更新日:2026年2月26日 (木)

公開日:2025年2月28日 (金)

不貞行為の態様が悪質と判断されうる6つケース|判例とともに紹介

不貞行為の態様が悪質と判断されうる6つケース|判例とともに紹介 不貞行為の態様が悪質と判断されうる6つケース|判例とともに紹介

サマリー

不貞行為の悪質性が高い場合には、慰謝料が増額されます。

不貞行為そのものが悪質だと考える人も多いかもしれませんが、実務上は、不貞行為の態様によって悪質性が判断されます。

では、どのような行為が《悪質》と評価されるのでしょう?

この記事では、主に次のことについて解説しています。

・悪質性が高いと判断された6つの判例
・悪質性の判断では考慮されにくい2つの事情
・不貞相手の積極性を主張した場合に予想される反論
ぜひ参考にしてください。

不貞行為が悪質だと慰謝料は増額される?

不貞行為が悪質だと慰謝料は増額されます。

慰謝料の金額は、被害者の精神的苦痛が大きいほど、夫婦に与えた影響が大きいほど、増額する傾向にあります。
慰謝料を算定する主な要素としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 婚姻期間
  • 不貞行為当時の夫婦円満の程度
  • 不貞行為の期間
  • 不貞行為の態様の悪質さ
  • 不貞行為の結果生じた婚姻共同生活の破綻の程度
  • 未成熟子の有無
  • 一部支払いを受けていると評価できる事実の有無

一般的に、不貞期間が長いほど、不貞回数が多いほど、その分被害者の精神的苦痛の程度も大きいと評価されるため、慰謝料は増額する傾向にあります。
しかし、不貞行為の態様そのものが悪質なケースでは、たとえ不貞期間が短くても慰謝料が増額される可能性があります。

不貞行為の悪質性が高いと判断された6つのケース

不貞行為の悪質性が高いと判断された6つのケースをご紹介します。

嫌がらせした

被告Y1が原告に対し、昼夜を問わず原告の勤務先にまで架電するなどして執拗に接触を図った上、被告Y2との離婚を迫ったり、原告を中傷するような発言等を繰り返したりした事案です(東京地裁平成28年 8月30日判決)。

裁判所が認定した被告Y1の嫌がらせ行為は、次のとおりです。

  • 被告Y1は、原告に対し、被告Y2の携帯電話から「Y1です。Y2さんと一緒にいます。」とのメールを送信した。
  • 被告Y1は、原告の携帯電話の留守番電話にメッセージを残し、原告が着信拒否をすると、非通知でメッセージを残した。
  • 被告Y1は、自己又は被告Y2の携帯電話から原告の自宅固定電話に2日間で合計14回架電して留守番電話にメッセージを残し、被告Y2にもメッセージを残させた。
  • 被告Y1は、原告の勤務先に複数回架電し、原告に対し「離婚しなくていいから、お金送ってくれない?」などと述べた。
  • 被告Y1は、原告の勤務先の職員に対しても「Y2さんの同居人です。5万円しかもらっていません。」、「いつ別れるのか。」などと述べ、それにより原告が警察に相談する事態となった。

裁判所は、被告らの原告に対する架電等による嫌がらせを悪質と評価し、不貞に関する慰謝料150万円の支払いを命じました。

さらに、この事案では、不貞行為に対する慰謝料(150万円)とは別途、嫌がらせ行為についての慰謝料も認め、被告Y1につき50万円、被告Y2につき20万円の支払いを命じています。

離婚を執拗に要求した

被告が、原告に対し、Aとの離婚を求め、同人との性交渉を誇示したほか、原告を侮蔑する内容のメールを送信するなどした事案です(東京地裁平成29年 8月 8日判決)。

裁判所が認定した被告の行為の一部は、次のとおりです。

  • 被告は、原告に対し、「…離婚は考えていただけないのでしょうか。もし200%ありえないということでしたらもう諦めようと思います。お返事ください。」との文面のメールを送信した。
  • 被告は、原告に対し、「彼とのセックスのビデオを送ってしまったことは謝罪いたします。ごめんなさい。それは隠すべきことですよね。もう200本以上撮っていますが(共有携帯に保存しています。)、誰にも見せないようにします。」等と記載されたメールを送信した。
  • 原告代理人が、被告に対し、内容証明郵便で警告文書を送付したところ、フェイスブック上に、「惨めな奥様。ついに訴えてきました。笑える。」等と記載された記事を上記警告文書の原告名印字部分の写真とともに掲載した。

裁判所は、被告の行為は、不貞事案の中でも非常に態様が悪質な部類に入ると言わざるを得ないとしています。
他方、Aは被告より年長であり、職位も高く、不貞関係においても主導的であり、被告が複数回にわたり妊娠中絶まで余儀なくされた等の事情は慰謝料額を算定する上で一定程度考慮せざるを得ないとし、慰謝料200万円の支払いを命じました。

関係を断つよう求められたのに交際を継続した

被告が、原告から再三にわたって関係を断つよう求められていたにもかかわらず、これを無視してAとの不貞関係を継続していた事案です(東京地裁令和 5年 7月19日判決)。

裁判所は、上記行為は相当に悪質であると評価しています。

なお、本事案の慰謝料は220万円とするのが相当であるところ、既にAから原告に対し、離婚慰謝料300万円が支払われており、上記不貞行為による原告の精神的苦痛を慰謝する趣旨も当然に含まれているといえることから、被告の原告に対する損害賠償債務も、上記弁済によって消滅したとしています。

