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東京荒川・酒類販売店が使用していた木造他店の立退きに対し300万円の立退料が認められたケース

東京都荒川区にある木造亜鉛メッキ鋼板葺2階建の建物(延べ床面積約66.11㎡)。これを月6万2000円で借り、酒類販売店兼住宅として使用してきた借主。しかし、本件建物を建て替えるとして立退きを求められた!裁判所が借主に300万円の立退料を認めたポイントは?
裁判所が考慮した事実(東京地判平成22年9月1日)
本件建物は築70年を超える上、土地の有効利用ができていなかった…
本件建物は、築70年を超える建物で、老朽化が非常に目立つ状態にありました。また、本件建物の屋根や外壁はトタン板で、そもそもその構造上頑丈な構造ではなく、トタン板も期間の経過により腐食している部分が目立つ状態にありました。そのため、裁判所は、本件建物の耐用年数が経過しているとの判断をしました。
本件建物は、商業地域にありましたが、本件建物は、古い木造2階建ての建物で、土地の有効利用ができていませんでした。また、貸主は、本件建物の敷地の隣にも小さな土地を所有していましたが、その土地の構造上、本件建物の敷地と共に利用しなければ使えない構造で、現に使用されていませんでした。
裁判所は、以上のことから、貸主が本件建物を建替えてより高い収益を上げることに合理性があるものと判断しました。
借主の不利益に関する主張立証が不十分であった…
借主は、本件建物を先代と併せて約70年使用してきました。そして、借主の酒店は、小規模零細の状態で、このような酒店の営業にとっては、従前築いてきた顧客との関係が重要といえますが、借主が近隣で建物を借りることは容易でした。また、酒類販売の免許との関係でも、移転は容易でした。
また、借主は、移転により生じる営業への影響を主張していましたが、借主の収益状況や営業への影響に関する立証を一切行っていませんでした。
さらに、借主は、本件建物で居住していることを主張しました。しかし、借主は、本件訴訟の提起後に本件建物に住民票を移し、本件訴訟の訴状を借主が借りているアパートで受け取っていました。そのため、裁判所は居住の利益を重視することはできない旨の判断をしました。
以上のことから、裁判所は、貸主の申し出そのままの額で立退料を決めました。
弁護士が解説する立退料算定のポイント
本件で特徴的なのは、貸主が申し出た300万円の立退料がそのまま認められた点にあります。
借主としては、貸主が目的となる建物又はその敷地を使用する必要性がある以上、立退きを余儀なくされる場合がほとんどです。その場合、立退料の額の算定の判断のために、立退きによりどれほど借主が損するのかを立証する必要があります。かかる立証が尽くされなかった場合、裁判所としては、貸主に支払いを強制させる立退料の額をつり上げることはできません。
このことからわかることは、主張があるなら、その根拠を証明する必要があるということです。