更新日:2024年8月7日 (水)
公開日:2024年8月7日 (水)
フランチャイズのロイヤリティとは?法的性質と算定方法を解説
サマリー
フランチャイズ契約において、ロイヤリティの金額や支払方法は本部と加盟店の双方にとって極めて重要な要素です。
しかし、加盟金との法的な性質の違いや適切な算定方法、契約締結時の開示義務について詳しく理解できていないケースも少なくありません。
適正な手続きや説明を行わない場合、法的なトラブルに発展するリスクもあります。
この記事では、フランチャイズにおけるロイヤリティの法的性質や主な算定方式、中小小売商業振興法や独占禁止法を踏まえた注意点を解説します。
フランチャイズ契約におけるロイヤリティの法的性質と加盟金との違い

フランチャイズ契約において、加盟店(フランチャイジー)が本部(フランチャイザー)に対して支払う金銭にはいくつかの種類が存在します。
その中でも中核をなすのが「ロイヤリティ」と「加盟金」です。
ロイヤリティの法的な位置づけ
ロイヤリティは、事業を運営する期間中、本部から提供される商標やサービスマークの使用権、および継続的な経営指導や事業支援に対する対価として位置づけられます。
契約期間中にわたって継続的に発生する債務である点が特徴であり、加盟店が本部のシステムを活用して営業を継続するためのランニングコストとしての法的性格を持っています。
加盟金との性質上の差異
これに対して加盟金は、主に契約締結時に一括して支払われる一時金です。
契約締結に伴うフランチャイズチェーンへの加入資格の付与や、初期的な経営ノウハウの開示、商標使用許諾の開始に対する対価としての性質を有します。
加盟金が初期段階での権利設定や情報提供の対価であるのに対し、ロイヤリティは契約関係が継続する限り発生する役務提供や権利利用の対価であるという点で、両者の法的性質は明確に区別されます。
| 項目 | ロイヤリティ | 加盟金 |
|---|---|---|
| 支払いの性質 | 継続的な対価(ランニングコスト) | 一時金(初期費用) |
| 主な対価内容 | 継続的な商標使用・継続的な経営指導 | 加盟資格の付与・初期ノウハウ開示 |
| 支払いの発生時期 | 契約期間中に定期的(月次等)に発生 | 原則として契約締結時などの初期段階 |
このように、ロイヤリティは加盟店に長期的かつ継続的な経済的負担を課す性質を持つため、その算定方法や対価性について契約締結前に十分な確認を行うことが重要です。
ロイヤリティの主な算定方式と金額設定の考え方
フランチャイズ契約において設定されるロイヤリティの算定方式は、業態や本部のビジネスモデルによって多種多様です。
一般的には「定額方式」と「売上歩合方式」のいずれかが採用されるケースが多く見られます。
定額方式と売上歩合方式の特徴
定額方式は、加盟店の売上規模や利益の増減に関わらず、毎月一定の金額を本部に支払う方式です。
本部の立場からは継続的な収入の見通しが立てやすく、加盟店の立場からも売上が大きく伸びた場合に手元に残る利益が増えやすいという特徴があります。
一方で、開業初期などで売上が安定しない時期であっても固定の支払いが発生するため、加盟店にとっては資金繰り上の負担が大きくなりやすい側面もあります。
売上歩合方式は、店舗の月間売上高に対してあらかじめ定めた一定割合(パーセンテージ)を乗じて算出する方式です。
売上に連動してロイヤリティの支払額が変動するため、売上が低い月には支払額が抑えられる一方、売上が伸びるほど本部に支払う額も増加します。
業態や利益率を考慮した金額設定の重要性
売上歩合方式を採用する場合、どの程度の歩合を設定するかは慎重に検討する必要があります。
適切な割合は業態の粗利益率や総売上の規模、本部が提供するサポートの内容などによって大きく左右されます。
例えば飲食店のフランチャイズにおいては、売上高の3%から8%程度の範囲で歩合が定められる傾向が見られます。
ただし、原材料費率や人件費率が高い業態において過度な歩合を設定すると、加盟店の事業継続が困難になるおそれがあります。
ロイヤリティの水準は、本部が提供する経営指導やノウハウの価値だけでなく、加盟店側の利益率や総売上といった複数の要素を総合的に勘案して設定することが望まれます。
中小小売商業振興法に基づく法定開示書面と説明義務
中小小売商業振興法では、特定の小売業や飲食業等のフランチャイズチェーン(特定連鎖化事業)において、加盟希望者に対して契約締結前に重要事項を記載した書面を交付し、説明を行うことが義務付けられています。
これは、加盟希望者が事業内容や金銭的負担を正確に把握し、適切な判断を行えるようにするための規定です。
この法定開示書面において、ロイヤリティに関する事項は中核をなす開示項目の一つとされています。
