更新日:2026年9月13日 (日)
公開日:2024年10月23日 (水)
不倫慰謝料の減額を求められたら?応じる・拒否の判断基準を解説
サマリー
配偶者の不倫相手に慰謝料を請求したものの、相手から減額を求められて対応に悩む方は少なくありません。
要求をそのまま受け入れるべきか、それとも拒否して強気に交渉を続けるべきか、判断に迷うこともあるでしょう。
示談交渉では双方の合意が必要となるため、請求額と裁判例における相場とのバランスや、相手の資力などを踏まえた慎重な検討が大切です。
この記事では、不倫慰謝料の減額要求に応じるか拒否するかの判断基準や、交渉を進める際のポイントについて解説します。
不倫慰謝料の減額要求には必ず応じる必要があるのか

不倫相手から慰謝料の減額を求められた場合でも、その要求に必ず応じなければならない法的な義務はありません。
示談交渉は当事者同士の自由な合意に基づいて成立するもののため、提示された条件に納得がいかなければ要求を拒否することも可能です。
ただし、請求側が一歩も譲らず、相手側も支払いを拒み続ければ交渉は決裂し、裁判での解決を図ることになります。
裁判を起こしたとしても、自身が請求した金額がそのまま全額認められるとは限らない点には注意が必要です。
裁判における請求額と認容額の実情
減額要求に応じるべきか判断する上では、実際の裁判において慰謝料がどの程度認められているのかを知ることが参考になります。
『不貞行為に関する裁判例の分析-慰謝料算定上の諸問題―』(大塚正之著、日本加除出版)に記載された東京地方裁判所の裁判例(2015年10月〜2016年9月の123件)のデータによると、請求額と認容額には以下のような傾向が見られます。


| 区分 | 件数が多い金額帯(上位順) |
|---|---|
| 請求額 | 1位:300万円台、2位:500万円台、3位:1,000万円台 |
| 認容額(認められた額) | 1位:150万〜199万円、2位:100万〜149万円、3位:200万〜249万円、4位:50万〜99万円 |
このように、請求額としては300万円以上を求めるケースが多いものの、裁判所で実際に認められる認容額は100万〜200万円前後に落ち着くケースが多い実情があります。
裁判で認められる適正額と自身の請求額に大きな開きがある場合は、減額要求を頑なに拒絶するよりも、ある程度の譲歩を視野に入れて交渉を進めた方が早期解決につながることもあります。
慰謝料の減額要求に応じることを検討すべきケース
不倫相手から提示された減額要求に対して、状況によっては要求を受け入れて示談を成立させた方が実質的なメリットにつながる場合があります。
どのような事情がある場合に減額の検討が推奨されるのか、主な3つの判断基準について解説します。
請求額が一般的な相場より著しく高い場合
不倫慰謝料の一般的な相場は、婚姻期間や不貞行為の期間、婚姻関係への影響などにより変動しますが、おおむね50万〜300万円程度とされています。
当初の請求額が相場から大きく乖離して高額である場合、相手が減額を求めるのは自然な主張といえます。
交渉が決裂して裁判に移行しても、相場を著しく超える請求額がそのまま認容される可能性は高くありません。
相場との乖離を理由に減額を求められた際は、適正な水準まで金額を調整することが早期解決への近道となります。
不倫相手の支払能力が低く回収不能リスクを避けたい場合
不倫相手に十分な収入や預貯金がない場合、高額な慰謝料を一括で回収することは現実的に困難となります。
相手から長期の分割払いを提案されて減額を拒否する選択肢もありますが、長期にわたる支払いは途中で滞納されるリスクを伴います。
また、完済まで不倫相手との連絡や管理が続くこと自体が精神的な負担になりかねません。
長期分割による未払いリスクを避けるため、減額に応じたうえで一括または短期間で確実に支払わせる取り決めを行うのも有効な手法です。
時間や精神的負担を考慮して早期解決を優先したい場合
慰謝料の金額で双方が譲歩せず交渉が決裂した場合、最終的には裁判所での手続きによって決着を図ることになります。
裁判での解決には半年から1年以上の期間を要することがあり、その間の心理的なストレスや期日対応などの負担は小さくありません。
裁判手続きに伴う時間や労力を抑え、早期に問題を終結させて平穏な生活を取り戻したい場合は、一定の減額に応じて示談をまとめることが現実的な選択肢となります。
慰謝料の減額要求を拒否することを検討すべきケース
不倫相手から慰謝料の減額を求められた場合でも、すべてのケースで譲歩が必要なわけではありません。
相手の資力状況や交渉の経緯によっては、要求を拒否して毅然とした姿勢で請求を維持することが適切な場面もあります。
十分な資力があるにもかかわらず相場以下への減額を求められている場合
不倫相手に十分な支払能力があるにもかかわらず、一般的な相場を大幅に下回る金額への減額を提示されている場合は、要求を拒否することを検討するのが自然です。
不貞行為は民法上の不法行為であり、被害を受けた側には精神的苦痛に対する賠償を求める権利があります。
