更新日:2026年10月21日 (水)
公開日:2026年10月21日 (水)
アスベスト給付金が不認定になる理由とは?不支給時の対処法を解説
サマリー
建設アスベスト給付金を申請したものの、不認定の通知が届いて今後の対応に悩んでいる方や、申請にあたって不支給となるリスクを把握しておきたい方もいるのではないでしょうか。
給付金が認められない背景には、就労期間や対象職種、医学的要件に関する立証不足など、いくつかの要因が考えられます。
また、不認定と判断された場合でも、審査請求や訴訟、他制度の活用など複数の対処法が検討可能です。
この記事では、給付金が不認定となる主な原因や、不支給通知を受け取った後の具体的な対応手順について詳しく解説します。
建設アスベスト給付金が不認定(不支給)となる主な理由
建設アスベスト給付金(特定石綿被害建設業務労働者等認定給付金)は、国の定めた救済要件に基づいて審査が行われます。
法律で定められた客観的要件に合致しない場合や、それを裏付ける証拠が不十分と判断された場合には、不認定の通知が届くことがあります。
対象期間における就労期間が不足していると判断された場合
給付金の支給対象となるには、国が定めた対象期間(原則として昭和47年10月1日から平成16年9月30日までの間など)において、一定期間以上、石綿粉じんに曝露する屋内建設作業に従事していた実績が必要です。
必要とされる就労期間は発症した指定疾病の種類によって異なり、基準に満たない期間しか証明できない場合は不支給と判断される傾向にあります。
| 対象疾病 | 必要とされる主な従事期間の目安 |
|---|---|
| 中皮腫 | 1年以上の石綿曝露作業従事 |
| 気管支肺がん | 1年以上の石綿曝露作業従事
(加えて石綿曝露所見等が必要) |
| 著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚 | 3年以上の石綿曝露作業従事 |
| 良性石綿胸水 | 1年以上の石綿曝露作業従事 |
| 石綿肺(じん肺管理区分等に応じる) | おおむね1年以上
(または管理区分判定に応じた期間)の従事 |
指定疾病の医学的要件を満たしていないとされた場合
給付金の請求には、対象となる指定疾病に罹患していることだけでなく、それが石綿への曝露によって引き起こされたことを示す医学的要件の確認が必要です。
たとえば肺がんの場合、単に肺がんと診断されているだけでは足りず、胸部CT画像における胸膜プラークの存在や、肺組織中の石綿小体の検出など、石綿曝露を医学的に裏付ける所見が求められることがあります。
診断書や検査画像の記載が基準に達していないと判断されると、不認定の原因となります。
対象職種や屋内作業従事の客観的証拠が不十分な場合
給付の対象職種は大工、左官、内装工、吹付工、電工、配管工など、主に屋内作業場で石綿建材を扱ったり周辺で作業を行ったりしていた方に限られます。
屋外作業が中心であった場合や、対象外の職種とみなされた場合は支給が認められません。
過去の就労実態を証明するために、年金記録や雇用保険記録、確定申告書、工事経歴書のほか、元請会社や同僚による証明書などを提出する必要があります。
古い時代の就労であるため客観的な資料が散逸しているケースも多く、作業実態の立証不足が不認定につながる一因となっています。
実際には要件を満たす作業に従事していた場合でも、提出書類による証明が不足していると不支給と判断されるリスクがあります。
不認定の決定が届いた際の主な対応手順

建設アスベスト給付金の請求に対して不認定(不支給)の通知が届いた場合でも、その判断が絶対に変更されないわけではありません。
どのような理由で要件を満たさないと判断されたのかを正確に把握し、適切な手続きを選択することが重要です。
不認定通知書に記載された理由の確認
不認定の決定が下された際は、まず手元に届いた不支給決定通知書の内容を詳しく確認します。
通知書には、どの要件について証拠が不足していたのか、または基準に合致しなかったのかという具体的な理由が記載されています。
例えば、医師の診断内容や石綿小体等の医学的基準が不足しているのか、あるいは従事期間や職種に関する客観的資料が足りないのかによって、次に取るべき対応が大きく異なります。
決定理由の精査は、その後の手続き方針を決めるための第一歩となります。
