更新日:2026年10月30日 (金)
公開日:2026年10月30日 (金)
多重債務の相談実態から見る債務整理の重要性 ― 平均債務額約630万円の衝撃
サマリー
東京都の多重債務110番に174件の相談、平均債務額約630万円という報道を基に、債務整理の種類や早期相談の重要性、時効・利息制限法の知識を弁護士が解説します。
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複数の借入先から返済が困難になる「多重債務」の問題は、今なお多くの人を苦しめています。東京都が実施した無料相談会「多重債務110番」の結果が報じられ、相談件数と債務額の実態が明らかになりました。
東京都「多重債務110番」に174件 平均債務額約630万円
出典:WEBニッポン消費者新聞
報道によれば、東京都が実施した「多重債務110番」には174件の相談が寄せられ、相談者の平均債務額は約630万円に上ったとのことです(WEBニッポン消費者新聞、2026年10月29日配信)。この数字は、多重債務が決して一部の特殊なケースではなく、誰にでも起こりうる身近な問題であることを示しています。本コラムでは、この報道を手がかりに、債務整理の具体的な手続きと、早期に弁護士へ相談することの重要性について解説します。
多重債務とは何か ― 平均630万円という数字が示す深刻さ
多重債務とは、複数の貸金業者やクレジットカード会社から借入を重ね、返済が困難になっている状態を指します。今回の「多重債務110番」で明らかになった平均債務額約630万円という数字は、相談者の多くが単独の借入だけでなく、複数口の借入を雪だるま式に増やしてしまった結果であることをうかがわせます。
借入が複数に及ぶと、どの貸金業者にいくら返済しているのか把握しきれなくなり、新たな借入で既存の返済に充てる「自転車操業」状態に陥りやすくなります。この状態が続くと、遅延損害金や高利の利息が雪だるま式に膨らみ、最終的には返済そのものが不可能になります。債務が膨らむ前、あるいは自転車操業に気づいた段階で専門家に相談することが、解決への第一歩です。
債務整理の3つの手続きと選択基準
債務整理には主に任意整理・個人再生・自己破産の3つの手続きがあり、債務額や収入状況、保有資産によって最適な方法が異なります。
任意整理は、裁判所を介さず弁護士が債権者と直接交渉し、将来利息のカットや返済期間の分割(概ね3〜5年)を取り決める手続きです。利息制限法(利息制限法1条)に定められた上限金利(元本10万円未満は年20%、10万円以上100万円未満は年18%、100万円以上は年15%)を超える約定利息が設定されていた場合、引き直し計算により債務額が減少することもあります。
個人再生は、民事再生法に基づき裁判所に申立てを行い、原則として債務total額を5分の1程度(最低100万円)まで圧縮したうえで、原則3年(最長5年)の分割弁済を行う手続きです。住宅ローン特則を利用すれば、自宅を手放さずに他の債務を整理できる点が大きな特徴です。
自己破産は、破産法に基づき裁判所に申立てを行い、支払不能(破産法15条)と認められれば、非免責債権(税金や養育費など、破産法253条1項各号に列挙されたもの)を除き、債務の支払義務が免除される手続きです。平均債務額約630万円という水準では、収入や資産の状況次第で個人再生・自己破産のいずれも検討対象となり得るため、自己判断で手続きを選ばず専門家の診断を受けることが重要です。
放置するリスクと時効・給与差押えの法的問題
多重債務を放置すると、債権者から訴訟を提起され、給与や預金口座の差押え(民事執行法143条以下)に至る可能性があります。給与が差し押さえられた場合、原則として手取り額の4分の1が差押えの対象となり(民事執行法152条)、生活そのものが立ち行かなくなるおそれがあります。
また、借入から長期間が経過していても、途中で一部返済や債務承認を行っていれば、消滅時効(民法166条、原則として権利行使できることを知った時から5年)の進行がリセットされてしまう点にも注意が必要です。時効援用の可否は個別の取引履歴の精査が不可欠であり、自己判断で放置すると不利益を被るおそれがあります。「まだ大丈夫」と先延ばしにすることが、結果的に選択肢を狭め、解決を困難にする最大の要因です。
無料相談の活用と弁護士に依頼するメリット
今回報じられた「多重債務110番」のような行政の無料相談窓口は、問題の整理や方向性の把握に有用です。もっとも、相談後に実際の債権者対応や裁判所への申立てを行うには、弁護士への正式な依頼が必要となる場面が多くあります。
弁護士に債務整理を依頼すると、受任通知(貸金業法21条1項9号により、受任通知到達後の債権者による取立行為は禁止されます)が各債権者に送付され、その時点で督促や取立てが止まります。これにより、精神的な負担が大きく軽減されるとともに、落ち着いて手続きの進め方を検討する時間を確保できます。
まとめ
東京都の「多重債務110番」に寄せられた174件の相談、平均債務額約630万円という実態は、多重債務が特別な人だけの問題ではなく、誰にでも起こりうる身近な問題であることを物語っています。借入の返済に行き詰まりを感じたら、放置せず、できるだけ早い段階で専門家に相談することが、生活再建への最短ルートです。
多重債務や借金返済の悩み、債務整理の手続き選択でお困りの場合は、弁護士法人ネクスパート法律事務所までご相談ください。
コラム監修者
佐藤 塁
所属:代表(東京オフィス)
東京都杉並区出身。明治大学付属中野高校、明治大学法学部を経て、明治大学法科大学院を修了。2011年に新司法試験に合格し、最高裁判所司法研修所を修了(65期)。2012年12月に弁護士登録(東京弁護士会)し、都内の法律事務所での勤務を経て、2016年1月に寺垣俊介とともにネクスパート法律事務所を創業。代表弁護士として一般民事から企業法務まで幅広い分野を手がけるとともに、全国に拠点を持つ事務所の経営にあたる。
早くからテクノロジーと法務の融合に取り組み、2021年にはAIを利用した法律文書作成サービスを開発するLegal AI株式会社の代表取締役に就任(現在は退任)。当時はAI技術が発展途上で技術的な壁に直面したが、この挑戦を通じて「法務業務こそAIの力を借りれば飛躍的に変わる」という確信を得る。以来そのビジョンを持ち続け、生成AIが広く普及した現在は事務所の業務全体でAIの活用を進めている。2026年には日本弁護士連合会「弁護士業務改革シンポジウム」にパネリストとして登壇した。ブロックチェーン・Web3分野の法務や海外法人の設立支援にも取り組み、公益法人主催のセミナー等で講師を務める。
公正取引委員会・中小企業庁「適正取引推進講習会」講師、日本弁護士連合会代議員、東京弁護士会常議員を歴任。弁護士業務のかたわら、2014年に東京青年会議所に入会して以来、10年以上にわたりボランティア活動に取り組む。2017年からは国際的な社会奉仕団体であるライオンズクラブに所属し、2022年には東京数寄屋橋ライオンズクラブ第57代会長を務めた。献血の呼びかけ、障がい者スポーツ大会の支援、保護犬活動のほか、弁護士として小中学生への法教育や薬物乱用防止教育にも携わっている。