更新日:2026年10月23日 (金)

公開日:2026年10月23日 (金)

公取委・国交省の「下請けいじめ」全国調査とは?取適法で荷主が見直すべきポイント

公取委・国交省の「下請けいじめ」全国調査とは?取適法で荷主が見直すべきポイント 公取委・国交省の「下請けいじめ」全国調査とは?取適法で荷主が見直すべきポイント

サマリー

2026年9月、公正取引委員会、中小企業庁、国土交通省は「物流分野取引適正化地方ブロック連絡会議」を設け、取適法違反行為、いわゆる「下請けいじめ」が疑われる事業者に対する合同調査(全国調査)を進める方針を示しました。荷主が運送事業者に運送を委託する取引は、取適法の規制対象です。
違反行為事例である①無償の荷役、②長時間の荷待ち、③運賃の据置き、④支払遅延・減額の4つの行為と、荷主が点検しておくべきポイントを説明します。

この記事のポイント

  • 取適法は、下請法を改正して2026年1月1日に施行された法律です。荷主が自社の商品などの運送を運送事業者に委託する取引が、「特定運送委託」として規制対象に加わりました。
  • 公正取引委員会、中小企業庁、国土交通省は地域ブロックごとの連絡会議を設け、取適法違反が疑われる事業者に対する合同調査を進める方針を示しています。
  • 無償の荷役・附帯作業、長時間の荷待ち、運賃の据置き・一方的な引下げ、支払遅延・減額の4つは、公正取引委員会の運用基準で特定運送委託の違反行為事例に挙げられています。
  • 荷主は、発注内容に附帯作業と料金を書いているか、荷待ち時間と価格協議の記録を残しているか、支払期日が60日以内かを点検しておく必要があります。

トラック運転手に荷物の積み下ろしを無償でさせる、指定時刻に着いた車両を長時間待たせるといった行為は、2026年1月から「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」(以下「取適法」といいます。)の規制対象になりました。公正取引委員会と国土交通省は9月末に地域ごとの連絡会議を設け、合同調査を進める方針を示しています。

本記事では、取適法の概要と合同調査の動き、荷主が問われやすい行為と点検項目を説明します。

取適法とは

取適法は、下請代金支払遅延等防止法(下請法)を改正した法律で、2026年1月1日に施行されました。発注する側を「委託事業者」、受注する側を「中小受託事業者」と呼びます。

対象になる取引は、製造委託、修理委託、情報成果物作成委託、役務提供委託、特定運送委託の5類型です(取適法2条6項)。取引に取適法が適用されるかは、委託事業者と中小受託事業者の資本金や従業員数の組み合わせで決まります。従業員数による基準は「あなたの会社も対象に?下請法改正(取適法)で新設された「従業員基準」」で説明しています。

委託事業者には、発注内容の明示(同法4条)、役務の提供を受けた日から60日以内の支払期日の設定(同法3条1項)、取引に関する書類の作成・保存(同法7条)などの義務があり、買いたたきや減額などの行為が禁止されています(同法5条)。

2026年の改正で加わった次の2点が、今回の合同調査に関係します。

1つは特定運送委託の追加です。荷主が、販売する商品や製造を請け負った製品を取引の相手方へ届ける運送を運送事業者に委託する取引が、新たに規制対象に入りました(同法2条5項)。資本金や従業員数の基準に当たる取引では、荷主は委託事業者として上の義務と禁止行為の適用を受けます。特定運送委託の範囲は「荷主は要注意!2026年施行「特定運送委託」の新設で何が変わる?」で説明しています。

もう1つは事業所管省庁の権限です。公正取引委員会と中小企業庁長官に加え、取引に係る事業を所管する大臣も委託事業者に指導・助言でき(同法8条)、これらの機関は違反の疑いに関わる情報を相互に提供できます(同法13条1項)。

公取委・中小企業庁・国交省が地域ごとに合同調査を進める

2026年9月28日、公正取引委員会は、中小企業庁、国土交通省とともに「物流分野取引適正化地方ブロック連絡会議」(以下「ブロック会議」といいます。)を立ち上げると発表しました。ブロック会議には公正取引委員会の地方事務所、地方経済産業局、地方運輸局が参加し、北海道から沖縄までの10区域ごとに取適法の執行方針などを話し合います。

