更新日:2022年4月30日 (土)

公開日:2020年9月7日 (月)

過払い金の計算方法とは?計算に必要なものや注意点を解説

過払い金の計算方法とは?計算に必要なものや注意点を解説 過払い金の計算方法とは?計算に必要なものや注意点を解説

サマリー

過去に消費者金融やクレジットカードで借入を行っていた方のなかには、ご自身に過払い金が発生しているのか、いくら請求できるのか知りたいと考えている方もいらっしゃるでしょう。過払い金の有無や実際の金額を確かめるためには、利息制限法の上限金利をもとにした「引き直し計算」を行う必要があります。この記事では、過払い金の基本的な計算方法や用意すべきもの、計算時の注意点、弁護士への相談が適しているケースについて分かりやすく解説します。

過払い金の計算方法(利息制限法による引き直し計算)

過払い金が発生する主な要因は、過去に利息制限法の上限金利を超える利率で借入と返済を行っていたことにあります。法律で定められた制限利率に従って過去の取引を再計算する作業を「引き直し計算」と呼びます。

グレーゾーン金利と利息制限法の上限金利

利息制限法では、元本の金額に応じて年15%〜20%の上限金利が定められています。しかし、かつては出資法の上限金利(年29.2%)との間に差があり、多くの貸金業者がこの間の金利(グレーゾーン金利)で貸付を行っていました。

借入元本の金額 利息制限法の上限金利
10万円未満 年20.0%
10万円以上100万円未満 年18.0%
100万円以上 年15.0%

利息制限法の上限を超えて支払っていた利息は、本来支払う義務のないお金とみなされます。そのため、超過して支払った利息を借入元本の返済に充当していき、元本が完済された後に支払い続けていた金額が過払い金となります。

利息計算ソフトを用いた引き直し計算の仕組み

過払い金を正確に算出するには、貸金業者とのすべての取引を時系列に沿って再計算する必要があります。一般的には、インターネット上で公開されている利息計算用の表計算ソフト等を利用して算出を行います。

計算ソフトに「借入日」「返済日」「借入金額」「返済金額」などを一件ずつ入力していくことで、取引日ごとの利息と元本残高が自動的に再計算されます。

上限金利で再計算を続けると借入残高が減少し、残高がマイナスに転じた時点から過払い金が発生している状態(過払元金)として記録されます。

簡易計算ツールと正確な計算ソフトの違い

Web上には、最初の借入時期や借入限度額、取引年数などを入力するだけでおおよその過払い金額を試算できる簡易計算ツールも存在します。手軽に大まかな状況を把握したい場合には便利です。

ただし、簡易ツールは一定の返済ペースを前提とした推定値に過ぎず、実際の取引状況(追加の借入や一時的な返済額の増減など)は反映されません。正確な過払い金額を把握するためには、すべての取引履歴をもとに引き直し計算ソフトへ入力して計算を行う必要があります。

過払い金の計算に必要なものと準備手順

過払い金の引き直し計算を自身で行うためには、事前に必要な書類や計算ツールの準備を整える必要があります。まずは過去の借入・返済の全容を把握するための資料を取り寄せ、適切な計算環境を整えていきましょう。

貸金業者への取引履歴の開示請求

過払い金の計算を行うにあたり、最初に取り寄せる必要があるのが「取引履歴」です。取引履歴とは、利用者が過去に行った借入や返済の年月日、借入金額、返済金額などが詳細に記録された帳簿を指します。

取引履歴は、契約していた貸金業者に対して直接開示請求を行うことで取得できます。基本的には、業者の窓口やお客様センターに連絡を入れ、取引履歴の開示を求める旨を伝えて所定の手続きを進めます。

開示請求時における業者からの提案(ゼロ和解等)への留意点

利用者が個人で取引履歴の開示を請求した際、貸金業者側から「残っている借金を免除する代わりに、双方の債権債務をなしにしないか」といった和解案(いわゆるゼロ和解)を提示されることがあります。

