サマリー
2023年の刑法改正により、従来の強制性交等罪は「不同意性交等罪」に改められました。
不同意性交等罪の疑いをかけられた場合、被害者との示談が成立しているかどうかは、不起訴処分の可否や刑事裁判における量刑判断に影響を及ぼす重要な事情の一つとなります。
もっとも、不同意性交等罪で示談金を支払い、示談が成立したからといって、必ずしも不起訴処分になるわけではありません。
事件の内容や証拠関係、被害の程度などを踏まえ、検察官が個別の事情に応じて判断することになります。
そのため、
「不同意性交等罪の示談金の相場はいくらなのか」
「示談が成立すれば不起訴になる可能性はあるのか」
「どのように示談交渉を進めればよいのか」
などの疑問や不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。
不同意性交等罪の事案では、示談交渉の進め方や示談書の内容が、その後の処分や裁判の結果に影響を与えることもあるため、早い段階で適切に対応することが重要です。
この記事では、不同意性交等罪における示談金の相場や金額が変動する要因、示談成立が不起訴処分や量刑に与える影響、示談交渉の流れ、弁護士に依頼するメリットについて解説します。
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不同意性交等罪の示談金相場は100万円台~数百万円程度が一つの目安
不同意性交等罪の示談金に法律上の基準額はなく、事案ごとに金額は大きく異なります。
もっとも、実務上は100万円台から数百万円程度を目安として示談が成立するケースも少なくありません。
ただし、これはあくまでも一般的な目安にすぎません。
被害の程度や犯行態様、被害者の処罰感情などによって金額は大きく変動します。
特に悪質性が高い事案や、被害者が重い精神的・身体的被害を受けた事案では、数百万円を超える金額で示談が成立するケースもあります。
また、示談は単に金額だけで成立するものではありません。
加害者側の謝罪や反省の姿勢、被害者の意向なども含めて総合的に話し合いが行われます。
不同意性交等罪の示談金額が変動する5つの要因

不同意性交等罪の示談金は、被害内容や事件の経緯などを総合的に考慮して決定されます。
また、不同意性交等致傷罪のように被害者が傷害を負った事案では、治療費や後遺障害による損害なども考慮されるため、示談金が高額になる傾向があります。
以下では、示談金額に影響を与える主な要因について解説します。
① 犯行態様の悪質性
犯行態様が悪質であるほど、示談金は高額になる傾向があります。
例えば、計画性が認められるケースや、長時間にわたり被害者の自由を制約したケースなどでは、被害者が受ける精神的苦痛が大きいと評価される可能性があります。
また、事案の悪質性が高い場合には、示談が成立しても起訴される可能性が残ることがあります。
② 被害の大きさ(精神的・身体的被害の程度)
被害者が受けた精神的・身体的被害の程度は、示談金額を左右する重要な事情です。
身体的な傷害が生じた場合には、治療費や通院費などが考慮されます。
また、PTSD(心的外傷後ストレス障害)やうつ病などの精神的後遺症が認められる場合には、治療期間や症状の程度も示談交渉に影響を与えます。
一般的には、被害が重大であるほど示談金も高額になる傾向があります。
③ 被害者の年齢や生活への影響
被害者が未成年者である場合や、事件によって学業や仕事、日常生活に大きな支障が生じた場合には、示談金額が増額される方向に働くことがあります。
特に未成年者に対する性犯罪は社会的非難も強く、被害者の将来への影響も重視されるため、示談交渉において考慮される事情の一つとなります。
④ 加害者の謝罪や反省の姿勢
加害者側の誠実な対応は、示談成立に向けた話し合いにおいて一定の意味を持ちます。
もっとも、反省していることだけを理由に示談金が大幅に減額されるわけではありません。
しかし、真摯な謝罪や誠実な対応によって、被害者側が示談に応じる余地が生まれることもあります。
そのため、示談交渉では弁護士を通じて適切に謝罪の意思を伝えることが重要です。
⑤ 被害者の処罰感情の強さ
被害者の処罰感情は、示談成立の可否に影響を及ぼす事情の一つです。
被害者が加害者に対して強い怒りや恐怖を抱いている場合には、示談交渉そのものを拒否されることもあります。
また、被害者の意向や処罰感情は、示談条件や交渉の進め方にも影響することがあります。
そのため、示談交渉では金額面だけでなく、被害者の感情にも十分配慮しながら、弁護士を通じて慎重に進めることが重要です。
刑事事件の示談交渉については、以下の記事も合わせてご参照ください。
