サマリー
期間限定のキャンペーンでは、景品類への該当性、先着順でも懸賞規制が及ぶ場合があること、景品の在庫切れ時の表示、繰り返し実施する際の間隔が論点になります。SNSの友達登録とアンケートのみを条件とする企画は原則として景品規制の対象外ですが、同じ企画を短期間に繰り返すと有利誤認表示となるリスクがあり、先行する企画の終了後、少なくとも1か月程度の間隔を設けることが目安となります。
自社の商品やサービスの認知度向上、あるいは申込数の増加を狙い、期間限定のプレゼントや割引などのキャンペーンを実施する企業は少なくありません。しかし、期間限定キャンペーンを企画する際は、提供する利益が景品類に当たるか、先着順でも懸賞規制が及ぶか、景品の在庫不足時の告知がおとり広告にならないか、同じ企画を繰り返す場合にどの程度の間隔を空けるべきかといった様々な点を確認・検証する必要があります。
さらに、このような期間限定のキャンペーンを短い期間で何度も繰り返すと、不当景品類及び不当表示防止法(以下「景品表示法」といいます。)上の「有利誤認表示」とみなされ、行政処分の対象となるリスクが生じます。
キャンペーンの企画や広告表示において、どのような点に留意し、どのような対策を講じるべきかを実務的な観点から解説します。
LINE友達登録とアンケートによる懸賞企画における景品規制の該当性
顧客との接点を増やすために、SNSアカウントの友達登録や簡単なアンケート回答を条件とした懸賞企画がよく行われます。例えば、サービスの申込みを必要とせず、公式アカウントの友達登録とアンケート入力を条件に、抽選で旅行券などをプレゼントする企画です。
このような企画について景品表示法上の景品規制が適用されるかどうかを検討する場合、「取引付随性」があるかどうかが焦点となります。
景品表示法における「景品類」とは、顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品または役務の取引に付随して提供する経済上の利益を指します。この「取引付随性」について、消費者庁の「景品に関するQ&A」Q18によると、通常、SNSのアカウントの友達登録や「いいね」をする行為は、商品やサービスの購入に直ちにつながるものではないため、原則として取引付随性は認められないとされています。
消費者庁:景品に関するQ&A
ただし、懸賞への応募が購入につながる蓋然性が高い場合には、取引付随性が認められることがあります。具体的には、以下のような状況が挙げられます。
- 商品やサービスを購入しなければ応募できない場合
- 商品やサービスを購入することで、応募クイズの解答やヒントが分かり、企画への応募が容易になる場合
- 当選者が景品を受け取るために、事業者の店舗へ来店しなければならない場合
まとめると、サービスの申込みや来店などが条件となっておらず、単なる友達登録と簡単なアンケート入力のみを要件とする企画であれば、取引付随性は認められないと考えられます。そのため、提供する経済上の利益は「景品類」には該当せず、景品表示法上の景品規制の対象外となります。
(参考)
参考として、アンケート記入の労力に対する「仕事の報酬」に該当するかという観点も存在します。取引の相手方に提供する経済上の利益であっても、仕事の報酬等と認められるものは景品類の提供に当たりません。
しかし、アンケートの作業内容が簡単であるにもかかわらず、その報酬として高額な経済的利益を提供する場合は、仕事の報酬として不相応に過大であると評価されます。さらに、抽選によって提供の有無が分かれる形態は、仕事の報酬とは評価されません。
商品申込に付随する景品提供と懸賞規制の遵守事項
次に、特定のサービスや商品の申込みに伴い、期間限定で物品を無料提供するキャンペーンについて検討します。
このような企画が、景品表示法の規制対象外となる「値引き」や「附属品」に該当するかどうかが問題となります。
景品類等の指定の告示の運用基準では、実質的に同一の商品や役務を同じ対価で付加提供することを「増量値引き」と認め、これに該当する場合は景品類に含まれないとしています。例えば「スーツを一着購入するとスペアズボンが無料になる」「音楽CDを3枚購入するともう1枚贈呈される」といった事例です。「実質的に同一」であるかどうかは、一般消費者がそれを増量値引きと認識するかどうかという観点から厳格に判断されるため、容易に「実質的に同一」と判断することは危険です。
