配偶者に不貞行為をされた場合、配偶者と不貞相手に慰謝料を請求できます。
いずれか一方から全額を受け取ると、他方には請求できません。つまり、不貞行為の慰謝料は、原則として二重取りできません。ただし、例外的に二重取りができる場合もあります。
この記事では、不貞行為慰謝料の二重取りについて解説します。
目次
不貞行為慰謝料は原則として二重取りできない
ここでは、不貞行為の慰謝料は原則として二重取りできないことについて解説します。
前提|不貞行為慰謝料が請求できる条件とは?
不貞行為慰謝料が請求できるのは、下記の条件に当てはまるときです。
- 配偶者と不貞相手の間に肉体関係があった
- 夫婦関係が破綻していなかった
- 不貞行為によって夫婦関係が悪化した
- 配偶者が既婚者であることを不貞相手が知っていた
- 不貞相手の身元(名前、住所、電話番号、勤務先など)が分かっている
不貞行為慰謝料の二重取りはできないが、双方に請求できる
不貞行為の慰謝料は二重取りができませんが、配偶者と不貞相手の双方に全額請求できます。不貞行為は配偶者と不貞相手が2人で行った不法行為なので、両者は不真正連帯債務者の関係です。つまり、配偶者と不倫相手は連帯して慰謝料を全額支払う義務を負います。
ただし、どちらか一方から慰謝料を受け取った場合、もう一方には、すでに受け取った分の慰謝料を控除した金額しか請求できません。
例えば、総額100万円の慰謝料を請求するなら、配偶者と不貞相手の両方に100万円を請求できますが、配偶者から100万円、不貞相手からも100万円を受け取ることは二重取りになるのでできません。
不貞行為慰謝料の二重取りができる例外的なケースとは?
ここでは、不貞行為慰謝料の二重取りができる例外的なケースについて解説します。
裁判外における三者間の話し合いで合意した場合
裁判外で、配偶者および不貞相手と話し合いをし、双方が請求された慰謝料全額を支払うことに合意すれば、それぞれから慰謝料を受け取れます。
配偶者が支払った慰謝料が不貞行為によるものだけではない場合
配偶者と離婚する場合、離婚に伴う慰謝料が支払われることがあります。離婚の慰謝料は、次の二つに区分されます。
- 離婚によって被る精神的苦痛による損害賠償
- 離婚の原因なる個別の有責事項(DVや悪意の遺棄、婚姻生活の維持に協力しない、性交渉拒否など)により生じた精神的苦痛に対する損害賠償
配偶者に、DVなど不貞行為以外の有責行為があった場合、配偶者から受け取った離婚慰謝料のうち、DVに関する部分は、二重取りになりません。
ただし、配偶者から受け取った慰謝料の内訳が明確でなければ、配偶者から受け取った慰謝料の金額だけでは、不貞行為による精神的苦痛を慰謝するには足りないことを立証する必要があります。
不貞行為慰謝料を二重取りするとどんなリスクがある?
ここでは、不貞行為慰謝料を二重取りするとどんなリスクがあるのか、解説します。
不当利得として返還を求められる可能性がある
不貞行為の発覚後、配偶者と不貞相手が連絡を取っておらず、他方が慰謝料全額を支払ったことを知らずに、それぞれが任意に全額を支払った場合、後に二重取りが判明すると、配偶者や不貞相手から、払いすぎた部分が不当利得とみなされ返還を求められる可能性があります。
不当利得とは、法律上の原因がないのに他人の財産または労務によって受けた利益のことを指します。これによって他人に損失を及ぼしたら、得た利益の限度で返還しなければいけません。
二重取りを防ぐためにはどうすればいい?
不貞行為慰謝料の二重取りによって、不当利得返還請求される可能性を軽減するためには、不貞行為の慰謝料の相場を知っておくことが大切です。
不貞行為慰謝料の相場は、過去の判例や事例をもとに算定しますが、それぞれの事情によって適正額が異なります。
判例から導かれる一応の相場は、以下のとおりです。
- 不貞行為が原因で離婚・別居した場合は100万円から300万円程度
- 婚姻生活を継続することになった場合は数十万円から100万円程度
不貞行為慰謝料を二重取りしなくても多く受け取れることはある?
