更新日:2026年2月26日 (木)

公開日:2024年2月16日 (金)

不貞慰謝料は自己破産で免責される?支払い義務が残るケースと対処法

不貞慰謝料は自己破産で免責される?支払い義務が残るケースと対処法 不貞慰謝料は自己破産で免責される?支払い義務が残るケースと対処法

サマリー

不貞慰謝料を請求されたものの、
「とても支払えない…。」「自己破産すれば免責されるのか?」と悩む方は少なくありません。
不貞慰謝料が自己破産で免責されるかどうか(支払い義務を免れるかどうか)は、事案の内容によって異なり、最終的には裁判所の判断に左右されます。
基本的には免責の対象となると考えられていますが、不貞行為が【悪意で加えた不法行為】と評価されると、自己破産しても支払い義務が残る可能性があります。
この記事では、主に以下のことについて解説します。

1.不貞慰謝料は自己破産で免責されるのか
2.不貞慰謝料が免責されないケース|悪意認定の判断基準
3.不貞慰謝料を支払えないときの対処法
ぜひ参考にしてください。

不貞慰謝料×自己破産|免責される・されないの結論早見表

質問 結論 留意点
不貞慰謝料は自己破産で免責される? 原則として免責の対象 【例外】 悪意で加えた不法行為(破産法253条1項2号)に該当すると判断された場合は、非免責債権となり支払い義務が残る。
悪意とは具体的に? 故意を超えた積極的な悪意(害意) 単なる不貞行為ではなく、債権者(慰謝料請求者)に精神的苦痛を与える目的で不貞行為に及んだ場合積極的に家庭の平穏を害する意図があった場合に認定される可能性がある。
早期にすべきことは? 弁護士への早期相談 不貞慰謝料・自己破産両方の実績がある弁護士に相談することが重要

不貞慰謝料の支払い義務は自己破産で免責される?

不貞慰謝料は自己破産手続きにおいて、裁判所から免責許可決定が出れば、原則として免責されます。 ただし、【悪意で加えた不法行為】と判断された場合は、不貞慰謝料は自己破産しても免責されず、支払い義務が残ります。

不貞慰謝料は原則として免責の対象

不貞慰謝料は、原則として自己破産による免責の対象となる債務です。
自己破産は、裁判所を通して借金などの債務を免除(免責)してもらい、債務者の経済的な立ち直りを助けるための制度です。
不貞行為によって発生した慰謝料の支払い義務も、民法上の損害賠償請求権という金銭債務の一つです。 したがって、原則として、不貞慰謝料は自己破産による免責の対象となります。
なお、破産裁判所に慰謝料の請求者を債権者の1人として申告(債権者名簿に記載)する必要があります。 ### 例外|不貞慰謝料が自己破産でも免責されないケース(非免責債権)
例外的に、不貞慰謝料が非免責債権(債務の支払いが免責されない債権)に該当すると、免責がされず、支払い義務が残ります。 破産法253条では、非免責債権にあたるものが規定されています。

【破産法253条】
①租税等の請求権(例:住民税、固定資産税、国民年金等)
②破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
③破産者が故意または重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権
④一定の義務によって支払わなければならない請求権(例:養育費、婚姻費用の分担、扶養義務等)

不貞慰謝料は、これらのうち、②破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権に該当するかが問題となる場合があり、これに該当した場合には、自己破産をしても、例外的に不貞慰謝料を支払わなければなりません。

【ここが重要】不貞慰謝料が自己破産で免責されない悪意の判断基準

不貞慰謝料が、自己破産で免責されない非免責債権に該当するか否かは、【悪意で加えた不法行為】が基準です。

法律が定める【悪意で加えた不法行為】の意味

不貞行為は、夫婦の平穏な婚姻生活を送る権利を侵害する不法行為(民法709条710条にあたりますが、すべての不貞行為が破産法上の【悪意で加えた不法行為】に該当するわけではありません。 破産法でいう【悪意】とは、単なる不貞の故意ではなく【故意を超えた積極的な害意】を指すとされています。
そのため、一般的な不貞慰謝料は、自己破産で免責される可能性が高いのが実務上の傾向です。

裁判例から見る!不貞慰謝料が非免責債権に該当するか否か

【事案の概要|東京地裁令和2年11月26日】

原告が、配偶者の不倫相手である被告に対して、慰謝料請求をしたところ、被告が自己破産をした。
原告は、被告に対する慰謝料債権は非免責債権であると主張して、慰謝料債権が非免責債権に該当するかが争われた事案

【判決内容|裁判所の判断】

裁判所は、破産法253条1項2号の【悪意】の内容について、
破産法253条1項2号は、「破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権」を非免責債権とする旨を規定しているところ、同号にいう「悪意」は、単なる故意ではなく、他人を害する積極的な意欲、すなわち「害意」をいうものと解するのが相当であると示しました。
そして、本件に関する具体的判断について

1. 被告が一方的に原告の配偶者を篭絡して本件不貞行為に及んだなどの事情は認められないこと
2. 原告の配偶者は、原告と別居した際、未成年の子を連れておらず、夫婦共有財産を持ち出していないこと