また、正常な商慣習に照らして、その商品や役務に通常附属すると認められる経済上の利益(附属品)に該当する場合も、景品類には含まれません。消費者庁のQ&AのQ51では、お弁当に付けられる割り箸や、内容物の保護に必要な容器包装が例示されています。よって、対象の物品が主たる役務の使用に不可欠なレベルとまでは認められない場合、附属品にも該当しないと判断されます。
消費者庁:景品に関するQ&A
増量値引きにも附属品にも該当しない場合、提供される物品は景品類としての要件を満たすため、景品表示法の適用を受けることになります。
ここで注意すべきは、キャンペーンの形式が「先着順」であっても「懸賞規制」が適用される場合がある点です。
すなわち、来店や申込みの先着順によって景品の提供相手を決める行為は、偶然性や優劣によるものではないため、共同懸賞や一般懸賞には該当せず「総付景品」の規制対象になると考えるのが通常かと思います。しかし、消費者庁の「景品に関するQ&A」のQ112では、購入者が申込時点において景品を受け取れるかどうかを知ることができず、偶然性によって景品の提供相手が決定されると認められるときは、「懸賞」とみなされることがあるとされています。ウェブサイトの場合は、申込み時に景品を受け取れるかどうか知ることができない場合が多いと思われることから、実際は「懸賞」と考えなくてはならないケースが多いと言えるでしょう。
消費者庁:景品に関するQ&A
懸賞規制が適用される場合、以下の2つの条件を遵守する必要があります。
- 最高額の制限
取引価額が5,000円未満の場合は取引価額の20倍まで、5,000円以上の場合は10万円が景品の最高額の上限となります。取引価額の算出においては、「通常行われる取引の価額のうち最低のもの」を基準とする必要があるため、複数のサービスプランが存在する場合は最も安価なプランの取引価額を参照し、景品の価額が上記基準内に収まっているかを検証しなければなりません。 - 総額の制限
懸賞に係る売上予定総額の2%以内に景品の総額を収める必要があります。この売上予定総額は、事前に客観的かつ合理的な方法(過去の同時期の申込実績や通常の申込者数など)に基づいて算出することが求められます。
景品提供におけるおとり広告告示と有利誤認表示の注意点
キャンペーン開始後に想定以上の申込みがあり、用意していた景品の在庫が早期に枯渇するリスクがある場合、告知の継続をめぐって景品表示法5条3号の「おとり広告に関する表示(おとり広告告示)」および景品表示法5条2号の「有利誤認表示」の該当性を検討する必要があります。
おとり広告告示の規制内容は、取引を行うための準備がなされていない場合や、供給量が著しく限定されているにもかかわらずその限定内容を明瞭に記載していない表示などを禁止しています。
ただし、この告示が対象とするのは「取引の申出に係る商品または役務」です。そのため、キャンペーンにおいて供給量が不足するおそれが生じているのが、売買の対象である主たる商品ではなく景品である場合、おとり広告の規制自体には直接抵触しないと考えられます。
しかし、おとり広告告示の対象外であっても、景品の内容や提供条件は顧客の判断に影響を与えるため、有利誤認表示(景品表示法5条2号)のリスクが残ります。十分な数量の景品が用意されているかのように表示しておきながら、実際にはほとんど提供できなかった場合、一般消費者に「取引条件が実際よりも著しく有利である」と誤認させるおそれがあるためです。
このような有利誤認表示を回避するためには、一般消費者が実態を正確に認識できるような表示対策を講じる必要があります。具体的には、以下の実務対応が有効です。
- 広告や告知の画面において、「先着〇〇名様限定」「在庫がなくなり次第終了」といった数量の限定性や、在庫切れ時の対応について、消費者が容易に認識できる位置および態様で明瞭に表示すること
- 景品の在庫が切れた場合には、対象となるキャンペーン広告や告知の掲載を直ちに停止する体制・仕組みを整えておくこと
