不倫相手に慰謝料を請求したものの、「支払えない」の一点張りで交渉が進まない、そもそも何の返答もない等の場合、裁判の二文字が頭をよぎることもあるでしょう。
裁判をしてでも責任を追及したいと思ったものの、日常生活にあまり縁がない裁判に対して漠然とした不安があり、なかなか一歩を踏み出せずにいませんか?
この記事では、不倫(不貞)慰謝料請求の裁判の流れやかかる費用、裁判をするメリット・デメリットなど、裁判を視野に入れているあなたに知ってほしいことをまとめています。
裁判をする前に確認すべきことや考えてほしいこともお伝えしますので、今後の参考にしていただければ幸いです。
目次
裁判をしたら不倫相手から慰謝料を回収できる?
裁判をしたからといって、必ずしも慰謝料を回収できるとは限りません。
そもそも慰謝料請求が認められる要件を満たしていなければ、裁判所に請求を退けられるでしょう。請求が認められても、不倫相手が無職で財産もない場合、回収するのは現実的に困難です。
せっかく裁判をしても、慰謝料を回収できなければ、裁判に費やした時間や労力がすべて無駄になります。闇雲に裁判へと駒を進めるのは賢明ではありません。
裁判で不倫相手に慰謝料を請求したいとお考えなら、事前に確認すべきことがあります。次章で詳しく解説しますので、ぜひご確認ください。
裁判で不倫相手に慰謝料を請求する前に確認すべき4つのこと
裁判で不倫相手に慰謝料を請求したいとお考えなら、事前に以下の4つのことを確認しましょう。

以下で、詳しく解説します。
慰謝料請求が認められる要件を満たしているか
慰謝料請求が認められる要件を満たしていますか?
以下の4つの要件をすべて満たしていないと、そもそも請求が認められません。
- 不倫(不貞行為)が開始した時点であなたと配偶者が婚姻関係にあった
- 不倫相手があなたの配偶者と肉体関係を持った
- 不倫(不貞行為)によって婚姻関係が破綻した
- 不倫相手があなたの配偶者が既婚者だと知っていた・知る余地があった
上記の要件を満たしていない場合は、裁判をしても請求を退けられる可能性が高いです。
裁判をする前に、この4つの要件をすべて満たしているか確認しましょう。
慰謝料請求の要件については「不倫の慰謝料請求できる4つの条件と慰謝料請求が難しい4つのケース」で詳しく解説しています。
不倫相手の氏名・住所が判明しているか
不倫相手の氏名・住所が判明していますか?
裁判をするには、基本的に相手方である不倫相手の氏名・住所が必要です。
不倫相手の氏名・住所がわからないと、裁判所が相手方を特定できませんし、訴状等の書面も送付できません。
もっとも、不倫相手の氏名・住所はわからないからといって諦める必要はありません。不倫相手の電話番号がわかる場合、弁護士に慰謝料請求を依頼すれば、弁護士会紹介制度を利用して不倫相手を特定できる可能性があります。
不倫相手の電話番号のみ判明している場合は、手続きの依頼を前提に弁護士に相談してみてください。
電話番号で不倫相手を特定する方法については「電話番号で不倫相手を特定する2つの方法と弁護士に依頼するメリット」をご参照ください。
不倫(不貞行為)を立証できる証拠があるか
不倫(不貞行為)を立証できる証拠がありますか?
