逮捕されたらどうなる?逮捕後の流れと、痴漢・盗撮事件について解説します!

自身や家族、友人が逮捕されそうになった、もしくは逮捕されてしまった場合、逮捕された人はその後どうなるのでしょうか?逮捕の前後も含め、どのような流れで警察の捜査や裁判が進行していくのかを把握することが大切です。
この記事では、逮捕されてしまった場合の流れを説明します。また、記事の後半では痴漢や盗撮で逮捕された場合について掲載していますので参考にしてください。
目次
そもそも逮捕とはどういうこと?
逮捕とは、犯罪を行ったと疑われる人物(被疑者)について、その身柄を強制的に拘束して留置施設へ留め置くことを言います。逮捕の主な目的は、証拠隠滅の防止と被疑者の逃亡を防ぐためです。逮捕されると必ず有罪になるということではなく、逮捕後に釈放される場合もあります。また、被疑者がすべて逮捕されるわけではなく、逮捕要件を満たしていない被疑者については在宅事件として捜査が進められます。
逮捕手続きの種類
刑事事件における逮捕には、大きく分けて3つの種類があります。
まず逮捕とは、人の身体を拘束して自由を奪う強制処分ですが、国民の権利である自由を奪うものなので、捜査機関の判断だけで逮捕はできません。人権とのバランスを図るための手続きが定められています(令状主義)。
ここでは、逮捕の種類について解説します。
通常逮捕(刑事訴訟法第199条)
通常逮捕とは、逮捕状を示して行われる逮捕です。逮捕の根拠について裁判官が審査を行い、裁判所が逮捕状を発行します。逮捕状には主に以下の内容が記載されています(刑事訴訟法規則)。
- 被疑者の氏名・住所
- 罪状の名称
- 被疑事実の要旨
- 連行される警察署などの名称
- 逮捕状の有効期限 など
発行を認めた裁判官の記名押印がなされています。(刑事訴訟法第200条)
日本国憲法第33条では通常逮捕が逮捕の原則と規定されています。下記で説明する「現行犯逮捕」と「緊急逮捕」は例外として認められています。
第三十三条 何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。
引用:e-Gov法令検索
通常逮捕の流れとしては、「事件の発覚」→「捜査機関による捜査」→「捜査機関から裁判所に逮捕状を請求」→「逮捕」となります。
検察官、司法警察員は、罪を犯したことを疑うに足りる相当の理由のある被疑者について裁判所に逮捕状の発行を請求します(刑事訴訟法第199条第1項)。
逮捕状の請求を受けた裁判官は、逮捕状請求書や資料に基づき、逮捕すべきかどうかを審査します。審査の結果、裁判官が逮捕要件を満たすと考えた場合には逮捕状を発行します(刑事訴訟法第199条第2項)。
逮捕にあたり、原則として捜査機関は被疑者に対して逮捕状を示さなければなりません。(刑事訴訟法第201条第1項)しかし、緊急性があり逮捕状を保持していない場合には、被疑者に対し被疑事実および逮捕状が発行されている旨を告げて逮捕し、その後逮捕状を示すという手続きもできます(刑事訴訟法第201条第2項・同73条第3項)。
現行犯逮捕(刑事訴訟法第213条)
現行犯逮捕とは、今目の前で犯罪を行っている人、もしくは犯行直後の人を逮捕することです(刑事訴訟法第212条第1項)。すなわち、犯人性が明らかに認められ、誤認逮捕のおそれがない場合には令状なく逮捕可能とされているのです。犯人性が明白性は、原則として犯行を現認した場合に肯定され、他にも犯行直後と認められる場合にも犯人性が推定されます。犯行直後か否かは、逮捕時点と犯行時点との時間的・場所的な近接性を考慮し判断され、明確な基準はありません。
一方で、犯行を現認していなくとも、諸般の事情から犯人性が明らかであって、犯行時点から時間的・場所的に接着性が認められる場合にも、準現行犯人として現行犯逮捕が可能です(刑事訴訟法第212条第2項)。この場合の犯人性を補強する事情として、条文上以下の事情が挙げられています。
