収賄とは?贈賄との違いや刑罰・成立要件をわかりやすく解説
収賄(しゅうわい)とは、公務員が職務に関して、金銭や物品、接待や便宜などの賄賂(わいろ)を受け取ること(※要求・約束を含む)により成立し得る犯罪です(刑法197条)。
「どこからが収賄罪で逮捕されるラインなのか?」「会社員でも収賄罪は成立するのか?」など、正確な基準が分かりにくいと感じる人は少なくありません。
この記事では、収賄の定義や贈賄(ぞうわい)との違い、逮捕された場合の流れについて、刑事事件を豊富に扱う法律事務所がわかりやすく解説します。
| 【この記事でわかること】 収賄と贈賄の違い:誰が処罰されるのかを簡単解説 収賄の成立ライン:金銭・物品・接待・便宜はどこから違法? 逮捕後の流れ:刑罰の重さと弁護士対応フロー 企業の防止策:組織を守るリスク管理と具体的な対策例 |
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もし収賄の疑いがある場合には、初動対応が重要です。
刑事事件に強い弁護士に早めに相談することが推奨されます。
0120-949-231
目次
収賄とは?|簡単にわかる法律上の定義
収賄とは、公務員が職務に関連して、金銭や物品、接待、便宜、地位やサービスなどの賄賂を受け取る(収受)ほか、要求したり約束したりすることで成立し得る犯罪です(刑法197条)。
重要なのは、単なる贈答ではなく「職務上の便宜や不正な利益と引き換えに受け取る報酬」であることです。
賄賂とは?|現金・物品・接待も含まれる不正報酬

賄賂とは、公務員の職務に対する対価としての不正な報酬をいい、現金や物品に限らず、接待や高額飲食、就職の斡旋、地位の提供など、人の需要・欲望を満たす利益も含まれると解されています。
有形・無形を問わず、形に残らないサービスでも賄賂と評価され得ます。職務との関係が明確で、対価性が認められる場合には、収賄罪が成立する可能性があります。
受け取る側と渡す側の違い|収賄罪と贈賄罪の対象
収賄と贈賄は、渡す側と受け取る側が対応する関係にあり、実務上もセットで問題になることが多いです。
- 受け取る側 → 収賄罪(公務員・みなし公務員が対象)
- 渡す側 → 贈賄罪(会社員・経営者など一般人が対象)
受け取る側・渡す側の区別を間違えると、誰が処罰されるか誤解しやすいので注意が必要です。
初心者向け解説|収賄をサッカーの例で理解する
法律用語は難しいため、サッカーの試合に例えて解説します。

【イメージ例】
たとえば、あなたがサッカーの審判(公務員)で、あるチームの選手から「判定を甘くしたら100万円あげる」と言われ、そのお金を受け取った場合、これが収賄です。
現金だけでなく、接待や高額品でも同じ構図で収賄罪が成立します。
【よくある誤解】
→「友人として食事を奢られただけでは収賄にならない?」 その友人が職務と無関係であれば、一般的には収賄の問題になりにくいでしょう。
しかし、その友人が「あなたの担当する許認可が必要な業者だった」場合、ただの食事でも収賄になる可能性があります。
収賄罪の立法趣旨
公務員は、公平・公正に仕事をする義務があります。
もし、お金を払った人だけが有利になる社会になれば、行政への社会的信用は大きく損なわれます。
そのため法律は、収賄罪で以下の保護法益を守っています。
- 職務の公正性:行政が公平に行われているという事実
- 社会からの信頼:公務員の職務に対する国民の信頼
収賄と贈賄の違いを図解で解説|誰が処罰されるのか
収賄と贈賄は、法律上密接に関係する犯罪ですが、「誰が行為をしたか」「どの立場か」で罪名が明確に分かれます。
この違いを理解していないと、「収賄になるのか、贈賄になるのか」「渡す側・受け取る側のどちらが処罰されるのか」を誤解しやすいです。
収賄と贈賄の法律上の違い一覧表
立場によって罪名が異なります。
| 罪名 | 主体(誰が?) | 行為(何をした?) | 刑法 |
|---|---|---|---|
| 収賄罪 | 公務員 | 賄賂を受け取る・要求する | 197条など |
| 贈賄罪 | 一般人(業者など) | 賄賂を渡す・申し込む | 198条 |
図解:収賄と贈賄の違いを一目で理解
収賄と贈賄の違いは、次のように整理できます。
- 収賄:公務員が職務に関して金品や便宜を受け取る
- 贈賄:会社員や業者が公務員に金品や便宜を渡す
- 職務との関連性がある場合のみ犯罪が成立
この関係を図解すると、「誰が」「何をしたか」が一目でわかります。

