オンライン診療受診施設の広告制作で押さえるべき5つの実務ポイント – 明示要件・広告可能事項・名称規制

オンライン診療受信施設の広告制作で 押さえるべき5つの実務ポイント 明示要件・広告可能事項・名称規制
目次

はじめに

第1回では、令和8年4月施行の改正により新設された「オンライン診療受診施設」と、その広告規制の全体像を整理しました。 第2回となる本稿では、実際にオンライン診療受診施設(以下「受診施設」)に関する広告クリエイティブを制作する代理店の立場から、押さえるべき5つの実務ポイントを解説します。 解説の根拠となる医療広告等ガイドラインおよびQ&A(いずれも厚生労働省)を参照しながら進めます。

必須の明示要件:「医療を提供するものではない旨」の表示

受診施設広告で最も注意すべきは、「オンライン診療受診施設が医療を提供するものではない旨を、医療を受ける者が理解できる方法により明示」することが要件とされている点です(医療法施行規則1条の10の2)。 Q4-1は、この明示の具体例として次の表現を挙げています。 (1)受診施設が医療を提供するものではない旨を明示する例
  • 「オンライン診療は、当施設が提供するものではなく、○○医療機関と連携して実施しております。」
  • 「この施設は医療機関ではなく、○○医療機関が診療を行うものです。」
(2)医療機関が診療を行うことを明示する例
  • 「この施設では、提携する××診療所(の医師)が診療を行います。」
また、逆にQ4-1は、「△△医師が診療を行っています。」とのみ記載することは不十分としています。理由は、診療所そのものが診療を行っている場合と判別できないためです。提携先が病院・診療所であることを名称で明示しなければなりません。 明示の方法についても規制があります。「他の記載と比べ、極端に小さな文字で記載する等の視認性が低いものは認められません」(Q4-1)。

クリエイティブ上の注釈表現としてフッター部分に小さく表記するような対応は不可と考えられます。

広告可能な事項の範囲

ガイドライン第4部は、受診施設広告として広告可能な事項を例示しています。代理店として広告制作時に取り扱える情報は以下の範囲です。

施設の基本情報

施設名称、電話番号、所在地(住所、最寄駅からの道順、案内図等)、設置者の氏名(法人の場合は法人名と管理運営責任者の氏名)が広告可能です。

施設・設備に関する事項

施設概要、保有設備(清潔性、外部から隔離された空間、情報セキュリティ確保措置等の省令上の基準)、バリアフリー構造などが挙げられます。施設の写真や映像も、客観的事実として検証可能であれば使用できます。

営業に関する事項

営業日・営業時間、予約の有無、休日夜間営業の連絡先などが広告可能です。

管理運営事項

個人情報保護のための措置、施設利用料(設置者が患者から利用料を徴収する場合)を広告できます。

その他の便宜サービス

支払方法(クレジットカード・電子決済等)、対応言語、駐車設備、送迎サービス、施設内売店、通訳配置などの広告も認められています。

紛らわしい名称の禁止

Q4-2は、受診施設に該当しない施設が「オンライン診療受診施設」と紛らわしい名称を付けることを禁止しています。具体例として「オンライン診療受診ブース」「オンライン診療スポット」が挙げられています。 代理店としては、ネーミング案の段階でこの規制を意識する必要があります。クライアントが受診施設の届出を行っていない場合、上記類似名称は使用できません。 逆に、届出を行った正式な受診施設であれば、正式名称のほか、施設であることが認識可能な略称や英語名も使用可能とされています(ガイドライン第4部2(1)ア)。

広告主体によって適用規制が変わる

ガイドライン第2部6(1)は、広告主体の違いによって適用規制が変わることを明記しています。 医療機関が主体となって受診施設に関する広告を行う場合(例:「当病院は、○○駅前でオンライン診療受診施設を設置しています。」)、当該医療機関が広告規制の対象となります。 これに対し、受診施設の設置法人が主体となって広告を行う場合(例:「当法人が設置するオンライン診療受診施設では、××病院の医師がオンライン診療を行っています。」)、当該法人が広告規制の対象となります。 代理店として注意すべきは後者のケースです。受診施設の設置者は医療機関ではない事業会社であることが多いと想定されますが、そのような事業会社が「当該施設で提供される医療の内容」に関して広告を行う場合、ガイドラインは「正確な情報を発信する観点から、当該法人等が、オンライン診療を実施する医療機関に対し、必要な確認を行うこと」を求めています。

つまり、設置者主導で医療内容に踏み込んだ広告を制作する際は、提携医療機関への事実確認プロセスを契約上または運用上、明確に組み込む必要があります。

代理店として実務上注意すべきポイント

ここまでの整理を踏まえ、代理店実務での確認項目を以下の観点から整理します。

(1)何人規制の認識

医療法6条の5第1項は「何人も」と規定しており、広告規制は医療機関だけでなく広告代理店、マスコミ、アフィリエイター等にも適用されます。違反があった場合、広告依頼者とともに代理店も指導や処分の対象となり得ます(ガイドライン第2部6(2))。罰則として、虚偽広告や中止命令違反には6月以下の懲役または30万円以下の罰金、立入検査拒否等には20万円以下の罰金が定められています(医療法87条1号、89条2号)。

参照:医療機関ネットパトロール

(2)案件受注時のヒアリング項目

クライアントが医療機関なのか受診施設の設置者なのかを必ず確認する必要があります。両者で広告規制の建付けが異なるためです。受診施設の設置者の場合は、医療法8条2項に基づく届出の有無も確認すべきポイントです。

(3)クリエイティブ制作時のチェック項目

  • 「医療を提供するものではない旨」の明示が視認性のある形で記載されているか
  • 提携医療機関の名称が明示されているか
  • 受診施設に該当しない場合に類似名称を使用していないか
  • 医療内容に踏み込む場合に提携医療機関への事実確認が取れているか

(4)過去案件の見直し

令和8年4月以降の継続案件で、オンライン診療を扱う広告がある場合は、改正後の基準で再点検することが望ましいといえます。

第2回まとめ

  • 受診施設広告では「医療を提供するものではない旨」の明示が必須要件となる。
  • 広告可能事項は施設情報・営業情報・便宜サービス等に限られ、医療内容は別途医療広告規制の対象となる。
  • 受診施設に該当しない施設は紛らわしい名称(「オンライン診療ブース」「オンライン診断スポット」等)を使用できない。
  • 広告主体(医療機関か設置法人か)で適用規制が変わる。代理店は受注時に確認が必要。
  • 代理店も「何人」規制の対象であり、罰則の適用がある。
次回(第3回)は、令和8年改正のうち軽微な改定点(ガイドライン略称の変更、Q2-11(SNS体験談規制)の更新、Q3-22(治療効果表現)の更新等)について、既存業務への影響確認を中心に解説します。 弁護士 津江誠
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