期間限定キャンペーンを繰り返す際に必要なインターバル
同一内容のキャンペーンを短期間に何度も繰り返して実施する場合、「期間限定」という表示そのものが形骸化し、常態化していると評価されることで、有利誤認表示に該当するリスクが高まります。実際は常に割引や特典が得られる状態であるにもかかわらず、特定の期間だけ有利であるかのように示す行為は、消費者の合理的な選択を阻害するためです。
ただし、景品表示法や各種ガイドラインにおいて、同一キャンペーンを再実施するまでに空けるべき具体的な「インターバル期間」の数値が明文化されているわけではありません。所管官庁への照会においても、一律に具体的な期間を示すことはできず、客観的に消費者から見て連続性があると思われないような設定が必要であるとの見解が示されています。
そこで、実務上参考になるのは関連する指針です。
例えば、「将来の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示に対する執行方針」(令和2年12月25日消費者庁)は、セール終了後に比較対照価格で2週間以上販売した実績があれば、将来の販売価格を比較対照価格とする表示を不当表示として問題としないとしています。期間限定キャンペーンの繰り返しに直接当てはまるものではありませんが、「2週間」という期間は一つの参考になります。
消費者庁:「将来の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示に対する執行方針」
ただし、過去には、25日ほどの間隔が空いていても処分された例があるため、「2週間空けておけばよい」と考えるのはリスクがあります。これらの知見をまとめると、期間限定キャンペーンを繰り返す際の実務対応としては、先行するキャンペーンの終了後、少なくとも1か月程度のインターバル期間を設定することが目安となります。
ただし、この期間はあくまで一つの目安であり、キャンペーン内容等に応じて、個別具体的に検討していく必要があります。なお、提供する景品の種類や主たる対象役務の内容自体を変更した場合は、有利誤認表示の評価対象が変わるため、連続性の問題は生じにくくなります。
また、期間限定のキャンペーンにより、「〇〇円が今なら△△円」といった二重価格表示を行う場合は、過去の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示の問題にも留意する必要があります。詳しくは、以下の消費者庁のガイドラインをご参照ください。
まとめ・ご相談はネクスパート法律事務所へ
期間限定の割引・キャンペーンを企画・実施する際は、以下のような点を意識して実務を進める必要があります。
- SNSの友達登録やアンケートのみを条件とする企画は、原則として取引付随性がなく景品規制の対象外となるが、来店や購入が絡む場合は規制対象となり得る。
- 先着順の物品提供であっても、消費者が申込時点で景品の有無を確認できない場合は懸賞とみなされ、景品の最高額および総額の制限を受ける。
- 在庫切れのリスクがある中で告知を続ける場合は、有利誤認を避けるために数量限定の旨を明瞭に表示し、在庫が切れた後は速やかに広告を停止する。
- 同一内容のキャンペーンを繰り返す場合は、期間限定表示の形骸化を防ぐため、少なくとも1か月程度のインターバル期間を設ける。
ネクスパート法律事務所では、景品表示法をはじめとした企業の法律問題に関するご相談を承っております。お気軽にお問い合わせください。
※本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。具体的な対応については弁護士にご相談ください。
コラム監修者
Yuki Ishibashi
所属:東京オフィス
これまで個人・法人問わず幅広い分野の相談、訴訟等に取り組む。 また、任期付き国家公務員として消費者庁に出向した際は、デジタルプラットフォームに関する法律の立案、事件調査班の班長として景品表示法の執行、審査請求の審理員や国側の指定代理人などに従事。 「法律の立案(ルールメイキング)」から「執行」、そして「訴訟対応」という一気通貫した実務経験を踏まえた戦略的なリーガルアドバイスを心掛けている。