更新日:2024年4月4日 (木)

公開日:2024年4月4日 (木)

4つの遺産分割の方法を解説|メリット・デメリットを紹介

4つの遺産分割の方法を解説|メリット・デメリットを紹介 4つの遺産分割の方法を解説|メリット・デメリットを紹介

サマリー

相続が発生した際、遺言書がない場合は相続人全員で遺産をどのように分けるか話し合う必要があります。

特に不動産や預貯金など複数の財産がある場合、どのような方法を選べば公平に分けられるのか悩む方も少なくありません。

遺産分割には主に4つの方法があり、遺産の性質や状況に応じて適切な手法を検討することが大切です。

この記事では、遺産分割の基本的な4つの方法とそれぞれのメリット・デメリット、合意が難しい場合の対処法について解説します。

遺産分割の基本となる4つの方法

遺産分割協議と分割方法の選択

被相続人が有効な遺言書を遺していない場合、相続財産は一旦すべての法定相続人による共有状態となります。

この共有状態を解消し、具体的にどの財産を誰がどのような形で取得するかを確定させる手続きが遺産分割協議です。

相続財産には、現金や預貯金のように金額で均等に分けやすいものだけでなく、不動産や有価証券、動産など、そのままでは均等に分割しにくい性質の財産も多く含まれます。

そのため、実務上は財産の性質や各相続人の希望に合わせて選択できるよう、主に4種類の分割方法が用いられています。

4つの遺産分割方法の概要一覧

遺産分割の基本となる4つの方法は、「現物分割」「換価分割」「代償分割」「共有分割」です。それぞれの概要は以下のとおりです。

分割方法 概要 主な特徴・検討される場面
現物分割 遺産そのものを形を変えずにそのまま各相続人に割り振る方法 不動産は長男、預貯金は長女が取得するなど、手続きが比較的簡便
換価分割 遺産を売却して現金化し、その代金を相続分に応じて分配する方法 不要な不動産を処分したい場合や、公平に金額を分けたい場合に適する
代償分割 特定の相続人が現物を取得し、他の相続人に代償金を支払う方法 特定の相続人が実家などの不動産を単独で引き継ぎたい場合に有効
共有分割 特定の遺産について、相続人全員が持分を決めて共有で持ち続ける方法 分割方法の結論が出ない場合や、将来の処分を全員で決める場合に用いられる

どの方法を選択するかによって、手続きにかかる手間や費用、相続人間での公平感、将来生じうる管理上のリスクなどが大きく異なります。

それぞれの長所と短所を正しく把握した上で、適切な分割方法を検討することが大切です。

現物分割と換価分割の特徴・メリット・デメリット

遺産分割を行う際、まずは財産をそのまま分ける「現物分割」や、財産を売却して現金化する「換価分割」が検討されることが一般的です。

それぞれの特徴や注意点を把握しておくことで、遺産の構成に応じた適切な判断がしやすくなります。

現物分割の特徴とメリット・デメリット

4つの遺産分割の方法を解説

現物分割とは、不動産や預貯金、株式などの個々の財産を、形を変えずにそのまま各相続人に割り振る方法です。

例えば「長男が自宅不動産を相続し、長女が預貯金を相続する」といった分け方がこれに該当します。

現物分割の主なメリットは、遺産を売却・処分する手続きが不要なため、比較的手間をかけずに分割を進められる点にあります。

また、売却に伴う仲介手数料や譲渡にかかる諸費用が発生しない点も利点です。

一方で、財産ごとの価値に開きがある場合、相続人間で取得額に差が生じて不公平になりやすいデメリットがあります。

また、1つの土地を平等に分けようとして分筆(土地を複数に分割登記すること)を行うと、それぞれの敷地面積が狭くなったり使い勝手が悪くなったりして、土地全体の資産価値が下がるリスクも考えられます。

