更新日:2026年10月20日 (火)
公開日:2026年10月20日 (火)
アスベストはいつまで使われていた?年代別の規制と確認方法
サマリー
自宅の解体やリフォーム、中古住宅の購入を検討する際、「この建物にアスベストが使われていないだろうか」と不安に感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
かつて建材に広く使用されていたアスベスト(石綿)ですが、段階的に規制が進められ、2006年に原則として全面禁止となりました。
そのため、建物の着工年月によってアスベストが含まれている可能性やリスクの度合いは大きく異なります。
この記事では、アスベストがいつまで使用されていたのかという規制の歴史や年代別のリスク、建物における確認手順について解説します。
アスベストはいつまで使われていた?2006年に原則全面禁止
建物の防火性や断熱性を高める材料としてかつて重宝されていたアスベスト(石綿)ですが、健康被害の深刻化を背景に段階的な規制が進められてきました。
その中でも決定的な転換点となったのが、2006年(平成18年)9月の法改正です。
2006年9月1日施行の労働安全衛生法施行令改正により、アスベストの含有量が重量の0.1%を超えるすべての製品について、製造、輸入、譲渡、提供、そして新たな使用が原則として全面的に禁止されました。
これにより、住宅やビルなどの建築資材への新規利用は基本的に遮断されることになりました。
そのため、建物の着工日が2006年9月1日以降であれば、原則としてアスベストを含む建材は使用されていないと判断するのが一般的な目安となります。
2012年の「完全禁止」に至る経緯
2006年9月の法改正によって大半のアスベスト含有製品は市場から排除されましたが、この時点で直ちに代替品を確保することが困難であった一部の特殊な工業部材(工業用シール材や特定の耐熱・耐薬部材など)については、例外的に使用が猶予されていました。
その後、代替資材の開発や安全性の検証が順次進められた結果、猶予対象となっていた部材の規制が段階的に強化され、2012年(平成24年)3月をもってすべての適用猶予措置が終了しました。
この時点をもって、日本国内におけるアスベストの製造・輸入・使用等は例外なく完全に禁止されています。
規制時期と建物の着工年月
建物のリスクを把握する上で押さえておきたいのが、完成した日(竣工日)ではなく「着工(工事着手)日」が判断の基準になるという点です。
着工時点で有効であった法令が適用されるため、2006年8月以前に着工された工事では、施行前に流通していたアスベスト含有建材が組み込まれている可能性があります。
| 時期 | 法令改正等の内容 | 建築物への主な影響 |
|---|---|---|
| 2006年(平成18年)9月 | 労働安全衛生法施行令の改正施行
(含有量0.1%超の原則禁止) |
一般的な建築用建材(吹き付け材、成形板など)の新規使用が原則全面的に停止 |
| 2012年(平成24年)3月 | 代替困難とされていた一部例外部材の猶予期間終了 | 工業用シール材等を含むすべての製品で製造・使用が完全に禁止 |
このように、一般的な住宅や民間建築物においてアスベストが使用されているか否かを検討する際は、2006年9月という基準が大きな目安となります。
これ以前に着工された建物については、どのような建材がどこに使われているかを確認していくことが重要になります。
年代別に見るアスベスト規制の歴史と建物のリスク

日本におけるアスベスト規制は一度に完成したものではなく、健康被害への懸念の高まりに合わせて段階的に強化されてきました。
建物の着工時期を確認することで、どのような建材にアスベストが含まれている可能性があるかをある程度推測できます。
1975年(昭和50年)以前:吹き付けアスベストの多用期
高度経済成長期にあたる1970年代前半までは、ビルの鉄骨耐火被覆や機械室の吸音・断熱用として、高濃度の「吹き付けアスベスト」が広く施工されていました。
この時期の吹き付け材はアスベスト含有率が高く、経年劣化や解体作業に伴って大量の繊維が空気中に飛散しやすい性質を持ちます。
建材のリスク区分の中でも飛散性が高い時期とされています。
1975年〜1995年(平成7年):吹き付け規制と特定石綿の禁止
1975年に特定化学物質等障害予防規則が改正され、アスベスト含有率が重量の5%を超える吹き付け作業が原則として禁止されました。
ただし、基準以下の吹き付けロックウールなどはその後も使用されていました。