示談交渉とは?刑事事件の示談の流れや注意点・示談金相場を徹底解説
【加害者側】不同意性交等罪で示談を成立させる3つのメリット
不同意性交等罪で示談が成立した場合、被害弁償や謝罪が行われ、被害者の処罰感情が一定程度緩和されたことは、検察官が起訴・不起訴を判断する際や、裁判所が量刑を判断する際の重要な事情として考慮される可能性刑事事件の示談交渉については、があります。
もっとも、不同意性交等罪は重大犯罪であるため、示談が成立したからといって必ず不起訴処分や執行猶予付き判決になるわけではありません。
それでも、示談成立には以下のようなメリットがあります。
身柄拘束の必要性の判断において考慮される可能性がある
被害者との示談が成立していることは、捜査機関が身柄拘束の必要性を判断する際の事情の一つとして考慮されることがあります。刑事事件の示談交渉については、
また、捜査が始まった後であっても、示談成立の事実は勾留の必要性を判断する際の事情として考慮される可能性があります。
逮捕や勾留の要否は、逃亡や証拠隠滅のおそれなどを踏まえて個別に判断されますが、早期に示談交渉を進めることには一定の意義があります。
不起訴処分につながる可能性がある
示談成立は、検察官が起訴・不起訴を判断する際の重要な事情の一つ刑事事件の示談交渉については、です。
被害者への賠償が行われ、被害者から宥恕(許し)の意思が示されている場合には、加害者が被害回復に努めている事情として評価されることがあります。
そのため、事案の内容や証拠関係によっては、示談成立が不起訴処分につながる可能性があります。
もっとも、不同意性交等罪は法定刑が重い犯罪であるため、示談が成立していても起訴されるケースは少なくありません。
不起訴処分が保証されるものではない点には注意が必要です。
起訴された場合でも量刑上有利に考慮される可能性がある
仮に起訴された場合であっても、示談成立は量刑判断において有利な事情として考慮される可能性刑事事件の示談交渉については、があります。
被害弁償が完了していることや、被害者との間で一定の解決が図られていることは、裁判所が刑罰を決定する際の重要な判断材料となります。
その結果、事案によっては執行猶予付き判決が選択される可能性もあります。
ただし、犯行態様や被害結果などによっては、示談成立後であっても実刑判決が言い渡されることがあるため、示談だけで結果が決まるわけではありません。
不同意性交等罪で弁護士を通じた示談交渉|基本の4ステップ

不同意性交等罪の示談交渉では、被害者の精神的負担やプライバシーへの配慮が求められるため、一般的には弁護士を通じて行われます。
加害者本人が直接連絡を取ろうとすると、被害感情を悪化させたり、新たなトラブルに発展したりするおそれがあるためです。
また、捜査機関は原則として加害者本人やその家族に被害者の連絡先を開示しません。
そのため、示談を希望する場合には、弁護士を通じて交渉を進めるのが一般的です。
弁護士に依頼した場合、示談交渉は通常、次のような流れで進みます。
STEP1:弁護士に相談し、正式に依頼する
まずは刑事事件、とりわけ性犯罪事件の弁護経験が豊富な弁護士へ相談します。
相談では、事件の経緯や現在の捜査状況を説明し、示談成立の可能性や今後の見通しについて助言を受けます。
また、弁護士費用や想定される弁護活動の内容についても説明を受けます。
内容に納得できれば委任契約を締結し、正式な弁護活動が開始されます。
STEP2:弁護士が被害者側へ示談の申し入れを行う
依頼を受けた弁護士は、警察や検察官、被害者側代理人などを通じて、被害者に示談の意向があることを伝えます。
被害者が連絡先の開示や示談交渉に応じる意向を示した場合には、弁護士が窓口となって交渉を開始します。
もっとも、被害者が連絡先の開示を拒否したり、示談交渉自体を望まなかったりする場合には、交渉を進められないこともあります。
STEP3:示談金や示談条件について協議する
被害者が交渉に応じた場合には、示談金額やその他の条件について話し合いを行います。
主な協議事項としては、示談金の金額、謝罪方法、今後の接触禁止、被害弁償の方法などが挙げられます。
また、被害者が加害者の処罰を望まない意思(宥恕)を示すかどうかについて協議されることもあります。
弁護士は被害者の心情にも配慮しながら、双方が合意できる条件を模索します。
STEP4:示談書を作成し、示談内容を履行する
示談内容について合意に至った場合には、その内容を記載した示談書を作成します。
示談書には、示談金額や支払方法、今後本件に関して追加の請求を行わないことを確認する条項、接触禁止条項などが盛り込まれるのが一般的です。