裁判では、慰謝料を請求する側が不貞行為の事実を立証しなければなりません。
そのため、不倫相手があなたの配偶者と肉体関係を持ったことがわかる具体的な証拠を提示して、裁判官に不貞行為があったと認めてもらう必要があります。
以下のようなものは、不貞行為を立証する有力な証拠となり得ます。
- 肉体関係を持ったことがわかるLINEやメッセージのやり取り
- 裸や下着姿で同じ部屋にいることがわかる写真・動画
- ラブホテルに出入りすることがわかる写真・動画・ドライブレコーダーの記録
- ラブホテルの領収書
以下のようなものは不貞行為の証拠としては弱いですが、複数を組み合わせることで不貞行為を立証できるかもしれません。
- 愛情表現を含むLINEやメッセージのやり取り
- 頻繁に連絡を取り合っていることがわかる通話履歴
- 宿泊施設を利用したことがわかるクレジットカードの利用明細
- 不倫相手の自宅に出入りしたと思われるカーナビの履歴やドライブレコーダーの記録
不倫相手とあなたの配偶者が肉体関係を持ったことや、親密な関係にあることを匂わせるものを、できるだけ多く入手しておきましょう。
もっとも、不貞行為の証拠を集めるのは容易ではありません。あなたの行動によっては違法行為となる可能性もありますので、ご自身での証拠集めに限界を感じたら、探偵への調査依頼も視野に入れてもいいかもしれません。
不貞行為の証拠については、「浮気の証拠になるもの13選と自力で証拠を集めるポイント・注意点」で詳しく解説しています。
不倫相手に支払い能力があるか
不倫相手に支払い能力がありますか?
慰謝料はあなたが受けた精神的苦痛を金銭で評価したものですから、その金額を検討する際に不倫相手の資力は影響しません。しかし、たとえ裁判で慰謝料が認められても、不倫相手に支払い能力がなければ回収するのは難しいでしょう。
例えば、不倫相手が以下のケースに該当する場合は、裁判をしても慰謝料を回収できないかもしれません。
- 不倫相手が無職またはパート・アルバイト勤務で、安定した収入を得ていない
- まとまった金額の預貯金がなく、不動産や車等の換価できる財産も有していない
不倫相手に支払い能力がないことが判明しているなら、裁判をしても慰謝料を回収できない可能性があることを念頭においておきましょう。
不倫(不貞)慰謝料請求の裁判の流れ
不倫(不貞)慰謝料請求の裁判は、以下のような流れで進行します。

以下で、裁判の流れに沿って詳しく解説します。
裁判所に訴状を提出する
裁判を起こすためには、裁判所に訴状を提出する必要があります。
訴状とは、原告(あなた)が、被告(不倫相手)に対して、どのような内容を請求するのかを記載した書面です。
訴状には、一般的に以下のことを記載します。
- 表題(訴状)
- 訴状の作成年月日
- 訴状を提出する裁判所名
- 原告の住所等の連絡先・氏名押印
- 送達場所
- 被告の住所・氏名
- 事件名(損害賠償請求事件、慰謝料請求事件など)
- 訴訟物の価額(請求する慰謝料額)
- 貼用印紙額
- 請求の趣旨(被告に請求する内容)
- 請求の原因(請求の理由となる事実)
- 提出する証拠
- 附属書類(訴状の他に提出する書類)
訴状の記載に不備があれば、裁判所から補正の連絡が入りますので、裁判所の補正の指示に従いましょう。裁判所の補正の指示に従わない場合、内容の審理に入らずに訴えを退ける訴状却下の判断が下されることもあります。
訴状の記載に不備がなければ、裁判所から第1回口頭弁論期日を決めるための連絡が入ります。裁判所から候補日がいくつか提示されるため、事前に仕事や家庭の予定を確認しましょう。なお、裁判は、平日の日中に行われます。
訴状の作成方法については「不貞慰謝料請求の訴状の書き方|初めての人向け記入例と作成の注意点」で詳しく解説しています。
被告に訴状と期日呼出状が送達される
第1回口頭弁論期日が決まったら、被告に訴状と期日呼出状が送達されます。
被告は訴状を受け取ったら、原則として、指定された期日までに自らの言い分を記載した答弁書を作成し、裁判所に提出する必要があります。
被告が答弁書を提出したら、原告にも送付されますので、第1回口頭弁論期日までに内容を確認しておきましょう。
指定された口頭弁論期日に裁判所に出廷する