行政不服審査法に基づく審査請求
不認定の処分に不服がある場合は、行政不服審査法に基づき、厚生労働大臣に対して審査請求を行う手続きが用意されています。
これは行政庁内部において、処分が適法かつ妥当であったかを再審査する制度です。
審査請求を行うことができる期間は、不認定の決定を知った日の翌日から起算して3か月以内と定められています。
期限を過ぎると原則として審査請求を行うことができなくなるため、通知書を受け取った日付を正確に確認しておく必要があります。
審査請求書には、不認定処分が不当であるとする具体的な理由や法令上の根拠を論理的に記述することが求められます。
新たな資料や客観的証拠を揃えた再申請の検討
処分の妥当性を争う審査請求のほかに、不足していた証拠を補強した上で改めて給付金の再申請を行う選択肢も考えられます。
初回の申請時点では提出できなかった就労資料や追加の医学的意見書が見つかった場合などに有効な方法です。
同僚の証明書や過去の工事経歴書、保管されていた古い診断画像などを新たに添付することで、初回の審査では認められなかった要件が立証できる可能性があります。
状況に応じて審査請求と再申請のどちらが適しているかを慎重に見極めることが大切です。
| 対応方法 | 手続きの概要 | 期限・時期の目安 | 主な検討場面 |
|---|---|---|---|
| 審査請求 | 厚生労働大臣に対し、不認定処分の違法性・不当性を申し立てて再審理を求める | 処分を知った日の翌日から3か月以内 | 提出済みの証拠に対する行政側の判断に明らかな誤認や法令適用の誤りがあると考えられる場合 |
| 再申請 | 初回申請で不足していた客観的証拠や追加資料を揃え、再度給付金の認定を求める | 給付金の請求期限内
(制度上の請求期限に準じる) |
新たな職歴証明や過去のカルテ、追加の画像所見など、新規の客観的証拠が入手できた場合 |
不認定処分に対する国家賠償請求訴訟という選択肢
行政機関に対する審査請求で主張が認められなかった場合や、書面審査のみでは実態の立証が困難な場合、裁判所に国家賠償請求訴訟を提起するという選択肢が考えられます。
行政手続きでは定型的な認定基準に当てはまらないと判断されたケースでも、司法の場では個別具体的な就労実態や作業環境が総合的に考慮されることがあります。
過去の裁判例においても、訴訟提起後に新たな証拠や医学的知見を提示した結果、国との間で和解が成立し、救済金相当額の支払いに至った事例が存在します。
訴訟手続きにおける立証責任と追加証拠の集め方
国家賠償請求訴訟では、原告側が石綿への曝露状況、作業に従事した期間や職種、発症した疾病との因果関係について主張・立証を行う必要があります。
給付金審査で不認定となった理由を精査したうえで、客観的証拠の不足を補うための多角的なアプローチが求められます。
具体的には、当時の同僚や元請業者からの詳細な陳述書、作業当時の現場写真、取引伝票、道具の購入履歴などを集め、就労実態を間接的に裏付ける証拠を積み上げます。
また、医学的判断が争点となっている場合には、呼吸器疾患に知見を持つ医師の意見書や再読影の結果などを追加し、病態の該当性を補強していくことが検討されます。
行政手続きと訴訟手続きの比較
| 比較項目 | 行政手続き(給付金・審査請求) | 司法手続き(国家賠償請求訴訟) |
|---|---|---|
| 主な判断機関 | 厚生労働省・審査会 | 裁判所(裁判官) |
| 審理の傾向 | 定型的な要件に基づく書面審査が中心 | 個別事情や間接証拠を踏まえた実質的な審理 |
| 解決の形式 | 支給決定または不支給決定 | 判決または裁判上の和解 |
| 期間の目安 | 数か月〜1年程度 | 1年〜数年程度 |
訴訟を検討する際の期間と手続き上の留意点
訴訟手続きは期日を重ねて慎重に進行するため、提起から解決に至るまでに年単位の期間を要することが一般的です。
さらに、国家賠償請求権には消滅時効が存在し、損害および加害者を知った時から原則として3年以内、または不法行為時から20年以内に提訴する必要があります。
提訴にあたっては、立証に要する時間や費用、身体的・精神的な負担を総合的に考慮したうえで判断することが大切です。
労災保険や石綿健康被害救済法など他制度の確認
建設アスベスト給付金の請求が認められなかった場合でも、石綿健康被害に関する公的な補償・救済の道がすべて閉ざされたわけではありません。