また、事案によっては、被害者の宥恕の意思に関する内容が記載されることもあります。
その後、示談内容に従って示談金の支払いなどを行い、弁護士は必要に応じて示談書の写しなどを検察官や裁判所へ提出します。
不同意性交等罪で高額な示談金を支払えない場合の対処法
不同意性交等罪の示談金は高額になることもあり、一括での支払いが難しいケースも少なくありません。
しかし、十分な資力がない場合であっても、状況に応じて適切な対応を取ることで、示談成立につながる可能性があります。
以下では、高額な示談金を一度に支払うことが難しい場合の主な対処法を解説します。
減額や分割払いについて誠実に交渉する
まずは、現在の支払い能力に限界があることを正直に伝え、示談金の減額や分割払いが可能かどうかを弁護士を通じて交渉します。
その際、給与明細や預貯金の状況などを示しながら、支払可能な範囲で最大限の提案を行うなど、誠実な姿勢で交渉に臨むことが重要です。
もっとも、性犯罪の被害者は精神的負担が大きく、長期間にわたる支払いによって事件を繰り返し想起することへの不安や、途中で支払いが滞ることへの懸念から、分割払いを希望しても受け入れられないケースは少なくありません。
そのため、親族が連帯保証人となることや、公正証書を作成することなどを条件として、分割払いが認められる場合もあります。
親族などの支援を受けて資金を準備する
自身の資力だけでは示談金の支払いが難しい場合には、両親や兄弟姉妹などの親族に事情を説明し、資金援助を受けることも一つの方法です。
親族から借り入れる場合には、返済時期や返済方法について柔軟に調整できることもあります。
もっとも、無理な借り入れを行うのではなく、返済可能性も踏まえながら慎重に検討することが大切です。
示談が難しい場合には贖罪寄付を検討する
被害者が示談交渉に応じない場合や、示談成立に至らない場合には、被害者支援団体などに対する贖罪寄付が検討されることがあります。
贖罪寄付は、被害回復に向けた姿勢や反省の意思を示す事情として、捜査機関や裁判所に提出されることがあります。
なお、性犯罪では被害者の氏名や住所などの情報が秘匿されることが多く、実務上、供託を利用することは容易ではありません。
そのため、示談が成立しない場合の対応としては、贖罪寄付が検討されるケースが多くみられます。
もっとも、贖罪寄付は被害者との示談に代わるものではありません。
示談が成立した場合と比べて刑事処分に与える影響は限定的であり、あくまで補完的な事情として個別の事案ごとに考慮されます。
不同意性交等罪の示談交渉を弁護士に依頼すべき理由
不同意性交等罪の示談交渉では、被害者の心情やプライバシーへの配慮が不可欠であり、専門的な知識や経験も求められます。
そのため、早期の示談成立や適切な条件での解決を目指すうえでは、刑事事件に精通した弁護士へ依頼することが重要です。
加害者本人による示談交渉には限界があるため
性犯罪では、被害者保護の観点から、捜査機関が加害者本人やその家族に被害者の連絡先を開示しないのが一般的です。
また、仮に連絡先を把握していたとしても、加害者本人が直接接触することで、被害感情を悪化させたり、新たなトラブルに発展したりするおそれがあります。
そのため、示談を希望する場合には、弁護士が代理人として被害者側との窓口となり、被害者の精神的負担にも配慮しながら交渉を進めることが一般的です。
事案に応じた適切な示談条件を提案できるため
示談交渉では、示談金額だけでなく、謝罪方法や今後の接触禁止、宥恕の有無など、さまざまな条件について協議する必要があります。
刑事事件に精通した弁護士であれば、事案の内容やこれまでの取扱経験を踏まえながら、状況に応じた適切な条件を提案することができます。
また、当事者同士の感情的な対立を避けながら交渉を進めやすくなるため、示談成立につながる可能性も高まります。
将来のトラブルを防ぐ示談書を作成できるため
示談が成立した場合には、合意内容を示談書として書面化することが重要です。
示談書には、示談金額や支払方法のほか、本件について追加の請求を行わないことを確認する清算条項や、接触禁止条項、事案によっては宥恕に関する条項などが盛り込まれることがあります。
これらの条項を適切に定めておくことで、後から追加の金銭請求を受けるなどのトラブルを防ぎやすくなります。
また、弁護士が示談書を作成することで、記載内容の不備や解釈の相違による紛争を防ぎやすくなるというメリットもあります。
「不同意性交等罪 示談金」に関するよくある質問(FAQ)
ここでは、不同意性交等罪の示談金に関して、当事者から寄せられることの多い質問とその回答をまとめました。
示談金と慰謝料に違いはありますか?
