「医療広告等ガイドライン」への略称変更とその他の改定点 – 既存業務への影響を確認する

「医療広告等ガイドライン」への略称変更とその他の改定点 ー既存変更とその他の改定点ー
目次

はじめに

第1回・第2回では、令和8年4月施行の改正で新設された「オンライン診療受診施設」の広告規制を解説しました。
最終回となる本稿では、上記の大きな改正と同時に行われた、軽微な改定点について解説します。継続して受託している医療広告案件への影響を中心に、既存業務の見直しが必要な箇所を確認します。
解説の根拠となる医療広告等ガイドラインおよびQ&A(いずれも厚生労働省)を参照しながら進めます。

ガイドライン略称の変更

ガイドラインの正式名称(「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針」)に変更はありませんが、略称が「医療広告ガイドライン」から「医療広告等ガイドライン」へ改められました。
これに伴い、Q&Aの令和8年3月改定の項では、「ガイドライン名称を更新」した旨が記載されており、Q1-1、Q1-2、Q1-3、Q1-6、Q1-7、Q1-12、Q1-14、Q2-5、Q6-3、Q6-13といった複数のQが、名称表記の更新を理由として更新されています。

実務的影響としては、社内資料・チェックリスト・クライアント説明資料における「医療広告ガイドライン」の表記を、適宜「医療広告等ガイドライン」に置き換える必要があります。表記が古いままでも内容の正確性に問題はありませんが、最新性を担保する観点で更新することが望ましいといえます。

SNS関連:Q2-11の更新

Q2-11は、SNSにおける医療機関の治療等に関する感想の取扱いを示すQです。改正により、例示されるSNSが「フェイスブックやTwitter」から「フェイスブックやX」に更新されました。
規制内容そのものに変更はありません。Q2-11の判断基準は、改正前後を通じて以下のとおりです。

  • 個人が運営するウェブサイト、SNSの個人ページ、第三者運営の口コミサイト等への体験談の掲載は、医療機関による費用負担等の便宜による誘引性が認められない限り、広告に該当しない。
  • 逆に、医療機関が広告料等の便宜を図って掲載を依頼している場合は、誘引性が認められ広告規制の対象となる。

代理店実務との関連では、インフルエンサーマーケティング案件で医療機関のSNS投稿を扱う際の判断基準は従前どおりです。報酬支払や対価提供がある場合には誘引性が認められ、医療広告規制およびステマ規制(景表法5条3号)の双方が問題となります。

治療効果表現:Q3-22の更新

Q3-22は、治療内容に関する表現の許容範囲を示すQです。改正により、設問で例示される表現が「『歯を削らない、痛くない、気持ちいい治療』というような治療法」から、「『歯を削らない痛くない治療(99%以上の満足度)』との表現」に変更されました。
回答内容は実質的に同じで、以下の判断枠組みが維持されています。

  • 「歯を削らない治療」のような表現は、削らなくても適正な医療を提供できる範囲においては広告可能。
  • 「痛くない治療」のような科学的根拠がなく虚偽広告や誇大広告のおそれがある表現は広告できない。
  • 「99%の満足度」については、求められれば内容に係る裏付けとなる合理的な根拠を示し、客観的に実証できる必要がある。

改正の主眼は、満足度等の数値表現に関する判断基準を明示することにあると考えられます。代理店としては、満足度・改善率・効果実感率といった数値を含む広告を扱う場合、クライアントから根拠資料(調査方法、対象人数、時期等)を取得する運用を再確認しておくことが望ましいといえます。
なお、根拠の提示がない数値表現は、ガイドライン本体第3-1の1(1)で虚偽広告として扱われると明記されています。たとえば「○%の満足度」(根拠・調査方法の提示がないもの)は虚偽広告に該当します(同箇所「データの根拠(具体的な調査の方法等)を明確にせず、データの結果と考えられるもののみを示すものについては、虚偽広告として取り扱うべき」)。

過去に制作したクリエイティブの見直しが必要か

令和8年改正のうち、軽微な改定部分について、過去案件の見直しが必要かを整理します。

略称変更について

社内・対外資料の表記更新は推奨されますが、過去のクリエイティブそのものに影響はありません。

Q2-11(SNS関連)について

規制内容に変更はないため、過去案件の見直しは不要です。ただし、ステマ規制の運用が令和5年10月以降本格化していることもあり、医療機関のSNSを扱う案件全般について、改正以前からの運用見直しが必要なケースがあると考えられます。

Q3-22(治療効果表現)について

数値を伴う治療効果表現を含む既存クリエイティブがある場合は、根拠資料の保有状況を確認しておくことが望ましいといえます。具体的には、満足度・改善率・効果実感率の数値を使用している案件について、調査方法・対象・時期が記録されているかをチェックします。
厚生労働省は医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版)(令和8年3月30日)も公表しており、具体的な違反例の参照に役立ちます。代理店として、社内研修・チェックリストの参考資料として活用することが考えられます。

連載のまとめ

全3回にわたり、令和8年4月施行の医療広告等ガイドライン改正を解説しました。代理店として優先的に対応すべき事項を以下に整理します。

  • オンライン診療受診施設に関する案件を受注する場合の体制整備(第1回・第2回参照)
  • 受注時ヒアリング項目の更新(クライアント区分、届出の有無等)
  • クリエイティブチェックリストの更新(明示要件、紛らわしい名称の禁止等)
  • 社内資料・対外資料における「医療広告ガイドライン」表記の更新
  • 既存案件における数値表現の根拠資料の確認

医療広告規制は、医療機関だけでなく代理店・制作会社・アフィリエイター等にも罰則を伴う形で適用される領域です。改正への対応をご検討中の方は、所管する自治体の窓口、または当事務所までご相談ください。

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弁護士 津江誠

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