更新日:2024年3月25日 (月)
公開日:2024年3月25日 (月)
自己破産した人の末路は?デメリットやその後の生活・結婚を解説
サマリー
借金の返済が困難になり自己破産を検討する際、「その後の生活はどうなるのか」「結婚や仕事に深刻な悪影響が出るのではないか」と不安を抱える方も少なくありません。自己破産は、破産法に基づいて債務者の経済的な再生を図るための法的手続きであり、日常生活のすべてが制限されるわけではありません。この記事では、自己破産に伴う主なデメリットや手続き中の制限、その後の仕事・結婚への影響やよくある誤解について解説します。
自己破産制度の目的と手続き後の生活の実態
自己破産と聞くと「人生が終わってしまうのではないか」といった極端なイメージを持たれることもありますが、実際の法的位置づけは大きく異なります。
自己破産は、債務者の経済的な立ち直りを支援し、再スタートの機会を確保するために法律で定められた正当な救済手続きです。
破産法第1条に定められた制度の目的
破産法第1条では、債務者の財産を清算して債権者に公平に配当するとともに、債務者に経済生活の再生の機会を与えることが制度の目的として明記されています。
つまり、自己破産は破産者に対して社会的な制裁や罰を与えるための制度ではなく、支払不能に陥った方を救済し、経済的な生活基盤を立て直すための仕組みです。
手続きの事実が周囲に知られる可能性
自己破産を行うと、裁判所から通知が届く債権者や、家計の状況確認などで協力を要する同居の家族には手続きの事実が知られることになります。
一方で、それ以外の知人や勤務先などに自分から伝えない限り、日常会話や業務を通じて自然に知られる可能性は高くありません。
裁判所での決定事項は国の機関紙である「官報」に掲載されますが、官報を日常的に確認している一般の方は限られており、そこから周囲に知られるケースは一般的とはいえない実態があります。
日常生活において影響を受ける部分・受けない部分
自己破産の手続き後は、一定期間の新たな借入れやクレジットカードの利用に制限が生じるものの、毎日の衣食住や基本的な生活基盤がすべて失われるわけではありません。
給与を得て生活費に充てることや、一般的な就労を継続することなどは認められており、生活上のルールを守りながら安定した生活の再構築を目指すことができます。
自己破産に伴う主なデメリットと生活上の制限
自己破産は借金の返済義務を免除してもらう手続きである一方、保有している財産やその後の取引において一定の制限が課されます。手続きを検討するにあたっては、どのようなデメリットや制限が生じるのかを正確に把握しておくことが大切です。
高額な財産の換価処分と信用情報への登録
自己破産では、破産者の財産を清算して債権者に公平に配当する目的があるため、不動産や自動車、一定額以上の預貯金や解約返戻金など、換価価値のある財産は処分される対象となります。生活に必要な一定範囲の家財道具や自由財産は手元に残せますが、持ち家などを手放す必要がある点は大きな影響といえます。
また、手続きを行うと信用情報機関に事故情報(いわゆるブラックリスト)が登録されます。これにより、破産手続き完了後も含めて5〜10年程度は、新規の借入れやクレジットカードの発行、ローンの契約などが難しくなります。
信用情報に登録されている期間中は、新規の借入れや分割払いが制限されるため、現金払いやデビットカードなどを中心とした生活設計が必要となります。
手続き期間中に生じる一時的な制限
自己破産の申し立てから免責許可が確定するまでの間、特定の職業や資格に対する制限が設けられています。警備員や保険外交員、宅地建物取引士や各種士業などは手続き中に業務を行えなくなりますが、免責許可が確定して「復権」すれば制限は解除されます。
さらに、管財人が選任される管財事件となった場合、手続き期間中の引っ越しや長期の旅行には裁判所の許可が必要となります。また、債権者や財産の把握のために破産管財人宛てに郵便物が転送され、内容が確認される期間が生じる点も一時的な制限事項です。
保証人への影響と事前確認の重要性
自己破産によって免責されるのは申し立てを行った本人だけであり、借入れに保証人や連帯保証人が設定されている場合、債権者からの請求は保証人へ移ることになります。保証人は残額の一括請求を受けるケースが多く、保証人側の生活設計にも深刻な影響を及ぼしかねません。
保証人が設定されている債務がある場合は、事前に保証人へ状況を説明し、保証人自身の債務整理も含めてどのように対応するか検討しておくことが不可欠です。
自己破産後の生活への影響|仕事・結婚・住まい
自己破産後の生活については、誤った情報から過度な不安を抱いてしまうケースも少なくありません。ここでは、結婚や仕事、日々の決済手段など、具体的な生活面への実際の影響について整理して解説します。
結婚や家族関係への影響
自己破産をした事実によって、法律上結婚が制限されることは一切ありません。婚姻の届出や親族関係の形成に法的な支障はなく、当事者同士の合意に基づいて婚姻関係を結ぶことができます。
ただし、信用情報機関に事故情報が登録されている期間(5〜10年程度)は、本人名義で住宅ローンや自動車ローンを組むことが困難になります。そのため、将来的にマイホームの購入などを検討している場合は、配偶者名義でのローン審査を検討するなど、将来設計に向けた事前の計画立てが大切です。
職業選択や就職・事業活動への影響
自己破産の手続き期間中に生じていた一部の資格や職業に対する制限は、免責許可の決定が確定して「復権」することにより解除されます。