示談金は、事件を解決するために支払われる金銭全般を指し、その中に慰謝料が含まれることが一般的です。
一方、慰謝料は、被害者が受けた精神的苦痛に対する損害賠償金を意味します。
示談金には慰謝料のほか、治療費や休業損害などが含まれる場合もあり、具体的な内容は事案や合意内容によって異なります。
示談が成立すれば、必ず不起訴になりますか?
いいえ、示談が成立しても必ず不起訴処分になるわけではありません。
不同意性交等罪は重大犯罪であり、犯行態様が悪質な場合や前科・前歴の内容などによっては、示談成立後も起訴される可能性があります。
もっとも、被害回復が図られ、被害者の処罰感情が一定程度緩和されていることは、検察官が処分を判断する際の重要な事情となります。
また、起訴された場合であっても、量刑判断において有利な事情として考慮されることがあります。
被害者が示談を拒否している場合はどうすればよいですか?
被害者が示談交渉に応じない場合には、無理に接触を試みるべきではありません。
そのような場合には、弁護士を通じて謝罪や被害弁償の意思を伝える方法や、被害者支援団体などに対する贖罪寄付を検討することがあります。
もっとも、贖罪寄付は被害者との示談に代わるものではなく、示談が成立した場合と比べると、刑事処分に与える影響は限定的です。
そのため、まずは弁護士を通じて示談成立の可能性を慎重に探ることが重要です。
まとめ
不同意性交等罪の示談金には法律上の基準額はなく、事案の内容や被害の程度などによって金額は大きく異なります。
もっとも、実務上は100万円台から数百万円程度を目安として示談が成立するケースも少なくありません。
示談が成立した場合には、不起訴処分につながる可能性があるほか、起訴された場合であっても量刑上有利な事情として考慮されることがあります。
もっとも、不同意性交等罪は重大犯罪であるため、示談が成立したからといって必ず不起訴処分になるわけではありません。
また、被害者保護の観点から、加害者本人が直接交渉を行うことは難しく、適切な方法で示談交渉を進めることが重要です。
そのため、不同意性交等罪の疑いをかけられた場合や示談交渉を検討している場合には、できるだけ早い段階で刑事事件に詳しい弁護士へ相談し、適切な助言を受けながら対応を進めることが大切です。
ネクスパート法律事務所では、刑事事件に強い弁護士が多数在籍しています。
初回相談は、30分無料です。
ぜひ一度ご相談ください。
コラム監修者
RUI SATO
所属:代表(東京オフィス)
東京都杉並区出身。明治大学付属中野高校、明治大学法学部を経て、明治大学法科大学院を修了。2011年に新司法試験に合格し、最高裁判所司法研修所を修了(65期)。2012年12月に弁護士登録(東京弁護士会)し、都内の法律事務所での勤務を経て、2016年1月に寺垣俊介とともにネクスパート法律事務所を創業。代表弁護士として一般民事から企業法務まで幅広い分野を手がけるとともに、全国に拠点を持つ事務所の経営にあたる。
早くからテクノロジーと法務の融合に取り組み、2021年にはAIを利用した法律文書作成サービスを開発するLegal AI株式会社の代表取締役に就任(現在は退任)。当時はAI技術が発展途上で技術的な壁に直面したが、この挑戦を通じて「法務業務こそAIの力を借りれば飛躍的に変わる」という確信を得る。以来そのビジョンを持ち続け、生成AIが広く普及した現在は事務所の業務全体でAIの活用を進めている。2026年には日本弁護士連合会「弁護士業務改革シンポジウム」にパネリストとして登壇した。ブロックチェーン・Web3分野の法務や海外法人の設立支援にも取り組み、公益法人主催のセミナー等で講師を務める。
公正取引委員会・中小企業庁「適正取引推進講習会」講師、日本弁護士連合会代議員、東京弁護士会常議員を歴任。弁護士業務のかたわら、2014年に東京青年会議所に入会して以来、10年以上にわたりボランティア活動に取り組む。2017年からは国際的な社会奉仕団体であるライオンズクラブに所属し、2022年には東京数寄屋橋ライオンズクラブ第57代会長を務めた。献血の呼びかけ、障がい者スポーツ大会の支援、保護犬活動のほか、弁護士として小中学生への法教育や薬物乱用防止教育にも携わっている。