健康食品とは?健康食品の広告の留意点

目次

概要

健康食品とは何かについて、法律上の定義はありませんが、健康食品の広告販売においては、当該健康食品が、薬機法上「医薬品」に該当するか否かが最も重要な問題となりえます。

なお、薬機法をはじめとして、健康食品の製造・輸入・販売等については以下の法律に留意する必要があります。

① 食品衛生法

② 健康増進法

また、健康食品の広告表示や販売方法については、以下の法律に留意する必要があります。

① 食品表示法

② 特定商品取引法

③ 不当景品類及び不当表示防止法

④ 農林物資の規格化等に関する法律

「医薬品」に該当するかどうか

ある健康食品が、医薬品に該当するか否かは、最高裁判所と厚生労働省で、それぞれ見解が示されています。

例えば、ビタミンや亜鉛などではなく、ただの水だとしても、効能効果を標ぼうしたり、名称や、用法容量の記載によっては医薬品であるとみなされます。また、「健康食品」や「サプリ」であることを明記したとしても、医薬品であるとみなされることがあります。

医薬品であるとみなされてしまうと、承認を受けていなければ未承認の医薬品の広告や販売をしたことになり、行政指導だけでなく、刑事責任を問われ、最悪は逮捕され、刑務所に入らなければならないということになります。またこのことは、当該商品が人体に悪影響を及ぼしたか否かなどの周辺事情とも無関係です。

なお、yahoo!やGoogleに広告を掲載する場合には、広告審査の際に、ある程度薬機法についても審査がなされるので、これらの審査がなされるwebサイトやそのリンク先については、通常薬機法について十分注意している事業者が大半であると思われます。

しかし、効能効果の標榜は、webサイトへの表記だけでなく、同梱するパンフレットや販売する書籍なども加味して判断されます。また、インフルエンサーにSNSで発信してもらうことや、口コミサイトに体験談を書いてもらうことなども効能効果の標榜となり、これにより対象となる商品が医薬品であるとみなされてしまう可能性も生じるので十分注意が必要です。

なお、稀に、BtoCの広告ではなくBtoBの広告についても取締りの対象となる場合があるので、これについても十分注意が必要です。

(1) 最高裁判所の判断基準

最高最判例において、健康食品が医薬品に該当するか否かは、その物の成分、形状(剤型、容器、包装、意匠など)、名称、その物に表示された使用目的、効能効果、用法用量、販売の際の演述などを総合的に判断し、一般通常人の理解において、人または動物の疾病の診断、治療または予防に使用されるものと認識され、または薬効があると標榜したか否か、とされています(つかれず粒事件判例/最判昭和57年9月28日)。

(2) 厚生労働省の判断基準

ア 厚生労働省の通達である「無承認無許可医薬品の指導取締りについて」(昭和46年6月1日薬発第476号)によれば、健康食品が医薬品に該当するか否かは以下のように解釈されています。

 人が経口的に服用する物が、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)第2条第1項第2号又は第3号に規定する医薬品に該当するか否かは、医薬品としての目的を有しているか、又は通常人が医薬品としての目的を有するものであると認識するかどうかにより判断することとなる。通常人が同項第2号又は第3号に掲げる目的を有するものであると認識するかどうかは、その物の成分本質(原材料)、形状(剤型、容器、包装、意匠等をいう。)及びその物に表示された使用目的・効能効果・用法用量並びに販売方法、販売の際の演述等を総合的に判断すべきものである。

イ ここまでをみれば最高裁判所と厚生労働省のいずれにおいても一般通常人の理解を前提に、医薬品としての目的を有しているか否かを基準にしていることが分かります。

ただし、上記の厚生労働省の通達は、続けて以下のような厳しい解釈により運用がされています。

 医薬品に該当するか否かは、個々の製品について、上記の要素を総合的に検討のうえ判定すべきものであり、その判定の方法は、Ⅰの「医薬品の判定における各要素の解釈」に基づいて、その物の成分本質(原材料)を分類し、効能効果、形状及び用法用量が医薬品的であるかどうかを検討のうえ、Ⅱの「判定方法」により行うものとする。 ただし、次の物は、原則として、通常人が医薬品としての目的を有するものであると認識しないものと判断して差し支えない。  
  1.  野菜、果物、調理品等その外観、形状等から明らかに食品と認識される物

  2.  健康増進法(平成14年法律第103号)第26条の規定に基づき許可を受けた表示内容を表示する特別用途食品

  3.  食品表示法(平成25年法律第70号)第4条第1項の規定に基づき制定された食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)第2条第1項第10号の規定に基づき届け出た表示内容を表示する機能性表示食品

