更新日:2023年5月12日 (金)
公開日:2022年12月9日 (金)
交通事故の死亡事故は弁護士に相談を!サポート内容をご紹介
サマリー
交通事故の中でも死亡事故は、加害者側・被害者遺族側の双方にとって重大な法的問題や複雑な手続きが伴う深刻な事態です。突然の事故に直面し、今後の刑事処分や警察への対応、損害賠償請求や示談交渉をどのように進めるべきか分からず、戸惑いや不安を抱える方も少なくありません。この記事では、死亡事故で発生する加害者の法的責任や、加害者側・被害者遺族側それぞれの立場で弁護士に依頼できるサポート内容、損害賠償や費用の基礎知識について解説します。
交通事故の死亡事故で発生する加害者の3つの法的責任
交通事故によって人を死に至らしめてしまった場合、加害者は「刑事責任」「民事責任」「行政責任」という性質の異なる3つの重大な法的責任を負う可能性があります。
これらの責任は互いに独立した手続きであり、いずれか一つが解決したからといって他の責任が免除されるわけではありません。
1. 刑事責任|科せられる刑罰と使用者責任
刑事責任とは、法律に違反した犯罪行為に対して国から科される刑罰を受ける責任です。交通事故で死亡事故を起こした場合、警察や検察による捜査を経て刑事裁判が行われ、有罪となれば懲役刑や禁錮刑、罰金刑などが科されます。
| 罪名 | 科される主な刑罰 |
|---|---|
| 危険運転致死罪 | 1年以上の有期懲役(最高20年) |
| 過失運転致死アルコール等影響発覚免脱罪 | 12年以下の懲役 |
| 過失運転致死罪 | 7年以下の懲役若しくは禁錮、又は100万円以下の罰金 |
| 無免許運転による加重(過失運転致死罪) | 6月以上の有期懲役(最高10年) |
通常の運転上の不注意による事故では過失運転致死罪が適用されることが多いですが、飲酒運転や著しい速度超過などの危険な運転があった場合は危険運転致死罪に問われることがあります。
また、会社の従業員が業務中に社用車などで死亡事故を起こした場合、民法第715条に基づき会社(使用者)も被害者に対して損害賠償責任を負う「使用者責任」が生じる場合があります。
2. 民事責任|被害者遺族に対する損害賠償責任
民事責任とは、不法行為によって他人に生じさせた損害を金銭で賠償する責任です。死亡事故を起こした加害者は、亡くなられた被害者本人およびその遺族に対して損害賠償金を支払わなければなりません。
損害賠償の対象には、本人の死亡に対する慰謝料や、生きていれば得られたはずの収入を補償する逸失利益、葬儀関係費用のほか、事故から死亡までの間に発生した治療費などが含まれます。
民法第711条では、被害者の父母、配偶者、子などの近親者固有の精神的苦痛に対する慰謝料請求も認められており、賠償総額は高額になる傾向があります。
3. 行政責任|運転免許の取消処分と欠格期間
行政責任とは、交通秩序の維持や将来の危険防止を目的として公安委員会から科される処分のことです。刑事罰とは異なり、行政上のペナルティとして科されます。
死亡事故を起こした場合、交通違反の点数や事故の不注意の度合いに応じて点数が加算され、多くのケースで「免許取消処分」を受けることになります。
免許取消処分が下されると、一定期間運転免許を再取得できなくなる「欠格期間」が指定されます。前歴や違反態様によっては欠格期間が長期に及ぶこともあります。
加害者側における弁護士のサポート内容と対応のポイント
交通事故で死亡事故を起こしてしまった場合、加害者は今後の刑事処分や警察の捜査、民事上の損害賠償などへの対応に直面します。早期に弁護士に相談することで、事故の態様に応じた処分の見通しを把握し、適切な対応方針を検討しやすくなります。
処分の見通し把握と関係機関への対応
死亡事故であっても、逃亡や証拠隠滅の恐れがないと判断された場合は逮捕されずに在宅で捜査が進められるケースがあります。身柄拘束の有無にかかわらず、警察や検察からの取り調べに対してどのように受け答えすべきか、弁護士から助言を受けることが可能です。
また、事故態様や過失割合について争いがある場合、裁判手続きを見据えた主張の整理や証拠の確認が必要となります。弁護士に依頼することで、捜査機関への対応や保険会社とのやり取りを代理・サポートしてもらえます。
被害者遺族への謝罪と示談交渉の代理
被害者遺族は重大な精神的ショックを受けているため、加害者本人やその家族が直接接触しようとしても対応を拒絶されるケースが少なくありません。感情的な対立を深めずに真摯な謝罪や意向を伝えるためには、慎重な対応が求められます。
弁護士が代理人として間に入ることで、被害者遺族の心情に配慮しつつ、適切な時期を見極めて謝罪や示談交渉を進めることが期待できます。刑事手続きにおいて示談の成立や被害者側の処罰感情は重要な情状要素となるため、丁寧な対話の積み重ねが重要です。
加害者側が負担する費用の整理
死亡事故を起こした場合、加害者側には民事上の賠償金や刑事罰としての罰金、弁護士費用など様々な経済的負担が発生します。任意保険への加入状況によって自己負担の範囲が大きく異なるため、事前に内訳を確認しておく必要があります。