- 犯人として追呼されている場合
- 犯罪に使用した凶器などを所持している場合
- 衣服に返り血などがついている人が逃走している場合
- 誰何されて逃走を図った時 など
なお、上記の犯人性推定事情は上から順に犯人性を強く推定する事情とされており、かつ複数の事情に該当する毎に犯人性を強く推定するものと考えられています。
現行犯逮捕のケースは、犯人と犯罪が起きたことが明白であり、誤認逮捕のおそれがないと考えられることが条件です。逮捕状の準備をしている間に犯人が逃亡してしまうおそれがあるので、逮捕状なしで逮捕できます(刑事訴訟法第213条。憲法第33条にも「現行犯として逮捕される場合を除いては~」と規定して、現行犯逮捕に令状の必要はないことを認めています。)。
また、通常逮捕とは異なり、現行犯や犯行直後の犯人については、誰でも逮捕できます。一般人が行う現行犯逮捕を「私人逮捕」といいます。私人が現行犯逮捕した場合は直ちに検察官又は司法警察職員にその身柄を引き渡さなければなりません(刑事訴訟法第214条)。
なお、一定の軽微な犯罪(30万円以下の罰金、勾留又は科料に当たる罪)については、犯人の住居もしくは氏名が明らかでない場合か、犯人が逃亡するおそれがある場合に限り、現行犯逮捕ができます(刑事訴訟法第217条)。
緊急逮捕(刑事訴訟法第210条)
緊急逮捕とは、検察官や司法警察職員が被疑者を逮捕した後に逮捕状を請求する身柄拘束です。逮捕状なしで逮捕するという点では現行犯逮捕に似ていますが、最終的には逮捕状が必要になります。
緊急逮捕の要件については、以下の通りになります。
- 死刑、無期または3年以上の懲役、禁錮に当たる犯罪であること
- 罪を犯したことを疑うに足りる十分な理由のあること
- 急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないこと
- 緊急逮捕の理由を被疑者に告げること
- 逮捕後は直ちに裁判官に逮捕状を請求すること
- 裁判官により、逮捕状が発行されること
通常逮捕、現行犯逮捕、緊急逮捕の違い
通常逮捕、現行犯逮捕、緊急逮捕の違いは下図のとおりです。
逮捕の流れ
逮捕された場合、最長で23日間留置場や拘置所に留置される場合があります。
以下の図は、逮捕後の流れになります。ぜひ参考にしてください。
また、ここでそれぞれの段階における解説をします。
警察による身柄の拘束
逮捕されると、警察により取り調べを受け、留置施設に留置されます。
この拘束時間は原則48時間以内と定められており、警察は48時間以内に検察へ送致するのか釈放するのかを決めなければなりません(刑事訴訟法第203条)。
検察官送致
検察へ送致されると、検察官は勾留請求するかどうかの判断をします。この判断については、逮捕後72時間以内(送致後24時間以内)と決められています(刑事訴訟法第205条第1項、第2項)。
勾留の決定
検察官による勾留請求に基づき、裁判所が勾留を決定すると、最大10日間の勾留が決定します(刑事訴訟法第208条第1項)。
勾留の延長
事案により、さらに最大10日間の勾留延長がされる場合もあります(刑事訴訟法第208条第2項)。また、一定の犯罪類型については、さらに最大5日間の再延長が認められる場合があります(同法第208条の2)。
終局処分
勾留期間を経た後、検察官は起訴するかどうかを決定します。日本では、起訴後に有罪となる場合が99パーセントと言われています。不起訴の場合は身柄が解放され、前科がつきません。また、略式起訴になった場合は罰金を払って釈放されます。
痴漢・盗撮事件について
ここでは、痴漢・盗撮事件につき解説します。
痴漢・盗撮とは?
