更新日:2024年3月7日 (木)

公開日:2024年3月7日 (木)

遺言書があっても諦めない!遺産分割協議で納得のいく相続を

遺言書があっても諦めない!遺産分割協議で納得のいく相続を 遺言書があっても諦めない!遺産分割協議で納得のいく相続を

サマリー

ご家族が亡くなられ、遺言書が発見されたとき、多くの方が亡くなった人の意思を尊重し、記載内容に従って相続を進めようと考えます。しかし、遺言書に書かれた内容が、現在の家族の状況や、相続人それぞれの生活実態にそぐわない場合もあります。例えば、作成から時間が経過して財産の価値が変わってしまった、特定の相続人に過度に偏った内容になっている、または、遺言には記載されていないが家族が大事にしてきた財産がある、といったケースです。遺言書があるという事実は重いものですが、本当にこの内容で手続きを進めなければならないのかという疑問や不安を抱くのは当然のことです。
この場合、相続人の方々は遺言書があるけれども、相続人同士で話し合って、より公平で円満な遺産分割を実現したいと考えていらっしゃることでしょう。
本記事は、遺言書があっても遺産分割協議ができるのかと疑問に思っている相続人の方たに向けて、ポイントを解説します。法的根拠から、遺産分割協議を有効に成立させるための必須条件、見落としやすい実務上の注意点までを、分かりやすく整理します。遺言書があるという状況で、いかに家族の総意を形にし、納得のいく相続手続きを完了させるか、具体的な方法を見つけていきましょう。

遺言書があっても遺産分割協議はできる?

遺言書があっても、相続人全員の合意があるなど一定の条件を満たせば、遺言書の内容と異なる遺産分割協議が認められる場合があります。
被相続人には、生前の最後の意思として、遺言によって財産の処分方法を定める権利が民法964条によって認められています。そのため、法律で定められた方式と要件を満たした有効な遺言書が存在する場合、原則としてその内容どおりに相続手続きを進められます。遺言書の内容は、法定相続分(法律で定められた取り分)のルールに優先して適用されます。
しかし、相続が開始すると、被相続人の財産はいったん共同相続人全員の共有財産となります(民法898条)。共同相続人全員が遺言と異なる分割方法に同意する場合、その合意が遺言の内容に代わって手続きの前提となることがありますこの規定は、遺産の所有権がすでに相続人に移転している以上、その処分は相続人の自由意思に委ねられるという、民法の根本原則に基づいています。

遺言書が存在しても遺産分割協議をしなければならない5つのケースは?

遺言書が存在しても、相続人全員による遺産分割協議を行わなければならないケースがあります。

遺言書が無効になる場合

遺言書が法的に無効と判断された場合、遺産全体が未分割の状態に戻り、すべての財産について改めて遺産分割協議が必要です。
遺言書には、民法で厳格な形式要件が定められています。例えば、自筆証書遺言であれば、全文、日付、氏名を自書し、押印しなければなりません。これらの形式要件が一つでも満たされていない遺言書は、原則として無効です。
また、形式的な要件以外にも、遺言作成時、被相続人に十分な判断能力(遺言能力)がなかったと判断される可能性もあります。例えば、被相続人が重度の認知症を患い、自身の財産や相続人を理解できていなかった場合などです。遺言能力がないと判断された場合は、遺言無効確認訴訟によってその効力が否定されることがあり、結果として遺産全体が共同相続人の共有となり、全財産について協議が必要です。

 

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遺言書に記載されていない財産がある場合

遺言書に記載のない財産については、法定相続人全員が改めて遺産分割協議を行い、取得者を決定する必要があります。
被相続人が遺言書を作成した後で、新たな財産を取得したり、特定の財産を記載し忘れたりすることは珍しくありません。遺言は、その内容に記載された財産についてのみ効力を発揮します。したがって、遺言書に分け方が記されていない財産(預貯金、不動産、動産など)については、たとえ遺言書全体が有効であっても、記載されていない財産をどう分割するかについて、相続人全員で遺産分割協議が必要です。

遺言書の内容が曖昧で解釈が分かれる場合

遺言書の内容が不明確で相続人の間で解釈が分かれる場合、遺言書の内容通りに手続きを進めることが困難になるため、解釈の確定と調整のために協議が必要です。
例えば、長男にはなるべく多くの財産をといった抽象的な表現や、特定の財産が、どの相続財産を指しているのか明確に特定できない場合などです。このような場合、相続人全員が同じ解釈を共有し、協力して手続きを進めることが難しくなります。結果として、相続人全員で集まり、遺言書の記載の真意を酌み取りながら、具体的な財産の帰属を定めるために遺産分割協議が必要です。

遺言書で相続分のみが指定されている場合

遺言で各相続人の取り分を割合でのみ指定している場合、現物としてどの財産を誰が取得するかを確定させるため、協議が必要です。
例えば、遺言書に遺産の2分の1を妻に、残りの2分の1を長男にといったように、抽象的な割合のみが指定されている場合があります。この場合、妻がどの不動産や預貯金を取得し、長男がどの財産を取得するのか、具体的な現物の分け方は決まっていません。この現物分割の方法を決めるために、法定相続人全員による遺産分割協議が必要です。