| 費用の種類 | 主な内訳・概要 |
|---|---|
| 示談金(損害賠償金) | 死亡慰謝料、事故から亡くなるまでの治療費、入通院交通費・雑費、葬儀費用など |
| 罰金 | 過失運転致死傷罪などで略式起訴や罰金刑が言い渡された場合に国納する費用(100万円以下など) |
| 弁護士費用 | 刑事事件の弁護活動や民事の示談交渉を依頼する際に支払う着手金・報酬金など |
任意保険に加入していれば、対人賠償保険の限度額に応じて示談金の大半が補償されますが、未加入の場合や補償限度額を超える部分は加害者本人が自己負担しなければなりません。
なお、自動車保険に付帯する弁護士費用特約は、被害者側の損害賠償請求に利用されるのが一般的であり、加害者側の刑事弁護費用には適用されないことが多い点に注意が必要です。民事上の示談交渉で利用できるかどうかは保険契約の内容により異なるため、事前に約款や保険会社への確認が推奨されます。
被害者遺族が受けられる弁護士のサポートと損害賠償請求
交通事故によりご家族を亡くされた遺族は、深い悲しみや混乱のなかで加害者側の保険会社との示談交渉や各種手続きを進めなければなりません。不慣れな法的手続きをご自身だけで対応することは、精神的にも大きな負担となります。
弁護士に依頼することで、保険会社や加害者側とのやり取り全般を代理してもらうことが可能となり、精神的な負担を軽減しながら適正な損害賠償金の獲得を目指すことができます。
保険会社との示談交渉代理と生活支援制度への対応
死亡事故における示談交渉では、事故態様や過失割合、損害項目の精査など法律に関する深い知識が求められます。弁護士が窓口となることで、遺族の意向を尊重しながら冷静かつ適正な交渉を進められます。
また、亡くなられた方が一家の支柱であった場合、示談成立までの生活費に困窮するケースもあります。そのような場合には、賠償金の一部を事前に受け取れる自賠責保険の「仮渡金制度」などの活用を含め、迅速な対応を相談できます。
弁護士基準(裁判所基準)に基づく適正な死亡慰謝料の算定
交通事故の損害賠償金や慰謝料の算定には、「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準(裁判所基準)」の3つの基準が存在します。保険会社から提示される金額は自社基準に基づいていることが多く、裁判所基準よりも低額になる傾向があります。
弁護士が介入して交渉を行う場合、過去の裁判例に基づいた「弁護士基準」を用いて請求を行うため、提示額よりも慰謝料額が増額されるケースがあります。
| 被害者の立場・属性 | 自賠責基準(令和2年4月以降) | 弁護士基準(目安) |
|---|---|---|
| 一家の支柱 | 本人400万円+遺族分(※) | 約2,800万円 |
| 母親・配偶者 | 本人400万円+遺族分(※) | 約2,500万円 |
| その他(独身男女・子供など) | 本人400万円+遺族分(※) | 約2,000万〜2,500万円 |
※自賠責基準の遺族分は請求者数(1名:550万円、2名:650万円、3名以上:750万円)により異なり、被扶養者がいる場合は200万円が加算されます。また、実際の賠償金額は個別の事情や過失割合により変動します。
死亡逸失利益の計算と裁判手続きへの対応
死亡逸失利益とは、被害者が事故に遭わずに生存していれば将来得られたはずの収入や利益を指します。計算にあたっては基礎収入額や就労可能年数、生活費控除率、中間利息を控除するためのライプニッツ係数などを正確に適用する必要があります。
逸失利益の算定方法は職業や年齢、家庭内での役割によって細かく分かれており、適切な立証資料の準備が欠かせません。示談交渉で合意に至らない場合でも、弁護士であれば民事訴訟(裁判)を提起し、裁判所に対して適切な賠償額を主張・立証していくことができます。
刑事裁判における被害者参加制度への支援
死亡事故の刑事裁判は検察官が公訴を提起して進行するため、遺族は原則として当事者にはなれません。しかし、「被害者参加制度」を利用することで、公判期日への出席、被告人への質問、意見陳述などを行うことができます。
弁護士は被害者参加弁護士として遺族に付き添い、法廷での質問事項の整理や意見陳述書の作成などをサポートし、遺族の心情や処罰感情を裁判手続に反映させるための支援を行います。
死亡事故における損害賠償請求権と相続の基礎知識
交通事故により家族が亡くなった場合、損害賠償請求の手続きと並行して相続に関する問題が生じます。突然の事故では遺言書が用意されていないケースが多く、損害賠償請求権の帰属や分配方法、税務上の取り扱いについて正しく理解しておくことが重要です。
損害賠償請求権の承継と分配の仕組み
死亡事故における損害賠償請求権には、亡くなられた被害者本人に発生した権利と、遺族固有の権利の2種類が存在します。