一見すると借金がなくなる有利な提案のように思えますが、引き直し計算を行うと大幅な過払い金が発生しており、結果として本来返還を受けられるはずの金額を放棄してしまうおそれがあります。

業者からゼロ和解などの提案を受けた場合でも安易に応じず、まずは取引履歴をすべて開示してもらったうえで計算を行う姿勢が重要です。

表計算ソフトと利息計算ツールの準備

取引履歴が手元に届いた後は、実際の計算作業に移るためのツールを用意します。多くの引き直し計算ソフトはスプレッドシート形式で提供されているため、Excelなどの表計算ソフトが使用できるパソコン環境が必要です。

インターネット上では、過払い金計算用の利息計算ソフトが公開されています。代表的なものとして、名古屋消費者信用問題研究会が提供する「名古屋式利息計算ソフト」や、アドリテム司法書士法人が提供する「外山式利息計算ソフト」などがあります。

これらのソフトをダウンロードし、開示された取引履歴の日付や金額を順番に入力していくことで、利息制限法の上限金利に基づいた適正な残高や過払い金額を算定することが可能になります。

過払い金を計算する際の注意点

過払い金の引き直し計算を自身で行う際には、利息の取り扱いルールや入力時の精度など、事前に把握しておくべき注意点がいくつか存在します。

過払い利息の扱いと民法改正に伴う法定利率の設定

過払い金が発生した時点から返還を受けるまでの期間に対しては、過払い金元本に対する利息(過払い利息)が付加されます。実務上では、発生した利息を元本に充当していく「利息充当方式」での計算が広く用いられています。

過払い利息の利率は、民法改正の施行日を境に法定利率が変更されているため、利息計算ソフトを利用する際の設定に注意が必要です。

過払い金の発生時期 法定利率
2020年3月31日以前に発生 年5%
2020年4月1日以降に発生 年3%

なお、2020年4月1日以前から過払い金が発生し、同日以降も返済が続いていたケースなどでは、適用される利率を巡って貸金業者側と見解が分かれることがあり、法的な争点となる場合があります。

取引履歴の正確な読み取りと入力ミスの防止

引き直し計算ソフトを使用する際は、取引履歴に記載された取引日や借入額、返済額を正確に入力することが大切です。開示された様式によっては項目が複雑に記載されていることもあり、読み間違いに注意を払う必要があります。

入力ミスや計算の誤りがあると、本来請求できるはずの金額と差異が生じたり、貸金業者側との交渉時に計算の不備を指摘されたりする原因になり得ます。

取引履歴の内容は1行ずつ正確に確認しながら転記し、入力後にも突き合わせを行うことが推奨されます。

計算を行っても過払い金が発生しないケースがあること

借入の経験がある場合でも、実際に取引履歴を取り寄せて引き直し計算を行った結果、過払い金が発生していないことが明らかになるケースもあります。

たとえば、契約当初から利息制限法の上限金利(年15%〜20%)の範囲内で取引していた場合や、取引期間が短く過払い状態に至っていなかった場合などが該当します。

過払い金の有無や正確な金額は、取引履歴に基づく詳細な計算を行って初めて判明する点に留意しておく必要があります。

Web上の過払い金シミュレーションを利用する際の留意点

Web上で提供されている過払い金シミュレーションは便利ですが、結果の受け止め方やツールの安全性に関して知っておくべき留意点があります。

簡易シミュレーションの算出結果は目安にとどまる

Web上には、借入の開始時期や限度額、取引期間などを入力するだけで、過払い金の概算額を試算できる簡易シミュレーションツールが数多く公開されています。手軽に利用できる利点がある一方で、個別の詳細な取引内容までは反映されません。

実際の過払い金額は、借入と返済の正確な日付や金額、利率の変動、過払い利息の扱いなどによって細かく変わります。そのため、簡易シミュレーターで算出された数値と、実際の取引履歴に基づいて正確に引き直し計算を行った結果とでは、金額に開きが生じることが珍しくありません。