9月30日の事務総長定例会見では、取適法に違反する行為が疑われる事業者に対する国土交通省との合同調査を進め、その際にブロック会議を使う方針が示されました。合同調査の手順や対象の選び方は、2026年10月23日時点で公表されていません。

10月から11月には、トラック・物流Gメンによる「集中監視月間」に公正取引委員会と地方経済産業局も加わり、荷主の営業所や物流拠点を訪問する合同荷主パトロールが全国で行われています。

調査の対象となる違反行為事例

合同調査の対象は、取適法に違反する行為が疑われる事業者です。

違反の有無は、主に5条の禁止行為に当たるかで判断されます。公正取引委員会の「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律の運用基準」(以下「運用基準」といいます。)は、特定運送委託で想定される違反行為事例を挙げています。

違反が認められると、公正取引委員会は、減じた代金の支払や代金の引上げなどの措置をとるよう勧告します(同法10条1項)。勧告を受けた事業者の名称と違反の内容は、公正取引委員会のサイトの「取適法勧告一覧」に掲載されています。

荷主の行為が運送事業者の法令違反の原因になるおそれがある場合には、国土交通大臣が荷主にその行為をしないよう要請・勧告でき、勧告したときはその旨を公表します(貨物自動車運送事業法附則1条の2第3項~5項)。

この規定は、取適法の資本金・従業員数の基準に当たらない取引にも及びます。

無償の荷役・附帯作業

運送を委託した運送事業者に、荷積み、荷下ろし、倉庫内作業など運送以外の作業を無償でさせると、不当な経済上の利益の提供要請に当たります(取適法5条2項2号、運用基準第4の7(6))。

運用基準は、自社の販売する商品の運送を委託した事業者に運送以外の荷下ろしなどをさせた例や、構内の事故防止を理由に、荷役作業や車両移動時の立会いのために従業員を派遣させた例を挙げています。公正取引委員会の発表では、2025年度の勧告39件のうち31件が不当な経済上の利益の提供要請でした。

2026年7月10日には、製造を請け負った部品の運送を委託した事業者に、計546時間26分の荷積み・荷下ろしと附帯業務の費用を負担せずに行わせたとして、部品の製造業者が勧告を受けています(取適法5条2項2号)。

附帯作業を任せるときは、作業の内容と料金を発注時に明示し、代金に含める必要があります(同法4条)。

長時間の荷待ち

運送事業者が指定時刻に積込み場所へ着いたのに、自社の都合で長時間待機させ、待ち時間の費用を負担しないと、不当な給付内容の変更に当たります(同法5条2項3号、運用基準第4の8)。

運用基準は、自社の都合で到着日時を遅らせて商品を長く保管させ、保管費用を負担しなかった例や、運送当日の朝に発注を取り消し、運送事業者に生じた費用を負担しなかった例も挙げています。

公正取引委員会と中小企業庁が2025年に行った運送事業者間の取引の集中調査(勧告2件、指導530件)では、荷待ちや積込み・取卸しを委託しながら、発注時にその役務を書面に記載していない例が複数見つかっています。

この規定の対象は、運送事業者の責めに帰すべき理由がない待機です。運送事業者の遅着による待機は含まれないため、待機が誰の都合で生じたかを示せるよう、到着時刻と積込み開始時刻を記録しておくと、調査で説明する材料になります。

運賃の据置き・一方的な引下げ

燃料価格や労務費の上昇を理由に運送事業者が単価の引上げを求めたのに、十分に協議せず単価を据え置き、通常の対価を大幅に下回る代金に定めると、買いたたきに当たります(同法5条1項5号、運用基準第4の5)。年間運送契約の自動更新の直前に、人件費や燃料費に大きな変動がないのに単価を大幅に下げた契約書を送り、十分な協議をせずに代金を定めた例も、運用基準に挙げられています。

2026年1月からは、運送事業者から代金の協議を求められたのに応じない、または必要な説明をせずに一方的に代金を決める行為も禁止されました(同法5条2項4号)。協議の求めを無視する、協議を何度も先延ばしにするといった対応も、協議に応じないものとして扱われます(運用基準第4の9(3))。

