなく、共同正犯として扱われることが多いです。

教唆犯であっても、正犯と同じ刑罰を受けることになります。

(教唆)

第六十一条人を教唆して犯罪を実行させた者には、正犯の刑を科する。

引用:刑法第61条|e-Gov

法律上、教唆犯は正犯となりますが、実際の裁判では、正犯よりも軽い処分となる傾向があります。

幇助犯

幇助犯とは、直接犯罪を実行する以外の方法で、正犯が犯罪を実行する手助けをすることです。

正犯の犯罪を手助けするだけでなく、正犯が犯罪を実行した場合に、手助けした者が幇助犯となります。前述の例で考えます。

A 被害者にケガをさせるようにBとCをそそのかす 教唆犯
B Aにそそのかされて被害者をバットで殴る 犯罪を実行した共同正犯
C 犯罪を実行した共同正犯
D バットを準備して犯罪行為を手助けする 幇助犯

幇助の方法についても、法律上特に制限されていません。

例えば、凶器の準備や逃走の手助けなどの物理的なものから、心理的に励ます精神的な方法であっても、幇助行為となります。

知人の犯罪行為を黙認することも、不作為の幇助が成立します。

教唆も幇助も、犯罪を手助けしているので同じだと思うかもしれません。

教唆犯の場合は、犯罪の実行を決意させる点、幇助犯は犯罪の実行を促進にさせた点が異なります。

幇助犯は前述のとおり、従犯として扱われ、正犯よりも減軽された刑罰が科されます。

共犯としても、共同正犯なのか、共謀共同正犯なのか、教唆なのか、幇助なのかによって、刑事処分が異なります。

共同正犯はもちろん、共謀共同正犯も正犯と同じ罰が科されます。

検察が共謀共同正犯だと主張する場合、弁護士が教唆や幇助に過ぎないとして刑罰が軽くなるよう主張することがあります。

共犯事件になりやすい犯罪

ここでは、共犯事件になりやすい犯罪を紹介します。

法務省によると、20歳以上の者のみによる事件の共犯率は12.5%、一方20歳未満のみによる事件の共犯率は26.9%と、少年事件は共犯率が高い傾向にあります。

参考:令和5年版 犯罪白書 第3編 少年非行の動向と非行少年の処遇 共犯事件|法務省

詐欺

共犯事件になりやすい犯罪は、詐欺罪です。単独正犯が、結婚詐欺などを働くケースもありますが、近年は組織的詐欺が横行しています。

特殊詐欺の場合は、かけ子や受け子、出し子、場合によっては見張り役や運搬役、荷物の受け取り役、勧誘役などがあります。

前述の統計によると、少年の詐欺事件の共犯率は75.9%と最も共犯率の高い割合でした。

組織的詐欺に関与した場合は、その組織の中の役割や、どの程度の利益を受けたのかによって刑事処分が異なります。

強盗や恐喝

強盗罪や恐喝罪も、共犯事件になりやすい犯罪です。

強盗や恐喝の場合は、被害者を脅して、金品を奪う犯罪であるため、複数人で計画して関与することが考えられます。

前述の統計によると、少年事件で共犯率の高い犯罪も、強盗罪と恐喝罪でした。強盗罪の共犯率は65.3%、恐喝罪の共犯率は47.8%です。

強盗や恐喝も詐欺と同様に、逮捕された人の役割によって、刑事処分の重さが異なります。

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共犯事件の特徴

共犯事件は、刑事手続きなどにおいて、単独犯と異なる特徴があります。ここでは、共犯事件の特徴やリスクを解説します。

逮捕や勾留されやすい

共犯事件は、単独犯と異なり、逮捕や勾留されやすい可能性があります。

罪を犯した場合、逮捕されるのが当然と思うかもしれませんが、逮捕や勾留は次の要件を満たさなければ行われません。

逮捕の要件(刑事訴訟法第199条刑事訴訟規則第143条の3 被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある
逃亡や証拠隠滅をするおそれがある
勾留の要件(刑事訴訟法第60条 被告人や被疑者が定まった住居を有しないとき
被告人や被疑者が証拠を隠滅すると疑うに足る相当な理由があるとき
被告人や被疑者が逃亡すると疑うに足る相当な理由があるとき