加盟後に発生する継続的な金銭負担について、加盟希望者が事前にその負担の度合いを把握できるようにすることが求められます。
ロイヤリティに関する具体的な開示項目
本部側は、ロイヤリティとして徴収する金銭の名称にかかわらず、その具体的な金額または算定方法を明確に記載する必要があります。
売上歩合方式を採用している場合には、対象となる売上の定義や歩合率、計算の基準期間などを具体的に明示しなければなりません。
さらに、定額方式の場合でも金額や改定の有無、支払期日や支払方法などの諸条件について詳細な記載が求められます。
契約締結後に予期せぬ費用請求や解釈の相違が生じないよう、客観的かつ明確な基準を示すことが重要とされています。
法定開示書面にロイヤリティの金額や算定根拠を正確に記載し、あらかじめ丁寧な説明を行うことが本部側の重要な法的義務となります。
事前説明における本部と加盟希望者の注意点
本部は単に書面を交付するだけでなく、加盟希望者がその計算方法や条件を十分に理解できるよう、契約締結前の適切な時期に説明を行う必要があります。
口頭での説明と書面の記載内容に齟齬がないかどうかの確認も欠かせません。
一方で、加盟を検討する側にとっても、提示された開示書面と契約書のロイヤリティ条項を照らし合わせ、算定基準に不明瞭な点がないか事前に精査することが、将来的なトラブル防止につながります。
独占禁止法(欺瞞的顧客誘引)の観点からみた本部側の留意点
ロイヤリティの説明不足と欺瞞的顧客誘引
フランチャイズ契約において、本部側は加盟希望者に対してロイヤリティの金額や算定方法について正確な情報を提供する責任があります。
十分な説明を怠ったり、実際よりも負担が軽いと誤認させるような勧誘を行ったりした場合、独占禁止法上の問題に発展する可能性があります。
公正取引委員会は、フランチャイズ事業における適正な取引を確保するためのガイドライン等を示しており、契約条件について十分な開示を行わずに加盟者を誘引する行為を注視しています。
ロイヤリティに関する必要な説明を行わずに有利誤認を招いて加盟を誘引した場合は、欺瞞的顧客誘引に該当するおそれがあります。
公正取引委員会の運用を踏まえた適正な情報開示の重要性
ロイヤリティの算定根拠や追加で発生し得る費用の有無など、加盟者の経営判断に影響を与える事項については、事前に明確かつ具体的に開示することが求められます。
例えば、歩合の計算基準や固定費用の発生条件などについて曖昧な説明に終始すると、後々のトラブルの原因となります。
説明の不備や誤認を招く対応は、加盟者との間での紛争を招くだけでなく、行政上の指導や本部としての社会的信用の低下につながるリスクも含んでいます。
本部側としては、契約締結前の説明プロセスや開示資料の内容が適正であるかを慎重に点検することが重要です。
フランチャイズ契約とロイヤリティに関する弁護士への相談

フランチャイズビジネスにおいて、ロイヤリティに関する取り決めは本部と加盟店の長期的な信頼関係を左右する極めて重要な要素です。
ロイヤリティの設定や説明方法に不備があると、契約締結後に予期せぬ紛争へ発展する懸念があるため、双方の立場に応じた適切な法的確認が求められます。
フランチャイズ本部における契約書作成と法令遵守の確認
フランチャイズ本部においては、事業モデルに即したロイヤリティの算定方式を明確に契約書へ落とし込む作業が不可欠です。
中小小売商業振興法に基づく法定開示書面の整備や、独占禁止法上の欺瞞的顧客誘引とならないような説明手順の構築など、多角的な法令遵守の検討が必要となります。
条項の曖昧さや開示不足による将来的な法的リスクを低減させるためにも、書面作成や運用フローの確認にあたって弁護士などの専門家に相談することが有効な選択肢となります。
加盟検討者における契約内容の精査とリスク把握
一方で、フランチャイズへの加盟を検討している事業者にとっても、ロイヤリティの条項を詳細に確認することは自社の事業継続性を守るために欠かせません。
売上や利益に対するロイヤリティの負担割合が妥当であるか、提示された説明内容と契約条項に齟齬がないかなどを慎重に精査する必要があります。
契約締結後のトラブルを未然に防ぐためにも、疑問点や不明な条項がある場合には、事前に弁護士の助言を受けながら内容を十分に見極めることが推奨されます。
コラム監修者
RUI SATO
所属:代表(東京オフィス)
明治大学付属中野高校卒業、明治大学法学部・法科大学院修了。2012年弁護士登録(東京弁護士会)、2016年ネクスパート法律事務所を創設。一般民事・企業法務に加え、ブロックチェーン分野にも注力し、海外法人設立支援業務などにも取り組む。AIを活用した弁護士業務の改善・事業開発に取り組み、一般社団法人 イノベーション法務支援機構代表理事就任。公正取引委員会・中小企業庁講師、日弁連代議員、東京弁護士会常議員等を歴任。