Ⅰ 医薬品の判定における各要素の解釈

1 物の成分本質(原材料)からみた分類
 物の成分本質(原材料)が、専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)であるか否かについて、別添1「食薬区分における成分本質(原材料)の取扱いについて」(以下「判断基準」という。)により判断することとする。 なお、その物がどのような成分本質(原材料)の物であるかは、その物の成分、本質、起源、製法等についての表示、販売時の説明、広告等の内容に基づいて判断して差し支えない。
 判断基準の1.に該当すると判断された成分本質(原材料)については、別添2「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」にその例示として掲げることとする。 なお、別添2に掲げる成分本質(原材料)であっても、医薬部外品として承認を受けた場合には、当該成分本質(原材料)が医薬部外品の成分として使用される場合がある。
 また、判断基準の1.に該当しないと判断された成分本質(原材料)については、関係者の利便を考え、参考として別添3「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)リスト」にその例示として掲げることとする。なお、当該リストは医薬品の該当性を判断する際に参考とするために作成するものであり、食品としての安全性等の評価がなされたもののリストではないことに留意されたい。  

2 医薬品的な効能効果の解釈
 その物の容器、包装、添付文書並びにチラシ、パンフレット、刊行物、インターネット等の広告宣伝物あるいは演述によって、次のような効能効果が表示説明されている場合は、医薬品的な効能効果を標ぼうしているものとみなす。また、名称、含有成分、製法、起源等の記載説明においてこれと同様な効能効果を標ぼうし又は暗示するものも同様とする。 なお、食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)第2条第1項第11号の規定に基づき、内閣総理大臣が定める基準に従い、栄養成分の機能の表示をする栄養機能食品(以下「栄養機能食品」という。)にあっては、その表示等を医薬品的な効能効果と判断しないこととして差し支えない。

(一) 疾病の治療又は予防を目的とする効能効果
(例) 糖尿病、高血圧、動脈硬化の人に、胃・十二指腸潰瘍の予防、肝障害・腎障害をなおす、ガンがよくなる、眼病の人のために、便秘がなおる等

(二) 身体の組織機能の一般的増強、増進を主たる目的とする効能効果。ただし、栄養補給、健康維持等に関する表現はこの限りでない。
(例) 疲労回復、強精(強性)強壮、体力増強、食欲増進、老化防止、勉学能力を高める、回春、若返り、精力をつける、新陳代謝を盛んにする、内分泌機能を盛んにする、解毒機能を高める、心臓の働きを高める、血液を浄化する、病気に対する自然治癒能力が増す、胃腸の消化吸収を増す、健胃整腸、病中・病後に、成長促進等

(三) 医薬品的な効能効果の暗示
(a) 名称又はキャッチフレーズよりみて暗示するもの
(例) 延命○○、○○の精(不死源)、○○の精(不老源)、薬○○、不老長寿、百寿の精、漢方秘法、皇漢処方、和漢伝方等
(b) 含有成分の表示及び説明よりみて暗示するもの
(例) 体質改善、健胃整腸で知られる○○○○を原料とし、これに有用成分を添加、相乗効果をもつ等
(c) 製法の説明よりみて暗示するもの
(例) 本邦の深山高原に自生する植物○○○○を主剤に、△△△、×××等の薬草を独特の製造法(製法特許出願)によって調製したものである。等
(d) 起源、由来等の説明よりみて暗示するもの
(例) ○○○という古い自然科学書をみると胃を開き、欝(うつ)を散じ、消化を助け、虫を殺し、痰なども無くなるとある。こうした経験が昔から伝えられたが故に食膳に必ず備えられたものである。等
(e) 新聞、雑誌等の記事、医師、学者等の談話、学説、経験談などを引用又は掲載することにより暗示するもの
(例) 医学博士○○○○の談 「昔から赤飯に○○○をかけて食べると癌にかからぬといわれている。 ………癌細胞の脂質代謝異常ひいては糖質、蛋白代謝異常と○○○が結びつきはしないかと考えられる。」等  

3 医薬品的な形状の解釈
 錠剤、丸剤、カプセル剤及びアンプル剤のような剤型は、一般に医薬品に用いられる剤型として認識されてきており、これらの剤型とする必要のあるものは、医薬品的性格を有するものが多く、また、その物の剤型のほかに、その容器又は被包の意匠及び形態が市販されている医薬品と同じ印象を与える場合も、通常人が当該製品を医薬品と認識する大きな要因となっていることから、原則として、医薬品的形状であった場合は、医薬品に該当するとの判断が行われてきた。
 しかし、現在、成分によって、品質管理等の必要性が認められる場合には、医薬品的形状の錠剤、丸剤又はカプセル剤であっても、直ちに、医薬品に該当するとの判断が行われておらず、実態として、従来、医薬品的形状とされてきた形状の食品が消費されるようになってきていることから、「食品」である旨が明示されている場合、原則として、形状のみによって医薬品に該当するか否かの判断は行わないこととする。ただし、アンプル形状など通常の食品としては流通しない形状を用いることなどにより、消費者に医薬品と誤認させることを目的としていると考えられる場合は、医薬品と判断する必要がある。