1995年には、発がん性などの毒性が特に強いとされる青石綿(クロシドライト)と茶石綿(アモサイト)の製造や使用が全面的に禁止されました。
一方で、比較的毒性が低いとされた白石綿(クリソタイル)を含む建材は継続して流通していました。
1995年〜2006年(平成18年):成形建材の規制強化と移行期間
1995年以降は、屋根のスレート瓦や外壁サイディング、内装のボード類といった固形の「成形板」に含まれる白石綿の規制が進められました。
2004年には主要な建材10品目の製造が禁止されています。
建材の製造禁止から実際の施工現場で使用されなくなるまでには一定のタイムラグが生じます。
そのため、2004年以降であっても2006年8月以前に着工した建物には、在庫建材などが使用されていたケースが見られます。
建物の着工年月によって、使われているアスベストの形態や飛散リスクは大きく異なります。
| 着工時期の目安 | 主な規制の動き | 使用されている可能性がある建材とリスク |
|---|---|---|
| 1975年以前 | 規制が本格化する前 | 吹き付けアスベスト
(飛散リスクが極めて高い) |
| 1975年〜1995年 | 5%超の吹き付け禁止、青石綿・茶石綿の禁止
(1995年) |
石綿含有吹き付けロックウール、
屋根や外壁等の各種成形板 |
| 1995年〜2006年8月 | 白石綿含有建材の段階的規制
(2004年に主要建材禁止) |
スレート屋根材やサイディングなどの固形成形板
(破損時に注意) |
| 2006年9月以降 | 重量比0.1%超の製造・使用等の原則全面禁止 | 基本的にアスベスト含有建材は使われていない |
アスベストが多く使われていた場所と主な建材
かつてのアスベストは、その優れた耐火性や断熱性、防音性から、建物のさまざまな場所で重宝されていました。
ただし、どのような建材として加工・施工されていたかによって、空気中に繊維が飛散するリスクは大きく異なります。
発じん性の違いによる3つの作業レベル区分
アスベストを含有する建材は、解体や改修工事を行う際の「飛散しやすさ(発じん性)」に応じて、レベル1からレベル3までの3段階に分類されています。
数字が小さいほど飛散性が高く、作業時の防護基準も厳格に定められています。
| 分類 | 発じん性 | 主な建材の種類 | 建物内の主な使用箇所 |
|---|---|---|---|
| レベル1 | 著しく高い | 石綿吹き付け材 | 鉄骨の耐火被覆、機械室・地下駐車場・ボイラー室の天井や梁 |
| レベル2 | 高い | 石綿保温材、耐火被覆板、断熱材 | 配管・ボイラー・煙突の保温材、空調ダクト、鉄骨の耐火被覆 |
| レベル3 | 比較的低い | 成形板(スレート、ケイ酸カルシウム板等) | 屋根材(コロニアル等)、外壁サイディング、内装の天井・壁・床 |
吹き付け材と保温材(レベル1・レベル2)の特徴
レベル1に該当する吹き付け材は、アスベストにセメントなどを混ぜて直接吹き付けたものです。
主に鉄骨造やRC造の建物において、立体駐車場や機械室の天井、鉄骨の柱や梁の耐火被覆などに広く施工されました。
レベル2に該当する建材には、配管やボイラーの周囲に巻かれた保温材や断熱材などがあります。
これらは繊維自体の密度が低く柔らかい性質を持つため、物理的な衝撃で容易に崩れてしまう特徴があります。
吹き付け材や保温材が経年劣化で露出・剥離している場合、わずかな気流や振動でも繊維が空間に飛散する恐れがあるため注意が必要です。
成形板などの硬質建材(レベル3)の特徴
戸建て住宅や一般的な集合住宅で広く普及していたのが、レベル3に分類される成形板です。
セメントや樹脂などでアスベスト繊維を板状に固めた建材で、スレート屋根材や外壁のサイディングボード、室内のケイ酸カルシウム板などが該当します。
セメントなどで固定されているため、板が健全な状態で維持されている限り、日常生活の中でアスベストが大量に飛散する可能性は極めて低いと考えられています。
成形板であっても、リフォームや解体時に切断・粉砕したり、激しく破損したりすると粉じんが生じるため、適切な管理と工法が求められます。
建物にアスベストが使われているか確認する手順
建物にアスベストが使われているかどうかを調べるには、手元にある書類の確認から専門機関による調査まで、段階を踏んで進めるのが一般的です。
まずは書類上の情報から着工日や部材を絞り込み、状況に応じて現地調査を検討します。
ステップ1:建物の「着工年月日」を書類で確認する
アスベスト含有の可能性を推定する上で、基準となるのが建物の「着工年月日」です。
