ドバイでは、2022年2月末にLaw No. (4) of 2022Regulating Virtual Assets in the Emirate of Dubai (VAL)という法律が成立し、内国法人のみならずフリーゾーン法人についても仮想資産(注:日本における暗号資産に類似する概念)を利用したビジネスについて規制が及んでおります。なお、2023年2月7日にVALの具体的な手続き等を規定するVirtual Assets and Related Activities Regulations 2023やVirtual Asset Issuance Rulebook等が施行されておりますが、ドバイにおける仮想資産を利用したビジネスに対する法規制の内容・運用については本稿執筆時点(2023年2月10日)において流動的な状態にあります。本稿では執筆時点におけるドバイにおける仮想資産を利用したビジネスに対する法規制について解説します。
VAL概要
VALはドバイにおける仮想資産を利用したビジネスを規律する法律であり、主に(1)ドバイにおける仮想資産に関する規制官庁であるVirtual Assets Regulatory Authority (VARA)の設立や機能に関する事項、(2)VARAからライセンスの取得が義務付けられている業務範囲などに関して規定します。
なお、VALはDubai International Financial Centre (DIFC)を除くドバイ全土に適用されるため、内国法人のみならず、フリーゾーン企業にも規制が及びますが、DIFCについては既に十分な規制・体制が存在するため、DIFCに所在する企業にはVALの規制は及びません。
ライセンス取得が義務付けられる業務範囲
VAL第16条1項はVARAから許可の取得が必要とされる業務として以下の業務を規定しております(総称して「規制サービス」)。
- 仮想資産プラットフォームの運営・管理サービスの提供
- 仮想資産と国内通貨又は外国通貨との交換のためのサービスの提供
- 1つまたは複数の仮想資産間の交換サービスの提供
- 仮想資産のトランスファーサービスの提供
- 仮想資産の保管、管理または制御サービスの提供
- 仮想資産ウォレットに関連するサービスの提供
- 仮想トークンの提供および取引に関するサービスの提供
なお、VAL第16条2項は、VARAは上記事業を分類・定義し、その実施について必要な規制及び規則を定めることができるものとしており、2023年2月7日にVALの規則に当たるVirtual Assets and Related Activities Regulations 2023やVirtual Asset Issuance Rulebook等が施行されております(総称して「VAL規則」)。ただし、本稿執筆時点(2023年2月10日)においてはフリーゾーンレベルにおける運用は流動的な状況にあります。
実務上の運用(2023年2月時点)
VALは2022年3月1日より施行されており、規制サービスを実施するにあたってはVARAより許可を取得する必要があるものとされています。2023年2月7日にVAL規則が制定されましたが、本稿執筆時点(2023年2月10日)ではライセンス取得の手続き運用は不透明・流動的な状況にあります。
多くのWeb 3プロジェクトにおいて、フリーゾーンにおける会社設立が選択されますが、VAL規則が施行されて間もないため、仮想資産に関する事業を実施する会社を設立する場合には、フリーゾーンレベルにおいてUndertaking Letterを申請するという運用となっています。Undertaking Letterの内容は、カテゴリーA及びカテゴリーBによって異なるところ、カテゴリーAにおいて求められる事項は厳しく、弊所がフリーゾーンに照会した限り、カテゴリーAのUndertaking Letterの申請が通ったケースは稀であるということです。
カテゴリーA及びカテゴリーBの内容は以下の通りです。
【カテゴリーA】
- 仮想資産交換事業(仮想資産/NFT)
- 仮想資産カストディアンサービス
- 仮想資産マネジメントサービス
- 仮想資産発行サービス(自社発行仮想資産または仮想資産発行サービス)
- 仮想資産ブローカー・ディーラーサービス
- 仮想資産のレンディング、イールディング及び金融サービス(中央集権/分散型を問わず、仮想資産を利用)
- 仮想資産アドバイザリーサービス
- 仮想資産の支払い・送金サービス
【カテゴリーB】
- 自己勘定取引
- 分散型台帳技術サービス
- その他
ドバイでWeb 3事業を行う場合、トークンの発行を前提とするプロジェクトが多いと言えますが、ドバイフリーゾーン企業がトークンを発行することは仮想資産発行サービスに該当する可能性が高いため、この点に注意する必要があります。プロジェクトの内容によっては、トークンの発行に関してオフショア法人の併用などを検討する必要が発生します。
なお、上記運用は、弊社との間でパートナーシップを締結し又はコンタクトのあるフリーゾーンの運用状況を説明したものであり、ドバイに所在する全てのフリーゾーンの運用状況を解説したものでない点についてご留意ください。