更新日:2026年2月26日 (木)

公開日:2023年11月16日 (木)

不倫で退職させることは原則不可!退職を迫られるケースと対処法

不倫で退職させることは原則不可!退職を迫られるケースと対処法 不倫で退職させることは原則不可!退職を迫られるケースと対処法

サマリー

「会社に不倫がばれて、上司に呼び出されている」
「会社に不倫がばれて、クビも覚悟しておけと言われてしまった」

不倫が会社にばれてしまい、いつ会社をクビになるのではないかとヒヤヒヤしていませんか?
せっかく積み上げてきたキャリアが崩れるかもしれず、将来が真っ暗になっているかもしれません。

大丈夫です。安心してください。会社が不倫であなたをクビにできることはほとんどありません。
私たちは多くの不倫案件を対応してきましたが、不倫で会社をクビにされてしまい、それが適法とされたケースはありません。

しかし、不倫と退職に関する知識をしっかり理解していないと、クビにならずとも他の方法で退職に追い込まれてしまうことはよくあります。一度退職になってしまうと、あなたが会社に戻ることは困難です。

もし、あなたが会社からクビを言い渡されても、他の方法でも、会社に対して最初にやるべきことはたった一つです。

この記事では、不倫で退職にならないためにあなたがとるべき方法を学びましょう。

不倫で退職させることは原則としてできない

結論としては、会社が従業員の不倫を理由に一方的に退職させることはほとんど認められることはありません。

会社から、「あなたはクビなので、明日から会社に来なくていい」と言われても、これに従う必要はありません。会社が従業員を一方的に退職させることを懲戒解雇といいますが、不倫を根拠とする懲戒解雇は、下記のとおり、基本的には違法であり、無効となります。

したがって、一方的に退職を言い渡されたら毅然とした態度で退職は違法であると主張しましょう。

以下では、詳しく見ていきましょう。

就業規則に記載がなければ退職させられない

まず、不倫で従業員を懲戒解雇するためには、就業規則に以下の事項が規定されていなければいけません

・懲戒処分として解雇ができること
・どのような場合に懲戒処分をできるか

そのため、まずは就業規則に懲戒処分として解雇できるかどうかを確認しましょう。
就業規則に懲戒解雇として解雇できる旨の定めがなければ懲戒解雇をされることはありません。

なお、会社が従業員に対して就業規則を見せないことは許されません。
なぜなら、労働基準法第106条において、「使用者は、就業規則を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、または備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によって、労働者に周知させなければならない」とされているからです。

不倫で退職が認められてしまう場合

もし、懲戒処分として解雇できることが就業規則に定められていた場合、あなたのケースが懲戒解雇されるのか判断しなければいけません。とはいっても、上記のとおり、ほとんどの場合が有効とは認められませんので安心してください。

ここでは、どのような理由で懲戒解雇が認められないのか、一般的な話を理解しましょう。
これを理解しておくことで会社と話し合いになった際にも有利に進めることができます。また、個別にご自身のケースを検討する際の指針となります。

懲戒解雇が有効になるためには、

・「客観的に合理的な理由」があり、
・「社会通念上相当」

でないといけません(労働契約法15条)。

簡単に言うと、

・退職させるだけの十分な理由があり、
・他の処分もある中で、退職という処分をすることが必要以上に重くない

といえないといけません。

懲戒解雇は社員を退職に追いやる重大な処分ですので、簡単には合理的な理由社会的な相当性は認められません。

合理的な理由があり、社会的に相当といえるかは、

✓ 行為の性質
✓ 態様
✓ 動機
✓ 会社に及ぼす影響
✓ 結果の重大性や被処分者の態度
✓ 勤務歴
✓ 処分歴
✓ 反省の有無

などの事情を総合的に考慮して判断されます。

特に社内不倫でない場合には、基本的には社員のプライベートな問題に過ぎず会社と関係ありませんので、不倫だけを理由として会社があなたを懲戒解雇すべき事由にはあたりません。

ただし、不倫が原因で業務に影響を与えるような場合には、退職までは至らずとも、何かしらの軽い懲戒処分を受ける可能性はあります。
また、社内不倫であっても、懲戒解雇まで認められるケースは極めて珍しいです。

例えば、就業規則に社内不倫が禁止されていたとしても、直ちにそれだけで懲戒解雇が認められわけではありません。社内不倫により業務や会社に多大なる影響を与えたなどにより、その懲戒解雇が「客観的に合理的な理由」があり、「社会通念上相当」といえなければ有効とはなりません。

