交通事故紛争処理センターとは?利用方法やメリット・デメリット

交通事故紛争処理センターとは?利用方法やメリット・デメリット 交通事故紛争処理センターとは?利用方法やメリット・デメリット

サマリー

交通事故の被害に遭い、相手方の保険会社から提示された示談金や過失割合に納得がいかず、今後の進め方に悩んでいる方も多いのではないでしょうか。示談交渉が難航した際の解決手段の一つとして、中立な立場で和解をあっ旋する「交通事故紛争処理センター」の利用が挙げられます。センターは無料で利用できるなどの利点がある一方、利用できる時期や手続き上の注意点も存在します。この記事では、交通事故紛争処理センターの主な業務や利用の流れ、メリット・デメリットに加え、他の相談窓口や弁護士への相談という選択肢についても分かりやすく解説します。

交通事故紛争処理センターの概要と主な業務

交通事故紛争処理センター(以下、センター)は、自動車事故の被害者と加害者側の保険会社等の間で生じた損害賠償をめぐる紛争を解決するために設立された公益財団法人です。

裁判外紛争解決手続(ADR)機関の一つであり、中立・公正な第三者の立場から当事者双方の主張を聞き、示談のあっ旋などを行っています。

センターは被害者自身の味方として交渉を進める代理人ではなく、あくまで中立な立場で紛争の仲介を行う組織です。

センターが取り扱う3つの基本業務

センターで行われている主な業務は、「法律相談」「和解あっ旋」「審査手続き」の3段階に分かれています。

相談室で弁護士に書類を見せながら解決までの段階的な手続きを確認する様子
  • 法律相談:センターが選任した相談担当弁護士が、提出された資料や事故状況をもとに法的論点を整理し、助言を行います。
  • 和解あっ旋:法律相談の結果、あっ旋の必要があると判断された場合、当事者双方が出席して話し合いを行い、担当弁護士が中立な立場で和解あっ旋案を提示します。
  • 審査手続き:和解あっ旋案に双方が合意できず不調となった場合に、申立てに基づいて審査会が開催され、審査員による裁定が出されます。

申込みは原則として被害者本人(死亡事故の場合は法定相続人)が行いますが、センターの選任した弁護士が進行を担当するため、法律上の手続きの流れについてサポートを受けながら進めることができます。

原則無料で利用できる仕組みと自己負担となる費用

センターにおける法律相談、和解あっ旋、審査手続きなどの業務は、すべて無料で利用することができます。相談担当弁護士への相談料やあっ旋にかかる手数料も発生しません。

ただし、手続きにかかるすべての費用が無償になるわけではなく、一部の実費については利用者自身が負担する必要があります。

費用の種類 負担区分 具体例
センター利用料・相談料 無料 法律相談、和解あっ旋、審査手続きの基本費用
立証資料の取得・作成費 自己負担 医師の診断書や診療報酬明細書の取得費用、コピー代
交通費・通信費 自己負担 センターへの往復交通費(駐車場代含む)、電話代・郵送料

このように、手続き自体の利用料はかからないものの、資料集めや移動に伴う諸経費は手元から支払う必要がある点に留意しておきましょう。

交通事故紛争処理センターを利用するメリットと注意点(デメリット)

交通事故紛争処理センターの利用には、相手方保険会社との直接交渉を避けつつ早期解決を目指せるなどのメリットがある一方、手続きの性質上いくつかの注意点も存在します。

交通事故紛争処理センターを利用する主なメリット

センターを利用する大きな利点は、公正・中立な立場にある担当弁護士が間に入って和解あっ旋を行うため、相手方保険会社の担当者と直接やり取りする心理的負担を軽減できる点です。

また、事案によりますが、裁判所に訴訟を提起する場合と比べて比較的短期間での解決を目指しやすい傾向があります。必要資料が揃っている場合、人身事故では数回の期日で和解に至るケースが多く見られます。

手続きの種類 解決までの目安期日
人身事故の和解あっ旋 原則として3〜5回程度の期日
物損事故の和解あっ旋 原則として2回程度の期日
裁判(訴訟)での解決 平均審理期間は約1年以上

