サマリー
相続した実家や長年放置している空き家は、維持管理の手間や固定資産税の負担が重なりやすく、早めに手放したいと悩む方も少なくありません。
空き家を早期に処分したい場合の選択肢として注目されているのが「不動産買取」です。
しかし、一般的な仲介売却と何が違うのか、どのくらいの価格で買い取ってもらえるのか疑問に思うことも多いでしょう。
この記事では、空き家買取の仕組みや仲介との違い、相場感や手続きの流れ、検討時の注意点について分かりやすく解説します。
空き家買取とは?仲介売却との違い
空き家を手放す際、不動産会社を介する方法には大きく分けて「買取」と「仲介」の2種類があります。
両者の仕組みや取引条件には明確な違いがあるため、それぞれの特徴を正しく理解することが大切です。
空き家買取とは、不動産会社が買主となって直接物件を買い取る方法を指します。
買い手を探すための広告活動や内見対応が不要となるため、査定価格に納得できれば短期間で売買が成立しやすいという特徴があります。
買取と仲介売却の主な違い
一般的な仲介売却では、不動産会社が一般の購入希望者を幅広く募ります。
市場相場に近い価格で売却できる可能性がある一方で、買い手が見つかるまでに数か月から半年以上の期間を要することも珍しくありません。
これに対し買取では、不動産会社がリフォームや再販売を行う前提で購入するため、売却価格は市場相場より低くなる傾向があります。
ただし、早期に売却を確定できる点や、販売活動に伴う手間を大幅に省ける点が利点です。
| 比較項目 | 買取 | 仲介売却 |
|---|---|---|
| 主な買主 | 不動産会社 | 一般の個人など |
| 売却期間の目安 | 仲介より短期間で進みやすい | 数か月〜半年以上 |
| 売却価格の傾向 | 市場相場の5〜8割程度とされることもある※ | 市場相場に近い価格 |
| 売主の手間 | 少ない(内見対応など不要) | 多い(広告・内見対応など) |
| 仲介手数料 | 原則として不要(不動産会社が直接買主となるため) | 売却成立時に発生 |
※買取価格に一律の基準があるわけではなく、物件の立地、状態、再販方法、修繕・解体費用などによって大きく異なります。
空き家買取が適している主なケース
仲介での売却が難しい状態の物件や、所有者側の事情によって迅速な手続きが求められる状況では、買取の活用が有力な選択肢となります。
具体的には以下のようなケースが挙げられます。
- 築年数が古く、雨漏りや設備の故障など建物の老朽化が進んでいる物件
- 室内に家具や生活用品などの残置物が大量に残ったままの物件
- 相続税の納付や資金調達のため、短期間で確実に現金化したい場合
- 遠方に住んでおり、物件の管理や内見立ち会いに時間を割けない場合
物件の状態や売却にかけられる時間に応じて、仲介と買取のどちらが適しているかを慎重に見極めることが重要です。
空き家を買取で手放すメリット・デメリット
空き家の処分方法として買取を検討する際には、利点だけでなく注意すべき側面も把握しておくことが大切です。
仲介による売却とは異なる特徴があるため、双方の性質を理解して選択する必要があります。
空き家を買取で売却するメリット
買取では、買主となる不動産会社が決まっているため、仲介売却より短期間で契約・決済まで進めやすい傾向があります。
ただし、相続登記や権利関係の整理、境界確認などが必要な場合には、売却までに時間がかかることがあります。
早期に物件を手放すことで、翌年度以降の固定資産税や都市計画税の負担をなくせるほか、雑草の繁茂や建物の破損といった近隣トラブルを防ぐための定期的な見回り・維持管理の手間から解放される点も利点といえます。
また、買取では、契約内容によって売主の契約不適合責任の範囲を限定したり、免責したりする特約が設けられる場合があります。
特に古い空き家では、雨漏りやシロアリ被害などについて、どこまで売主が責任を負うのかを契約書で確認することが重要です。
なお、売主が不具合を知りながら告げなかった場合など、免責特約によっても責任を免れられない場合があるため、把握している不具合は契約前に不動産会社へ伝えておくことが重要です。