4 医薬品的な用法用量の解釈
 医薬品は、適応疾病に対し治療又は予防効果を発揮し、かつ、安全性を確保するために、服用時期、服用間隔、服用量等の詳細な用法用量を定めることが必要不可欠である。したがって、ある物の使用方法として服用時期、服用間隔、服用量等の記載がある場合には、原則として医薬品的な用法用量とみなすものとし、次のような事例は、これに該当するものとする。ただし、調理の目的のために、使用方法、使用量等を定めているものについてはこの限りでない。
  一方、食品であっても、過剰摂取や連用による健康被害が起きる危険性、その他合理的な理由があるものについては、むしろ積極的に摂取の時期、間隔、量等の摂取の際の目安を表示すべき場合がある。
 これらの実態等を考慮し、栄養機能食品にあっては、時期、間隔、量等摂取の方法を記載することについて、医薬品的用法用量には該当しないこととして差し支えない。
 ただし、この場合においても、「食前」「食後」「食間」など、通常の食品の摂取時期等とは考えられない表現を用いるなど医薬品と誤認させることを目的としていると考えられる場合においては、引き続き医薬品的用法用量の表示とみなすものとする。
(例) 1日2~3回、1回2~3粒1日2個 毎食後、添付のサジで2杯づつ 成人1日3~6錠 食前、食後に1~2個づつ お休み前に1~2粒  

Ⅱ 判定方法

 人が経口的に服用する物について、Ⅰの「医薬品の判定における各要素の解釈」に基づいて、その成分本質(原材料)を分類し、その効能効果、形状及び用法用量について医薬品的であるかどうかを検討のうえ、以下に示す医薬品とみなす範囲に該当するものは、原則として医薬品とみなすものとする。なお、2種以上の成分が配合されている物については、各成分のうちいずれかが医薬品と判定される場合は、当該製品は医薬品とみなすものとする。
 ただし、当該成分が薬理作用の期待できない程度の量で着色、着香等の目的のために使用されているものと認められ、かつ、当該成分を含有する旨標ぼうしない場合又は当該成分を含有する旨標ぼうするが、その使用目的を併記する場合等総合的に判断して医薬品と認識されるおそれのないことが明らかな場合には、この限りでない。

 医薬品とみなす範囲は次のとおりとする。
(一) 効能効果、形状及び用法用量の如何にかかわらず、判断基準の1.に該当する成分本質(原材料)が配合又は含有されている場合は、原則として医薬品の範囲とする。
(二) 判断基準の1.に該当しない成分本質(原材料)が配合又は含有されている場合であって、以下の①から③に示すいずれかに該当するものにあっては、原則として医薬品とみなすものとする。
① 医薬品的な効能効果を標ぼうするもの
② アンプル形状など専ら医薬品的形状であるもの
③ 用法用量が医薬品的であるもの

ウ 「明らかに食品と認識される物」の解釈

厚生労働省の通達である「無承認無許可医薬品の監視指導について」(昭和62年薬監第88号)によれば、以下の通りです。

(1) 通常食生活において、その物の食品としての本質を経験的に十分認識していて、その外観、形状等より容易に食品であることがわかるものは、その物の食品としての本質に誤認を与えることはないため、通常人がその物を医薬品と誤認するおそれはない。
 したがって、医薬品の目的を有するものであるという認識を与えるおそれのないこのような物は、医薬品に該当しないことは明らかであり、その成分本質(原材料)、形状、効能効果、用法用量について個々に検討し、後述する「判定方法」に従って判定するまでもない。

(2) その物がここでいう「明らかに食品と認識される物」に該当するか否かは、食生活の実態を十分勘案し、外観、形状及び成分本質(原材料)からみて社会通念上容易に食品と認識されるか否かにより判断するものである。通常人が社会通念上容易に通常の食生活における食品と認識するものとは、例えば次のような物が考えられる。ただし、特定の成分を添加したもの、遺伝子組み換え技術を用いたものなど、医薬品としての目的を持つことが疑われるものについては、個別に判断をする必要がある。
① 野菜、果物、卵、食肉、海藻、魚介等の生鮮食料品及びその乾燥品(ただし、乾燥品のうち医薬品としても使用される物を除く。)
(例) トマト、キャベツ、リンゴ、牛肉、豚肉、鰯、秋刀魚、鮪 等
② 加工食品
(例) 豆腐、納豆、味噌、ヨーグルト、牛乳、チーズ、バター、パン、うどん、そば、緑茶、紅茶、ジャスミン茶、インスタントコーヒー、ハム、かまぼこ、コンニャク、清酒、ビール、まんじゅう、ケーキ 等
③ ①、②の調理品
(例) 飲食店等で提供される料理、弁当、惣菜及びこれらの冷凍食品・レトルト食品 等
④ 調味料
(例) 醤油、ソース 等

