更新日:2026年10月19日 (月)

公開日:2026年10月19日 (月)

【元消費者庁執行担当の弁護士が解説】キャンペーンの景品はいくらまで?~景品規制の上限額と見落としやすい点~

【元消費者庁執行担当の弁護士が解説】キャンペーンの景品はいくらまで?~景品規制の上限額と見落としやすい点~ 【元消費者庁執行担当の弁護士が解説】キャンペーンの景品はいくらまで?~景品規制の上限額と見落としやすい点~

サマリー

キャンペーンで提供する景品には、景品表示法による上限があります。抽選で当たる人を決める懸賞では、取引価額が5,000円未満なら取引価額の20倍、5,000円以上なら10万円が最高額となり、かつ、景品の総額を懸賞に係る売上予定総額の2%以内とする必要があります。また、もれなく渡す景品では、取引価額の10分の2(1,000円未満は200円)が上限です。重複当選があり得る複数の懸賞は合算して判断し、「見本」と表示しても上限の適用を免れない場合がある点にも注意が必要です。

「購入者の中から抽選で旅行をプレゼント」「5,000円以上お買い上げの方にもれなく進呈」といった販促キャンペーンを企画するときは、不当景品類及び不当表示防止法(以下「景表法」といいます。)の景品規制を最初に確認しておく必要があります。景品の金額には上限があり、企画の組み方によっては、気づかないうちに上限を超えてしまうこともあります。本記事では、景品規制の基本と、実務で見落としやすい点を整理します。

景品規制の対象となる「景品類」とは

景品規制の対象となる「景品類」とは、顧客を誘引する手段として、事業者が自己の供給する商品・サービスの取引に付随して提供する、物品、金銭その他の経済上の利益をいいます(景表法2条3項)。物品や金銭のほか、招待や優待も含まれ得ます。メーカーがくじ付きの商品を小売店経由で販売する場合も、小売店が企画に関与していなければ、景品規制の適用を受けるのはメーカーとされています。

一方、商品の購入や来店を条件とせず、新聞・雑誌・ウェブサイトなどで告知して誰でも応募できる懸賞(いわゆるオープン懸賞)は、取引に付随しないため景品規制の対象外です。オープン懸賞の提供額の上限は平成18年4月に撤廃されており、現在は具体的な上限額の定めがありません。ただし、購入を条件にしていなくても、取引の相手方を主たる対象として提供する場合は、取引に付随するものとされています。商品を買った人でなければ答えにくい内容で応募させる企画などは、オープン懸賞のつもりでも景品規制の対象となります。

また、値引やアフターサービス、商品の付属品にあたるものは景品類から除かれます。もっとも、抽選で値引券を提供するなど、懸賞の方法による場合は「値引」とは認められず、景品類として懸賞の規制を受けることになります。値引と景品類の境目については、値引が景品表示法違反となる境界線を解説した記事もあわせてご覧ください。

懸賞と総付景品の上限額

景品類にあたる場合、くじや抽選などで当たる人を決める「懸賞」か、条件を満たした人全員に渡す「総付景品」かによって、適用される上限が異なります(景表法4条)。

一般懸賞と共同懸賞

1社で行う一般懸賞では、景品類の最高額は、取引価額が5,000円未満の場合は取引価額の20倍、5,000円以上の場合は10万円です。あわせて、提供する景品類の総額を、懸賞に係る売上予定総額の2%以内に収める必要があります。景品の最高額の規制は満たしていたとしても、売上予定総額の規制は見落としが多いので、注意が必要です。

商店街や一定の地域の事業者が共同で行う共同懸賞では、取引価額にかかわらず最高額は30万円、総額は懸賞に係る売上予定総額の3%が上限とされています。

総付景品

購入者や来店者にもれなく提供する総付景品では、取引価額が1,000円未満なら200円、1,000円以上なら取引価額の10分の2が最高額となります。総付景品には、総額の上限は定められていません。イベント会場で来場者に配るプレゼントの扱いは、イベントブースでのプレゼント提供と総付景品規制を解説した記事で取り上げています。

取引価額と景品の価額の考え方

上限の基準となる「取引価額」は、購入額に応じて景品を出す場合はその購入額です。購入を条件とせず来店者に提供する場合は原則として100円で計算しますが、その店舗で通常行われる取引の価額のうち最低のものが100円を超えると認められるときは、その額を取引価額とすることができます。取引価額は消費税込みの価格で考えます。

景品の価額は、その景品と同じものが市販されている場合、提供を受ける人が通常購入するときの価格で判断し、こちらも消費税を含めた金額になります。オリジナルグッズのように市販されていないものは、入手価格や類似品の市価などを勘案して算定します。協賛企業から無償で入手した物品であっても、価額が0円として扱われるわけではありません。