古い家屋内に残された家具や日用品などの残置物について、処分を含めてそのままの状態で引き取ってもらえる「現状渡し」に対応している事業者も多く見られます。
事前のリフォームや荷物の片付けにかかる費用・労力を抑えやすい点も特徴です。
空き家を買取で売却するデメリット
買取における最大のデメリットは、一般的な仲介売却と比べて売却価格が市場相場よりも低くなる傾向がある点です。
不動産会社は買い取った物件のリフォームや解体、再販売にかかるコストや利益を見込んで買取価格を算出するため、市場価格よりも割安になりやすい点には注意が必要です。
そのため、多少時間がかかっても少しでも高い価格で売りたいと考えている場合には、仲介での売却活動を優先したほうが適している場合もあります。
| 項目 | メリット | デメリット・注意点 |
|---|---|---|
| 売却スピード | 比較的早く現金化しやすい | 急ぎでない場合は価格面で不利になることも |
| 売却価格 | 価格の確定が早い | 仲介売却の市場相場より低くなる傾向 |
| 建物の状態 | 修繕不要・現状渡しが可能な場合が多い | 劣化が著しい場合は解体費分が査定から引かれる |
| 売主の責任 | 契約内容によって責任を限定・免責できる場合がある | 契約書の責任範囲を確認する必要がある |
| 維持管理 | 税金や管理の手間を早期に解消可能 | 特になし |
空き家買取の相場目安と価格が決まる要因
空き家の買取価格は仲介より低くなる傾向がある
空き家の買取価格は、仲介による売却価格より低くなる傾向があります。
ただし、買取価格に一律の基準があるわけではなく、物件の立地、土地・建物の状態、再販方法、修繕・解体費用などによって大きく異なります。
買取業者は買い取った空き家をそのまま保有し続けるのではなく、修繕やリフォームを行ったり、解体して更地にしたりしたうえで第三者へ再販売します。
そのため、再販売にかかる工事費用や手続き費用、業者の利益、再販までの在庫リスクなどがあらかじめ差し引かれた金額が査定価格として提示されます。
空き家の買取査定額を左右する主なポイント
買取価格は画一的に決まるわけではなく、物件の立地や建物のコンディション、再生にかかるコストなどを総合的に勘案して算出されます。
| 主な査定基準 | 価格への影響 |
|---|---|
| 立地条件・周辺環境 | 最寄り駅からの距離、周辺の住宅需要、道路との接道状況などが良好なほど評価が高くなる傾向にあります。 |
| 築年数・建物の劣化状況 | 基礎や柱の傷み、雨漏りやシロアリ被害の有無により、必要となるリフォーム規模や費用が変動します。 |
| 解体費用や不用品処分費用 | 建物の解体が必要な場合や室内の残置物を業者側で処分する場合、その実費相当額が査定額から差し引かれます。 |
建物の劣化が進んでいてそのままの活用が難しい場合は、解体を前提とした査定となることがあり、木造や鉄骨造などの構造に応じた解体費用が引かれます。
また、家具や生活用品などの残置物を残したまま引き渡す場合も、処分にかかる費用分が買取価格から減額される要因となります。
このように、再販までにどれだけの費用と手間がかかるかの見通しによって、実際の提示金額には大きな差が生じることがあります。
空き家でも買取が難しいケースと対処法
老朽化した物件でも買い取ってもらえることが多い買取ですが、物件や権利の状態によっては不動産会社から買取を断られてしまうケースもあります。
空き家買取が難しくなりやすい主なケース
再販の見通しが立ちにくい物件や、法的な権利関係に課題がある物件は、一般的な買取業者では対応が困難となる場合があります。
具体例としては以下のような状況が挙げられます。
- 建築基準法の接道義務を満たしておらず再建築不可となっている物件
- 隣地との土地境界が不明確でトラブルのリスクがある場合
- 借地権や底地など権利関係が複雑に入り組んでいる物件
- 共有名義になっており共有者間で売却や処分の意見がまとまっていない場合
- 抵当権などの担保権が残ったままで抹消の見通しが立たない場合
- 過疎地域や需要が極めて低いエリアに位置し再販が著しく困難な場合