さらに、和解あっ旋が不調となった場合でも審査会へ審査を申し立てることができ、審査会が出した裁定に被害者側が同意すれば、相手方保険会社はその結果に拘束されます。

審査会の裁定には保険会社等に対する拘束力があるため、裁判を起こさずに最終的な解決を図れる可能性があります。

センターを利用する際の注意点・デメリット

一方で、センターは示談をめぐる紛争を解決する機関であるため、治療中や症状固定前の段階では利用できません。損害額が確定していない時期の相談には対応していない点に留意が必要です。

また、自賠責保険における後遺障害等級の認定手続きそのものに関する相談や異議申立ての受付は行っていません。等級認定に不服がある場合は、別の専門機関や弁護士への相談を検討する必要があります。

後遺障害等級の認定や異議申立てに関する詳しい情報はこちら

担当弁護士は中立な立場であるため、利用者の味方として有利な証拠を探したり主張を組み立てたりしてくれるわけではありません。賠償額の増額事由や過失割合を裏付ける証拠資料は、すべて自身で収集・提出する必要があります。

立証資料の準備や主張はすべて自力で行う必要があり、期日には平日に直接センターへ出頭しなければならない点も考慮しましょう。

利用申込みから手続き終了までの流れ

交通事故紛争処理センターを利用する際は、事前の申込みから法律相談、和解あっ旋、場合によっては審査手続きへと段階を踏んで進行します。全体的な流れを把握しておくことで、各期日に向けた準備を円滑に進めやすくなります。

1. 電話による予約申込みと管轄の確認

センターの手続きを利用するには、まず電話での事前予約が必要です。受付時間は月曜日から金曜日(祝祭日・年末年始を除く)の9時から17時(12時から13時は休憩時間)となっています。

センターは全国に11か所設置されており、原則として申立人の住所地または事故現場を管轄するセンターへ申し込むことになります。

2. 担当弁護士による法律相談

予約した日時にセンターへ出頭し、相談担当弁護士による法律相談を受けます。この初回相談時に利用申込書や事故関係の資料を提出し、事案の争点整理や法的な助言が行われます。

相談の結果、申立人が和解あっ旋を希望し、担当弁護士も手続きが必要であると判断した場合に、本格的な和解あっ旋手続きへと移行します。事案によっては別の機関での対応が適切と判断され、相談のみで終了することもあります。

3. 和解あっ旋の実施とあっ旋案の提示

和解あっ旋へ進むことが決まると期日が指定され、センターから相手方保険会社等へ出席要請が出されます。期日は当事者双方が同席し、1回あたり1時間程度を目安に双方の言い分を聴取します。

担当弁護士は過去の裁判例などを踏まえ、中立な立場から具体的な和解あっ旋案を書面または口頭で提示します。

双方が提示されたあっ旋案に合意した場合は、示談書または免責証書が作成され、合意内容に基づいて損害賠償金の支払手続きが行われます。

4. 和解不調時の審査会手続き

あっ旋案に対して双方または一方の合意が得られず、和解の見込みがないと判断された場合は、和解あっ旋の不調が通知されます。

通知を受けた日から14日以内に個別事案の審査申立を行うと、法律学者や裁判官経験者、経験豊富な弁護士など3名で構成される審査会による審査期日が開かれます。

審査会から裁定が出された場合、申立人は告知から14日以内に同意するかどうかを回答します。申立人が同意すれば示談書等の作成に進みますが、同意しない場合はセンターでの手続きが終了となります。

段階 主な内容 留意点
予約申込み 電話による日程調整と管轄の確認 住所地または事故地のセンターへ連絡
法律相談 担当弁護士による争点整理と助言 必要書類を持参して対面で実施
和解あっ旋 双方同席での事情聴取とあっ旋案提示 合意に至れば示談書・免責証書を作成
審査会手続き 不調時の審査申立と審査員による裁定 不調通知後14日以内の申立が必要

利用できないケースとその他の公的相談窓口

利用できないケースとその他の公的相談窓口

交通事故紛争処理センターを利用できない主なケース

交通事故紛争処理センターはすべての交通事故トラブルを扱えるわけではなく、一定の制限が設けられています。加害者が自動車や原動機付自転車ではない事故(自転車同士の事故など)や、自身が加入する保険会社との保険金支払いをめぐる紛争は対象外です。