不倫で退職が有効とされた事例

社内不倫を理由に懲戒解雇が行われ、有効と判断された裁判例があります(東京高裁昭和41年7月30日)。
バス会社でバス運転手と女性車掌との間で不倫関係があったという事案でした。

裁判所は、

・両者の不倫関係がそれ自体職場の秩序を著しく乱す行為であった
・現に当該女性車掌を退職させ、他の女性従業員に対して不安と動揺を与えた
・求人についての悪影響等をもたらしたこと
・運送会社の社会的地位、名誉、信用等を傷つけた
・運送会社の正常な業務運営を阻害し、運営会社に損害を与えた

ことなどを理由として、懲戒解雇を有効としました。
上記事情について、2つ以上該当するような場合には、有効とされる可能性があるので、弁護士に相談してみるのが良いでしょう。

なお、社内不倫の場合には、懲戒解雇までされなくても「社内の秩序、風紀を乱し、または乱すおそれのあったとき」などの就業規則の懲戒事由に該当し、懲戒解雇より軽微な処分(戒告、減給など)を受ける可能性があります。

不倫で退職が無効とされた事例

他方で、懲戒解雇が無効となった事例も見てみましょう(旭川地裁平成元年12月27日)。基本的にはこの裁判例のように、懲戒解雇がされても無効となります。

事案は、女性社員が社内で妻子持ちの同僚男性との不倫関係にあった。この関係が取引関係者にまで知られることになった。そのため、その影響を考慮し、会社が女性社員に懲戒解雇処分をした、というものです。

これについて、裁判所は、

✓ 女性社員及び不倫相手の地位
✓ 職務内容
✓ 交際の態様
✓ 会社の規模
✓ 業態等

を考慮して、「職場の風紀・秩序を乱し、その企業運営に具体的な影響を与えた」とまでは認められない、と判断し、女性社員に対する懲戒解雇処分を無効としました。

また、別の社内不倫の裁判例では、

・会社のパソコンを使い不倫相手と業務に関係ないメールを約1000通程度やりとりしていた
・正規の手続きをとらずに不倫相手のシフト変更をするなど不倫相手を優遇した
・上司からこれを注意されても反論して態度を改めなかった
・不倫関係解消後も不倫相手に不倫関係の復縁を求めるメールを連続して送信するなどのストーカー行為をした

などの事情があっても懲戒解雇が無効とされた事例があります。
このように社内への影響が大きく感じる事例でも懲戒解雇が有効とされることはありません。

以上のように、不倫を根拠に会社が従業員を懲戒解雇することは容易ではありませんので、ご安心ください。
万が一、懲戒解雇だといわれても、慌てずに懲戒解雇が無効であることを主張しましょう。ほとんどの事案において、不倫を原因とした懲戒解雇が無効とされる可能性が高いです。
とはいえ、ご自身で主張するのが難しかったり、少々気まずかったりする場合には弁護士に相談して対応してもらうのも一つの方法です。

退職を促されるケースはある

上記のとおり、不倫を理由に会社が懲戒解雇することは容易ではありません。
会社もそのことは理解していますので、会社は以下のような方法で退職を促し、当該従業員を退職に追い込むことが多いです。

まず、上司、人事部、社長などから会議室に呼び出され、不倫の経緯などを事細かに聞かれます。

・「会社への影響があまりにも大きい」
・「部下はみんな君のことを信用していないし嫌悪している」
・「取引先に知られて信頼を失った」
・「SNSにもあげられてしまっている」
・「ここにいても働きにくいだろうから君のためにも会社を辞めたらどうだろうか」

などと言われることもあるでしょう。
このようなことを立て続けに言われてしまい、不倫をしてしまったという後ろめたさと反省の気持ちでいっぱいになります。

そのような状況で、会社は優しく
もういいでしょう、ここにサインお願いします。
退職合意書をそっと出してきます。

場合によっては、
1~2か月分の給料払うから早くやめるのはいかがですか?
金銭的な条件も付加して提案されることもあります。

不倫で退職を促された場合の対処法

退職を促されても、絶対にその場で退職合意書などにサインをしてはいけません。
後ろめたさと反省の念でいっぱいのところに、優しくされ、ついつい退職合意書にサインさせられてしまいそうになると思います。