包括遺贈があり遺産のすべてを遺贈していない場合

遺産の一定の割合を特定の者(包括受遺者)に譲り渡す包括遺贈がされた場合でも、遺産全体が遺贈の対象ではないときは、残りの遺産や債務の承継について、包括受遺者と法定相続人との間で協議が必要です。
遺贈とは、遺言によって財産を無償で特定の人に譲渡することです。包括遺贈は遺産の〇割といった形で割合を示して行う遺贈であり、包括受遺者は民法上、相続人と同一の権利義務を有するとされています。このため、包括受遺者が相続人と共に遺産を共有する状態となり、遺産分割協議の当事者となります。もし遺産の一部のみが包括遺贈された場合、残りの財産の分割方法を決めるため、包括受遺者と法定相続人との間で協議が必要です。

遺言と異なる遺産分割協議を成立させるための絶対条件は?

遺言と異なる内容で分割協議を成立させるためには、法定相続人全員の合意に加え、事案によっては包括受遺者や遺言執行者などの関係者の同意が必要になることがあります。
遺言書が存在する状況下での遺産分割協議は、通常の相続よりも複雑になります。それは、単に相続人同士の合意だけでなく、被相続人の意思を実現する責任を負う第三者や、遺言によって財産を受け取る第三者の意思も尊重する必要があるからです。これらの同意が一つでも欠けると、せっかく成立させた遺産分割協議が無効となるリスクが生じます。
以下で遺産分割協議を成立させるための条件を解説します。

法定相続人全員が内容を知り、かつ協議に合意していること

遺言と異なる内容で遺産分割を行うためには、法定相続人全員が遺言書の存在と内容を知った上で、協議内容に異議なく合意していることが不可欠です。一人でも反対している相続人がいる場合、遺産分割協議を成立させることはできません。
また、遺言書の存在を故意に隠したり、知らないままに遺産分割協議を進めたりした場合、その協議は無効となるリスクがあります。協議を進める前に、全ての法定相続人に対して遺言書(公正証書遺言であればその写し、自筆証書遺言であれば検認済みのもの)を開示し、内容を理解してもらうことが必須です。

遺言執行者がいる場合、同意を得ること

遺言執行者が指定されている場合、執行者の権限との関係で、遺言と異なる内容の協議が執行を妨げる行為と評価されるおそれがあります。トラブル防止のため、事前に執行者と調整し、同意の要否を確認することが重要です
遺言執行者は、遺言書に書かれた内容を忠実に実現する責任を負い、その目的のために相続財産の管理や処分を行う権限を持ちます。民法では、遺言執行者がいる場合、相続人は執行を妨げる行為ができないと定めています。遺言執行者がいる状態で、遺言書とは異なる内容で遺産分割協議を進める場合、執行者に対して、なぜ遺言書の内容を変更する必要があるのか、相続人全員の合意の状況を詳細に説明し、同意を得る必要があります。

遺言書で遺産分割の禁止が規定されていないこと

被相続人が遺言書で遺産分割を禁止する意思表示をしていた場合、その禁止期間(最長5年)は、原則として遺産分割協議による分割が制限されます。
遺言者は、相続開始から5年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁止する旨を遺言書に記載できます。被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも遺産分割協議による分割ができると規定されており、この分割禁止の遺言も被相続人の意思として尊重されます。
遺産分割禁止の遺言がある中で相続人全員が合意して分割を実施した場合、遺言執行者がいれば、これは執行を妨げる行為として無効となる可能性があります。
遺言執行者がいない場合は、相続人全員の合意により有効に成立すると解釈されることもあります。しかし、このような状況においては、遺言者の最終意思と相続人の協議の自由との間で、細心の注意を払わなければならないため、弁護士等の専門家の判断が求められます。

遺言と異なる遺産分割協議を成功させるための方法は?

遺言と異なる内容で遺産分割協議をする場合、手続きや書類作成に不備があれば、無効になるリスクがあります。遺産分割協議を成功させるために必要な事項を解説します。

遺産分割協議前の調査を徹底する

遺産分割協議を行う前に、必ず遺言書の有無と種類、および内容を徹底的に調査し、法定相続人全員がその内容を把握している状態を作ります。
遺言書の調査は、公正証書遺言、法務局で保管されている自筆証書遺言、自宅等で保管されている自筆証書遺言、秘密証書遺言など、想定される種類を一通り確認する必要があります。特に、自宅等で自筆証書遺言や秘密証書遺言を発見した場合は、家庭裁判所での検認手続きを経なければ、原則として相続手続きで用いることはできない扱いとなります。この検認手続きによって、遺言書の発見と内容の確認が公的に記録されます。
相続人の一人が、遺言書の存在やその内容を意図的に隠して遺産分割協議を行い、その後に遺言書が明らかになった場合、その協議は無効になる可能性があります。これは、相続人全員が真実を知った上で合意するという法的要件を満たさないためです。

