更新日:2026年10月21日 (水)
公開日:2026年10月21日 (水)
アスベストは何年以降の建物なら安全?規制の歴史と事前調査を解説
サマリー
建物の解体やリフォーム、中古物件の購入を検討する際、アスベスト(石綿)が使われていないか気になる方も多いのではないでしょうか。
国内では段階的な法改正を経て規制が強化されてきましたが、何年以降の建物であれば使用されていないのか、判断基準を正確に知ることが大切です。
築年数を見る際には、完成日ではなく工事着工日を確認する必要があるなど、いくつか押さえておきたい注意点もあります。
この記事では、アスベスト規制の歴史や安全とされる年代の基準、工事の際に必要となる事前調査のルールについて分かりやすく解説します。
アスベストは何年以降の建物なら使われていない?
建築物においてアスベスト(石綿)が使われているかどうかを判別する際、一つの明確な目安となるのが「2006年(平成18年)9月1日」という日付です。
原則として、2006年(平成18年)9月1日以降に着工された建物には、アスベストを含む建材は使用されていません。
この日付が大きな境界線となっている背景には、労働安全衛生法施行令の改正があります。
同施行令の改正によって、アスベストの含有量が0.1重量%を超える製品について、製造や輸入、譲渡、提供、そして新たな使用が全面的に禁止されました。
石綿含有量「0.1重量%超」の全面禁止とその背景
2006年の法改正以前にもアスベストに対する法規制は段階的に進められていましたが、一部の工業製品や代替建材の開発が難しかった部材については、例外的な猶予が残されていました。
しかし、労働者や周辺住民への健康被害に対する社会的関心が高まったことを受け、規制が抜本的に強化されました。
重量比で0.1%を超えるすべての石綿製品が禁止対象となったことで、建材に意図的にアスベストを使用することが実質的に不可能となった経緯があります。
| 比較項目 | 2006年8月31日以前 | 2006年9月1日以降 |
|---|---|---|
| 禁止される含有基準 | 1重量%を超える一部製品 | 0.1重量%を超える原則すべての製品 |
| 建材への使用 | 猶予対象の建材は使用可能 | 新規の製造・輸入・使用が全面的に禁止 |
| 建物への影響 | アスベスト含有建材が使われた可能性あり | 着工時点で使用されていないとされる |
そのため、2006年9月1日以降に工事が始められた建物については、法律上アスベスト建材が使用されていないと整理されています。
ただし、建物の安全性を確認するうえでは、竣工日ではなく「工事の着工日」を正しく見極める必要があります。
段階的に強化されたアスベスト規制の歴史
日本におけるアスベスト(石綿)の規制は、一度にすべて禁止されたわけではありません。
健康被害への懸念や国際的な規制の広がりを背景に、数十年をかけて対象物質や含有率の基準が段階的に引き下げられてきた歴史があります。
1975年:吹付けアスベストの原則禁止
本格的な規制の始まりとなったのが1975年(昭和50年)です。特定化学物質等障害予防規則の制定に伴い、石綿を5重量%を超えて含む吹付け作業が原則として禁止されました。
ただし、この時点では含有率が5重量%以下のものや、吹付け工法以外の成形板建材(スレートボードや石膏ボードなど)については引き続き使用が認められていました。
1995年:高毒性石綿の禁止と基準の引き下げ
1995年(平成7年)には労働安全衛生法施行令が改正され、石綿の中でも特に発がん性や毒性が強いとされるクロシドライト(青石綿)およびアモサイト(茶石綿)の製造や輸入、使用が禁止されました。
あわせて吹付け石綿の含有率基準も従来の5重量%超から1重量%超へと強化され、より低濃度の吹付け建材に対しても制限がかけられることとなりました。
2004年:主要な建材製品の製造禁止
2004年(平成16年)10月にはさらに規制対象が拡大され、クリソタイル(白石綿)を含む1重量%超の石綿製品が対象となりました。
屋根材や外壁材、内装材、摩擦材など10製品群の製造や使用が禁止され、一般住宅向けの建材からも石綿製品が順次姿を消していきました。
2006年の全面禁止から2012年の完全撤廃へ