- 建物の老朽化や倒壊のリスクが著しく高い場合
不動産会社に売却する前に法律関係の整理が必要なケース
空き家の売却を進めようとしても、法律関係や権利関係に課題がある場合は、不動産会社へ査定や買取を依頼する前段階での整理が必要になります。
- 相続人が複数いて遺産分割協議がまだ終わっていない場合
- 不動産が共有名義になっており、一部の共有者が売却に反対している場合
- 相続登記が未了のまま放置され、所有者名義が複数世代にまたがっている場合
- 隣地との境界が確定しておらず越境問題が生じている場合
- 借地権や底地が関係している、または抵当権などの担保権が設定されたままの場合
こうしたケースでは、不動産会社だけでは手続きを進められないことが多いため、売却前に弁護士へ相談して法的な権利関係を整えておくことが大切です。
買取を断られた場合の考え方と対応
買取を断られたからといって、その空き家が一切処分できないとは限りません。
再建築の可否を行政等に確認したり、弁護士などを通じて権利関係や境界の整理を行ったりすることで、別の売却方法を検討できる場合があります。
買取不可とされた場合でも、権利関係や法的な課題を整理することで別の売却方法を検討できるケースがあります。
特に権利関係の調整や共有者間の合意形成、境界トラブルなどが原因となっている場合は、弁護士などの法律の取扱分野に詳しい専門家に相談しながら解決を図ることが有効です。
空き家買取の基本的な流れと必要書類
空き家の買取は、買主が不動産会社となるため、購入希望者を募る仲介売却に比べて手続きがシンプルに進む傾向があります。
大まかな流れや事前に準備すべき書類を把握しておくことで、より円滑に取引を進めやすくなります。
空き家買取が進む4つのステップ
買取手続きは、仲介売却と比較して速やかに進みやすい傾向があります。
具体的な手順は以下の流れに沿って進みます。
- 査定依頼と現地調査:不動産会社に問い合わせを行い、図面や登記情報をもとにした机上査定の後、現地の建物の状態や敷地境界などを確認する現地調査を受けます。
- 買取価格と条件の提示:調査結果に基づき、不動産会社から買取金額や引き渡し時期、残置物の取り扱いなどの条件が提示されます。
- 売買契約の締結:提示された条件に合意した場合、売買契約書を交わして手付金の受領などを行います。
- 代金決済と物件の引き渡し:残代金の受領と同時に所有権移転登記の手続きを行い、建物の鍵を不動産会社へ引き渡して完了となります。
条件提示の段階で、残置物の処分負担や契約不適合責任の免責事項について明確にしておくことが重要です。
事前に用意しておきたい必要書類
買取の手続きを滞りなく進めるためには、所有権の確認書類や本人確認書類をあらかじめ揃えておくことが大切です。
必要な書類や有効期限は、取引内容や司法書士等の案内に従って準備します。
紛失している書類がある場合でも再発行や代替手続きが可能なケースがあるため、早めに不動産会社へ相談しておくと安心です。
| 必要書類 | 主な用途・備考 |
|---|---|
| 登記済証または登記識別情報通知 | 物件の所有者であることを証明するための書類
(いわゆる権利証) |
| 身分証明書・実印・印鑑証明書などの本人確認・登記関連書類 | 売買契約および所有権移転登記の手続き時に使用 |
| 固定資産税納税通知書・課税明細書 | 固定資産税の確認や物件情報の確認など |
| 固定資産評価証明書 | 評価額の確認や登記手続きなどで使用する場合がある |
| 土地測量図・建物図面・間取り図 | 敷地境界や建物の構造を把握するための資料
(手元にある場合) |
| 建築確認済証・検査済証 | 建築当時の法令適合状況を確認する資料
(手元にある場合) |
相続した物件で名義が被相続人のままになっている場合は、売買契約に先立って遺産分割協議書や戸籍謄本などが必要となる点に注意してください。
空き家買取を検討する際の注意点
相続登記が完了しているか確認する
名義人が亡くなった親や親族のままになっている空き家は、相続人を確定させ、売却に必要な権利関係を整理する必要があります。