そのため、この事案では、Aの離婚慰謝料300万円の支払いにより、被告に対する不貞慰謝料の請求は棄却される結果となりました。

謝罪をしたのに交際を再開した

被告が、原告に対し、Aとの交際について謝罪する手紙を送付した後、Aとの交際を再開した事案です(東京地裁令和 3年 9月10日判決)。

慰謝料は高額とはいえないものの、裁判所は、上記行為は不貞行為の態様としては相当悪質なものと認定しています。
上記手紙で、被告は原告に謝罪しつつも、交際の具体的内容を必要以上に記載し、Aが今後も不貞行為に及ぶ可能性も言及しました。
裁判所は、このような被告の言動は、原告の心情への配慮を欠くものであるというほかないとし、被告に対し、慰謝料100万円の支払いを命じました。

夫婦の自宅で不貞行為に及ぶなどした

被告が、XA間の子(長女)が在宅している時間帯にも原告宅で性交又は性交類似行為を行ったり、知人夫婦の前でキスをしたりする等、自らがAの夫であるかのように振舞っていた事案です(東京地裁令和 5年 7月19日判決)。

裁判所は、上記行為は非常に悪質であるとし、慰謝料200万円の支払いを命じています。

一方的に別居して不貞相手と夫婦同様の生活をした

被告Y1が、一方的かつ執拗に原告に離婚を求めた末に、被告Y2との子をもうけ、それをきっかけに原告との別居に踏み切り、以降Y2と夫婦同様の生活を継続している事案です(東京地裁平成28年 4月21日判決)。

裁判所は、上記行為は非常に悪質であったといわざるを得ないとし、慰謝料300万円の支払いを命じています。

不貞行為の悪質性の判断では考慮されにくい2つの事情

前章では、悪質だと判断されやすいケースについて解説しましたが、いずれも被告の行為全体に鑑みて悪質といえるかが検討されています。
つまり、特定の事情・一つの事柄のみをもって悪質性が高いと評価されているわけではありません。

特に以下の事情は、慰謝料額に影響することはあるものの、態様の悪質性を判断する上では、さほど考慮されないと考えられます。

不貞相手のアプローチで交際が開始したこと

不貞相手のアプローチで交際が開始したことです。

交際の積極性・主導性は、共同不法行為者間(不貞をした当事者間)の負担割合で考慮されることはあり得ます。

しかし、交際開始についてどちらが積極的だったかは、悪質性の判断において、決定的な影響を与えることは少ないでしょう。
裁判例においても、夫婦としての貞操義務を直接負うのは不貞配偶者であり、自らの意思で性行為に至ったものであることから、婚姻関係を破綻させた積極性において、不貞配偶者が不貞相手より劣るものとはいえないとされています(東京地裁平成28年 5月25日判決)。

もっとも、不貞をされた側の配偶者から、交際を止めるよう注意をされたのに、なおも不貞配偶者を誘惑して交際を続け、自己を選択するよう求めていた等の事情があれば、その行為態様は悪質と判断され得るでしょう。

不貞相手が妊娠・出産したこと

不貞相手が妊娠・出産したことです。

不貞行為の結果、不貞相手が妊娠して子を出産したことは、不貞をされた側に与えるダメージが大きいと考えられます。そのため、被害者の精神的苦痛が大きいとして、慰謝料額に影響する可能性はあるでしょう。

しかし、不貞相手が妊娠・出産したこと自体を悪質と評価した裁判例はあまり見かけないことから、不貞相手が妊娠・出産したこと自体で悪質と判断される可能性は低いでしょう。

不貞相手の積極性を主張した場合に予想される反論

不貞相手の積極性を主張した場合に予想される反論としては、次のようなものが挙げられます。

  • 「自分が一方的に好きだっただけ」
  • 「デートはしていたが、肉体関係はない」
  • 「離婚を求めたことはない」
  • 「〇〇さん(不貞配偶者)もあなたへの不満をよく漏らしていた」

不貞発覚後も、不貞相手からの連絡が止まらない場合などには、二度と会わないよう申し入れると良いでしょう。

交際の中止を求めたにもかかわらず、交際を継続していた事情は、悪質と評価される可能性が高いでしょう。

さいごに|これ以上あなたが傷けられないために

不貞行為が悪質だとされた事例をご紹介しました。

関係解消や慰謝料の支払いを求める場面では、不貞相手が、あなたが傷つくような反論をすることも多々あるでしょう。相手の気を引くための甘言や夫婦の不仲をアピールする配偶者の言葉が取り上げられることもあります。

不貞が発覚しただけでも精神的負担が大きいのに、さらに不貞相手の態度や反論にストレスを感じる可能性もあります。
弁護士に依頼し、不貞相手とのやり取りを任せることで、このような精神的ショックを吸収するクッション的役割を担ってもらえるでしょう。

ネクスパート法律事務所では、不貞問題に強い弁護士が多数在籍しています。
仕事が忙しくて相談に行けない人や遠方にお住まいの方のためにLINEによる相談やオンライン法律相談サービスも実施しています。初回の相談は30分無料ですので、ぜひ一度ご相談ください。

コラム監修者

SHIZU ISHIDA

SHIZU ISHIDA

所属:東京オフィス

広島県広島市出身。青山学院大学心理学科、東海大学法科大学院卒業後、新司法試験に合格し最高裁判所司法研修所を修了。弁護士として法曹界に入り、刑事、民事、法人案件等幅広い分野の専門知識を習得。弁護士登録10年目にしてネクスパート法律事務所に入所し、現在は主に離婚事件に注力している。

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