更新日:2026年7月22日 (水)
公開日:2026年7月22日 (水)
再開発の権利変換とは何か?対象となるものや流れについて解説
市街地再開発事業とは、土地が有効活用されず細分化して点在していたり、老朽化した木造建築物が密集していたり、道路や公園などの公共施設が未整備だったりする地域において、地区内の既存建物を除却して中高層のビル(施設建築物)を建築し、あわせて道路やオープンスペース等の整備を行う事業を指します。これは、都市再開発法に基づき、土地の合理的かつ健全な高度利用や都市機能の更新、および地域の防災性向上を図るために行われる重要なまちづくり事業です。
そのため、市街地再開発が予定されている施行地区内(エリア)にお住まいの方や、店舗などの不動産を所有・賃借している方(地権者等)は、原則として再開発組合などの施行者から「権利変換」という手続きを求められることになります。本記事では、「再開発の対象になったけれど立ち退きが必要なのか」といった不安を抱える地権者の方に向けて、権利変換制度とは何か、対象となる権利や権利変換を選択するメリット、具体的な手続きの流れについて実務上の観点からわかりやすく解説します。
再開発の権利変換とは?
市街地再開発における権利変換とは、再開発地区内の土地や建物について地権者が以前から有している権利(従前資産)を、それぞれの権利の価値に応じて、事業によって新たに建築されたビル(施設建築物)の床の一部(権利床)などに等価で移し替える仕組みを指します。
例えば、再開発前の地区で店舗を営業していた方が、完全な立ち退き(地区外への転出)をせずに、再開発後に建てられた新しい商業ビルの一部を取得して、引き続き店舗の営業を行うようなケースが権利変換の典型例です。
権利変換の手法には、都市再開発法に基づき、主に次の3つの種類があります。
地上権設定型(原則型)
地上権非設定型(111条型)
全員同意型(110条型)
各方式は、対象地区の権利関係や事業計画の性質に応じて施行者により選択・適用されます



再開発における権利変換の対象となる権利は?
原則として、権利変換の対象となる主な権利は以下の5つです。
土地の所有権
再開発事業前の土地を所有していた人は、原則として、再開発事業後に建てられたビル(施設建築物)の専有部分の床(居住用や店舗などのスペース)の一部、および敷地の共有持分としての所有権を取得できます。
建物の所有権
再開発事業前の土地に建っていた建物を所有していた人は、一般的に、再開発事業後に建てられたビルの床の一部(区分所有権)および、敷地の一部の権利を取得することが可能です。
借地権
再開発事業前の土地に対して借地権を有していた人は、実務上、再開発事業後に建てられたビルの床の一部に相当する権利、および敷地の共有持分としての借地権などを取得します。
借家権
再開発事業前の建物を賃借して住んでいたり営業したりしていた人(借家権者)は、再開発事業後に建てられたビルの床の一部に対して、従前と同等の条件による借家権(賃借権)を取得できます。
担保権
再開発事業前の土地または建物に対して、住宅ローン等の抵当権をはじめとする担保権が設定されていた場合、その権利は再開発事業後に建てられたビルの床・敷地の一部(新たに取得した権利)に対してそのまま移行して設定されます。
再開発で権利変換をするメリットは?
再開発で権利変換を選択する主なメリットは、以下の2点です。
資産の価値が実質的に維持される
権利変換を選択すれば、これまで所有していた土地や建物の資産価値を実質的に維持しながら、新しい不動産へ移行できる可能性があります。これは、都市再開発法における「等価の原則」に基づき、権利変換が再開発事業前に所有していた従前資産と同等の価値になるよう算定して行われるためです。最新の設備や高い耐震性を備えた新しいビルで安全に居住を継続できるほか、店舗であれば施設全体の集客力向上により、客足の増加や売上アップに繋がる可能性がある点も大きなメリットです。
一般的な等価交換方式等よりも税制上の優遇措置がある
権利変換は、通常の不動産の等価交換方式や売買と比較して、税金が優遇されるケースがあります。権利変換により従前資産に対応する権利床を取得した部分は、税務上、財産の譲渡(移動)がなかったものとみなされる特例(租税特別措置法など)があるため、原則として当該部分に係る譲渡所得税・法人税・不動産取得税などが非課税となります。この他にも、要件を満たすことで、固定資産税・事業所税の減免措置や、登記申請時にかかる登録免許税の非課税措置など、様々な税制上の優遇措置が講じられています。
再開発における権利変換の具体的な手続き・流れは?
再開発における権利変換手続きは、一般的に以下の流れで進行します。
施行者(再開発組合等)と地権者等の間で事業計画を決定する
まず、施行者(地方公共団体や市街地再開発組合など)が作成した再開発事業の計画案に対して、地権者等への説明や協議が行われます。事業計画には、施行地区、設計の概要、事業施行期間、資金計画等が定められており、組合施行の場合などは地権者の一定割合(原則3分の2など)の同意を得た上で、都道府県知事等の認可を受けて事業計画が決定されます。
都市再開発法に基づき「権利変換計画」が作成される
事業計画の決定後、施行者は「都市再開発法」の規定に基づき、誰がどの権利を取得するか、あるいは清算金を受け取るかを定めた「権利変換計画」を作成します。地権者等の関係権利者は、作成された権利変換計画の内容に納得ができない場合、計画の縦覧期間中(認可前)であれば施行者に対して意見書の提出が可能です。
権利変換計画の認可手続きが行われる
意見書の処理等を経て、施行者は都道府県知事等に対して権利変換計画の認可を申請し、認可手続きが行われます。この審査では、都市再開発法に定める権利変換手続に関する規定に従って、等価の原則や権利者の保護に配慮した計画が適法に策定されているかどうかが厳格に確認されます。権利変換計画の申請にあたっては、関係権利者の一定の同意割合(または全員同意など)を満たしていることが基準の一つとなり、要件を欠く場合は認可されません。
権利変換処分(権利の移行)が行われる
事前に権利関係者へ権利変換期日が通知され、その期日をもって、従前の土地・建物の権利は消滅し、再開発後の新しいビル(施設建築物)に関する権利へと法的に一斉移行します(※物理的な建物の明け渡しや解体工事、新しいビルへの入居は、この処分の後に行われます)。
まとめ
お住まいの地域や店舗のあるエリアで市街地再開発が予定されている場合、地権者は「権利変換を選択して新しいビルに残る(入居する)」か、「立ち退き(清算金を受け取っての地区外への転出)を選ぶ」かという重要な判断を迫られます。自身の権利が適正に評価されているか、手続き内容に不利益がないかなど、どうしていいかわからないとお悩みの方は、早い段階で不動産案件や立ち退き交渉を多数手掛けている弁護士に相談することをおすすめします。
ネクスパート法律事務所には、再開発事業や不動産案件を得意とする弁護士が在籍しております。地権者の皆様の権利を守るための適切なサポートを提供いたしますので、ぜひお気軽にお問合せください。 [source: 1]