配偶者の不倫が原因で離婚に至った場合、精神的苦痛への賠償を求めて不倫相手への慰謝料請求を考える方も多いでしょう。当事者間での話し合いや調停で解決できない場合、裁判での解決を図ります。
今回は、裁判で慰謝料を請求する流れやメリット・デメリットについて紹介します。
目次
不倫(不貞)行為が原因で裁判になるケースとは?
ここでは、不倫(不貞)行為が原因で裁判になるケースについて説明します。
相手が話し合いに応じない
慰謝料について話し合いを持ちかけても相手が応じない場合や、調停をしても慰謝料の支払いを拒否している場合は、裁判を起こすことが有効です。
慰謝料の金額が合意できない
当事者間での話し合いや調停で慰謝料の金額や支払い方法について合意ができなかった場合、裁判を提起して裁判所に結論を委ねる方法があります。
不倫慰謝料を裁判で請求するメリットは?
ここでは、不倫(不貞)慰謝料を裁判で請求するメリットについて説明します。
話し合いをしても慰謝料の請求に応じない場合
相手と話し合いをしても慰謝料の請求に応じない、さらには話し合いにさえ応じず無視を続ける場合は、思い切って裁判をする方が早期に解決できることもあります。
裁判所から訴状が届くと、相手に対して本気度を示せるので、精神的なプレッシャーを与えられます。それまで不誠実な対応を貫いてきた相手側の態度が変わる可能性もあります。
裁判終了後、慰謝料を支払わなければ強制執行ができる
裁判所は中立的な立場で、当事者から話を聞き、提出された証拠をもとに適切に判断します。
慰謝料請求を認める判決が出れば、不倫相手は慰謝料を支払う義務を負い、慰謝料の支払い義務に応じない場合は、強制執行により回収できる可能性も高まります。
もっとも、不貞慰謝料請求の裁判では、判決まで進む前に和解が成立して終了するケースが多くあります。交渉では不貞相手との間で折り合いがつかない状況でも、裁判では最終的に判決を出す裁判官が間に入るため、交渉段階よりも和解が成立しやすくなります。
不倫慰謝料を裁判で請求するデメリットは?
ここでは、不倫(不貞)慰謝料を裁判で請求するデメリットについて説明します。
不倫(不貞)行為が公になる
不倫(不貞)慰謝料請求訴訟は、民事裁判で行われます。民事裁判は公開の法廷で行われるため、裁判所内に当事者の名前と事件名が張り出され、また裁判の記録は誰でも閲覧できます。
裁判所に来て事件名を目にする人が果たしているのか、当事者以外に裁判記録を閲覧する人がどのぐらいいるのかを考えると感じ方は人それぞれですが、気になる人にとってはデメリットかもしれません。
精神的・金銭的な負担がある
不倫(不貞)慰謝料請求の裁判は、1日で終わることはありません。1か月から1か月半ぐらいの間隔で裁判期日が設けられるため、すべて終わるまで1年以上かかることがあります。
その間、精神的に大きな負担を抱えることになりますし、弁護士に依頼すれば費用もかかります。
不倫(不貞)慰謝料を裁判で請求する手順は?
ここでは、不倫(不貞)慰謝料を裁判で請求する手順について説明します。
訴状提出
不倫(不貞)慰謝料請求訴訟は、以下のいずれかの裁判所に訴状を提出して提起します。
- 被告の住所地を管轄する裁判所
- 原告の住所地を管轄する裁判所
- 不倫(不貞)行為の行われた場所を管轄する裁判所
訴状には、相手の情報や不倫(不貞)行為の内容と、相手に慰謝料を請求する旨を記載します。裁判所は訴状に不備がなければ、原告(訴えた)側と第1回口頭弁論の期日について調整をします。弁護士が代理人についている場合は、裁判所と弁護士の間で調整がなされます。
訴状の送達
裁判所に訴状を提出すると、1週間ほどで裁判所から訴えを起こされた相手(被告)に対し、訴状と証拠が送付されます。この際に第1回口頭弁論期日の呼出状も送付されます。
被告は、決められた期日までに答弁書を提出しなければいけません。被告にも弁護士がついている場合は、被告代理人である弁護士が答弁書を作成するのが通常です。
裁判所へ出廷
第1回口頭弁論期日に裁判所へ出廷します。第2回以降は、原告、被告がそれぞれ主張したいことや相手方の言っていることに反論するなどのやり取りが続きます。
和解または尋問
当事者の主張と証拠がある程度揃うと、裁判所は和解を提案することが多いです。和解案に当事者双方が納得して同意すれば、裁判は終了します。和解は裁判所の判決と同様の効力があります。
和解が成立しない場合は、裁判所による証人尋問が行われ、当事者が出廷し裁判官と話をすることになります。
判決
証人尋問をすることで、裁判官から再度和解が提案されることもありますが、それでも和解が成立しない場合、裁判官が判決を言い渡します。判決で慰謝料の支払いが命じられ、その判決が確定すれば相手方は慰謝料の支払いを拒めません。
裁判にかかる期間と費用は?