着工日は、建築確認申請の際に交付される「確認済証(旧:建築確認通知書)」や、工事完了時の「検査済証」で確認できます。
手元に確認済証などが見当たらない場合は、役所の建築指導課等で「台帳記載事項証明書」を取得するか、法務局で「登記事項証明書(登記簿謄本)」を取り寄せることで、新築時期の目安を把握できる場合があります。
ステップ2:設計図面や仕上げ表の建材名を照合する
着工年の確認と並行して、建物の「設計図書(竣工図面)」や「特記仕様書」、「仕上げ表」を確認します。
天井、壁、床、屋根などに使用された建材の商品名や型番、メーカー名の記載をチェックします。
図面等で建材名が判明した場合は、国土交通省と経済産業省が公開している「石綿(アスベスト)含有建材データベース」や各メーカーの公表リストと照合し、アスベストが含まれていた製品か特定を進めます。
ステップ3:専門機関による現地サンプリング分析
図面が残っていない場合や、過去の増改築で仕様が変わっている可能性がある場合は、目視や書面のみでの判断が困難です。
その際は専門の調査会社や分析機関に依頼し、現地調査を行います。
調査では建材を少量採取(サンプリング)し、JIS規格に基づいた偏光顕微鏡やX線回折などの方法で、アスベストの含有の有無や含有率(0.1%超かどうか)を精密に判定します。
解体・改修工事に伴う事前調査の義務化について
建物の解体工事や一定規模以上のリフォーム・改修工事を行う際は、大気汚染防止法および石綿障害予防規則により、着工前にアスベスト含有の有無を調査することが義務付けられています。
法令に基づく事前調査は、原則として「建築物石綿含有建材調査者」などの一定の資格を持つ専門家が実施する必要があります。
| 確認ステップ | 主な確認書類・手段 | 確認できる内容 |
|---|---|---|
| 着工日の確認 | 確認済証、検査済証、登記簿謄本 | 規制年代との照合による大まかな含有リスク |
| 図面・部材の確認 | 設計図書、仕上げ表、建材データベース | 使用建材の商品名・型番と含有の可能性 |
| サンプリング分析 | 現地採取、偏光顕微鏡分析、X線回折 | 建材中のアスベスト含有の有無および含有率 |
| 工事前の事前調査 | 有資格者による調査、行政への報告 | 解体・改修工事における法令基準の充足 |
まとめ
アスベストは2006年9月に原則として製造や使用が禁止されたため、同年8月以前に着工された建物には注意が必要です。
着工年代によって使われている建材の種類や飛散リスクは大きく異なります。
解体やリフォームを検討している際は自己判断を避け、建築物石綿含有建材調査者などの資格者や調査機関による事前調査を依頼することが推奨されます。
アスベスト被害に関する給付金・賠償金の手続きや、関連する法的なトラブルについてお悩みがある場合は、弁護士法人ネクスパート法律事務所へお気軽にご相談ください。
コラム監修者
RUI SATO
所属:代表(東京オフィス)
東京都杉並区出身。明治大学付属中野高校、明治大学法学部を経て、明治大学法科大学院を修了。2011年に新司法試験に合格し、最高裁判所司法研修所を修了(65期)。2012年12月に弁護士登録(東京弁護士会)し、都内の法律事務所での勤務を経て、2016年1月に寺垣俊介とともにネクスパート法律事務所を創業。代表弁護士として一般民事から企業法務まで幅広い分野を手がけるとともに、全国に拠点を持つ事務所の経営にあたる。
早くからテクノロジーと法務の融合に取り組み、2021年にはAIを利用した法律文書作成サービスを開発するLegal AI株式会社の代表取締役に就任(現在は退任)。当時はAI技術が発展途上で技術的な壁に直面したが、この挑戦を通じて「法務業務こそAIの力を借りれば飛躍的に変わる」という確信を得る。以来そのビジョンを持ち続け、生成AIが広く普及した現在は事務所の業務全体でAIの活用を進めている。2026年には日本弁護士連合会「弁護士業務改革シンポジウム」にパネリストとして登壇した。ブロックチェーン・Web3分野の法務や海外法人の設立支援にも取り組み、公益法人主催のセミナー等で講師を務める。
公正取引委員会・中小企業庁「適正取引推進講習会」講師、日本弁護士連合会代議員、東京弁護士会常議員を歴任。弁護士業務のかたわら、2014年に東京青年会議所に入会して以来、10年以上にわたりボランティア活動に取り組む。2017年からは国際的な社会奉仕団体であるライオンズクラブに所属し、2022年には東京数寄屋橋ライオンズクラブ第57代会長を務めた。献血の呼びかけ、障がい者スポーツ大会の支援、保護犬活動のほか、弁護士として小中学生への法教育や薬物乱用防止教育にも携わっている。