第1回口頭弁論期日は、代理人弁護士をつけた場合を除き、原告は出席する必要があります。
被告は、答弁書を提出していれば、第1回口頭弁論期日に限り欠席できます。
裁判所から和解案が提示される
複数回の期日を経て争点を整理し、双方の主張や証拠が出揃った段階で、裁判所から和解案が提示されることが多いです。
裁判所が提示した和解案に双方が合意すれば、和解成立により裁判は終了します。
指定された尋問期日に裁判所に出廷する
双方の主張や証拠が出揃った段階で、本人尋問・証人尋問を行う尋問期日が設定されることもあります。
尋問期日とは、当事者本人や証人が証言台に立ち、裁判官や双方の弁護士からの質問に答える期日で、争点となっている事実を明らかにすることを目的としています。
尋問期日が指定された場合、本人尋問であれば原告や被告本人が、証人尋問であれば証人が裁判所に出廷する必要があります。
判決が言い渡される
裁判所の心証が固まったら、最終的な判断である判決が言い渡されます。
判決の内容に不満がある場合は、判決が送付された日の翌日から2週間以内(控訴期間)であれば、上級裁判所に控訴できます。
原告・被告の双方が控訴しないまま控訴期間が経過すると、判決が確定します。
不倫(不貞)慰謝料請求の裁判にかかる費用
不倫(不貞)慰謝料請求の裁判にかかる費用は、主に以下の3つです。
- 手数料
- 書類を送るための郵便料
- 証人の旅費日当
以下で、詳しく解説します。
手数料
手数料がかかります。
手数料は、訴状に収入印紙を貼付して支払います。
手数料の金額は法律で決められており、被告に請求する金額により異なります。手数料の金額の一部を紹介しますので、参考にしてください。
| 請求額 | 手数料 |
|---|---|
| 10万円まで | 1,000円 |
| 50万円 | 5,000円 |
| 100万円 | 10,000円 |
| 160万円 | 13,000円 |
| 200万円 | 15,000円 |
| 300万円 | 20,000円 |
| 400万円 | 25,000円 |
| 500万円 | 30,000円 |
書類を送るための郵便料
書類を送るための郵便料がかかります。
郵便料は、郵便切手もしくは現金で支払います。
郵便料は裁判所によって異なるため、訴状を提出する裁判所に直接問い合わせるか、裁判所のホームページをご確認ください。
参考までに、東京地方裁判所に訴状を提出する場合の郵便料を紹介します。
| 郵便料 | 6,000円 |
|---|---|
| 内訳 | |
| 500円 | 8枚 |
| 110円 | 10枚 |
| 100円 | 5枚 |
| 50円 | 5枚 |
| 20円 | 5枚 |
| 10円 | 5枚 |
郵便切手で納付する場合、当事者が1名増すごとに、2,440円(内訳500円4枚、110円4枚)が加算されます。現金で納付する場合は追加額が異なるため、都度裁判所へ確認しましょう。
証人の旅費日当
証人の旅費日当がかかります。
証人の旅費日当とは、証人が裁判所に出廷するために必要な経費を補償するための費用です。
尋問期日に証人を呼んだ場合にかかる旅費日当や宿泊費は、当事者が負担する必要があります。
証人の旅費日当・宿泊費の金額は、法律で以下のとおり決められています。
- 旅費:1キロメートルにつき37円以内
- 日当:8,200円以内
- 宿泊料:東京都特別区、大阪市、名古屋市、横浜市、京都市、神戸市の場合は8,700円以内、その他の地域は7,800円以内
裁判で不倫相手に慰謝料を請求するメリット
裁判で不倫相手に慰謝料を請求する主なメリットは、以下の2つです。
- たとえ不倫相手が無視しても決着をつけられる
- 不倫相手が判決に従わない場合は強制執行できる
以下で、詳しく解説します。
たとえ不倫相手が無視しても決着をつけられる
たとえ不倫相手が無視しても決着をつけられます。
不倫相手が訴状を無視したとしても、裁判は予定通り行われます。不倫相手が答弁書を提出せず、第1回口頭弁論期日にも欠席した場合、あなたの言い分を認めたものとみなされます(民事訴訟法159条)。そのため、不倫相手が訴状を無視した場合、あなたの請求を全面的に認める判決が下される可能性が高いです。