相続によって不動産の所有権を取得した場合、相続登記をしていなくても相続人に所有権が移転しますが、買主への所有権移転登記を行うためには、原則として相続登記を先に行う必要があります。
そのため、実務上は相続登記を済ませてから売却を進めるのが一般的です。
2024年4月からは相続登記の申請が義務化されており、原則として相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請する必要があります。
正当な理由なく違反すると10万円以下の過料の対象となる可能性があります。
売却を考えている場合は、相続登記の義務への対応だけでなく、売却の前提となる権利関係の整理も早めに進めることが重要です。
売却時の税金と特例の適用要件を確認する
空き家を売却して利益(譲渡益)が生じた場合は、譲渡所得税や住民税の課税対象となります。
税額は売却代金から取得費や譲渡費用を差し引いた金額をもとに計算されます。
相続した空き家を売却する際には、一定の要件を満たすことで、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」が適用できる場合があります。
なお、2024年1月1日以後の譲渡で、相続人が3人以上の場合は、控除額の上限が2,000万円となります。
この特例は、仲介による売却だけでなく、不動産会社による買取でも適用できる場合があります。
ただし、対象となる家屋の建築時期、相続後の使用状況、売却代金の上限、売却期限など、複数の要件を満たす必要があります。また、一定の場合には、売却後に家屋を取り壊すことなどによって要件を満たせる場合もあります。
特例の適用には複数の要件を満たす必要があるため、売却前に税務署や税理士などに確認しておくことが大切です。
複数の買取業者に査定を依頼して条件を比較する
空き家の買取価格や引き渡し条件は、依頼する不動産会社の得意分野や再販ノウハウによって差が生じます。
1社だけの査定額で判断してしまうと、相場より著しく低い価格や不利な条件で契約してしまうリスクがあります。
比較する際は、提示された買取価格だけでなく、残置物の処分費用が価格に含まれているか、引き渡し時期の融通が利くかといった細かな条件も確認します。
担当者が提示額の根拠を分かりやすく説明してくれるかどうかも重要な判断基準です。
権利関係の整理やトラブルは専門家に相談する
共有状態にある不動産全体を売却する場合、原則として共有者全員の同意が必要です。
一方、各共有者は原則として自己の共有持分を単独で処分できます。
相続人間で遺産分割協議がまとまっていない場合も、売却方法や売却代金の分配について相続人間の合意が必要となるため、早めに権利関係を整理することが重要です。
相続人間で意見が分かれている場合や、土地の境界が未確定で隣地との関係に懸念があるなど、法的な課題があるケースでは、不動産会社への相談と並行して弁護士や司法書士などに助言を求めることが適しています。
まとめ
空き家を手放す際は、建物の状態や立地条件だけでなく、「いつまでに売却したいか」という希望時期や管理負担の程度に合わせて、仲介と買取のどちらが適しているかを検討することが大切です。
早期の現金化や管理の手間を軽減したい場合は買取が有効な選択肢となりますが、売却価格を優先したい場合は仲介売却も含めて比較検討するとよいでしょう。
相続登記の手続きや共有持分の問題など、不動産の権利関係に不安や疑問がある場合は、弁護士などの専門家に相談しながら進めると安心です。
弁護士法人ネクスパート法律事務所では、相続や不動産に関する法的なご相談を受け付けておりますので、お悩みの際はお気軽にお問い合わせください。
コラム監修者
RUI SATO
所属:代表(東京オフィス)
明治大学付属中野高校卒業、明治大学法学部・法科大学院修了。2012年弁護士登録(東京弁護士会)、2016年ネクスパート法律事務所を創設。一般民事・企業法務に加え、ブロックチェーン分野にも注力し、海外法人設立支援業務などにも取り組む。AIを活用した弁護士業務の改善・事業開発に取り組み、一般社団法人 イノベーション法務支援機構代表理事就任。公正取引委員会・中小企業庁講師、日弁連代議員、東京弁護士会常議員等を歴任。