また、自賠責保険(共済)の後遺障害等級認定に関する不服や賠償責任の有無についての紛争、求償関係の紛争、加害者側の保険会社が不明である場合も利用できません。

加害者が任意保険や特定の共済に未加入の場合などは、相手方の同意が得られない限り原則として手続きを進められない点に注意が必要です。

センター以外の主な公的相談窓口

センターの対象とならない事案や、特定の争点について相談したい場合には、目的に応じて他の公的機関や相談窓口の利用を検討することができます。

日弁連交通事故相談センター

弁護士が公正・中立な立場で交通事故の民事上の法律相談や示談あっ旋、審査などを無料で行う機関です。全国の相談所で面接相談が実施されており、相手方が任意保険に加入していないケースや過失割合に争いがあるケース、高次脳機能障害に関する相談などにも対応しています。

自賠責保険・共済紛争処理機構

自賠責保険や共済からの保険金・共済金の支払いに関する紛争を扱う機関です。治療費や休業損害などの支払基準、後遺障害の等級認定に対する不服などについて、弁護士や医師などで構成される審査会による公正な調停手続きを無料で受けることができます。

交通事故相談所

各都道府県や政令指定都市に設置されている公的な相談窓口です。相談員が、示談の進め方や損害賠償請求、過失割合などの幅広い問題について中立的な立場から助言を行っています。

交通事故紛争処理センターを利用できない場合の相談について詳しくはこちら

示談交渉や手続きに不安がある場合の弁護士への相談

交通事故紛争処理センターは中立・公正な立場で和解をあっ旋する機関であるため、被害者側の利益を一方的に代弁したり、有利な証拠を代わりに収集してくれたりするわけではありません。ご自身で主張や立証を行うことに不安がある場合や、自身の代理人として相手方と交渉してほしい場合には、法律事務所の弁護士へ依頼することが有力な選択肢となります。

自身の立場に立って交渉を進めてくれる代理人が必要な場合は、弁護士への相談を検討するとよいでしょう。

治療中の対応や後遺障害等級認定申請を見据えたサポート

センターの手続きは基本的に症状固定後の示談段階が対象となりますが、弁護士への個別相談であれば事故直後や治療中の段階から対応が可能です。保険会社から治療費の支払いを打ち切られそうになった際の対応や、適正な通院頻度に関する助言を受けられます。

また、症状固定後に後遺症が残った場合の後遺障害等級認定申請においても、医師に作成してもらう後遺障害診断書の記載内容を確認したり、認定に必要な医証や資料を揃えたりといったサポートを受けられます。申請手続きを適切に進めることで、妥当な等級認定を目指しやすくなります。

弁護士基準による賠償額の算定と手続きの負担軽減

相手方の任意保険会社が提示する示談金額は、各保険会社の内部基準に基づいて計算されていることが多く、過去の裁判例に基づく「弁護士基準(裁判基準)」と比べると低額になる傾向があります。弁護士に依頼した場合は、弁護士基準を適用して損害賠償額を算定し、法的な根拠をもとに保険会社との増額交渉を進めることが可能です。

さらに、相手方保険会社との連絡や交渉窓口、必要書類の取り付けなどをすべて弁護士に一任できるため、被害者本人の精神的・手続的な負担を大幅に軽減できます。煩雑なやり取りから解放され、怪我の治療や日常生活への復帰に専念できる点も大きなメリットといえます。

交通事故の損害賠償請求における弁護士基準について詳しくはこちら

コラム監修者

RUI SATO

RUI SATO

所属:代表(東京オフィス)

明治大学付属中野高校卒業、明治大学法学部・法科大学院修了。2012年弁護士登録(東京弁護士会)、2016年ネクスパート法律事務所を創設。一般民事・企業法務に加え、ブロックチェーン分野にも注力し、海外法人設立支援業務などにも取り組む。AIを活用した弁護士業務の改善・事業開発に取り組み、一般社団法人 イノベーション法務支援機構代表理事就任。公正取引委員会・中小企業庁講師、日弁連代議員、東京弁護士会常議員等を歴任。

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