裁判をすれば、たとえ不倫相手が無視しても裁判は進行し判決が下されるため、不倫問題に決着をつけられます。
不倫相手が判決に従わない場合は強制執行できる
不倫相手が判決に従わない場合は強制執行できます。
強制執行とは、勝訴判決を得たり、裁判上の和解が成立したりしたにもかかわらず、相手方がお金を支払わない場合に、相手方の財産を差し押さえて強制的にお金を回収する手続きです。
預貯金や不動産、車などの財産に加え、会社から支払われる給与等も差し押さえの対象となります。
裁判をして勝訴判決を得る、もしくは裁判上の和解が成立すれば強制執行できるため、不倫相手が判決に従わない場合もお金を回収できるかもしれません。
強制執行については、「裁判で決まった慰謝料を払わない場合どうすればいい?対処法を解説」で詳しく解説しています。
裁判で不倫相手に慰謝料を請求するデメリット
裁判で不倫相手に慰謝料を請求する主なデメリットは、以下の2つです。
- 解決までに時間がかかる
- 配偶者の不倫が周囲にバレる可能性がある
以下で、詳しく解説します。
解決までに時間がかかる
解決までに時間がかかるかもしれません。
裁判期日は、おおよそ1か月から1か月半に1度開かれるのが一般的です。
そのため、事実関係に争いが少なく和解が成立するケースでも半年程度、判決で終了するケースでは1年以上の月日を要することもあります。
弁護士をつけない場合、準備書面や証拠書類の作成・提出もご自身で対応しなければなりません。期日のたびに裁判所に出廷しなければならないため、仕事や家庭の予定との調整に頭を悩ませることも考えられます。
裁判をすると解決までに時間がかかる可能性が高いため、精神的・肉体的に負担がかかることを覚悟しておいた方が良いでしょう。
配偶者の不倫が周囲にバレる可能性がある
配偶者の不倫が周囲にバレる可能性があります。
不倫(不貞)慰謝料請求の裁判は、公開の法廷で行われるため、誰でも自由に裁判を傍聴できます。そのため、職場や近所の人、友人等の知り合いに、配偶者の不倫が原因で裁判をしていることを知られるかもしれません。
不倫に悪いイメージを抱いている人は多いため、不倫の事実がバレれば配偶者の社会的な信用は失われるでしょう。職場の人に知られた場合、左遷や降格の対象となるかもしれません。近所の人に知られれば、噂を流されて住みづらくなることも考えられます。
配偶者の不倫が周囲にバレる可能性があることも念頭において、裁判をするかどうか検討しましょう。
裁判で不倫相手に慰謝料を請求する前に考えて欲しいこと
裁判をするとなると、精神的にも時間的にも負担を強いられます。そのため、交渉の余地があるなら交渉で解決すべきです。
ご自身で慰謝料請求したものの無視された、交渉はしたが折り合いがつかない等のケースでも、弁護士が介入した途端に相手方の態度が急変して交渉に応じるケースは少なくありません。
「交渉では解決できない」と諦めて裁判を起こす前に、弁護士への相談を積極的に検討してみてください。
まとめ
時間と労力をかけて裁判をしても、必ず慰謝料を回収できるわけではありません。
ご自身での対応に限界を感じる場合でも、弁護士が介入することで一気に風向きが変わるケースは多いです。裁判をする前に弁護士に相談してみることをお勧めします。
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この記事の監修弁護士

はじめまして。ネクスパート法律事務所 東京オフィス弁護士の石田志寿です。
これまで家事事件をはじめ、不倫慰謝料や離婚など男女問題に特化した事件に携わってまいりました。その中でも、夫婦関係や不倫問題のご相談は、法律論だけでなくお気持ちへの配慮が重要となる分野だと強く感じております。
私が大切にしているのは、まずお話を丁寧に伺うことです。ご相談者様が抱えている不安や葛藤を正確に理解したうえで、法的に適切かつ現実的な解決策をご提案いたします。
「相談したら気持ちが落ち着いた」「話しやすかった」といったお声をいただくことも多く、心に寄り添う姿勢と、解決に向けた冷静な判断の両立を常に意識しております。
一人で抱え込まず、まずはお気軽にご相談ください。












