更新日:2026年2月26日 (木)
公開日:2025年2月10日 (月)
裁判の陳述書の書き方とは?記載項目や作成のポイントを解説
サマリー
裁判の手続きにおいて陳述書の作成を求められたものの、どのような形式で何を記載すればよいのか分からず、悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
陳述書は、当事者が認識した事実関係や背景事情を裁判官に伝え、客観的な証拠を補完するための書面です。
法廷で自身の認識や状況を適切に伝えるためには、記載すべき項目や作成のポイントを把握しておくことが役立ちます。
この記事では、陳述書の役割や記載する主な内容、わかりやすい書面を作成するための注意点を解説します。
裁判における陳述書とは?証拠としての役割と提出の目的
裁判における陳述書とは、紛争の当事者や関係者が自ら認識した事実関係、出来事の経緯、当時の心情や主観的な事情などを記載した書面です。

陳述書は訴状や準備書面のような「主張書面」そのものではなく、自身の認識や経験を証明するための「証拠(書証)」として扱われます。
客観的証拠を補完する証拠としての位置付け
裁判では、契約書や領収書、写真、メッセージの履歴といった客観的な書面やデータが証拠として提出されます。
しかし、客観的な証拠が存在する場合であっても、その証拠が作成された前後の経緯や、当事者間で交わされた口頭のやり取りまでは十分に読み取れないケースがあります。
陳述書は、客観的証拠だけでは証明が難しい背景事情や、目に見える証拠が残っていない当時の状況を当事者の視点から具体的に説明し、証拠関係を補完する役割を担っています。
裁判で陳述書を提出する主な目的
裁判手続きにおいて陳述書を作成・提出することには、主に次のような目的があります。
- 裁判官に対して自らの認識や言い分を順序立てて伝える
- 提出済みの証拠からは把握しきれない背景や経緯を説明する
- 当事者尋問に向けた争点整理や反対尋問の準備を行う
- 法廷での当事者尋問を落ち着いて進めるための補助とする
陳述書を通じて当事者が認識した事実と主観的な感情を事前に裁判官へ提示することで、裁判所は事件の争点を絞り込み、尋問手続きで確認すべき論点を整理しやすくなります。
また、原告と被告の双方が陳述書を提出することで、互いの主張や事実認識の相違点が明確になります。
事前に相手方の言い分や認識のズレを把握できるため、反対尋問でどのような反論や確認を行うべきか、準備を整えることにもつながります。
さらに、法廷での当事者尋問では緊張により伝え忘れが生じることも想定されます。
陳述書に具体的な事実や経緯が整理されていれば、尋問中に裁判官から書面の内容に基づいた確認がなされるなど、自身の言い分を漏れなく伝える手助けにもなります。
陳述書に記載する主な内容と構成例
陳述書の構成は、裁判官が事案の全体像を時系列に沿って正確に把握できるよう、段階的に記述していくのが一般的です。
主に「身上経歴」「問題発生前の状況」「発覚の経緯と変化」「生じた損害」という流れで整理すると伝わりやすくなります。
作成者の身上経歴
冒頭では、作成者自身の基本的な情報として、家族構成や経歴などを簡潔に記載します。
当事者間の関係性が争点となる事案では、相手方とどのような関係にあったのか、いつ頃から関わりを持っていたのかといった前提事情を明確にしておくことが大切です。
問題が発生する前の状況
トラブルが生じる前の生活状況や当事者間の関係性を記載します。
例えば婚姻関係に関する紛争であれば、問題が生じる前の夫婦関係が円満であった事実や生活の様子を具体的に記述することで、その後の変化を対比して示しやすくなります。
問題の発生・発覚の経緯とその後の状況変化
出来事やトラブルがいつ、どのようにして発覚・発生したのかを具体的に記載します。
当時の相手方の態度や発言内容など、客観的な証拠書類だけでは読み取れない背景事情についても触れておくと状況が把握しやすくなります。
問題が発生した後にどのような対応を取ったのか、当事者間の関係性や生活状況がどのように変化したのかについても順を追って記載します。
同居や別居の状況、話し合いの経過などを整理することがポイントです。
出来事によって生じた影響や損害の内容
トラブルによって生じた精神的・身体的な影響や具体的な損害について記載します。
通院や治療を余儀なくされた場合はその状況を記述するほか、日常生活や仕事にどのような支障が生じたかについて自身の認識を含めてまとめます。
客観的な事実の推移とともに、出来事によって生じた具体的な影響を整理して記載することが、自身の言い分を裁判官へ的確に伝えるための鍵となります。