裁判は、訴状を提出してから第1回口頭弁論が開かれるまで、概ね1か月ぐらい時間がかかります。その後は月1回程度のペースで弁論期日が指定されるので、判決が出るまで1年以上かかることがあります。
裁判を提起すると、裁判所に訴訟費用(印紙代)を支払わなければいけません。慰謝料の請求金額によって変わりますが、たとえば請求金額が100万円の場合は印紙代が10,000円かかります。裁判所からの連絡用の郵送代金として6,000円ほど郵便切手を収める必要もあります。もちろん弁護士に依頼すれば、弁護士報酬もかかります。
裁判を有利に進める方法は?
ここでは、裁判を有利に進める方法について説明します。
有効な証拠を複数集めておく
裁判を有利に進めるには、不倫の証拠を複数集めておくことが重要です。
相手が確実に不倫(不貞)行為をしていたことを立証するための証拠として代表的なものは、以下のとおりです。
- 相手と配偶者がラブホテルに出入りしている写真
- ラブホテルの領収書
- 不倫(不貞)行為が分かるメールやSNSの内容など
当事者の一方または両方が不倫(不貞)行為を認めた旨の録音音源も有効な証拠となることがあります。
陳述書を有効的に活用する
陳述書は、当事者から提出される証拠の一つであり、訴訟当事者や関係者などの言い分をまとめたものに本人が署名押印した書面です。慰謝料請求訴訟において原告が提出する陳述書には、おおむね下記のような事項を記載します。
- 婚姻期間や婚姻生活の状況
- 子どもの人数・年齢
- 夫婦の職業と収入
- 不倫(不貞)行為の態様や回数・期間
- 不倫(不貞)行為が発覚した経緯
- 不倫(不貞)行為が発覚した時の精神的苦痛の程度
- 交渉段階での相手の態度・反省の程度
- 夫婦で離婚について話し合った結果
- 裁判において相手にどのようなことを求めるのか
こうしたことを詳細にまとめ、丁寧に記載する必要があります。いいかげんな陳述書を提出すると裁判官への印象が悪くなり、主張したいことが正確に伝わらないおそれがあります。■不倫慰謝料請求訴訟(裁判)を弁護士に相談・依頼するメリットは?
ここでは、不倫慰謝料請求訴訟(裁判)を弁護士に相談・依頼するメリットを説明します。
不倫の証拠集めなど、優位に手続きを進められる
裁判を起こすには、複雑な事務手続きが必要となります。
裁判を優位に進めるためには、不倫の証拠集めなど時間と労力を使わなければいけません。離婚案件を数多く手がけてきた弁護士であれば、こうした手続きをスムーズに行うことができます。
不倫相手と顔を合わせたくない場合、弁護士が代理人として対応できる
弁護士は、訴訟当事者の代理人として裁判所に出廷できます。不倫相手と顔を合わせたくない場合など、精神的ストレスを避けられます。
離婚問題に精通している弁護士は、冷静なアドバイスができる
離婚問題に精通している弁護士であれば、あらゆるケースに柔軟な対応ができます。
不倫・離婚問題は感情のもつれから、話がまとまらないことが多くあります。そんな時に第三者の冷静な視点でアドバイスができる弁護士の存在は貴重です。
まとめ
配偶者の不倫相手が慰謝料請求に応じないなど、相手に誠実さが感じられない時は裁判をするのも一つの方法です。
ただし、裁判に勝つためには、それなりのテクニックが必要です。早い段階で弁護士に相談をして納得のできる判決が導き出せるようにしましょう。