(3) なお、「明らかに食品と認識される物」について行われる標ぼうにあっては、虚偽誇大な表現については不当景品類及び不当表示防止法第4条第1項第1号に、また、場合によっては健康増進法第31条等他法令に抵触するおそれがあるので、栄養・食品担当部局等関係部局に照会するよう指導すること。

エ 「栄養補給」という表現について

厚生労働省の通達である「無承認無許可医薬品の監視指導について」(昭和62年薬監第88号)によれば、以下の通りです。

・栄養補給に関する表現
(1) 「栄養補給」の表現について
ア  栄養補給」という表現自体は、医薬品的な効能効果には該当しないが、次のような、疾病等による栄養成分の欠乏時等を特定した表現は、医薬品的な効能効果に該当する。
(例) ・病中病後の体力低下時(の栄養補給)に
・胃腸障害時(の栄養補給)に
 なお、医薬品的な効能効果に該当しない表現であっても、虚偽誇大な表現については不当景品類及び不当表示防止法第4条第1項第1号に、また、場合によっては健康増進法第31条等他法令に抵触するおそれがあるので、食品としての表現の適否については、栄養・食品担当部局等関係部局に照会するよう指導すること。
イ 特定時期の栄養補給については、正常状態でありながら通常の生理現象として特に栄養成分の需要が増大することが医学的、栄養学的に確認されている発育期、妊娠授乳期等において、その栄養成分の補給ができる旨の表現は、直ちに医薬品的な効能効果には該当しない。
 なお、この場合にあっても、虚偽誇大な表現については不当景品類及び不当表示防止法第4条第1項第1号に、また、場合によっては健康増進法第31条等他法令に抵触するおそれがあるので、食品としての表現の適否については、栄養・食品担当部局等関係部局に照会するよう指導すること。
ウ 栄養補給と標ぼうしながら、頭髪、目、皮膚等の特定部位への栄養補給ができる旨を標ぼうし、当該部位の改善、増強等ができる旨暗示する表現は、医薬品的な効能効果に該当する。
(2) 栄養成分に関する表現について
ア 栄養成分の体内における作用を示す表現は、医薬品的な効能効果に該当する。
 ただし、栄養機能食品において、栄養成分の機能として認められた表示の範囲を除く。
(例) ・〇〇は体内でホルモンのバランスを調整しています。
 なお、特定商品に関連しない栄養に関する一般的な知識の普及については、この限りでない。
イ 具体的な作用を標ぼうせずに単に健康維持に重要であることを示す表現又はタンパク質、カルシウム等生体を構成する栄養成分について構成成分であることを示す表現は、直ちに医薬品的な効能効果には該当しない。
 なお、この場合にあっても、虚偽誇大な表現については不当景品類及び不当表示防止法第4条第1項第1号に、また、場合によっては健康増進法第31条等他法令に抵触するおそれがあるので、食品としての表現の適否については、栄養・食品担当部局等関係部局に照会するよう指導すること。

オ 「健康維持」「健康増進」という表現について

厚生労働省の通達である「無承認無許可医薬品の監視指導について」(昭和62年薬監第88号)によれば、以下の通りです。

(1) 「健康維持」、「美容」の表現は、医薬品的な効能効果に該当しない。
 なお、虚偽誇大な表現については不当景品類及び不当表示防止法第4条第1項第1号に、また、場合によっては健康増進法第31条等他法令に抵触するおそれがあるので、食品としての表現の適否については、栄養・食品担当部局等関係部局に照会するよう指導すること。  
(2) 「健康増進」の表現は、身体諸機能の向上を暗示するものであるが、「食品」の文字を容器、被包前面及び内袋にわかりやすく記載する等食品である旨が明示されている場合であって、総合的に判断して医薬品と認識されるおそれのないことが明らかなときには、「健康増進」の標ぼうのみをもって医薬品に該当するとは断定できないものの、虚偽誇大な表現については不当景品類及び不当表示防止法第4条第1項第1号に、また、場合によっては健康増進法第31条等他法令に抵触するおそれがあるので、食品としての表現の適否については、栄養・食品担当部局等関係部局に照会するよう指導すること。
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