更新日:2023年11月27日 (月)

公開日:2023年11月27日 (月)

特別受益に時効はある?民法改正による主張の期間制限を解説

特別受益に時効はある?民法改正による主張の期間制限を解説 特別受益に時効はある?民法改正による主張の期間制限を解説

サマリー

相続人の中に、被相続人から生前贈与を受けたり、遺言によって相続財産を贈与するという遺贈を受けたりした人がいる場合、その人が受けた利益を特別受益といいます。

特別受益を得た人がいる場合には、共同相続人間で現に存在する遺産のみを対象として、法定相続分や指定相続分に従って遺産を分割すると、公平を欠くことになります。

そこで、民法は、共同相続人の公平を図ることを目的に、特別受益を相続分の前渡しとみて、計算上その特別受益を相続財産に持ち戻して(加算して)、相続分を算定することにしています。

この特別受益には、時効があるのでしょうか?生前贈与や遺贈は、何年前までのものが相続分や遺留分に持ち戻せるのでしょうか?

この記事では、特別受益に時効があるかどうかや、何年前までの贈与が持ち戻しの対象となるかについて解説します。


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特別受益に時効はある?何年前までの贈与が持ち戻しの対象となる?

特別受益には、時効という概念がありません。

ただし、特別受益を考慮する遺産分割協議の請求については、期間制限があります。

民法改正により特別受益の主張のタイムリミットが設けられた

従来は、特別受益の主張について期間制限はありませんでしたが、令和3年の民法改正(施行日令和5年4月1日)により、タイムリミットが設けられました。

新設された民法のルールでは、相続開始時から10年を経過した後にする遺産分割は、具体的相続分ではなく、法定相続分によると規定しています(民法904条の3)。

すなわち、相続開始後10年が経過すると、原則として、特別受益の主張ができず、法定相続分を基準とした遺産分割しかできなくなります。

具体的相続分とは…

特別受益や寄与分(※1)によって算定されたみなし相続財産に、各自の法定相続分(※2)または指定相続分(※3)を乗じた上で、寄与分がある人はそれをプラスし、特別受益がある人は、そこから特別受益額をマイナスして修正した相続分。

※1 寄与分:被相続人の財産の維持または増加に特別の寄与(通常期待される程度を超える貢献)をした相続人がいるときに、相続財産からあらかじめその寄与分を控除して、寄与した人にはその寄与分を、本来の相続分とは別枠で増額して相続できる制度。

※2 法定相続分:民法で定められた相続分

※3 指定相続分:遺言によって指定された各相続人の相続分

例外的に具体的相続分による遺産分割が認められる場合もある

次の場合には、例外的に特別受益を考慮した遺産分割が認められます。

  • 相続開始後10年経過前に家庭裁判所に遺産分割を請求したとき
  • 10年の期間満了前6か月以内に、遺産分割を請求できないやむを得ない事由が相続人にあった場合において、当該事由消滅時から6か月経過前に、当該相続人が家庭裁判所に遺産分割請求をしたとき
  • 相続人全員が具体的相続分での遺産分割に合意したとき

遺産分割を請求できないやむを得ない事由とは、被相続人が遭難して死亡していたが、その事実が確認できず、遺産分割を請求できなかった場合などが該当します。

特別受益の主張についての期間制限はいつから適用される?改正後の取扱い

令和3年の改正では、民法改正附則3条により経過措置が定められました。改正法の施行日(令和5年4月1日)以前に被相続人が死亡していた場合にも、遡って効力が及びます。

もっとも、法改正後いきなり遡って効力が発生すると混乱を招くため、以下の通り、施行時から5年間の猶予期間が設けられています。

相続発生日が令和5年3月31日以前の場合 次のうちのいずれか遅い方 

・相続発生から10年経過時

・施行時から5年経過時(令和10年4月1日)

相続発生日が令和5年4月1日以降の場合 相続発生から10年経過時

したがって、施行時に相続開始から既に10年が経過していれば、施行時から5年の経過前(令和10年3月31日)までに、家庭裁判所に遺産分割を請求しなければ、特別受益を主張できなくなります。

画像引用元:遺産分割に関する見直し|大阪市

特別受益の主張は、特別受益を受けていない相続人が行う必要がありますが、相手が生前贈与を受けた事実を素直に認めないこともあります。当事者間の話し合いでは解決できず、調停や審判に発展することも少なくありません。

特別受益の主張を検討している場合には、なるべく早めに家庭裁判所に具体的相続分による遺産分割を求めるなどの対応が必要です。

遺留分算定における特別受益の持ち戻しの主張には時効がある?

