【弁護士が解説】RWAと法律規制

RWAとは、Real World Assetsの略です。 

現実世界に物理的に存在する資産を指します。

暗号資産業界では、単に資産ではなく、現実世界に物理的に存在する資産を、ブロックチェーンの技術を組み込んでトークン化する動きや、トークン化したものを指すこともあります。

本記事では、RWAを後者の意味で使用します。

近年、高級ホテル、ウィスキー、現代アートなどのリアル資産をトークン化して販売するスキームが増えてきています。

これらのメリットは、一つ一つが高額な商品を小口化して販売することができる点にあり、投資商品の新たな販売方法となりうるため注目を集めています。

本記事では、これらのRWA商品の法規制について、解説します。

目次

RWAの可能性と特徴

web3は、法律上決まった定義はありませんが、大きな意味ではブロックチェーン技術を用いた次世代の分散型インターネットの概念です。

現段階でブロックチェーンの活用法は模索中なところがありますが、RWAweb3の発展のカギとなり得ると期待されています。RWAは、現実の資産と紐づけたものなのでその利用は日常を豊かにするものといえます。

経過が分かる

RWAは、ブロックチェーンの技術を用いているので、過去に行われた取引が記録されていて、所有権の移転のつまり、誰がいつ誰に売買し、誰が所有に至った軌跡が分かります。

例えば、不動産の賃貸や売買において、誰がいつまで住んでいたか、誰から誰に所有権が移転したかが簡単に分かる上、分かった上で取引ができます。

個々人で完結できる

RWAは、web3の概念に沿っているものであり、非中央集権化を図れます。すなわち、不特定多数のネットワーク参加者によって共同管理されるようにして、仲介業者等が立ち入ることなく個々人で自由に取引ができ、個々人によって完結できます。

例えば、不動産の取引において、取引当事者にとっては不透明だった仲介業務について、自分で行うか、専門の業者に依頼するか選択できるようになります。

細分化が可能

RWAは、デジタルデータのため細分化することか可能です。高価な物への投資や取引について大きく貢献します。

例えば、不動産や年代物の高価な酒類など、その物の取引となると高価で手が出なくとも、一部について所有したい、少しだけでいいから飲みたいといったことが実現できます。

取引が簡易

RWAは、ブロックチェーン上で扱われるので、通貨など国別の差がなく自由に簡単に取引が可能です。

RWAの法整備

資金決済法

暗号資産該当性

RWAが暗号資産に該当する場合、資金決済法の規制対象となります。

資金決済法上の暗号資産とは、以下のものを指します。

1号暗号資産(法2条14項1号)

  • 物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、
  • これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、
  • かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨、通貨建資産並びに電子決済手段(通貨建資産に該当するものを除く。)を除く。次号において同じ。)であって、
  • 電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

2号暗号資産(同項2号)

  • 不特定の者を相手方として
  • 前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、
  • 電子情報処理組織を用いて移転することができるもの(同第2号、2号暗号資産)

暗号資産に該当した場合

以下の行為を「業として行う」場合、「暗号資産交換業」の登録若しくは登録を受けている業者に販売を委託する必要があります(法2条7項)。

一 暗号資産の売買又は他の暗号資産との交換

二 前号に掲げる行為の媒介、取次ぎ又は代理

三 その行う前二号に掲げる行為に関して、利用者の金銭の管理をすること。

四 他人のために暗号資産の管理をすること(当該管理を業として行うことにつき他の法律に特別の規定のある場合を除く。)。

暗号資産交換業の登録を受けるハードルは極めて高いです。

暗号資産交換業に該当する行為につき、無登録での営業を行った場合は、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金又はこれらの両方(同法第107条第12号)という重い刑事罰の制裁を受ける可能性がります。

そのため暗号資産に該当するのかどうかは、スキーム作りの段階で最も注意して検討しなければなりません。

暗号資産交換業の登録がない場合、暗号資産とならないスキームを作るにはどうすればよいのかが、事業を進めるうえでの重要なポイントとなります。

前払式支払手段該当性

RWAトークンの使い方によって、前払式支払手段に該当する可能性があります。

前払式支払手段とは、次の4要件を備えたもののことをいい、資金決済法の適用を受けます。

  1. 金額又は物品・サービスの数量(個数、本数、度数等)が、証票、電子機器その他の物(証票等)に記載され、又は電磁的な方法で記録されていること。
  2. 証票等に記載され、又は電磁的な方法で記録されている金額又は物品・サービスの数量に応ずる対価が支払われていること。
  3. 金額又は物品・サービスの数量が記載され、又は電磁的な方法で記録されている証票等や、これらの財産的価値と結びついた番号、記号その他の符号が発行されること。
  4. 物品を購入するとき、サービスの提供を受けるとき等に、証票等や番号、記号その他の符号が、提示、交付、通知その他の方法により使用できるものであること。

前払い式支払い手段としてイメージしやすいのは、商品券やカタログギフト券、磁気型やIC型のプリペイドカード、インターネット上で使えるプリペイドカード等になります。

RWAの関係では、ホテルをNFT化して販売した、RWAの先駆け的な商品があります。

これについては、ホテルの利用料金の先払い的な性格を有するため、前払式支払手段に該当し、資金決済法の適用を受けています。

ただし、発行の日から6月内に限って使用できるものであれば、資金決済法の適用対象外となるため、このあたりがスキーム作りの一つのポイントになります。

金商法

有価証券該当性・該当した場合

金融商品取引法2条に掲げる有価証券に該当する場合、第1種金商業の登録若しくは登録を受けている業者に販売を委託する必要あります(法29条)

RWAに基づき発行されるトークンに対して、配当や100%以上の元本償還が約束される場合、集団投資スキーム(ファンド)に該当しないかを検討しなければいけません。

この件は、とてもご相談をいただくことが多いですが、登録の有無を前提とし、スキームの変更も含め、慎重な検討が必要となります。

スキームによっては適用が予想される法律

スキームによっては、適用が予想される法律は、以下のとおりです。

  • 預託等取引法
  • 古物営業法
  • 各種業界の法律 etc.

その他の課題

個人情報

過去の取引の経緯がデータでわかる以上、RWAを含むブロックチェーンの技術は個人情報の取り扱いは切っても切れない関係です。

過去の取引経緯が分かることはブロックチェーン技術の強みですが、この強みを生かしながら個人情報の保護についても検討を要する課題です。

対抗要件

データによって取引状況が記録でき、所有者を証明できることは、所有権の帰属が誰にあるかという問題を解決してくれる期待があります。

しかし、対抗要件においては、不動産には登記制度があり、債権においては確定日付による証書の制度があります。動産においては、対抗要件が引渡しのため、ブロックチェーンの技術が活きてくる可能性が大いにあります。

一物一権主義との関係

対象物1個について、1つの物権(所有権)が成立することが原則です。区分所有権などの例外は現在も存在しますが、RWAにおいて細分化された所有権をどのように観念するかの整理も必要です。

さいごに

以上、RWAと法的な観点についてざっとご説明いたしました。

Web3の議論は煮詰まっておらず、まだまだ課題が出てくる分野です。

日常が豊かになる画期的な技術でもあり、その利用と法整備について、今後も追っていきたい所存です。

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