2006年(平成18年)9月1日には、石綿の含有率基準が「0.1重量%超」へと大幅に厳格化され、原則としてすべての石綿含有製品の製造や使用が禁止されました。
当時は代替技術の確立が困難であった一部の工業製品(耐薬品性パッキンや特定のシール材など)に限り例外的に猶予措置が残されていましたが、2012年(平成24年)3月にはすべての例外が撤廃され、国内における石綿製品の製造・使用は完全に終了しました。
建物の建築年代を確認する際は、どの規制段階で設計・着工されたかによって使われている建材の種類や石綿の含有濃度が大きく異なります。
| 時期 | 主な規制内容 | 当時の規制基準(含有率) |
|---|---|---|
| 1975年(昭和50年) | 吹付け石綿作業の原則禁止 | 5重量%超 |
| 1995年(平成7年) | 青石綿・茶石綿の禁止、吹付け材の規制強化 | 1重量%超 |
| 2004年(平成16年) | 屋根材・壁材など主要建材製品の製造禁止 | 1重量%超 |
| 2006年(平成18年) | 石綿製品の全面的な製造・使用禁止(一部猶予あり) | 0.1重量%超 |
| 2012年(平成24年) | 代替困難とされた製品の適用猶予が撤廃(完全撤廃) | 0.1重量%超 |
築年数や登記情報だけで判断する際の注意点
建物の安全性を確認する際、登記簿謄本(登記事項証明書)に記載されている「新築年月日」を基準にしてしまいがちです。
しかし、法令上の規制が適用されるかどうかを判断するうえで基準となるのは、建物が完成した竣工日ではなく、工事に着手した「着工日」です。
アスベスト規制の適用基準となるのは完成日ではなく「着工日(工事着手日)」である点に注意が必要です。
2006年9月以降に完成した建物でも含有の可能性がある理由
たとえば、2006年(平成18年)秋以降に完成した建物であっても、実際の工事着手が同年8月以前であった場合、全面禁止前の基準に基づいて設計・施工されているケースがあります。
特に鉄筋コンクリート造のマンションや規模の大きい建築物では、着工から完成までに1年以上の工期を要することも珍しくありません。
そのため、登記上の新築年が2006年後半や2007年であっても、着工時期が規制強化前であればアスベスト含有建材が使用されている可能性が残ります。
表面的な築年数や登記情報だけで「規制以降の建物だから使われていない」と断定するのは避けるのが賢明です。
公的書類を用いた着工日の確認方法
正確な着工時期を把握するためには、登記簿謄本以外の建築関連書類を確認することが重要です。
一般的に着工日は建築確認の手続きを経て決定されるため、建築確認申請に伴う書類が有力な手掛かりとなります。
具体的には、建築主事等から交付される「確認済証」の交付年月日を確認することで、概ねその直後に工事が開始されたと推測できます。
もし手元に当時の書類が保管されていない場合でも、各自治体の建築指導窓口で「建築台帳記載事項証明書」等の発行を受けることにより、当時の確認済証交付年月日を照会できることがあります。
| 確認書類 | 確認できる主な日付 | 着工時期の確認における特徴 |
|---|---|---|
| 登記事項証明書(登記簿) | 新築年月日(竣工時期) | 完成日のみが記載され、着工日の特定には至らない |
| 確認済証・確認申請書 | 確認済証交付年月日 | 工事着工直前に交付されるため着工時期の判断材料となる |
| 検査済証 | 完了検査年月日 | 工事完了後の検査日であり、着工時期の特定には適さない |
| 建築台帳記載事項証明書 | 確認済証交付年月日など | 書類紛失時も自治体窓口で過去の台帳記録を確認できる |
このように、解体や改修、中古建物の売買に際してアスベストの有無を想定する場合は、登記情報の築年数のみに頼らず、公的書類を通じて着工時期を慎重に確認することが求められます。
近年の法改正に伴う解体・改修工事の事前調査義務
建物の解体工事やリフォームなどの改修工事を行う際、大気汚染防止法および労働安全衛生法の改正により、アスベストの事前調査や結果の報告手続きが段階的に厳格化されています。
過去の工事において石綿の飛散防止対策が徹底されていなかった事例などを背景に、現在では工事の規模や作業内容に応じた明確な法的義務が課されています。
