更新日:2025年2月4日 (火)

公開日:2025年2月4日 (火)

中絶慰謝料の相場と中絶慰謝料が認められる可能性がある4つのケース

中絶慰謝料の相場と中絶慰謝料が認められる可能性がある4つのケース 中絶慰謝料の相場と中絶慰謝料が認められる可能性がある4つのケース

サマリー

不倫相手に妊娠を告げたら中絶を要求されたあなたは、「不倫相手に中絶慰謝料を請求したい」と考えていませんか?
中絶手術は、身体的・精神的に負担を伴うため、不倫相手にも責任を取らせたいと思うのは当然の感情でしょう。

この記事では、判例からみる中絶慰謝料の相場や中絶慰謝料が認められる可能性があるケースなどを紹介します。
感情に任せて行動すると、慰謝料を獲得できないだけでなく、思わぬトラブルを招くことになりかねません。この記事をご一読いただき、今後の対応をご検討いただければと存じます。

判例からみる中絶慰謝料の相場

判例からみる中絶により認められる慰謝料の相場は、50〜200万円程度です。
中絶に至るまでの相手の行為に問題があったとして中絶慰謝料を認めた判例を4つ紹介します。

50万円|東京地裁平成24年5月16日判決

原告(女性)が妊娠した際、被告(男性)が人工妊娠中絶を迫るなどして、原告が中絶手術をせざるを得ない状況に追い込んで中絶させた事案です。

原告と被告は、同棲生活の間に複数回避妊せずに性交渉をしており、同棲生活の解消後に妊娠が判明しました。
原告は被告に対して妊娠したことを連絡しましたが、被告は「産むなら一人で産んで欲しい」などと告げただけで具体的な話し合いをしませんでした。

裁判所は、原告一人に子どもを出産するか中絶するかの選択を委ねており、被告が原告の不利益を軽減し、解消するための行為を行わなかったとして、原告の法的利益を違法に侵害したものといえるため原告に生じた損害を賠償すべき義務があると判断しました。

裁判所は、被告に対し、妊娠および中絶手術により受けた精神的かつ身体的苦痛に対する慰謝料50万円の支払いを命じています。
なお、この事案では、慰謝料のほかに弁護士費用5万円の支払いも命じています。

60万円|東京地裁令和4年11月16日判決

原告(女性)が被告(男性)との間の子どもを妊娠したが、被告のその場しのぎの無責任な対応により、原告が堕胎する決断を遅らせた事案です。

交際関係にあった原告と被告は継続的に避妊なしで性交渉をして、妊娠しました。
妊娠判明後、被告は原告との話し合いには応じたものの、交際関係を解消する話が出ていたこともあり、婚姻に向けた話し合いは進みませんでした。有効な解決策を提示できずに2か月が経過、その後、被告は話し合いに応じなくなり、原告に中絶手術を受けるかどうかの選択を委ねています。

裁判所は、以下のような事実を総合的に考慮して、被告に対し、慰謝料60万円の支払いを命じています。

  • 妊娠が判明してから中絶手術までの2か月間余りにわたり、原告が身体的・精神的苦痛にさらされたこと
  • 被告との連絡が途絶えがちになり、原告が自ら人工妊娠中絶手術を決断せざるを得なくなったこと
  • 中絶手術の実施が中期中絶の最終時期となったことで、原告の母体への身体的負担が大きくなったこと

なお、この事案では、慰謝料以外に中絶にかかる損害(医療費、葬儀代など)として、64万8480円の支払いも命じています。

160万円|東京地裁平成27年7月31日判決

原告の女性の妊娠発覚後、被告が原告に対して冷たい対応をした事案です。

被告は、原告に求婚した上で、妊娠する可能性を認識しながら避妊なしで性交渉を続けていたところ、原告が妊娠しました。妊娠判明後、被告は態度をはっきり変えて、「子どもを産んでも認知はしない」などと告げています。

裁判所は、被告は、少なくとも父親としての責任を取るつもりはなく、原告が妊娠する可能性を認識しつつ避妊せずに性交渉を続けた被告の責任は重大であることは明らかであると判断し、被告に対し、慰謝料160万円の支払いを命じています。

中絶慰謝料が認められるには権利を侵害された事実が必要

中絶慰謝料が認められるためには、権利を侵害された事実が必要です。

慰謝料請求が認められるためには、以下の要件を満たす必要があるためです。

  • 違法行為により、法律上保護されるべきあなたの権利や利益が侵害されたこと
  • 損害が発生していること

当事者が合意の上で性交渉をして妊娠・中絶したのであれば、不倫相手はあなたの権利や利益を侵害したとはいえません。その場合、不倫で中絶をしても、原則として慰謝料請求は認められません

慰謝料請求が認められるためには、不倫相手の行為により、あなたの権利や利益が侵害されて損害が発生した事実が必要です。

次章で、中絶慰謝料が認められる可能性がある4つのケースを紹介しますので、ご自身のケースに該当するか確認してみてください。

中絶慰謝料が認められる可能性がある4つのケース

中絶慰謝料が認められる可能性がある主なケースとして、以下の4つが挙げられます。

  • 妊娠・中絶に対して不倫相手が不誠実な対応をとった場合
  • 不倫相手に性行為を強制された場合
  • 不倫相手に中絶を強制された場合
  • 不倫相手が避妊していると嘘をついていた場合