正確な遺産分割協議書を作成する

遺言書と異なる内容で遺産分割協議を行った場合、正確に遺産分割協議書を作成することが重要です。遺産分割協議書は、不動産登記や銀行手続き、相続税申告など、その後のすべての手続きの根拠となる重要書類です。特に遺言と異なる内容で作成する場合、後に誰かがその効力を争うことを防ぐため、以下の要素を必ず明確に記載しなければなりません。

  • 遺言書の特定
    被相続人の氏名、死亡年月日、本籍地に加え、〇年〇月〇日付の公正証書遺言等が存在することを明記します。
  • 合意の事実の明記
    遺言書が存在することを前提に、相続人全員が遺言と異なる内容で分割することに合意した旨を明記します。必要に応じて、包括受遺者や遺言執行者の同意がある場合はその旨も記載します。
  • 署名と実印の押印
    遺産分割協議書には、合意した相続人全員が署名し、実印を押印するのが一般的です。
  • 印鑑証明書の添付
    実印であることを証明するため、相続人全員の印鑑登録証明書が求められるのが一般的です(有効期限の運用は手続き先により異なります)。

遺言書の内容に納得できない場合の遺産分割協議以外の方法は?

遺言の内容が特定の相続人に著しく偏重し、法定相続人全員での遺産分割協議や合意形成が現実的に困難な場合、遺留分侵害額請求を行うことで、侵害された自己の金銭的な権利を回復できます。
相続人全員が円満に遺産分割協議を成立させることが理想ですが、感情的な対立や、一部の相続人の非協力的な態度により、協議が膠着してしまうこともあります。特に遺言書の内容が不公平である場合、長男にすべての遺産を相続させるといった内容では、他の相続人は大いに不満を抱くでしょう。このような協議による解決が難しい場合の法的な代替手段として、遺留分侵害額請求が存在します。
遺留分侵害額請求とは、特定の遺言や生前贈与によって、兄弟姉妹以外の法定相続人に認められている最低限の遺産の取り分(遺留分)が侵害された場合に、その侵害額に相当する金銭の支払いを、財産を多く受け取った者に対して請求する権利です。
この請求の特徴は、合意を前提とする遺産分割協議とは異なり、請求権を持つ相続人が単独で行使できる点にあります。遺留分は、法定相続人の生活基盤を保障するための強い権利であるため、遺言の内容よりも優先されます。協議が望めない、あるいは協議をしても相手方が不当な要求を続けてくるような場合に、自身の権利を法的に守るための最後の砦となります。
遺留分侵害額請求を行うことで、遺産の現物(不動産など)そのものではなく、侵害された遺留分に見合う金銭を受け取ることができます。
遺留分侵害額請求権には消滅時効があり、以下のいずれかの期間が経過した場合、時効により消滅します。

  • 相続の開始および遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知った時から1年
  • 相続の開始から10年
    特に注意すべきは、知った時から1年という点です。相続人の一人が遺産分割協議に対して非協力的な態度を取り、話し合いが長期化している間に1年の時効が迫ってくる可能性があります。遺産分割協議自体には期限はありませんが、遺留分侵害額請求の時効は、協議の進捗管理における大きな制約(タイムリミット)になります。
    時効の管理を誤ると、不公平な遺言内容を是正する権利自体を失うので注意しましょう。

まとめ

遺言書がある状況で遺産分割協議を進めたい場合は、弁護士に相談しながら進めることも有効です。通常の相続手続きとは異なり、遺言書の有効性の判断、包括受遺者や遺言執行者の同意の要否といった複雑な法的要件をクリアする必要があります。これらの要件を一つでも見落とせば、せっかく合意した内容が無効とされ、手続きがやり直しになってしまうリスクがあります。
遺言書が形式不備で無効である可能性や、遺言作成時に被相続人に遺言能力がなかった可能性が浮上した場合、弁護士は遺言無効確認訴訟の提起も視野に入れ、相続人の権利を確実に守るための助言をします。遺言執行者がいる場合や、包括受遺者といった第三者の同意を得る必要がある場合、弁護士がその交渉を代理することで、感情的な摩擦を避けつつ、法的に適切な手続きを踏んだ上での合意形成をサポートします。さらに弁護士であれば、正確な遺産分割協議書の作成も可能です。
ネクスパート法律事務所には、相続全般に実績のある弁護士が在籍しています。遺言書の内容とは違う遺産分割協議をしたいと考えている方は、ぜひ一度ご相談ください。初回相談は30分無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

コラム監修者

Shunsuke Teragaki

Shunsuke Teragaki

所属:東京本店

広島県広島市出身。修道高校、慶應義塾大学商学部、青山学院大学法科大学院を卒業後、新司法試験に合格し最高裁判所司法研修所を修了。弁護士として法曹界に入り、個人・法人問わず幅広い分野の相談・交渉に取り組む。ネクスパート法律事務所の代表弁護士として、依頼者に最適な見通しと戦略的な解決策を示すことを信条とし、丁寧かつ粘り強い対応で信頼を築いている。

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