更新日:2021年3月18日 (木)

公開日:2021年3月18日 (木)

法人破産で滞納税金はどうなる?原則消滅と支払義務が残る例外

法人破産で滞納税金はどうなる?原則消滅と支払義務が残る例外 法人破産で滞納税金はどうなる?原則消滅と支払義務が残る例外

サマリー

会社の破産を検討する際、法人名義で滞納している税金や社会保険料が代表者個人に請求されるのではないかと不安に感じる経営者の方は少なくありません。法人が破産手続を完了すると法人格が消滅するため、滞納していた公租公課の支払義務も原則として消滅します。しかし、一定の条件に該当すると代表者などに請求が及ぶ例外的なケースも存在します。この記事では、法人破産に伴う滞納税金や社会保険料の基本的な取り扱いをはじめ、支払義務が残る例外的なケースや手続上の注意点について解説します。

法人破産をすると滞納税金や社会保険料はどうなる?

会社や法人の破産手続が進められる際、未払いの税金や社会保険料がどのように扱われるのかについて、疑問を持たれるケースは少なくありません。

法人格の消滅に伴う滞納税金・社会保険料の原則消滅

法人破産の手続きが終了すると、会社の法人格そのものが法的に消滅します。債務の主体であった法人が存在しなくなるため、その会社に対して発生していた債権も原則としてすべて消滅することになります。

法人の消滅に伴い、未払いであった法人税や消費税などの公租公課や社会保険料の請求権も原則として消滅します。

したがって、破産手続が完了して法人格が消滅した後は、法人が滞納していた税金や社会保険料を納付する義務は残らないのが基本的な仕組みです。

法人と代表者個人の別人格性

法人が破産して消滅した場合でも、代表者個人にその支払義務が引き継がれるのではないかと心配されることがあります。

しかし、法律上、法人と自然人である代表者個人はそれぞれ独立した別人格です。そのため、法人が負っていた滞納税金や社会保険料の納付義務が、当然に代表者個人へ移転することはありません。

個人の自己破産(非免責債権)との違い

法人破産の税金の取り扱いが誤解されやすい理由の一つに、個人の自己破産制度との混同が挙げられます。個人の自己破産では、免責が認められても税金や社会保険料は「非免責債権」として残り、支払義務が免除されません。

これに対して法人破産の場合は、債権が免責されるのではなく、債務者である法人自体が消滅することによって債権の請求先がなくなるという違いがあります。

なお、会社と同時に代表者個人も自己破産を申し立てる場合、代表者個人名義で滞納している税金(所得税や住民税など)については非免責債権となり、手続後も支払義務が残る点に注意が必要です。

法人破産後も滞納税金の支払義務が残る3つの例外ケース

法人破産によって滞納税金や社会保険料の請求権が原則として消滅するとはいえ、法令の定めや個別の契約・手続きの経緯によっては、例外的に代表者や関係者に支払義務が残る場合があります。

支払義務が残る可能性のある代表的なケースとして、主に以下の3点が挙げられます。

1. 合名会社・合資会社の無限責任社員である場合

株式会社や合同会社の出資者は有限責任ですが、合名会社の社員や合資会社の無限責任社員は、会社の債務に対して直接・連帯して無限の責任を負う立場にあります。

そのため、法人が破産手続によって消滅した場合であっても、無限責任社員としての地位に基づく納税義務は消滅せず、個人として滞納税金の弁済責任を負い続けることになります。

2. 財産や事業の無償・廉価譲渡により第二次納税義務が発生する場合

破産前の法人が、所有する財産や事業を無償または不相当に低い対価で代表者や親族、別会社などの第三者へ譲渡していた場合、税法上の「第二次納税義務」が適用される可能性があります。

第二次納税義務が成立すると、本来の納税義務者である法人に代わり、財産等の譲渡を受けた側が滞納税金を納付しなければならなくなることがあります。

ただし、破産手続の中で破産管財人が否認権を行使し、譲渡された財産が本来の破産財団に組み入れられた場合には、譲受人に対する第二次納税義務の追及が回避されることもあります。

3. 過去に納税保証書を提出するなど納税保証をしている場合

税金の滞納や申告漏れなどの対応過程において、代表者個人などが税務署等に対して「納税保証書」を差し入れている事例があります。

納税保証を行っている場合、主債務者である法人が破産して法人格が消滅したとしても、保証人としての個人の責任はそのまま残ります。

納税保証を行っているケースでは、法人の消滅にかかわらず保証人個人に対して滞納税金の納付請求が及ぶため注意が必要です。

破産手続における滞納税金の配当順位と滞納処分

破産手続が開始されると、破産管財人が法人の財産を換価・回収して債権者に配当を行いますが、滞納している税金や社会保険料などの公租公課は、金融機関からの借入金や一般の買掛金よりも優先的に弁済や配当が行われる仕組みになっています。

滞納税金等の3つの優先区分(財団債権・優先的破産債権・劣後的破産債権)

破産手続において、公租公課の請求権はその発生時期や性質に応じて「財団債権」「優先的破産債権」「劣後的破産債権」の3つに分類され、充当される優先順位が定められています。

債権区分 該当する主な公租公課 手続上の取り扱い
財団債権 破産手続開始前の原因に基づき、納期限が未到来または納期限から1年以内の本税、これに伴う延滞税など 破産手続によらず、破産財団から随時・最優先で弁済される
優先的破産債権 財団債権および劣後的破産債権に該当しない公租公課(納期限から1年を超えて経過している本税など) 財団債権の弁済後、一般の破産債権に先立って優先的に配当される
劣後的破産債権 手続開始前の原因に基づく加算税・加算金、一定の延滞税・利子税など 一般の破産債権への配当が完了した後に、残余がある場合に配当される