簡易ツールの試算結果は過払い金が発生している可能性を大まかに把握するための参考にとどめ、確定的な金額ではない点に留意する必要があります。

士業事務所を装う不審なサイトや手数料請求への警戒

インターネット上でシミュレーションを利用する際は、運営元の実態にも注意を払う必要があります。弁護士法人や司法書士法人などの正規の士業事務所が運営しているように装った、不審なWebサイトが存在するケースも報告されています。

Web上の簡易シミュレーションは無料で提供されているものが一般的ですが、中には診断の利用や計算結果の表示に対して手数料などの名目で支払いを求めてくるサイトも見受けられます。

簡易計算の段階で不審な手数料を請求されたり、運営実態が不明瞭であったりするサイトの利用は控えることが賢明です。

ツールを利用する前には、運営元となる事務所名や所在地、責任者情報が正しく明記されているかを確認し、信頼がおける情報源であるかを見極めることが大切です。

複雑な計算や争点がある場合の弁護士への相談

過払い金の引き直し計算は自分で行うことも可能ですが、取引内容や貸金業者側の対応によっては計算や法的な判断が難しくなる場面があります。争点が生じているケースでは、法律の深い知見が必要となることがあります。

取引履歴が適切に開示されない場合

貸金業者に対して自身で開示請求を行った際、古い取引の記録が破棄されているなどの理由で、履歴の一部または全部が開示されないケースが見られます。

開示が十分でない場合、過去の通帳や領収書などの資料から取引内容を推定して計算を行うなどの対応が求められます。弁護士による開示請求や、場合によっては監督官庁への申告などを視野に入れた対応が必要になることもあります。

返済の遅延・滞納に伴う遅延損害金の計算

過去の借入において返済の遅れや滞納があった場合、通常の約定利息ではなく遅延損害金の利率が適用されて処理されていることがあります。

利息制限法の上限を超える遅延損害金を支払っていた場合、それらを含めて引き直し計算を行う必要がありますが、適用すべき利率の判断や計算ソフトへの入力処理は通常よりも複雑になります。

同一業者との複数取引における「取引の分断」と「一連性」

同じ貸金業者から完済と借入を繰り返していた場合、それらを一連の取引として計算するか、別の取引として分断して扱うかによって、過払い金の額や消滅時効の成否が大きく異なります。

取引が一連と認められるか分断とされるかは、過払い金返還請求の実務や訴訟において主要な争点の一つとなりやすい論点です。

空白期間の長さや契約書の返還状況などを考慮した法的な検討が不可欠となるため、取引の分断や計算の複雑化が予想される場合は、弁護士への相談を検討するとよいでしょう。

まとめ

過払い金の正確な金額を算出するためには、貸金業者から取引履歴を取り寄せ、利息制限法の上限金利に基づいた引き直し計算を行う必要があります。Web上の簡易シミュレーションは目安の把握に役立ちますが、確定的な金額を知るには詳細な履歴の計算が不可欠です。

過払い利息の利率設定や入力の正確性への配慮に加え、取引の分断や遅延損害金が絡むケースでは法的な判断が求められます。自身での計算や業者との対応に不安がある場合は、弁護士などの法律の専門家への相談を検討してみてください。

コラム監修者

YUKA SAITO

YUKA SAITO

所属:札幌オフィス 支店長

埼玉県出身。青山学院大学法学部、獨協大学法科大学院を卒業後、司法試験に合格し、最高裁判所司法研修所を修了。都内法律事務所勤務を経て、ネクスパート法律事務所に入所し、一般民事全般の業務に取り組む。大宮オフィス所長就任を経て、現在の札幌オフィスを開設、所長に就任。法人破産、個人破産、離婚・慰謝料等の男女問題に関する紛争が注力分野である。

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