しかし、これにサインをしてしまうと、退職の合意が会社との間で成立してしまいます。
そうなってしまえば、もはや退職を争うことは非常に難しい状況に陥ります。

退職を避けたい場合には、圧力に屈せず毅然とした態度で退職合意を拒否しましょう。
なぜなら、退職勧奨はあくまで社員と会社での合意に基づくものであり、強制力がないからです。
なお、社内不倫などで業務上の影響がある場合には、配置転換などの措置が取られる可能性はあります。

退職を促すことが違法とされた裁判例では、

・合計10回以上、職務命令として教育委員会への出頭を命じられ(市役所が職場の事例でした)
・1から4人から20分から90分にわたって退職勧奨をされた

という事情がありました。

退職しないためにとるべき方法

不倫を理由に退職を促された場合は、退職しない旨を明確に示し不倫関係を解消することが大切です。

退職しない意思を明確にする

以上のとおり、退職しないためには、懲戒解雇にせよ、退職勧奨にせよ、毅然とした態度で退職しない旨を会社に伝えましょう。

退職勧奨を受けた際には、

・退職合意書などには絶対にサインしない
・会社とのやり取りは録音など記録に残しておく

ことが大切です。

とはいえ、自分一人で会社と交渉するのは勇気がいりますし、会社には人事部や顧問弁護士などもいますから決して簡単ではありません。その場合には、弁護士を通じて交渉をするのもよいでしょう。

不倫関係を解消する

不倫関係をきっぱり終わらせるというのも今後会社を退職しないために取るべき方法の一つということができます。

なぜなら、不倫を原因として会社から懲戒解雇ではないより軽微な懲戒処分を受けた場合に、

・変わらず不倫関係を継続する
・このことを会社からの度重なる注意を受ける
・それにも関わらず不倫関係を継続し、繰り返し職場秩序を著しく乱す
・改善に向けての努力がまったくみられない
・反省の態度も示さない

といった事情がある場合には、軽度の懲戒処分が繰り返され、最終的には改善の見込みなしとして、懲戒解雇される可能性があるからです。

不倫の退職に関するよくある質問

不倫と退職に関するよくある質問を紹介します。

自主退職をしたほうがいいケースはありますか?

不倫が会社にばれた場合、自主退職したほうがよいかという質問を受けることがあります。上記のとおり、法律的には一方的に退職をさせられることは基本的にありません。

ただし、社内に不倫の噂が広まり事実上社内の立場を失う、あるいは、社内で村八分にされてしまうこともあります。それでは仕事が円滑にできなくなってしまうこともありますし、気持ちよく仕事をすることもできません。職場によっては、昇進に影響することもあるでしょう。

このような場合には、思い切って転職をしてしまうのも一つの方法です。その場合であっても、退職時の条件などをしっかり交渉しましょう。転職時の留意点としては、厳しいことを会社から言われても感情的になってすぐに会社を辞めずに、次の職場が決まってから落ち着いて退職する方がよいでしょう。なぜなら、一度退職してしまうと、退職時の条件などを交渉することはできないからです。

自主退職する場合に注意することはありますか?

任意で退職する場合、自己都合退社会社都合退社があります。
退職勧奨による退職については、自己都合・会社都合のいずれの判断もあり得ます。

ただ、自己都合による退職は失業手当の給付条件が不利になったり、待機期間が長くなったりするなどの不利益があります。

例えば失業手当の給付日数は、解雇が最大330日であるのに対し、自己都合退職は最大150日となっています。
給付開始時期も、解雇は7日後からもらえますが、自己都合退職は3ヶ月後と受取が遅くなってしまいます。

なお、これは退職勧奨で退職する場合でも同じですので、仮に退職勧奨に応じるとしても、退職理由は自己都合ではなく、会社都合として処理してもらう方がよいです。

まとめ

会社に不倫がばれても一方的に退職させられることはほとんどありませんのでご安心ください。

また、会社からの退職勧奨にも応じる必要もありません。毅然とした態度で退職しない旨を伝えましょう。

自分での話し合いや交渉が難しい場合には、弁護士に相談するのもよいでしょう。

コラム監修者

SHIZU ISHIDA

SHIZU ISHIDA

所属:東京オフィス

広島県広島市出身。青山学院大学心理学科、東海大学法科大学院卒業後、新司法試験に合格し最高裁判所司法研修所を修了。弁護士として法曹界に入り、刑事、民事、法人案件等幅広い分野の専門知識を習得。弁護士登録10年目にしてネクスパート法律事務所に入所し、現在は主に離婚事件に注力している。

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