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東京都目黒・家屋の立退きに際し230万円の立退料が認められたケース

東京都目黒区にある木造瓦葺2階建の建物。これを月2万9000円で借り、住居として使用してきた借主。しかし、老朽化により建て替えるとして立退きを求められました!裁判所が借主に230万円の立退料を認めたポイントとは?
裁判所が考慮した事実(東京地判平成22年7月28日)
築約50年近くが経過していたが朽廃しているとは認定されなかった
本件建物は、築約50年近くが経過している建物で、共同トイレが使用不可能で、また扉を紐で括り付けているなど、老朽化が進んでいる状態にありました。しかし、裁判所は、建物の朽廃とは、社会的経済的効用を失う程度に腐朽し、通常の修繕の程度ではその寿命を延ばすことができず、建物の効用を維持できない状態になったことをいう旨の基準を示しつつ、本件建物は、朽廃に至っていないとの判断をしました。
とはいえ、老朽化は激しく修繕に莫大な費用が必要だった
ただ、本件建物は、上記のような問題の他にも、細かい老朽化が目立つ状態にありました。そのため、その修繕には、3000万円以上の費用が掛かる状況にありました。このことから、裁判所は、建替えの必要性がある旨の判断をしました。
貸主の建て替え計画は具体的ではなかった
貸主は宗教法人で、本件建物はその境内地内にありました。貸主としては、本件建物を取壊し、庫裡を建築する計画がある旨の主張をしていました。しかしながら、その計画には具体性がうかがわれない状況にあり、裁判所は貸主の必要性が高いとはいえない旨の判断をしました。
借主の転居は容易であった…
借主は、本件建物で約17年間生活してきましたが、本件建物に単身で居住し、近隣にも賃貸物件がありました。また、借主自信、調停において立退料と引き換えに立ち退く旨述べていました。
このことから、裁判所は、借主に転居を強いても仕方がない旨の判断をしました。
弁護士が解説する立退料算定のポイント
本件で特徴的なのは、本件建物が老朽化を超えて朽廃しているかが議論されている点にあります。朽廃が認められる場合、建物としての経済的な価値はなくなっており、賃貸借契約の目的も遂げられたものと判断されるものといえます。この場合、立退料無しで立退きが認められることも考えられます。このことからわかることは、老朽化の結果、建物としての機能が失われるに至ったか否かも、立退料算定の上で非常に重要な要素になるということです。