関連する制度として、労働者災害補償保険(労災保険)や、石綿健康被害救済法に基づく救済給付制度が存在します。
それぞれの制度は創設の目的や給付の要件、対象者の範囲が異なるため、給付金が不支給となった場合でも別の制度で救済される可能性があります。
各制度の目的と対象範囲の違い
建設アスベスト給付金は、国の責任が認められた特定の期間や職種において、一定以上の石綿曝露作業に従事した労働者や一人親方等を対象とする制度です。
これに対して労災保険は、原則として雇用されて働いていた労働者における業務上の疾病を補償する仕組みとなっています。
一方、石綿健康被害救済法は、労災保険の対象とならない一人親方や企業の役員、さらには工場の周辺住民など、業務・居住環境を問わず指定疾病にかかった方を広く救済することを主眼に置いています。
そのため、建設現場での就労期間の証明が不十分で給付金が不認定となった方でも、同法による医療費等の支給を受けられる場合があります。
公的救済制度の比較一覧
| 制度名 | 主な対象者 | 主な給付内容 | 請求期限の目安 |
|---|---|---|---|
| 建設アスベスト給付金 | 対象期間・職種に合致する元建設作業員
(一人親方等を含む) |
損害賠償の性質を持つ給付金(最大1,300万円等) | 指定疾病の診断日等から一定期間
(疾病により異なる) |
| 労災保険 | 業務により石綿に曝露した労働者
(特別加入者を含む) |
療養補償給付、休業補償給付、遺族補償給付など | 療養・休業は2年、遺族給付等は死亡から5年など |
| 石綿健康被害救済制度 | 労災の対象外となる一人親方、周辺住民など指定疾病の罹患者 | 医療費、療養手当、特別遺族弔慰金など | 特別遺族弔慰金等は死亡から一定期間
(法改正等による猶予あり) |
申請期限と認定基準に関する留意点
各制度の利用を検討するにあたっては、請求期限と認定基準の相違に留意する必要があります。
労災保険では業務起因性の立証が重視され、遺族補償一時金などは被災者の死亡の翌日から5年で時効を迎えるなど、厳格な期限が設定されています。
また、石綿健康被害救済法では、中皮腫や肺がんなどの医学的判定基準が労災保険と概ね共通している部分があるものの、就労に関する詳細な立証が困難な場合でも医学的所見に基づいて給付が認められることがあります。
給付金の不認定理由を精査し、他制度の要件に照らし合わせたうえで申請手続きを検討することが有益です。
まとめ
建設アスベスト給付金が不認定となった場合でも、通知書に記載された理由を精査し、不足していた証拠の補強や審査請求、国家賠償請求訴訟といった手続きを検討することができます。
不支給の判断を受けたからといって直ちに救済の道が閉ざされるわけではありません。
就労歴や従事作業の客観的な立証、医学的所見の再確認などには法的な視点からの検討が有効となるケースがあります。
弁護士法人ネクスパート法律事務所では、アスベスト被害や給付金申請に関するご相談を受け付けております。
不認定の通知を受け取って今後の対応に悩まれている方は、ぜひ一度ご相談ください。
コラム監修者
Shunsuke Teragaki
所属:代表(東京オフィス)
広島県広島市出身。修道中学・高校を経て、慶應義塾大学商学部で経営・会計・商取引を学ぶ。その後、青山学院大学法科大学院を修了して2011年に新司法試験に合格し、最高裁判所司法研修所を修了(65期)。2013年1月に第二東京弁護士会に弁護士登録し、都内法律事務所で個人・法人を問わず幅広い分野の相談・交渉に取り組む。
2016年1月に佐藤塁と共にネクスパート法律事務所を創業し、共同代表として、東京オフィスを拠点に、企業のコーポレート法務、M&A・事業承継、薬事・医事法務を中心に取り扱う。商学部で培った経営の視点を生かし、法的な可否にとどまらず、事業への影響や実行可能性まで含めた選択肢を示すことを重視している。
また、一般社団法人薬機法医療法規格協会の代表理事、一般社団法人日本美容サロン協議会の監事、一般社団法人睡眠ヘルスケア協議会の外部有識者(認証評価委員)を務め、医療・美容・ヘルスケア分野の広告規制や業界の自主的なルールづくりにも関わっている。依頼者に最適な見通しと戦略的な解決策を示すことを信条とし、丁寧かつ粘り強い対応で信頼を築いている。