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東京都手島区の木造2階建て家屋に関する立退料が認められなかったケース

東京都豊島区にある木造2階建の住宅。これを住居として使用してきた借主。しかし、建物を建替えるとして立退きを求められました!裁判所が無条件で借主の立退きを認めたポイントは?
裁判所が考慮した事実(東京地判平成18年5月12日)
貸主の自宅は非常に手狭で土地を使用する必要性があった
貸主は、当時のべ40坪の2階建て住宅に長男一家とともに7人で生活している状態でした。そのため、貸主の自宅は非常に手狭で、本件建物のある土地を使用する必要がありました。このことから、裁判所は、貸主が借主を立ち退かせる利益がある旨の判断をしています。
本件建物は築50年を経過し、劣化が激しかった
本件建物は、築50年を超える建物で、非常に劣化している状態でした。そのため、改修工事等を行って使用し続けるには、費用対効果が釣り合わない状況にありました。このことから、裁判所は、貸主が本件建物を建替える利益があるものと認めています。
借主は本件建物をほぼ使用していなかった…
借主は、本件建物を50年以上もの間賃借してきました。しかし、立退きを求められた時点では、借主が生活の拠点を水戸市の娘の家に移してから9年近く経っていました。立退きを求められた当時、借主は、たまに本件建物に泊まることはあるものの、妻とともに水戸市内の病院に通院しているなど、生活の拠点は、完全に水戸にありました。このことから、裁判所は、借主が本件建物を使用する必要性は、極めて乏しい旨の判断をしました。
弁護士が解説する立退料算定のポイント
本件で特徴的なのは、一切立退料の支払いが認められなかった点にあります。立退料は、借主側が喪失する利益を調整する働きも有することからすると、一切立退料が認められない場合というのは、借主が当該建物を使用する利益が極めて微弱である場合に限られるものといえます。
本裁判例は、貸主の利益がほぼ認められない場合の1つの例を示しています。