換価分割の特徴とメリット・デメリット

4つの遺産分割の方法を解説

換価分割とは、不動産などの遺産を第三者に売却して現金に換えた上で、その売却代金を法定相続分や合意した割合に応じて分配する方法です。

換価分割のメリットは、財産を金銭に換えてから分けるため、1円単位まで公平に分割しやすい点です。

また、相続人の誰も住む予定がない空き家や管理が難しい土地など、不要な資産を処分して固定資産税や維持管理の負担を解消できる点も挙げられます。

デメリットとしては、不動産の売却活動が必要となるため、現金化までに一定の期間がかかる点が挙げられます。

特に立地や状態などの条件によっては買い手がすぐに見つからない可能性もあります。

さらに、不動産会社への仲介手数料や登記費用、各種税金などの諸費用が発生することも留意すべき点です。

売却代金を相続税の納税資金に充てる予定がある場合は、売却完了までに要する期間や諸費用の支出を想定して計画を立てることが大切です。

分割方法 主なメリット 主なデメリット
現物分割 ・手続きが比較的簡便
・売却などの諸費用がかからない
・財産の価値に差があると不公平になりやすい
・土地の分筆により価値が下がる懸念がある
換価分割 ・金銭で分けるため公平性が高い
・不要な不動産の管理負担を解消できる
・売却完了までに時間がかかる場合がある
・仲介手数料などの諸費用が発生する

代償分割と共有分割の特徴・メリット・デメリット

遺産分割では、現物をそのまま分けたり売却したりする以外にも、特定の相続人が遺産を取得して金銭で調整する「代償分割」や、持分を決めて遺産を共同所有する「共有分割」という選択肢があります。

代償分割の特徴とメリット・デメリット

4つの遺産分割の方法を解説

代償分割とは、相続人のうちの1人または一部が特定の遺産を現物のまま取得し、その代わりに他の相続人へ自己の財産(現金など)から代償金を支払う方法です。

不動産など分割が難しい財産がある際によく検討されます。

代償分割のメリット

  • 遺産を処分せず、特定の相続人の手元に残すことができる
  • 共有名義を避けながら、各相続人の取得割合を実質的に公平に保ちやすい

被相続人と同居していた自宅や事業用資産など、手放したくない財産がある場合に適しています。

共有名義にすることなく、単独名義としつつ金銭で差額を埋められる点が大きな特徴です。

代償分割のデメリット

  • 遺産を取得する相続人に相応の資金力(代償金の支払能力)が求められる
  • 不動産などの財産評価額をめぐって相続人間で意見が対立しやすい

遺産を取得する側に十分な現金や資力がない場合、代償分割の成立は難しくなります。

また、不動産の評価方法によって代償金の額が変動するため、算定基準を巡って協議が難航することもあります。

共有分割の特徴とメリット・デメリット

4つの遺産分割の方法を解説

共有分割とは、遺産を個別に分けたり売却したりせず、各相続人が法定相続分などの持分割合に応じて遺産全体を共有する方法です。

共有分割のメリット

法定相続分どおりに持分を登記・設定できるため、分割協議の段階では形式的な公平感を得やすいという特徴があります。

評価額の厳密な合意や代償金の調達が不要なため、一時的な合意形成は容易に進む場合があります。

共有分割のデメリット

  • 不動産全体の売却や大規模な修繕には共有者全員の同意が必要になる
  • 一部の共有者が自己の持分を第三者へ譲渡した場合、面識のない人と共有関係になる懸念がある
  • 共有者が亡くなって二次相続が発生するたびに相続人が増え、権利関係が複雑化する

共有状態にしておくと将来の管理や処分が難しくなりやすく、後々の世代にトラブルを残すリスクがあるため、慎重な検討が推奨されます。

遺産分割方法に関するよくある質問

Q. 遺産分割の方法は多数決で決めてもよいですか?

遺産分割協議は、原則として相続人全員の合意によって成立します。

過半数の賛成や法定相続分の割合による多数決で一方的に分割方法を決めることは法的に認められていません。

遺産分割協議を有効に成立させるためには、相続人全員の合意が必須となります。

相続人のうち1人でも反対している場合や、協議から除外されている相続人がいる状態で行われた協議は原則として無効となります。

Q. 分割方法について合意が得られない場合はどうすればよいですか?

当事者同士の話し合いで合意に至らない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てるのが一般的な手続きです。