収賄罪の成立要件|お金・物品・接待・便宜のライン
「どのラインから収賄罪が成立するのか?」を正しく理解するために、以下の4つの要素が揃っているかを確認する必要があります。
これが揃えば、金額の多寡に関わらず逮捕される可能性があります。
①収賄の主体|誰が罪に問われるか
原則として公務員です。
- 国家公務員・地方公務員:市役所職員、警察官、省庁職員など。
- みなし公務員:公務員ではないが、法令により公務に従事するとみなされる人(例:国立大学法人職員、日本年金機構職員、日本銀行職員、駐車監視員など)。
②収賄罪の対象物|現金・接待・サービスも含まれる
賄賂とは、公務員の職務に対する対価としての不正な報酬を指します。
現金や物品(財物)に限らず、人の需要・欲望を満たす一切の利益が含まれます。
つまり、これらも広く賄賂に含まれます。
- 現金、商品券、車、家
- ゴルフや旅行への招待、飲食接待
- 異性間の情交
- 就職の斡旋、地位の提供、名誉職への推薦など
③収賄対象の職務|職務権限と密接関連行為
賄賂が「その人の職務に関すること」である必要があります。
- 職務権限内:自分が担当する許認可、契約、指導など。
- 密接関連行為:直接の担当でなくても、影響力を及ぼせる範囲も含まれることがあります。
④収賄行為の具体例|受け取り・要求・約束の範囲
以下のいずれかがあれば成立します。
必ずしも、実際に受け取っていることが必要になるわけではありません。
- 収受(しゅうじゅ):実際に受け取ること。
- 要求(ようきゅう):「お金をくれ」と催促すること(受け取っていなくても成立)。
- 約束(やくそく):「今度払うよ」「分かった」と合意すること。
収賄の種類とケース|単純収賄・受託収賄・あっせん収賄など
収賄にはいくつかのパターンがあり、悪質性によって刑の重さが変わります。
| 種類 | 条文 | 法定刑 | 典型的行為例 |
|---|---|---|---|
| 単純収賄 | 197条1項前段 | 5年以下の拘禁刑 | 職務に関して賄賂を受領 |
| 受託収賄 | 197条1項後段 | 7年以下の拘禁刑 | 「便宜を図って」と頼まれて賄賂を受領 |
| 事前収賄 | 197条2項 | 5年以下の拘禁刑 | 公務員になる前に便宜を約束し、賄賂を受領 |
| 第三者供賄 | 197条の2 | 5年以下の拘禁刑 | 自分ではなく第三者に賄賂を渡させる |
| あっせん収賄 | 197条の4 | 5年以下の拘禁刑 | 他の公務員に口利きをして賄賂を受領 |
単純収賄|職務に関する賄賂受領
単純収賄は、職務に関して賄賂を受け取る典型的な形です。
【事例】
建設課の職員が、特定の業者に工事を発注する謝礼として現金100万円を受け取った。
受託収賄|請託を伴う賄賂受領
受託収賄は、賄賂を受け取るだけでなく、「一定の行為をしてくれ」という請託(頼み事)を受けた場合に成立します。
【事例】
「入札価格をこっそり教えてくれ」と頼まれ、承諾して車をもらった。
事前収賄・事後収賄
- 事前収賄:公務員になる前に、職務就任後に特定の便宜を図ることを約束して賄賂を受け取った場合、公務員になった際に成立します。
- 事後収賄:在職中の不正行為の謝礼を、退職後(公務員でなくなった後)に受け取った場合に成立します。
第三者供賄|自分以外に渡させても罪になる
第三者供賄は、公務員が職務に関して不正な頼み事(請託)を受けたうえで、賄賂を自分ではなく第三者に渡させた場合に成立します。
ここでの第三者とは、家族、知人、自分が関与する別団体などを指します。
「自分は手を触れていないから無罪」という言い逃れは通用しません。
【事例】
建設担当の職員が、業者から便宜を図るよう頼まれ、その見返りとして自分の妻の銀行口座に現金を振り込ませた。
あっせん収賄|他の公務員を介した賄賂
あっせん収賄は、自分の権限ではなく、同僚や上司・部下など他の公務員に口利きをして便宜を図らせ、その見返りを受け取ることです。
【事例】
議員が、知人の業者のために担当省庁の官僚へ圧力をかけ、その報酬を受け取った。
収賄の違法ライン|実務で問題になりやすい行為
「挨拶代わりだから大丈夫」と思っていると、思わぬ収賄罪に問われる可能性があります。
ここでは、法律上の解釈や実務の運用例をもとに、どの行為から違法と判断されるのか(収賄の違法ライン)を具体的に解説します。
お祝い・餞別は収賄になる?|法律上の判断基準
入学祝い・餞別(せんべつ)・お中元といった名目であれば、何を受け取っても許されるわけではありません。
法律上の判断においては、名目ではなく実態が重視されます。
たとえ「お祝い」という名目であっても、職務との関係が明確で、対価性が認められれば、収賄罪が成立します。
接待・旅行・異性間の情交も収賄?|形に残らない利益の解釈
賄賂というと現金のイメージが強いですが、法律上の定義では、人の需要・欲望を満たすに足りる一切の利益と解釈されています。
そのため、形に残る物に限らず、以下のような形のない利益(サービス)もすべて賄賂に含まれます。
- 芸者やコンパニオンによる接待
- 高級クラブや料亭での高額な飲食
- ゴルフや旅行への招待
- 異性間の情交
- 就職の斡旋や地位の提供
「モノを貰わなければ大丈夫」「証拠が残らない接待なら平気」という認識は誤りであり、これらを受けただけで収賄罪が成立する可能性があります。
権限外の口利きも収賄?|あっせん収賄の判断基準
地方議員などが、自分の直接の権限ではない行政庁の仕事について口利き(あっせん)を行った場合でも、罪に問われることがあります(あっせん収賄罪)。
これは、議員としての地位に基づく影響力を利用して、他の公務員(担当職員など)に働きかけたかどうかが判断基準となります。
収賄で逮捕されたら?起訴までの流れと弁護士対応
収賄事件は、警察の捜査や社内調査によって突然発覚することがあります。
嫌疑をかけられた場合、初動対応の速さがその後の刑事処分(実刑か執行猶予か)を左右します。
ここでは、逮捕前から起訴後までの具体的な対応フローを段階別に解説します。
逮捕前の対応(任意聴取など)
捜査機関(警察・検察)が動き出した段階です。
- 証拠隠滅は厳禁:逆に逮捕の口実を与えてしまいます。
- 弁護士に相談:速やかに刑事事件に強い弁護士へ相談し、自首するか、あるいは事実無根を主張するか方針を決めます。
逮捕後の流れ
逮捕されると、最大23日間身柄を拘束される可能性があります。