被害者本人の死亡慰謝料や逸失利益などの請求権は、法律上、相続人が相続財産として承継します。遺言書がない場合は法定相続分に応じて分配されるのが一般的です。相続人が複数いる場合、保険会社側から振込先を1か所にまとめるよう求められることが多く、代表者が一括して受領した後に各相続人へ分配する実務がよく見られます。
一方で、被害者の父母、配偶者、子などに認められる近親者固有の慰謝料は、遺族自身が固有の権利者として直接加害者側に請求することになります。
死亡慰謝料・損害賠償金と税金(相続税)の関係
交通事故で受け取る死亡慰謝料や損害賠償金は、被害者本人の精神的・財産的損害を補填する性質を持つため、原則として所得税や相続税の課税対象にはなりません。
ただし、事故直後ではなく被害者本人が生前に加害者側との示談を成立させて損害賠償額が確定していたにもかかわらず、金銭を受け取る前に亡くなったようなケースでは注意が必要です。この場合は確定した損害賠償請求権そのものが相続財産とみなされ、相続税の課税対象となることがあります。
国税庁:タックスアンサー No.1700 加害者から治療費、慰謝料及び損害賠償金などを受け取ったとき
相続放棄と損害賠償請求権への影響
亡くなられた被害者に多額の借入金などがある場合、遺族が相続放棄を検討することがあります。相続放棄を選択した際の損害賠償請求権の扱いは、請求項目の性質によって異なります。
| 損害賠償の項目 | 権利の帰属 | 相続放棄時の請求の可否 |
|---|---|---|
| 被害者本人の死亡慰謝料・逸失利益 | 被害者本人(相続人が承継) | 請求できない |
| 遺族固有の慰謝料(民法711条など) | 各遺族固有の権利 | 請求できる |
被害者本人の権利である死亡慰謝料や逸失利益は相続財産となるため、相続放棄を行うと請求する権利を失います。しかし、遺族固有の慰謝料は相続財産ではなく遺族自身の権利であるため、相続放棄を行っても加害者側に対して請求することが可能です。
相続放棄を行うと被害者本人の損害賠償請求権は行使できなくなるため、事前の慎重な判断が必要です。
死亡事故における弁護士費用の目安と特約の活用
交通事故の死亡事故において弁護士へ依頼する際、費用の体系や目安を把握しておくことは重要です。弁護士費用は、依頼する側が被害者遺族側か加害者側かによって体系が異なる場合があります。
弁護士費用の一般的な体系
弁護士費用には、主に法律相談料、事件着手時に支払う着手金、事件終了時に得られた成果に応じて支払う報酬金(成功報酬)などがあります。
被害者遺族側から依頼する場合、初回相談を無料としている法律事務所も多く見られます。また、着手金を抑えて損害賠償金の獲得額に応じた成功報酬制を採用しているケースもあり、加害者側から回収した示談金から精算できる場合があります。
一方、加害者側として依頼する場合は、刑事事件の弁護活動や民事の示談対応として扱われます。事件の段階や捜査・裁判の進行状況に応じて着手金や報酬金の金額が設定されるのが一般的です。
| 立場 | 費用体系の一般的な特徴 |
|---|---|
| 被害者遺族側 | 初回無料相談や成功報酬制(獲得賠償額の一定割合等)が採用されるケースが多い |
| 加害者側 | 一般刑事事件や示談代行として、捜査・公判の段階に応じた着手金・報酬金が設定される |
弁護士費用特約の概要と利用時の注意点
弁護士費用特約とは、交通事故の被害に遭った際に発生する弁護士費用や法律相談料を、加入している自動車保険などの保険会社が補償する特約です。
被害者本人だけでなく、同居の親族などが加入している保険の特約が適用できる場合もあります。この特約を利用することで、一定の限度額まで自己負担を抑えて弁護士へ依頼できるケースがあります。
加害者側として刑事手続きの対応を依頼する場合、弁護士費用特約は刑事事件には適用されないのが一般的です。
ただし、相手方との民事上の示談交渉などについては特約の利用が認められる場合もあります。特約の適用範囲や利用条件は保険契約の内容によって異なるため、事前に保険会社へ確認することが大切です。
死亡事故に関する問題が生じた際の弁護士への相談
死亡事故は、刑事責任・民事責任・行政処分のほか、損害賠償請求や相続手続きなど、多岐にわたる法的な対応が同時に求められる重大な事態です。
被害者遺族側にとっても加害者側にとっても、手続きや交渉を適切に進めるためには早期に法的な見通しを把握することが大切です。不安や疑問が生じた際は、弁護士への相談を検討するとよいでしょう。
コラム監修者
JUNICHI TASHIRO
所属:福岡オフィス 支店長
福岡県北九州市出身。小倉高校、岡山大学法学部、神戸大学法科大学院を卒業後、新司法試験に合格し最高裁判所司法研修所を修了。弁護士として法曹界に入り、個人・法人問わず幅広い分野の相談・交渉に取り組む。ネクスパート法律事務所福岡オフィス所長として、依頼者にとって何が大事かを第一に考え、スピード感をもって解決することを信条とし、どこの事務所よりもネクスパート法律事務所に依頼したいと思ってもらえるよう日夜奮闘中。