調停では調停委員が間に入り、双方の意見を調整しながら合意を目指します。

調停でも合意が成立しない場合は自動的に遺産分割審判の手続きへ移行し、裁判官が最終的な分割方法を決定します。

話し合いが進まないからと放置すると、相続登記や相続税申告などの手続きに支障が生じる可能性があります。

Q. 代償分割で代償金を確実に支払ってもらう方法はありますか?

代償分割を行う際は、代償金の支払いと不動産の相続登記などに必要な書類の交付を同時に行う形をとることがリスク軽減につながります。

具体的には、代償金の着金が確認できた段階で遺産分割協議書への押印や印鑑証明書の引き渡しを行う方法が挙げられます。

また、分割払いの場合は支払い期日や遅延時の取り決めを協議書に明記しておくことも大切です。

Q. 審判では家庭裁判所はどのように分割方法を決めますか?

遺産分割審判では、当事者の希望にある程度の一致がある場合は各人の意向が可能な限り尊重されます。

分割方法について意見が対立している場合、裁判所はまず遺産をそのまま分ける「現物分割」を検討し、それが困難な場合は「代償分割」や遺産を売却する「換価分割」を検討する傾向があります。

権利関係が複雑化しやすい「共有分割」は、他の方法が適さない場合の最終手段として選択されることが多いとされています。

遺産分割の進め方に迷ったら弁護士への相談を検討

遺産分割の話し合いが難航しやすい理由

遺産の中に土地や建物などの不動産が含まれている場合、預貯金のように数字の上で単純に分けることが難しいため、どの分割方法を採用すべきかで意見が対立しやすくなります。

また、不動産の価値を算定する基準には公示地価や路線価、固定資産税評価額、実勢価格など複数あり、どの評価方法を用いるかによって相続人間の取得額や代償金の金額に差が生じることも要因の一つです。

相続人それぞれの生活環境や意向の違いに加え、これまでの家族関係などの感情的な問題が絡むと、当事者同士だけでは冷静な話し合いが困難になり、協議が長期化する傾向があります。

法的な観点を取り入れた公平な解決に向けて

遺産分割で意見がまとまらないときは、法的知識を備えた弁護士への相談を検討してみることも有効な方法です。

弁護士が関与することで、各財産の客観的な評価や法的判断を踏まえた上で、状況に応じた現実的な分割案を整理しやすくなります。

当事者同士では感情的になりがちな話し合いも、第三者である弁護士を介することで冷静に進めやすくなり、調停や審判への移行を見据えた適切な手続きの進行が期待できます。

遺産の分け方や手続きの進め方に不安がある場合は、相続トラブルの拡大を防ぎ公平な合意を目指すためにも、早い段階で法律相談を活用してみるとよいでしょう。

コラム監修者

RUI SATO

RUI SATO

所属:代表(東京オフィス)

明治大学付属中野高校卒業、明治大学法学部・法科大学院修了。2012年弁護士登録(東京弁護士会)、2016年ネクスパート法律事務所を創設。一般民事・企業法務に加え、ブロックチェーン分野にも注力し、海外法人設立支援業務などにも取り組む。AIを活用した弁護士業務の改善・事業開発に取り組み、一般社団法人 イノベーション法務支援機構代表理事就任。公正取引委員会・中小企業庁講師、日弁連代議員、東京弁護士会常議員等を歴任。

弁護士詳細を見る

関連記事を見る

遺留分放棄とは?生前・死後の手続きやメリットを解説

2025.07.02

法人破産

遺留分放棄とは?生前・死後の手続きやメリットを解説

遺産分割について解説|方法や協議の流れ・注意点

2021.07.16

相続発生後

遺産分割について解説|方法や協議の流れ・注意点

不動産相続の手続きと流れ|分割方法・税金・登記を解説

2021.07.16

相続発生後

不動産相続の手続きと流れ|分割方法・税金・登記を解説

不動産相続の手続きと流れ|分割方法や登記・税金の基本

2024.11.13

不動産相続の手続きと流れ|分割方法や登記・税金の基本

遺産相続の分配方法とは?法定相続分の割合と遺産分割の基本を解説

2026.08.31

相続の基礎知識

遺産相続・生前対策

遺産相続の分配方法とは?法定相続分の割合と遺産分割の基本を解説

PREV
NEXT