支払遅延・減額

代金の支払期日は、運送の役務の提供を受けた日から60日以内で、原則として個々の運送ごとに定めます(同法3条1項、運用基準第4の2(4))。

運用基準は、運送事業者の請求書の提出が遅れたことや、事前の書面による合意なく支払日が金融機関の休業日に当たったことを理由に、定めた支払期日を過ぎて支払った例を支払遅延に挙げています(同法5条1項2号)。手形の交付による支払も支払遅延に含まれ、期日までに支払わないときは遅延利息も生じます(同法6条)。2026年10月9日には、手形を交付して約2,300万円の代金の支払を遅らせたとして、製造業者が勧告を受けています(同法5条1項2号)。

代金から「協力金」などの名目で一定額を差し引くことや、1,000円未満の端数を切り捨てて支払うことは、減額に当たります(同法5条1項3号)。

荷主が今点検しておく4つの項目

では、荷主となる企業は、どのようなことに気を付ければよいのでしょうか。主なポイントとなるのは、以下の4つです。

  1. 運送事業者に示す発注内容に、荷積み・荷下ろしなどの附帯作業とその料金を書いているか。現場の担当者が契約にない作業を頼んでいないか。
  2. 積込み場所への到着時刻と積込み開始時刻を記録しているか。荷待ちが生じたときの待機料を定めているか。
  3. 運送事業者からの値上げの申入れに対し、協議した日時と説明した内容を記録しているか。
  4. 支払期日が役務の提供を受けた日から60日以内か。請求書の遅れや休業日を理由に支払を遅らせていないか。協力金の差引きや端数の切捨てをしていないか。

荷役や荷待ちは、倉庫や物流センターで生じるため、発注担当者が気づくことが難しいところで、違反行為が発生しているかもしれません。そのため、点検は契約書や発注書の確認にとどめず、現場の担当者への聞き取りも行うとよいでしょう。

また、委託事業者は、給付の内容や代金の支払などを記載した書類を作成・保存しなければなりません(同法7条)。報告徴収や立入検査では帳簿書類が検査の対象になるため(同法12条)、荷待ち時間や附帯作業の記録もこの書類とあわせて保管しておくと、説明の際に使うことができます。

加えて、点検の対象には、自社が商品を受け取る側(着荷主)になる取引も含める必要があります。着荷主が発荷主に対して行う特定の行為を新たに対象に加えた物流特殊指定(特定荷主が物品の運送又は保管を委託する場合等の特定の不公正な取引方法)が、2027年4月1日に施行されます。自社の構内で生じる荷待ちや荷下ろしの扱いは、着荷主の立場でも見直しておく必要があります。

物流特殊指定については、公正取引委員会による「特定荷主が物品の運送又は保管を委託する場合の特定の不公正な取引方法」ガイドブックもあわせてご確認ください。

まとめ・ご相談はネクスパート法律事務所へ

運送を委託している荷主は、まず自社の運送取引が特定運送委託として取適法の対象になるかを確かめ、対象になる取引について発注書と現場の運用を点検してください。合同調査や荷主パトロールで指摘を受ける前に、運送取引の契約書や発注書、社内の運用を確認してください。

点検で違反のおそれが見つかった場合は、早く是正に取りかかってください。公正取引委員会は、調査に着手する前に違反行為を自発的に申し出て、中小受託事業者に与えた不利益の回復など自発的な改善措置を採っている事案については、勧告するまでの必要はないものとして扱うとしています。2025年度の自発的な申出は53件でした。

ネクスパート法律事務所では、運送委託の取引の見直しを含む取適法への対応に関する法律相談や、社内でのセミナーなど、企業の法律問題に関する幅広いご相談を承っております。お気軽にお問い合わせください。

※本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。具体的な対応については弁護士にご相談ください。

コラム監修者

KOHEI TAKASAWA

KOHEI TAKASAWA

所属:東京オフィス

東京都立大学法科大学院修了後、新司法試験合格。 弁護士登録以前は、上場準備中の企業(現・東証グロース市場上場企業)の管理部門において、IPO準備業務に従事。

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