わかりやすい陳述書を作成するための6つのポイント

陳述書を作成する際は、読み手である裁判官に事実関係を正確かつ分かりやすく伝えることが求められます。
自身の認識や状況を的確に伝えるために意識したいポイントを整理して解説します。
1. 時系列に沿って順序立てて記載する
出来事は発生した順番に従って記載することが基本です。
話の順序が前後してしまうと、全体の経緯や前後の因果関係を裁判官が把握しにくくなります。
日付や時期ごとに見出しを設けたり段落を分けたりして整理することで、事態がどのように推移していったかが第三者にも伝わりやすくなります。
2. 5W1Hを明確にして客観的事実を具体的に書く
「いつ・どこで・誰が・誰に対して・どのような行為をしたか」を明確に記述することが大切です。
作成者にとっては当然の前提であっても、初めて記録を読む裁判官には具体的に記載しなければ伝わりません。
特に日付や場所が抜けていると、出来事の前後関係が不明瞭になり、主張の説得力に影響を及ぼすことがあります。
3. 記憶が曖昧な部分を断定的に書かない
過去の出来事について記憶が不確かな箇所がある場合、無理に断定的な表現を用いることは避ける必要があります。
不確かな記憶を断定して記載してしまうと、その後の尋問手続きなどで証言との矛盾が生じ、書面全体の信用性に影響を及ぼす恐れがあります。
記憶が定かでない部分は、「〜だったと記憶している」「正確な日時は不明だが〜頃」などと正直に記載することが無難です。
4. 事件と関係のない記載を避ける
相手方への不満から、裁判の争点と直接関係のない相手の評判や日常の些細な不満などを盛り込んでしまうケースが見られます。
紛争の本筋に関係のない記載が多いと、陳述書の中で本当に主張したい重要事項が埋もれてしまい、裁判官への伝達が不十分になる可能性があります。
5. 感情の羅列を避け、具体的な出来事を通じて伝える
陳述書には主観的な心情を記載する役割もありますが、「許せない」「ひどい」といった感情的な言葉だけを並べても、実情は把握しづらくなります。
相手方がどのような言動を取り、それに対してどう感じたのかという具体的な事実ややり取りを記載することで、心情の背景が説得力をもって伝わります。
6. 一文を長すぎず簡潔にまとめる
一つの文章の中に複数の出来事や理由を詰め込むと、主語と述語の関係が分かりにくくなり、文章の意図が正しく伝わらない原因になります。
接続詞で長くつなげるのではなく、一文一義を意識して適度に文章を区切ることで、簡潔で読みやすい書面になります。
陳述書の作成や訴訟手続きに関する弁護士への相談
裁判で提出する陳述書の作成にあたっては、どのような事実をどの程度具体的に記載すべきか、判断に迷う場面も少なくありません。
事実関係のまとめ方や表現に不安がある場合は、弁護士へ相談することも有効な選択肢の一つです。
法的な観点からの事実整理と書面作成のサポート
陳述書は、裁判官に対して自身の認識や当時の状況を伝える重要な書面です。
しかし、感情的な記述が多くなったり、争点と関係のない事情が長々と書かれていたりすると、伝えたい要点が分かりにくくなってしまうおそれがあります。
弁護士に相談することで、事案の争点を見据えたうえで、客観的な事実と主観的な感情を適切に整理し、必要な情報が過不足なく盛り込まれた書面の作成について助言を得られます。
第三者の視点から文面を確認してもらうことで、記憶が曖昧な部分を断定的に書いてしまうリスクや、法廷で不利に働く表現を避けることにつながります。
訴訟手続き全体を見据えた証拠の補完と尋問への準備
陳述書は単独で判断されるものではなく、これまでに提出した書証(契約書、念書、写真、診断書など)や、今後の当事者尋問といった一連の手続きと密接に関わっています。
既存の証拠だけでは読み取れない背景事情を陳述書でどのように補完するか、また相手方から提出された陳述書の内容を踏まえてどのような反論や反対尋問の準備を進めるかといった、全体的な進行戦略について助言を受けることが可能です。
自身での書面作成や今後の法廷手続きに不安がある場合は、無理に一人で抱え込まず、法律相談を利用して手続きの進め方や留意点を確認してみるとよいでしょう。
コラム監修者
SHIZU ISHIDA
所属:東京オフィス
広島県広島市出身。青山学院大学心理学科、東海大学法科大学院卒業後、新司法試験に合格し最高裁判所司法研修所を修了。弁護士として法曹界に入り、刑事、民事、法人案件等幅広い分野の専門知識を習得。弁護士登録10年目にしてネクスパート法律事務所に入所し、現在は主に離婚事件に注力している。