などを考慮し、本件不貞行為の際、被告において、本件婚姻関係に対し社会生活上の実質的基礎を失わせるべく不当に干渉する意図、すなわち原告に対する害意があったとまでは認められないと判断しました。
したがって、自己破産をした被告(債務者)は不貞慰謝料の支払いを免れました。
一部の裁判例を見る限り、不貞慰謝料が非免責債権に該当するという判断は極めて限定的であると考えられます。
ただし、個別事情によって左右されるため断定はできず、事案に応じた検討が不可欠です。

不貞慰謝料が自己破産後も非免責債権として残った場合の対処法

不貞慰謝料が自己破産後も非免責債権として残った場合でも、経済的な再建を目指す方法はあります。 不貞慰謝料以外の債務が免責されれば、生活の負担が軽くなり、残った不貞慰謝料について現実的な支払い方法を検討しやすくなります。 弁護士を介して、債権者(慰謝料請求者)に対し、月々確実に支払える現実的な金額での分割払いを提案し、和解を目指すのも一つの方法です。
債権者(慰謝料請求者)が交渉に応じるかどうかは個別の事情によりますが、支払可能性を示すことで、交渉が進むケースもあります

自己破産を避けたい人のための不貞慰謝料を支払えないときの解決方法

不貞慰謝料の支払いが難しくても、必ずしも自己破産を選ぶ必要はありません。 「不貞慰謝料を支払えない」「自己破産は避けたい」という方に向けて、実務でよく利用される示談交渉について解説します。

示談交渉による解決とは

示談交渉とは、債務者(あなた)と債権者(慰謝料請求者)が話し合い、不貞慰謝料の減額や分割払いなど、自己破産以外の柔軟な解決策を探る方法です。
裁判所を使わずに進められるため、迅速かつ柔軟な対応が可能です。

示談交渉のメリット|スピードと柔軟性

メリット 詳細
迅速な解決 債権者(慰謝料請求者)の対応によっては、早期にまとまる場合があります。
周囲に知られにくい 裁判所への申立てが不要なため、家族や勤務先に知られるリスクが小さいです。
柔軟な条件設定 支払額の減額だけでなく、無理のない分割払いなど、双方の状況に合わせた柔軟な和解条件を設定できます。
財産維持 自己破産のように、一定の価値を超える財産について処分を求められるおそれは通常なく、持ち家や車などの財産を手放さずに済む場合が多いです。

不貞慰謝料と自己破産に関するよくある質問(FAQ)

不貞慰謝料と自己破産に関するよくある質問をまとめました。

自己破産をすると家族や勤務先にバレますか?

自己破産をしても、家族や勤務先に不貞慰謝料や自己破産の事実が知られる可能性は、一般的には比較的低いといえます。 自己破産をした事実は、官報に掲載されますが、一般企業や家族が官報を定期的に確認するケースは多くありません。
ただし、破産手続きで給与明細などの提出が必要な場合や、警備員・士業など資格制限のある職業に就いている場合は、手続き上、間接的に伝わる可能性があります。

不貞慰謝料の請求者(債権者)にも自己破産の手続きが伝わりますか?

はい、不貞慰謝料の請求者(債権者)には、通常、自己破産の手続き開始決定に関する通知が届きます。 不貞慰謝料の請求者は、債権者に該当するため、裁判所から破産手続開始決定通知が送付されます。

不貞慰謝料の額が大きいと免責されにくくなりますか?

不貞慰謝料の金額が高いこと自体は、自己破産で免責されるかどうかに直接影響しません。 免責の可否は、慰謝料額ではなく、悪意の有無で判断されます。
ただし、高額慰謝料が認められている背景に悪質な行為態様がある場合は、結果として裁判所が悪意を認定しやすくなる可能性があります。

自己破産中に不貞慰謝料の請求が来たらどうすれば良いですか?

自己破産手続き中に新たに不貞慰謝料の請求が来た場合は、ご自身で対応せず、必ず破産事件を担当している弁護士に連絡してください。 破産手続きが開始されると、債権者(慰謝料請求者)は原則として直接の請求・取立てが禁止されます。 万が一請求があった場合は、代理人弁護士に対応を任せてください。

まとめ

不貞慰謝料は自己破産によって、原則として免責されます。
ただし、【悪意で加えた不法行為】と判断された場合は、非免責債権となり、破産後も支払い義務が残ります。
自己破産を避けたい場合は、減額交渉・分割払いなどの示談交渉も有効です。
不貞慰謝料の免責可否は事案ごとの判断が必要なため、早期に弁護士へ相談し、最適な解決策を選ぶことが重要です。

コラム監修者

SHIZU ISHIDA

SHIZU ISHIDA

所属:東京オフィス

広島県広島市出身。青山学院大学心理学科、東海大学法科大学院卒業後、新司法試験に合格し最高裁判所司法研修所を修了。弁護士として法曹界に入り、刑事、民事、法人案件等幅広い分野の専門知識を習得。弁護士登録10年目にしてネクスパート法律事務所に入所し、現在は主に離婚事件に注力している。

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