遺留分の計算上は、遺贈および相続開始前10年以内になされた特別受益にあたる贈与に限り、基礎財産に算入されます。

ただし、贈与者と受贈者が遺留分権利者に損害を加えることを知ってなされた贈与は、相続開始10年以上前になされたものも遺留分算定の基礎となる財産に含まれます。

なお、被相続人による持ち戻し免除の意思表示があっても、遺留分の計算上は、基礎財産に参入されます。

持ち戻し免除の意思表示により基礎財産を減少できると、他の相続人との関係で不公平であり、遺留分制度の意義をなくすことになりかねないからです。

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特別受益を考慮した遺産分割は弁護士にご相談を!

特別受益を考慮した遺産分割を求める場合は、弁護士に相談することをおすすめします。

特別受益の主張をする場合は、審判を見据えた対応を要することも多く、ご自身での対応が難しくなる傾向があるからです。

以下では、弁護士に相談・依頼するメリットを紹介します。

相続人の一部が受けた贈与が特別受益にあたるかどうか判断してもらえる

弁護士に相談すれば、相続人の中に被相続人から生前贈与を受けた人がいる場合、その贈与が特別受益にあたるかどうかを正しく判断してもらえます。

遺贈はすべて特別受益となりますが、生前贈与としての特別受益は、以下の贈与に限られます。

  • 婚姻もしくは養子縁組のための贈与
  • 生計の資本としての贈与

上記にあてはまる贈与があった場合でも、被相続人の生前の資力や生活状況に照らして、扶養の一部と認められる場合には特別受益にはあたりません。

共同相続人全員が同程度の教育を受け、ほぼ同額の利益(学資)を受けている場合なども、特別受益として考慮されないことがあります。

共同相続人の一人を受取人とした生命保険金は、純粋には相続財産にはあたりませんが、被相続人やその他の共同相続人の生活実態等の諸般の事情を考慮して、特別受益に準じて持ち戻しの対象となる場合もあります。

弁護士に依頼すれば、特別受益あたるかどうかを正しく判断できます。特別受益として認められる可能性が低いなら、早期に遺産分割をまとめるなど、適切な方針を決めることにも繋がります。

特別受益の主張に必要な証拠の選定を委ねられる

特別受益を主張するには、被相続人から贈与を受けた相手に特別受益であると認めてもらうことが重要です。

しかし、被相続人から特別受益を受けた相続人は、その持ち戻しをして具体的相続分を算定されることになる(受け取れる相続分が少なくなる)ため、特別受益にあたる贈与があったことを認めないケースも多いです。

そのため、特別受益を受けた相続人や裁判所を納得させるために、贈与があったことを証明する証拠を示して交渉や主張を行うことになります。

特別受益にあたる贈与であることを示す証拠の具体例は、以下のとおりです。

  • 贈与契約書やメモ、日記、メールの履歴など、贈与の事実がわかる書類
  • 預金口座の取引明細や通帳、振込明細書など、金銭をやり取りした事実がわかる資料
  • 不動産の固定資産評価証明書や不動産業者による査定書 など

これらの証拠をご自身で集めるのは骨が折れる作業なうえ、個別具体的な事情によって有効な証拠資料は異なるため、どのような証拠を集めればよいか分からず不安になることもあるでしょう。

弁護士に依頼すれば、証拠の選定を委ねられ、必要な証拠集めのサポートが得られます。

交渉から審判までの手続きを代行してもらえる

特別受益は、相続人間での遺産分割協議や、家庭裁判所の遺産分割調停あるいは審判を通じて主張します。相続人間での協議がまとまらず、調停や審判で解決を図ることになった場合でも、弁護士に対応を委ねられます。

長引く交渉や裁判所への対応などによる精神的なストレスも軽減できるでしょう。

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まとめ

改正法の施行日(令和5年4月1日)以降は、この記事で解説した新ルールが適用されます。

特別受益の主張については当事者間で話し合いをしても、揉めることが多いため、相続に詳しい弁護士に相談をしながら、手続きを進めることをおすすめします。

当事務所には、特別受益を考慮した遺産分割に詳しい弁護士が在籍しております。初回相談も無料で実施しておりますので、ご不明点がございましたらお気軽にお問い合わせください。

コラム監修者

Shunsuke Teragaki

Shunsuke Teragaki

所属:東京本店

広島県広島市出身。修道高校、慶應義塾大学商学部、青山学院大学法科大学院を卒業後、新司法試験に合格し最高裁判所司法研修所を修了。弁護士として法曹界に入り、個人・法人問わず幅広い分野の相談・交渉に取り組む。ネクスパート法律事務所の代表弁護士として、依頼者に最適な見通しと戦略的な解決策を示すことを信条とし、丁寧かつ粘り強い対応で信頼を築いている。

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