以下で、詳しく紹介します。

妊娠・中絶に対して不倫相手が不誠実な対応をとった場合

妊娠・中絶に対して不倫相手が不誠実な対応をとった場合、中絶慰謝料が認められる可能性があるでしょう。

あなたの妊娠・中絶による不利益を軽減、解消、分担する義務を怠り、女性の権利が侵害されたとして不法行為が成立する可能性があるためです。

裁判所は、不倫による妊娠で被る精神的・身体的苦痛は、あなたと不倫相手が共同で行った性交渉に由来するものであり、相手男性も不利益を軽減、解消、分担する義務を負うと考えています(東京高裁平成21年10月15日判決)。

不倫相手に以下のような行動がみられる場合、中絶慰謝料が認められる可能性があります。

  • 妊娠を告げたら連絡が取れなくなった
  • 出産するか中絶するかの話し合いに応じない
  • 妊娠を告げたら攻撃的・冷淡な態度をとられた

不倫相手に性交渉を強制された場合

不倫相手に性交渉を強制された場合、中絶慰謝料が認められる可能性が高いでしょう。

そもそも性交渉に合意していない場合、あなたの性的自己決定権を侵害している可能性があるためです。

性的自己決定権とは、いつ、どこで、誰と性交渉をするか決める権利です。不倫相手に性交渉を強制された場合は、中絶慰謝料が認められる可能性が高いです。

なお、性交渉を強制された場合は、強制性交等罪(刑法第177条)が成立する可能性があるため、刑事上の責任も追及できるかもしれません。

不倫相手に中絶を強制された場合

不倫相手から暴力や脅迫により中絶を強制された場合、中絶慰謝料が認められる可能性があるでしょう。

中絶そのものではなく、その決断に至るまでの強要・脅迫行為が、不法行為に該当する可能性があるからです。
暴力や脅迫の態様によっては、強要罪(刑法第223条)が成立する可能性があるため、刑事上の責任も追及できるかもしれません。

なお、相手男性の「おろして欲しい」という要求に応じて中絶しただけでは、原則として慰謝料は認められません。

不倫相手が避妊していると嘘をついていた場合

不倫相手が避妊していると嘘をついていた場合、中絶慰謝料が認められる可能性があるでしょう。

性交渉に合意していたとしても、避妊しないのであれば合意しなかったといえる場合は、あなたの合意があったとはいえません。

不倫相手が避妊していると嘘をついていた場合は、中絶慰謝料が認められる可能性があります。

中絶慰謝料請求により不倫がバレたら慰謝料を請求される可能性も

不倫相手に対する中絶慰謝料請求により不倫の事実がバレたら、慰謝料を請求される可能性があります。

既婚者が配偶者以外の異性と性交渉をした場合、不貞行為に該当します。そのため、相手配偶者は、あなたに対して不貞行為に基づく慰謝料を請求できます。

不貞行為に基づく慰謝料の相場は、50〜300万円程度です。
不倫による妊娠の事実がある場合、不倫の態様が悪質だと判断されて、高額な慰謝料が認められるケースも少なくありません。

不倫相手に対して中絶慰謝料を請求したことで相手配偶者に不倫の事実がバレたら、逆にあなたが慰謝料を請求されることになりかねません。不倫相手に対して中絶慰謝料を請求するかどうか、慎重に検討しましょう。

不貞行為に基づく慰謝料の相場について、詳しくは「不倫(不貞行為)の慰謝料相場と過去の判例」をご参照ください。

まとめ

不倫による妊娠・中絶をした場合、「不倫相手にも責任を取らせたい」と思うのも無理もありませんが、安易に中絶慰謝料を請求するのは避けた方が良いでしょう。

中絶慰謝料の請求により相手配偶者に不倫の事実がバレた場合、あなたが慰謝料を請求されるおそれがあります。まずは中絶慰謝料請求が認められる可能性が高いケースに該当するかどうか確認し、請求すべきかどうか慎重に検討しましょう。

相手配偶者から不貞行為に基づく慰謝料を請求されたら、ぜひネクスパート法律事務所にご相談ください。
ネクスパート法律事務所は、累計15,000件を超える不倫問題に関するお問い合わせをお受けしているため、豊富な経験と実績を有しています。

あなたの状況を考慮した、適切な解決方法をアドバイスいたします。初回相談は30分無料です。お問い合わせはLINE・メールで24時間受け付けております。お気軽にご相談ください。

コラム監修者

SHIZU ISHIDA

SHIZU ISHIDA

所属:東京オフィス

広島県広島市出身。青山学院大学心理学科、東海大学法科大学院卒業後、新司法試験に合格し最高裁判所司法研修所を修了。弁護士として法曹界に入り、刑事、民事、法人案件等幅広い分野の専門知識を習得。弁護士登録10年目にしてネクスパート法律事務所に入所し、現在は主に離婚事件に注力している。

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