2022年4月施行:一定規模以上の工事における電子報告の義務化
2022年(令和4年)4月1日以降、一定規模以上の解体・改修工事を行う施工業者は、アスベストの有無に関する事前調査結果を、管轄の労働基準監督署および地方自治体へ報告することが義務付けられました。
この報告は、原則として国が整備した「石綿事前調査結果報告システム」を介して電子申請で行われます。
アスベストが含まれていないと判断された場合であっても、対象規模に該当すれば報告を省略することはできません。
2023年10月施行:有資格者による事前調査の義務化
さらに2023年(令和5年)10月1日からは、建物の事前調査を実施できる者が、専門の講習を修了した有資格者などに限定されることとなりました。
調査を担当できるのは、「一般建築物石綿含有建材調査者」「特定建築物石綿含有建材調査者」「一戸建て等石綿含有建材調査者(一戸建て住宅・共同住宅の住戸内部のみ)」などの資格を有する者に限られます。
これにより、現地での目視調査や書面調査の正確性がより厳格に担保される体制が整えられました。
着工年に関わらず原則として事前調査が必要とされる理由
実務上特に注意が必要となるのは、アスベストが全面禁止された「2006年9月1日以降」に着工された建物であっても、原則として事前調査の手続きそのものが免除されるわけではない点です。
確認済証などの公的書類により、2006年9月以降の着工であることが確認できれば、書面調査をもって「石綿含有建材なし」と整理し、検体の採取や分析調査を省略できる場合があります。
しかし、その判断を下すための確認行為自体が法令上の事前調査に該当します。
建築年が比較的新しい建物であっても、解体や改修の際には法令に基づく所定の確認手続きが必須となる点に留意が必要です。
| 施行時期 | 法改正の主な内容 | 主な要件・対象 |
|---|---|---|
| 2022年4月〜 | 事前調査結果の電子報告義務化 | 解体工事:対象床面積80㎡以上 改修工事:請負代金100万円(税込)以上 |
| 2023年10月〜 | 有資格者による事前調査の義務化 | 建築物石綿含有建材調査者などの資格保持者による現地目視・書面確認 |
| 現行の運用 | 着工年を問わない事前調査の実施 | 2006年9月以降着工の建物も公的書類等による確認手続きが必要 |
まとめ
2006年9月1日以降に着工された建物は、原則としてアスベストが使用されていません。
しかし、基準となるのは建物の完成時期ではなく「着工時期」であるため、確認済証などの公的書類をもとに正確な日付を把握することが不可欠です。
また、解体や改修工事を行う際は、建築時期にかかわらず有資格者による事前調査や行政への報告が義務付けられています。
トラブルを未然に防ぐためにも、関係法令に基づいた適切な手順を踏むことが重要です。
不動産の売買や工事に伴うアスベストをめぐる法的トラブルなどでお困りの際は、弁護士法人ネクスパート法律事務所へご相談ください。
コラム監修者
Shunsuke Teragaki
所属:代表(東京オフィス)
広島県広島市出身。修道中学・高校を経て、慶應義塾大学商学部で経営・会計・商取引を学ぶ。その後、青山学院大学法科大学院を修了して2011年に新司法試験に合格し、最高裁判所司法研修所を修了(65期)。2013年1月に第二東京弁護士会に弁護士登録し、都内法律事務所で個人・法人を問わず幅広い分野の相談・交渉に取り組む。
2016年1月に佐藤塁と共にネクスパート法律事務所を創業し、共同代表として、東京オフィスを拠点に、企業のコーポレート法務、M&A・事業承継、薬事・医事法務を中心に取り扱う。商学部で培った経営の視点を生かし、法的な可否にとどまらず、事業への影響や実行可能性まで含めた選択肢を示すことを重視している。
また、一般社団法人薬機法医療法規格協会の代表理事、一般社団法人日本美容サロン協議会の監事、一般社団法人睡眠ヘルスケア協議会の外部有識者(認証評価委員)を務め、医療・美容・ヘルスケア分野の広告規制や業界の自主的なルールづくりにも関わっている。依頼者に最適な見通しと戦略的な解決策を示すことを信条とし、丁寧かつ粘り強い対応で信頼を築いている。