逮捕後の接見・面会の権利と弁護士対応
逮捕直後の72時間は、手続きの関係上、原則として家族であっても被疑者本人との面会はできません。
さらに、収賄事件では共犯者との口裏合わせを防ぐため、勾留後も家族との面会を一切禁止する接見禁止処分が付く可能性があります。
しかし、弁護士であれば接見禁止中であっても、原則として、立会人なしで面会が可能です。
取調べでの注意点|供述調書への署名・押印
誘導尋問に乗らないよう、弁護士のアドバイスに従って供述調書へのサインを慎重に行います。
起訴後の戦略
日本の刑事裁判は、起訴されると有罪となる割合が非常に高いと言われています。
弁護士は、 実刑(刑務所行き)を避けるため、反省の態度、被害弁済(賄賂の返還など)、再犯防止策を裁判官に示します。
会社・組織の防止策|収賄・贈賄リスクを防ぐ具体例
収賄・贈賄事件が発生した場合、関与した個人の刑事責任はもちろんですが、企業や組織が負うダメージも計り知れません。
指名停止処分(公共工事などへの参加禁止)・社名の公表など、一度の不祥事が組織の存続を揺るがす事態となり得ます。
組織として以下の仕組みを構築することが不可欠です。
贈賄防止規程の策定
現場社員が判断に迷わないよう、明確な贈賄防止規程(ポリシー)を策定する必要があります。
公務員接触時の事前承認フローの徹底
公務員やみなし公務員と接触する際は、必ず事前にコンプライアンス部門や上長の決裁を仰ぐフローを義務付けます。
事後報告では手遅れになるリスクがあるためです。
実効性のある内部通報制度の整備
多くの汚職事件は、内部からの通報によって発覚しています。
不正の芽を早期に摘むためには、公益通報者保護法に基づいた通報窓口の設置が重要です。
匿名性の担保
「通報したら報復されるかもしれない」という恐怖心を取り除くため、匿名での通報を受け付けます。
社外窓口の設置
社内の人間関係を気にして通報できないケースに備え、法律事務所などの「外部窓口」を設置することで、制度の透明性と利用率を高めることができます。
収賄防止のための定期研修
「知らなかった」「相手に要求されたから断れなかった」という言い訳を防ぐには、継続的な教育が欠かせません。
法律の条文だけでなく、「どのような誘われ方をするか」「どこからが違法か」という具体的なケーススタディを用いた研修を年1回以上実施します。
収賄事件のリスクと弁護士相談の重要性まとめ

収賄事件は、個人の人生だけでなく、組織の社会的信用に重大な打撃を与えます。
「これくらいなら大丈夫」という認識が、重大なリスクにつながることがあります。
少しでも不安がある場合、または既に捜査の手が及んでいる可能性がある場合は、刑事事件の経験豊富な弁護士に相談することをおすすめします。
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