復権後は制限されていた職種への再就職や資格を用いた業務の再開が可能となり、一般的な就職・転職活動において法律上の不利益を受けることも原則としてありません。また、事業を新たに起こすことについても法的な制限はなく、経済的な再出発を図ることができます。
日常の決済手段とキャッシュレスの活用
手続きに伴い本人名義のクレジットカードは強制解約となり、新規の作成も一定期間制限されますが、すべてのキャッシュレス決済手段が使えなくなるわけではありません。
利用時に預金口座から即時引き落としがなされるデビットカードや、あらかじめチャージして支払うプリペイドカードなどは、与信審査を伴わないため原則として利用可能です。これらを活用することで、ネットショッピングや日々の買い物における利便性を保ちながら生活を送ることができます。
デビットカードやプリペイドカードを活用することで、手元の資金の範囲内で無理のない家計管理を続けることが可能です。
自己破産の末路に関するよくある誤解と注意点
自己破産を検討する際、日常生活や市民生活における権利が大きく制限されるのではないかと不安に感じる方が少なくありません。しかし、世間に広まっている情報のなかには法的な根拠のない誤解も多く含まれています。
戸籍・選挙権・解雇に関するよくある誤解
自己破産の手続きを行っても、戸籍や住民票に破産の事実が記載されることはありません。また、公職選挙法上の選挙権や被選挙権が失われることもなく、一般の市民としての基本的な権利は維持されます。
また、裁判所から勤務先へ破産の事実が通知されることは原則としてありません。さらに、自己破産をしたことのみを理由として会社が従業員を解雇することは、労働契約法などの観点からも原則として認められていません。
自己破産によって戸籍に記載されたり、選挙権を失ったり、破産のみを理由に解雇されたりすることはありません。
免責不許可事由と裁量免責の法的な位置づけ
自己破産において注意すべき点として「免責不許可事由」が挙げられます。破産法第252条では、浪費やギャンブル、投機的な取引などによって過大な債務を負った場合、原則として免責を許可しない旨が規定されています。
ただし、免責不許可事由に該当する事情がある場合でも、裁判所は破産に至った経緯や本人の反省の状況、生活再建への姿勢などを総合的に考慮し、裁判所の裁量によって免責を認める「裁量免責」の制度が設けられています。
借金の理由にギャンブルや浪費が含まれている場合でも、裁量免責により解決を図れる場合があります。
自己破産に至る一般的な背景
日本弁護士連合会が実施した破産事件等に関する調査などによると、自己破産に至る主な理由として、生活苦や低収入、病気やケガによる医療費の増加、失業や転職に伴う収入減などが上位を占めています。
自己破産は一部の特別な事情を抱えた人のみの制度ではなく、収入の減少や健康状態の悪化といった不測の事態によって返済不能に陥った債務者を救済するための正当な法的手段として位置づけられています。
借金問題の適切な解決に向けた弁護士への相談
借金問題への対応は、個々の借入状況や家計の収支によって適切な選択肢が異なります。自身に適した解決方法を見極めるためにも、取扱分野における法的な知見を踏まえて検討を進めることが重要です。
状況に応じた債務整理の選択肢
借金問題の解決方法には、自己破産だけでなく、任意整理や個人再生といった複数の法的手続きが存在します。それぞれの手続きには異なる特徴や制限があり、適切な方法は借入総額や毎月の収入、手元に残したい財産の有無などによって変わります。
例えば、一定の安定した収入があり将来利息のカットなどで返済継続が見込める場合は任意整理、住宅ローンを残しながら借金を大幅に圧縮したい場合は個人再生など、自己破産以外の方法が適しているケースもあります。自己判断だけで決めつけず、全体像を把握することが重要です。
専門家に相談する意義と生活再建への一歩
日々の返済に追われていると、精神的な負担から冷静な判断が難しくなりがちです。法律の専門家である弁護士に相談することで、客観的な視点から家計収支や債務状況の分析を受け、無理のない再建に向けた見通しを立てることができます。
また、弁護士に手続きを依頼した場合は、各債権者に対して受任通知が発送されます。これにより、貸金業者などからの直接の督促連絡や支払いが一時的にストップするため、生活を落ち着かせたうえで手続きの準備を進めることが可能になります。
返済の負担が大きくなり生活の維持が困難だと感じた際は、一人で抱え込まずに弁護士などの法律の専門家へ相談することが解決への第一歩となります。
おわりに
自己破産は、法律に基づいて債務者の経済的な再スタートを後押しするための制度です。財産の処分や信用情報への登録といったデメリットはあるものの、戸籍への記載や就労の全面的な禁止といった極端な不利益が生じるわけではありません。
返済の継続が難しく生活に困窮している場合は、自己破産を含めた債務整理の手続きについて、弁護士などの専門家に相談しながら適切な生活再建の道筋を検討してみてはいかがでしょうか。
コラム監修者
YUKA SAITO
所属:札幌オフィス 支店長
埼玉県出身。青山学院大学法学部、獨協大学法科大学院を卒業後、司法試験に合格し、最高裁判所司法研修所を修了。都内法律事務所勤務を経て、ネクスパート法律事務所に入所し、一般民事全般の業務に取り組む。大宮オフィス所長就任を経て、現在の札幌オフィスを開設、所長に就任。法人破産、個人破産、離婚・慰謝料等の男女問題に関する紛争が注力分野である。