幹細胞培養上清液の医療・薬事における取扱い

幹細胞という言葉を最近よく耳にするようになりました。

2020年には美容医療の現場で脚光を浴び、2021年には、細胞が含まれていない培養上清液が化粧品に用いられるようになりました。

ここでは簡単に、医療と薬事に関して、幹細胞培養上清液をどう取り扱うべきか、解説いたします。

目次

医療について

幹細胞培養上清液とは、体内に存在する歯髄・臍帯・骨髄・脂肪など間葉系幹細胞と分類される幹細胞を培養し、その培養液から細胞を取り除き、滅菌等の各種処理を行った液体(上澄み液)のことを言うとされています。

法的に大事なのは、これが、再生医療等の安全性の確保等に関する法律に定義される「細胞」や「細胞加工物」に該当しないということです。

(定義) 第二条 

3 この法律において「細胞」とは、細胞加工物の原材料となる人又は動物の細胞をいう。 4 この法律において「細胞加工物」とは、人又は動物の細胞に培養その他の加工を施したものをいい、「特定細胞加工物」とは、再生医療等に用いられる細胞加工物のうち再生医療等製品であるもの以外のものをいい、細胞加工物について「製造」とは、人又は動物の細胞に培養その他の加工を施すことをいい、「細胞培養加工施設」とは、特定細胞加工物の製造をする施設をいう

再生医療等の安全性の確保等に関する法律

幹細胞培養上清液は、細胞や細胞加工物ではなく、再生医療等の安全性の確保等に関する法律で規制されない、いわば新しい成分ということになります。

この点に関しては国会の答弁でも以下のように回答されています。

質問

「細胞が含まれていないヒトの幹細胞上清液を用いた治療法は再生医療等安全性確保法の対象になるのか。」

回答

「一般に、人等の細胞に培養その他の加工を施したものを用いない医療技術は、再生医療等の安全性の確保等に関する法律(平成二十五年法律第八十五号)第二条第二項に規定する再生医療等技術に該当するものではな」い。

衆議院|答弁本文情報

したがって、細胞が含まれていない幹細胞培養上清液を用いた医療行為については、再生医療等技術の一種、二種、三種に関する規制に縛られずに、提供可能ということになります。

注射や処方など、医療行為として行う分には再生医療等の安全性の確保等に関する法律によっては規制されません。

薬事について

細胞が含まれていない幹細胞培養上清液は、一つの成分として考えていただければ問題ありません。

健康食品でも化粧品でも、結局のところ、医薬品的な効能効果を標ぼうするなど、一般人から医薬品であると誤認されるような販売・広告をしないということが大事になります。

その観点で言えば、あくまで細胞ではなく上清液であることをきちんと説明することや、効能効果について、人や動物の疾病の予防・治療・診断、身体の構造・機能に影響を及ぼすかのような表現をしなければ良い、ということになります。

化粧品であれば、成分によって、56項目の範囲で、育毛や肌に関する事項が言えるでしょう。

個別具体的な表現の適否については、お問合せフォームからご連絡をいただければと思います。

ネクスパート法律事務所では、法令を遵守した医療や薬事を、リーズナブルに、しっかりとサポートさせていただきます。

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