法務省によると、2022年の刑法犯の逮捕率は34.3%でした。6~7割ほどは逮捕されていないことになります。

もちろん、逮捕されなかったとしても、在宅事件として捜査が行われ、起訴(刑事裁判)されることもあります。

共犯事件の場合は、逮捕された人(被疑者)のほかにも犯罪に関与した人がいるため、証拠隠滅などを指示する恐れがあるとして、逮捕や勾留が行われやすい傾向にあります。

参考:令和5年版 犯罪白書 第2章 検察 第3節 被疑者の逮捕と勾留|法務省

勾留が長期化しやすい

共犯事件の場合は、勾留が長期化しやすいことが考えられます。

勾留とは、逃亡や証拠隠滅防止のため、一定期間警察の留置場に身柄を拘束することです。

起訴前の勾留 法律上10~20日間
起訴後の勾留 2か月で必要なら1か月更新

重大事件の場合、更新に制限なし

起訴前の勾留は、期限が定められており、勾留期間満了までに、検察は起訴か不起訴かを判断します。

しかし、組織的詐欺などの共犯事件で、被害者が複数いて、余罪が多数ある場合は、余罪で再逮捕や再勾留が行われる可能性があります。

起訴後の勾留についても、保釈が認められない限り勾留が続き、場合によっては裁判が終わるまで勾留が続くおそれもあります。

特に共犯事件の場合は、共犯者と証拠隠滅などのおそれがあるとして、保釈が認められないことも考えられます。

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接見禁止処分が下されやすい

一般の事件では、警察の留置場に勾留されても、家族や知人などとの接見(面会)は制限されません。

しかし、共犯事件の場合は、事件の関係者などが接見に来て、証拠隠滅や口裏合わせなどを行うおそれがあることから、接見禁止処分が下されやすい傾向があります。

接見禁止処分が下されると、弁護士以外との接見は全て禁止されることになります

長期の勾留に、厳しい取り調べが行われ、その上家族や友人にも会えなくなるため、精神的につらい時期を過ごすことになります。

弁護士に依頼することで、この接見禁止の一部を解除してもらい、家族だけでも接見できるようにしてもらえる可能性があります。

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示談が難しい

共犯事件の場合、示談が難しいケースもあります。示談とは、被害者に謝罪や反省を示して、示談金を支払い、許しを得ることです。

示談が成立することで、被疑者や被告人は、被害の回復に努めたとして、刑事処分が軽くなる可能性があります。

被害者がいる犯罪では示談を行うことが重要です。

しかし、複数人が関与した事件では、被害者も恐怖心を抱いて、示談に応じてもらえないケースがあります。

被害者の心情に配慮して示談を行う必要があるほか、被害の弁償についても、共犯者間の負担割合など、民法の知識が求められます。

そのため、刑事事件の示談は、弁護士に依頼することが一般的です。

連帯して民事的責任を負う

犯罪を行い、被害者にケガや金銭的な損失を負わせた場合、逮捕や刑事罰が科されるなどの刑事上の責任を負います。

それとは別に、被害者の権利を侵害し、損失を与えた場合、加害者は被害者の損害を賠償する民事上の責任を負います。

刑事事件で、示談が成立しない限り、民事上の責任は残ります。

共犯事件の場合は、事件の共犯者各人が連帯で賠償責任を負うことになります。

(共同不法行為者の責任)

第七百十九条 数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。

2 行為者を教唆した者及び幇ほう助した者は、共同行為者とみなして、前項の規定を適用する。

引用:民法第179条|e-Gov

そのため、共犯者の間で、責任の割合に応じて賠償することになります。

共犯事件の量刑で考慮される事情

前述のとおり、共犯であっても、共同正犯なのか、従犯なのかによって、言い渡される量刑は異なります。

ここでは、共犯事件の量刑で考慮される事情を解説します。

刑事事件で考慮される事情

刑事事件は、犯情と一般情状の二つを考慮して、量刑が決定されます。

犯情 犯行の内容や悪質性、動機や計画性
犯行の結果の重大性や被害の程度
一般情状 被害者の処罰感情、示談や被害賠償の有無
被告人の反省の程度
被告人の性格や経歴、一身上の事情
被告人の前科前歴の有無や常習性、余罪
犯行後の生活状況や、再犯防止策の有無、更生の可能性 など

例えば、窃盗罪の刑罰は10年以下の懲役、または50万円以下の罰金ですが、懲役となる場合、一律で10年が科されるわけではありません。

量刑を決定する際は、まず犯情に応じた量刑の大枠を決定し、一般情状を考慮して、事案に合わせた量刑を調整します。

他にも、同種の事案や過去の処分の傾向などを加味して、量刑が判断されます。

共犯者間の均衡として考慮される事情

共犯事件の場合は、前述した事情の他に、次の点が考慮されます。

  • 共犯者間の関係
  • 主導的か従犯的か
  • 共犯者の間の役割や実行行為
  • 利益の大きさ

実際に犯罪を実現した実行役や、犯罪の共謀者や主導した主犯格の罪が最も重くなるのが一般的です。

共犯についてよくある質問

共犯で黙秘した方が罪が重くなる?

共犯事件の場合、黙秘をすることで罪が重くなるという法律はありません。

しかし、素直に取り調べに応じて、反省を示すことで、量刑判断の際に考慮される事情となります。

知人の犯罪を止めずに見ていたら罪になる?

知人が罪を犯すことを止めずに黙認していた場合、不作為による幇助犯が成立する可能性があります。

しかし、自分が知人の犯罪を防止する義務があるかどうかや、黙認したことで犯罪の実行を手助けしたと言えるのかどうかなどの状況にもよります。

まとめ

共犯は、二人以上で犯罪に関与することです。

組織的詐欺などの場合には、組織における立ち位置や担ってきた役割によっては、重い処分が科される可能性があります。

自分では犯罪に関与していないと思っていても、場合によっては共同正犯や教唆や幇助に問われるおそれがあります。

また、共犯は単独犯と異なり、拘束期間が長期化しやすい、接見禁止がつきやすいなどのリスクがあります。

もし犯罪に関与してしまい、共犯や教唆、幇助を疑われるおそれがある場合は、早期に弁護士に相談し、適切なサポートを受けるようにしましょう。

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