ここでは、不貞行為慰謝料の増額事由について解説します。
増額事由があれば相場より高い慰謝料を受け取れることがある
不貞行為慰謝料を二重取りしなくても、慰謝料増額に値する理由があれば、相場より高い慰謝料を受け取れることがあります。不貞行為は法律上、婚姻共同生活の維持という権利又は法的保護に値する利益を侵害する不法行為と定義づけられています。
被害者が大きな精神的苦痛を味わった場合や、婚姻共同生活の破綻による影響が大きいと判断される場合は、相場より高い慰謝料が受け取れる可能性があります。
不貞行為慰謝料の増額事由とは?
不貞行為慰謝料の増額事由として、代表的なものには、以下の事情が挙げられます。
不貞行為によって夫婦が離婚することになった
不貞行為が原因で離婚に至った場合は、離婚しない場合と比べて慰謝料が高額になる傾向があります。
婚姻期間が長い
婚姻期間が長いほど、配偶者の裏切りによる精神的苦痛が大きいと判断される傾向があります。
不貞行為があった期間や回数
不貞行為の期間が長かったり、回数が多かったりするほど受けた精神的苦痛は大きいと判断される傾向があります。
夫婦の間に子どもがいる場合
夫婦間に子どもがいる場合は、慰謝料が増額する傾向があります。
不貞相手が不貞行為を主導した場合
不貞相手が主導して不貞行為をした場合は、悪質性が高いと判断され、慰謝料が増額する傾向があります。
不貞相手が妊娠・出産した
不貞行為により不貞相手が妊娠や出産をした場合も、慰謝料を増額できる可能性があります。
このようなケースは、被害者にとって精神的苦痛が大きく、不貞相手が子の認知を要求すれば、養育費等の金銭を負担する義務が生じるなど婚姻生活へ与える影響が多大だからです。
二重取りにならずに不貞行為慰謝料を請求するには弁護士に相談を!
ここでは、二重取りにならずに不貞行為慰謝料を請求するために弁護士に相談するメリットについて解説します。
二重取りと言われないよう、適正な慰謝料を請求できる
不貞行為慰謝料を受け取る場合は、二重取りと言われないようにしなければいけません。二重取りを避けつつ、適正な慰謝料を獲得するには弁護士への依頼をおすすめします。
弁護士であれば二重取りと言われないよう、適正な慰謝料を請求できます。弁護士が間に入ることによって、相手方にも本気度を示せるので、慰謝料を早期に回収できる可能性があります。
不貞相手や配偶者との交渉を一任できる
不貞相手や配偶者と慰謝料の交渉をするのは、心理的に難しい面があります。直接顔を合わせたくないこともあるでしょう。当事者同士では、冷静に話し合いができず、建設的な結論がなかなか得られない可能性もあります。
弁護士に依頼すれば、こうした精神的負担が軽減でき、効率よく話し合いを進められます。
トラブルの火種を残さずに解決できる
不貞行為慰謝料の二重取りをしなくても、不貞相手に慰謝料を全額請求すると、後に配偶者に対して求償権を行使される可能性があります。
弁護士に依頼すれば、合意書に求償権放棄条項を記載するなど、トラブルの火種を残さずに解決できる可能性を高められます。
まとめ
配偶者に不貞行為をされ、精神的な苦痛を味わったのなら、それに見合う慰謝料を手に入れることはとても重要です。しかし、方法を間違えてしまうと、慰謝料の二重取りといわれてしまいます。配偶者の裏切りで傷ついた上に、さらなるトラブルに巻き込まれるのは、とても残念なことです。
そうならないためにも、不貞行為慰謝料の請求を考えたら、弁護士に相談をしましょう。
ネクスパート法律事務所には、不貞行為慰謝料の案件を多数手がけてきた弁護士が在籍しています。一人で悩まずにご相談ください。