相手に支払い能力が備わっている状況であれば、相場からかけ離れた低い提示額で安易に示談に応じる必要性は低いといえます。
不倫相手が高額な収入や資産を有している場合
不倫相手が一般的な水準を大きく超える高額な収入を得ている場合も、大幅な減額要求を拒否する理由の一つになり得ます。
請求される側の資力そのものが直ちに慰謝料額の算定基準になるわけではありませんが、実務上、事案の悪質性や精神的損害の回復の観点から比較的高額な支払いが認められる例も存在します。
相手の立場や状況に応じた責任を追及したい場合は、過度な減額に応じない姿勢が求められます。
時間や費用をかけてでも裁判を通じて適正額を獲得したい場合
示談での早期解決よりも、裁判所による客観的な判断を経て適正な慰謝料額を確定させたいという明確な方針がある場合は、減額要求を突っぱねて手続きを進める選択肢があります。
裁判に移行すると解決までに一定の期間や労力がかかりますが、過去の裁判例に照らした適正な金額の認定を目指すことができます。
費用や手間を惜しまずに適正額の獲得を優先したいと考えるのであれば、相手の減額条件を拒否して法的措置を見据えることが考えられます。
相手に資力がある場合や客観的な適正額の獲得を目指す場合は、安易な減額要求に応じず慎重に対応方針を判断することが重要です。
慰謝料の減額交渉において知っておきたい注意点
不倫相手から慰謝料の減額を求められた際、提示された条件を安易に受け入れたり、感情的に反発したりすると、かえってトラブルが複雑化するおそれがあります。
後悔のない解決を目指すためには、交渉を進めるうえで押さえておくべき実務上の注意点を理解しておくことが大切です。
分割払いに応じる場合の未払いリスクと取り決め
減額に応じる代わりに一括での支払いを求めるのか、あるいは減額を抑える代わりに相手の申し出による分割払いを受け入れるのかは、大きな検討事項となります。
長期にわたる分割払いに合意した場合、将来的に相手の経済状況が悪化して支払いが滞ったり、支払いが続く期間中ずっと相手との関係が継続して精神的な負担を感じたりするリスクが考えられます。
分割払いを認める場合は、滞納時のペナルティや支払期日を明確にした合意書(示談書)を作成するなど、未払いを防ぐための対策を講じておくことが重要です。
感情論を避け客観的な証拠や法的根拠に基づき交渉する
不倫された側の精神的苦痛は非常に大きいものですが、交渉の場で感情をぶつけてしまうと、相手方が態度を硬化させて話し合いが中断してしまうことがあります。
慰謝料の金額交渉では、不貞行為を示す客観的な証拠や、過去の裁判例における類似事例の相場といった法的な根拠をもとに、冷静に主張を伝える姿勢が求められます。
交渉が長期化する前に次の手段への移行目安を想定する
当事者同士の話し合いが平行線をたどっているにもかかわらず、漫然と示談交渉を続けていると、解決までの期間が長期化し精神的な消耗も大きくなります。
「提示額から一定以上の減額は受け入れない」「○回までのやり取りで合意できなければ法的手続きを検討する」といった判断の目安をあらかじめ想定しておくと、適切なタイミングで次の対応へと進みやすくなります。
不倫慰謝料の減額をめぐる交渉における弁護士への相談
不倫相手から慰謝料の減額を求められた場合、要求に応じるべきか拒否すべきかの判断は容易ではありません。
交渉の進め方や着地点に迷うときは、弁護士への相談を検討することも一つの方法です。
個別事情に応じた適正額と落としどころの把握
慰謝料の適正な金額は、婚姻期間や不貞行為の期間、夫婦関係に与えた影響、相手方の経済状況など、個々の事情によって大きく異なります。
法的な知見を踏まえて事情を整理することで、過去の裁判例における認容額の傾向などを考慮した、客観的で現実的な落としどころを見極めやすくなります。
代理交渉による精神的負担の軽減
当事者同士で直接減額交渉を行うと、感情的な対立が深まり、精神的なストレスが大きくなるケースが少なくありません。
弁護士に交渉を依頼した場合、相手方との直接のやり取りを任せることができるため、精神的な負担を軽減しながら法的な根拠に基づいた交渉を進めることが可能です。
第三者である弁護士が窓口となることで、相手方に対して毅然とした姿勢を示しつつ、冷静な話し合いを進めやすくなります。
裁判を見据えた証拠収集と整理のサポート
減額要求を拒否して示談がまとまらなかった場合、裁判手続きへの移行も視野に入れる必要があります。
裁判では、不貞行為の事実や損害の程度を客観的な証拠で示すことが求められます。
交渉の初期段階からどのような証拠が法的に有効となるか助言を受けることで、万一裁判に発展した場合でも適切な準備を整えやすくなります。
提示された減額条件に納得がいかない場合や、今後の交渉方針について見通しを立てたい場合は、一度弁護士に相談してみるとよいでしょう。
コラム監修者
SHIZU ISHIDA
所属:東京オフィス
広島県広島市出身。青山学院大学心理学科、東海大学法科大学院卒業後、新司法試験に合格し最高裁判所司法研修所を修了。弁護士として法曹界に入り、刑事、民事、法人案件等幅広い分野の専門知識を習得。弁護士登録10年目にしてネクスパート法律事務所に入所し、現在は主に離婚事件に注力している。