定義
「痴漢」とは、一般的に以下のことを指します。
「著しく羞恥・不安を覚えるような方法で、他人の身体に直接もしくは衣服の上から触ること、自らの身体を他人に接触させること」。
「盗撮」とは正当な理由なく人を羞恥させたり、不安を覚えさせたりする行為であり、他人の下着又は体を撮影することです。
該当しうる具体例等
それでは、どのような場合に痴漢、盗撮とみなされるのでしょうか。ここでは該当しうる具体例を紹介します。
- 電車の中でスマートフォンを使い、女性のスカートの中を撮影した(盗撮)。
- トイレにカメラを設置した(盗撮)。
- 電車内で女性の胸部を触る(痴漢)。
問われる罪と構成要件
痴漢、盗撮事件の場合、「強制わいせつ罪」や「迷惑防止条例違反」または「軽犯罪法違反」に該当します。行為の内容により分類されます。
迷惑防止条例違反(東京都の場合 6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金)
迷惑防止条例は、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為などの防止に関する条例で、各都道府県に制定されています。
具体的な違反行為は、公共の場所や乗り物において盗撮をしたり、衣服その他の身に着けるものの上から、または直接に人の体に触れたりすることです。「衣服の上から体が触れた」といった様態の痴漢行為について該当する傾向があります。
強制わいせつ罪(6カ月から10年以下の懲役)
強制わいせつ罪は以下の場合に該当します(刑法第176条)。
- 13歳以上の人に対して、暴行や脅迫を使ってわいせつな行為をすること
- 13歳未満の人に対して、わいせつな行為をすることも同様
ここでの「暴行」は広く解釈されており、痴漢の内容が悪質であれば強制わいせつに問われることも考えられます。下着の中に手を入れて触った場合は、こちらに該当します。
軽犯罪法違反
公共の場所以外での盗撮の場合、軽犯罪法違反に該当します。(1日以上30日未満の勾留または1、000円以上10、000円未満の科料)となります。
痴漢・盗撮事件特有の事情
現行犯逮捕の多さ
痴漢・盗撮事件では、被疑者は現場で現行犯逮捕されるケースが多くなっています。
電車で女性の身体を触ったところを周囲の人に取り押さえられたり、エスカレーターで女性のスカート内を盗撮していたところを後ろの人に目撃され取り押さえられたりなどで、現行犯逮捕される場合があります。
痴漢・盗撮で逮捕された後の影響
痴漢・盗撮で逮捕された場合、以下のような問題が生じる可能性があります。
社会的信用の失墜
起訴されて有罪判決を受けると、前科がつきます。
前科がつくと、海外渡航の際にビザやパスポートの発給に制約が生じる場合があります。
また、痴漢冤罪の場合でも、痴漢を疑われている人というだけで信頼を失うかもしれません。私生活に影響が出るおそれもあります。
長期勾留
長期勾留によるストレスなども考えられます。
冤罪を主張しても、逮捕後最大23日間勾留されます。その後裁判にかけられた場合にはさらに数カ月の長期勾留になる可能性があります。
また、会社員の場合、会社に連絡をしないと無断欠勤扱いになり、懲戒・解雇される可能性があります。
実名報道のリスク
事件を起こした人物の立場(公務員、大企業勤務など)で実名報道されるかもしれません。
実名がニュースに出ると、その後の生活に影響が出るでしょう。
痴漢・盗撮で弁護士に相談すべき理由・弁護士費用
ここでは、痴漢・盗撮事件により逮捕された場合に弁護士に相談すべき理由を解説します。
弁護士に相談すべき理由
逮捕後は、たとえ家族であっても最大3日間は面会ができません。しかし、弁護士は逮捕直後から本人と面会ができます。また、取り調べの対応についても助言ができます。
弁護士は検察官に対して勾留請求をしないように求めることができます。裁判所にも勾留請求を却下するよう請求でき、勾留決定に対して不服申し立てもできます。
痴漢・盗撮事件では、被害者との示談成立が重要になりますが、弁護士が介入すると、受任後すぐに被害者との交渉に着手できます。
ネクスパート法律事務所の料金案内
以下、ネクスパート法律事務所の料金案内になります。
捜査段階の場合
逮捕勾留されていない場合 | 逮捕勾留されている場合 | ||
---|---|---|---|
着手金 | 27万5000円から | 38万5000円から | |
成功報酬 | 不起訴の場合 | 27万5000円から | 38万5000円から |
罰金の場合 | 22万円から | 27万5000円から | |
起訴された場合 | 16万5000円から | 16万5000円から | |
別途 | 示談成立 | 11万円から(1件) | 11万円から(1件) |
接見 | ー | 3万3000円から | |
勾留却下・準抗告認容の場合 | ー | 22万円から |
逮捕勾留されていない場合 | ||
---|---|---|
着手金 | 22万円から | |
成功報酬 | 不起訴の場合 | 22万円から |
罰金の場合 | 16万5000円から | |
起訴された場合 | 10万円から | |
別途 | 示談成立 | 11万円から(1件) |
逮捕勾留されている場合 | ||
---|---|---|
着手金 | 33万円から | |
成功報酬 | 不起訴の場合 | 33万円から |
罰金の場合 | 22万円から | |
起訴された場合 | 11万円から | |
別途 | 示談成立 | 11万円から(1件) |
接見 | 11万円から | |
勾留却下・準抗告認容 | 22万円から |
裁判の場合
弁護士費用 | ||
---|---|---|
着手金 | 裁判からのご依頼 | 27万5000円から |
成功報酬 | 執行猶予の場合 | 27万5000円から |
求刑から減刑できた場合 | 16万5000円から | |
別途 | 接見、公判 | 1回あたり3万3000円から |
保釈認容 | 11万円から |
まとめ
この記事では、逮捕の流れについて説明し、後半部分では痴漢盗撮による逮捕について解説しました。記事の通り、逮捕された場合は弁護士に依頼することをお勧めします。