キャンペーン企画で見落としやすい点

重複当選があり得る懸賞は合算して判断する

同じ取引に付随して2つ以上の懸賞を行う場合、同じ事業者が行うものであれば、別々の企画として実施していても、提供する景品類を合算して考えます。同じ人が両方に当選し得る設計にしていると、それぞれの懸賞が上限内でも、合算すると上限を超えることがあります。

たとえば、5,000円以上の購入者を対象に8万円相当の宿泊券を抽選で提供し、重複当選を制限しないまま、同じ購入者を対象に10万円分の商品券の抽選も行う場合を考えます。それぞれは10万円以内でも、合算すると18万円となり、上限を超えることになります。

これに対し、1回目の抽選に外れた人だけを対象とする、いわゆるダブルチャンスであれば、両方に同時に当選する人はいないため、最高額はそれぞれの懸賞ごとに判断します。ただし、景品類の総額については、両方の懸賞を合算して売上予定総額の2%以内に収めなければなりません。重複当選を認めるかどうかは、企画書の段階で決めておく必要があります。

消費者庁:景品に関するQ&AのQ94参照

「見本」と表示すれば上限がなくなるわけではない

総付景品のうち、見本その他宣伝用の物品や、自社の取引で使える割引券などは、正常な商慣習に照らして適当と認められるものであれば、総付景品の上限は適用されません。ただし、市販されている商品そのものを見本として提供する場合は、最小取引単位のもので、試食・試用のためのものである旨が明確に表示されている必要があるとされています。見本にあたるかどうかは、見本の内容や提供の方法、必要性の限度などから判断されるため、「見本」「サンプル」と表示しただけで上限の適用を免れるわけではありません。

試供品を見本として提供する際の留意点は、試供品(サンプル)と総付景品規制の関係を解説した記事で詳しく取り上げています。

景品の中身にも別の規制がある

金額が上限内でも、景品の中身によっては他の法令が問題になります。医薬品については、懸賞や賞品として医薬品を授与する旨の広告を行ってはならないとされています(厚生労働省「医薬品等適正広告基準の改正について」(平成29年9月29日薬生発0929第4号)別紙第4の11(2))。ただし、家庭薬を見本に提供する程度であれば、この限りではないとされています。詳しくは「医薬品等の懸賞の可否について」をご覧ください。

景品規制に違反した場合のリスク

景品規制に違反すると、消費者庁や都道府県知事から措置命令を受けるおそれがあります(景表法7条1項)。

令和7年度の指導事例としては、ペット用品を合計5,000円以上購入した者に対して、もれなく動物のケア用品(2,000円相当)を提供することを企画し、これを実施したものの、提供することができる景品類の上限額1,000円(5,000円の10分の2)を超えるものであったとされています(消費者庁「令和7年度における景品表示法等の運用状況及び表示等の適正化への取組」(令和8年5月28日))。指導にとどまる場合でも、企画を途中で止めることになれば、告知物の差し替えや当選者への説明など、事業者側の負担は小さくありません。

なお、景品規制の違反には課徴金制度は適用されません。課徴金の対象は、優良誤認表示と有利誤認表示に限られているためです(景表法8条1項)。一方で、キャンペーンの告知で当選本数や割引率、「通常価格」などを実際より有利に見せる表示をすると、有利誤認表示(景表法5条2号)として課徴金の対象となり得ます。景品の金額とあわせて、告知の表示も確認しておくことが求められます。

まとめ・ご相談はネクスパート法律事務所へ

景品規制では、提供するものが景品類にあたるか、懸賞と総付景品のどちらか、取引価額をいくらと見るか、複数の企画を合算するとどうなるか、といった様々な点を確認していく必要があります。上限額だけでなく、重複当選の扱いや見本の提供方法、景品の中身にかかわる他の法令も、企画の段階で確認しておくと、実施後の差し替えを避けやすくなります。

キャンペーンでは、このほかにも応募作品の権利の扱いや個人情報の取得、未成年者や海外居住者の参加など、検討すべき点が多くあります。応募規約や告知物を作り始める前に、企画全体を一度点検しておくことをお勧めします。

ネクスパート法律事務所では、キャンペーンに付随する景品表示法等の法律問題に関するご相談を承っております。お気軽にお問い合わせください。

※本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。具体的な対応については弁護士にご相談ください。

コラム監修者

Yuki Ishibashi

Yuki Ishibashi

所属:東京オフィス

これまで個人・法人問わず幅広い分野の相談、訴訟等に取り組む。 また、任期付き国家公務員として消費者庁に出向した際は、デジタルプラットフォームに関する法律の立案、事件調査班の班長として景品表示法の執行、審査請求の審理員や国側の指定代理人などに従事。 「法律の立案(ルールメイキング)」から「執行」、そして「訴訟対応」という一気通貫した実務経験を踏まえた戦略的なリーガルアドバイスを心掛けている。

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