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練馬区小竹町・2階建食堂兼住宅に対し500万円の立退料が認められたケース

東京都練馬区小竹町にある北造瓦葺2階建店舗兼住宅。これを月24万円で借り、食堂を経営してきた借主。しかし、老朽化により取り壊すとして立退きを求められました!裁判所が借主に500万円の立退料を認めたポイントとは?
裁判所が考慮した事実(東京地判平成21年5月21日)
築60年の木造建築物は亀裂や傾斜もあり、建物の老朽化が激しかった
本件建物は、築60年近くが経過し、木造建築物としての耐用年数が経過しているほか、天井の表し部分に多数の亀裂が生じ、床も大きな傾斜がある部分があるなど、耐震性能を有する状態に回収することも困難な状態にありました。このことから、裁判所は、貸主が本件建物を取り壊す利益がある方向の判断をしました。
貸主は駐車場として運用する予定で差し迫ったものではなかった
貸主は、本件建物を取り壊した後、敷地を駐車場として運用する予定でした。そのため、裁判所は、貸主側の利益は大きくない旨の判断をしています。
借主の家計は20年間営業してきたこの食堂の経営頼みでだった
借主は、本件建物で先代からの経営期間を含めて20年間食堂を経営してきました。借主の収入は、この食堂での収入のみでした。また、近隣にある食堂として営業可能な物件の家賃は、月45万円と、本件建物の賃料の約2倍にもなりました。これらのことから、裁判所は、借主が食堂を経営し続ける必要性がある旨の判断をしています。
借主が本件建物にこだわる理由は乏しかった
借主は、本件建物とその敷地を買い取る意向を有していました。しかし、その場合には、本件建物を取壊した上で建物を新築する予定でした。裁判所は、このことから、借主が本件建物を使用し続ける必要性を多少弱めた判断をしました。
弁護士が解説する立退料算定のポイント
本件で特徴的なのは、借主側が本件建物とその敷地を買い取る意向を有していたことです。
このことは、貸主側がその場所で食堂を経営し続けたい意思の表れであるともいえます。しかし、仮に貸主側が売却する意思を有していなければ、売買契約を強制させることはできませんから、借主側が本件建物を使用し続ける利益を有しているかを判断する材料として機能することになります。この場合、借主が本件建物を取り壊す方針であるならば、借主が本件建物を使用する必要性は低いと言わざるを得ません。
このことからわかることは、一見有利に見える事情でも、裁判所に判断してもらう結論の如何によっては、不利益な事情にもなりうるということです。