このように、納期限から間もない税金等は「財団債権」として手厚く保護され、破産財団から優先的に支払われます。破産財団の資産からこれらの公租公課を弁済・配当してもなお残った未納分は、最終的に法人の消滅とともに消滅することになります。

迅速に行われる税金の滞納処分と破産開始による影響

税金や社会保険料を滞納している場合、行政機関による「滞納処分(財産の差押え)」に注意が必要です。一般的な民事債権では裁判を起こして確定判決などを得てから差押えを行いますが、滞納処分の場合は裁判手続を経る必要がありません。

法律上は督促状の送付から10日が経過すると差押えが可能となるため、通常の債権回収に比べて極めて迅速に預金口座や売掛金などが差し押さえられるリスクがあります。

また、破産手続開始決定が下りると、一般的な強制執行は中止または失効しますが、開始決定前にすでに着手された税金の滞納処分については、原則としてそのまま続行され、当然には停止・取り消しがなされません。事業資金の口座が差し押さえられると事業停止や破産申立ての準備自体に支障をきたすおそれがあるため、早期の状況把握が重要となります。

例外的に支払義務が残った場合の対処方法

法人破産の手続を経ても、第二次納税義務の追及や過去の納税保証などによって、代表者個人等に公租公課の納付義務が残ってしまう場合があります。このような状況になった際、請求を放置することは避けなければなりません。

請求を放置すると個人財産への滞納処分が進められるおそれがあるため、速やかな窓口への連絡が望まれます。

税務署や各自治体の担当窓口への相談

支払義務が課された通知書や督促状が届いた場合には、記載されている管轄の税務署や自治体の徴収担当窓口へ速やかに相談することが基本的な対応となります。

会社の破産に伴い個人としての資力や収入状況も大きく変化している旨を説明し、現在の正確な経済状況を担当者に伝えることが大切です。誠実に対応することで、状況に応じた納付方法の検討に進められる可能性があります。

分納や納税の猶予制度の利用可能性

一括での納付が困難である場合、毎月無理のない金額で支払っていく分割納付(分納)の協議を行うことが一般的です。窓口で生活状況や今後の見通しを共有しながら、具体的な返済計画を相談していきます。

また、一定の要件を満たす場合には、法律に基づく「換価の猶予」や「納税の猶予」といった公的な制度の適用が認められるケースもあります。猶予が認められれば、一定期間の差押えが猶予されたり、延滞税の一部が免除されたりすることがあります。

ただし、これらの制度が利用できるか否かや猶予の条件は個別の事情や行政庁の判断によって異なります。収支を証明できる資料などをあらかじめ整理したうえで相談に臨むことが推奨されます。

法人破産と税金の滞納に関する弁護士への相談

滞納処分が進む前の速やかな状況整理

会社の資金繰りが悪化して税金や社会保険料の滞納が続いている場合、早期に状況を整理することが求められます。公租公課の滞納処分は、一般的な民事債権の差押えと異なり、裁判手続を経ることなく迅速に行われる傾向があります。

万一、会社の預金口座や売掛金などの重要財産が差し押さえられてしまうと、事業の停止や破産申立てに必要な予納金などの費用確保が困難になり、手続の円滑な進行に支障をきたすおそれがあります。

滞納処分が本格化する前に自社の負債総額や滞納状況を正確に把握し、速やかに対処方針を検討することが大切です。

法人の資産や帳簿書類などの現状をあらかじめ適切に整理しておくことは、申立て後の破産管財人による調査や換価手続を滞りなく進めるためにも役立ちます。

状況に応じた破産手続の進め方と弁護士への相談

法人の破産手続を進めるにあたっては、滞納している公租公課の額だけでなく、金融機関からの借入金や取引先への未払金など、負債全体の構造を総合的に見極める必要があります。

弁護士に相談することで、破産申立ての適切なタイミングの検討や、代表者個人の連帯保証債務への対応も含めた全体的な手続の流れについて助言を受けられます。

また、法人の財産処分状況を踏まえ、第二次納税義務などの例外的な支払義務が発生するリスクが存在しないかといった点についても、法的観点から確認することが可能です。

判断を先送りにせず、個々の法人の状況に応じた適切な手続を進めるためにも、税金の滞納や資金繰りに不安が生じた段階で、弁護士へ相談することを検討するとよいでしょう。

コラム監修者

KOHEI TAKASAWA

KOHEI TAKASAWA

所属:東京オフィス

東京都立大学法科大学院修了後、新司法試験合格。 弁護士登録以前は、上場準備中の企業(現・東証グロース市場上場企業)の管理部門において、IPO準備業務に従事。

弁護士詳細を見る

関連記事を見る

資金調達で弁護士に相談すべき理由とは?契約・手続きの注意点

2025.08.07

資金調達で弁護士に相談すべき理由とは?契約・手続きの注意点

法人破産とは?手続きの流れ・費用・代表者の処遇などを詳しく解説

2022.08.26

企業破産

法人破産とは?手続きの流れ・費用・代表者の処遇などを詳しく解説

会社・法人破産の手続きの流れとは?倒産との違いを解説

2021.03.26

法人破産

会社・法人破産の手続きの流れとは?倒産との違いを解説

下請法改正(取適法)の従業員基準とは?適用要件と企業対応

2025.08.15

下請法改正(取適法)の従業員基準とは?適用要件と企業対応

周知表示混同惹起行為とは?成立要件や違反時のリスクを解説

2025.08.18

不正競争防止法

周知表示混同惹起行為とは?成立要件や違反時のリスクを解説

PREV
NEXT