「夫のDVがつらい、安全に離婚したい」
「DV夫が離婚してくれない。。どうすればいいかわからない」

夫からのDVに悩んでいる場合、離婚を相手に切り出すことは事態を悪化させる可能性もあり、慎重に行う必要があります。そこでこの記事ではDV夫から安全に離婚するための対処法を解説します。DVは暴力行為だけではなく、経済的なDVやモラハラも該当します。悩んでいる方はぜひご参考ください。

夫からのDVに悩んでいる方は多い

DVに悩んでいる方は男女ともにおられますが、割合としては女性の方が多くなっています。参考までに平成29年12月に実施された内閣府の調査を紹介します。

男女間における暴力に関する実態把握全国20歳以上の男女5,000人を対象に実施されたアンケートによると、身体的DVはもちろん、その他のDVも女性の方が男性よりも被害経験者が多く、約3人に1人は経験したことがあるという結果が出ています。

配偶者からの暴力の被害経験(女性)
あった まったくない 無回答
DV経験の有無 31.3% 66.9% 1.8%
身体的暴行 19.8% 78.0% 2.2%
心理的攻撃 16.8% 79.5% 3.7%
経済的圧迫 10.0% 86.2% 3.9%
性的強要 9.7% 86.3% 4.0%

また、DV被害を受けた女性の約21人に1人は命の危険を感じたことがあると該当しています。夫からのDVに悩まされている女性はとても多いと言わざるを得ません。

配偶者からの暴力被害により命の危険を感じた経験(女性)
被害を受けたことがない 66.9%
感じなかった 23.2%
感じた 4.7%
無回答 5.2%

参考URL:内閣府 DVの現状などについて 令和2年11月27日発表PDF

DV夫が離婚してくれないのはなぜか

身体的DVなど、まるで相手を憎むかのような行動を夫が繰り返す場合、妻としては耐えかねて離婚をしたいと考えるのは当然のことです。しかし、DVを繰り返す夫の特徴の1つには、離婚を切り出しても応じないことが挙げられます。

離婚を承諾するどころか激高してしまったり、態度を硬化させたりすることも多く、ただでさえ弱っている女性側が力を失ってしまう可能性があるのです。ではなぜDVを行う夫は離婚に応じないのでしょうか。

加害者側である夫には、一定のタイプはないとされています。貧困や富裕層などは関係しておらず、年齢や学歴にも関係がないのです。人当たりが良くて社会的信用があることも多く、その反動で妻や子に対して悪質な暴力を振るうケースも散見されます。家族を所有しているとみなすためか、逃げようとすると態度を硬化させ、より状況が悪化するのです。

参考URL:内閣府 男女共同参画局 ドメスティック・バイオレンス(DV)とは

DV夫から安全に離婚をするには

DVは不法行為であり、決して我慢をする必要はありません。しかし、身体的であれ精神的であれDVが恒常的に続いていると逃げる気力を失い、諦めてしまうようになります。では、DV夫と安全に離婚をするためにはどんな対処法があるでしょうか。この項では離婚に向けた具体的な対処法を紹介します。

別居をする

DVは夫の機嫌を伺うようになるため支配関係が生じやすく、そばに居ると逆らいにくい環境になりがちです。しかし、支配関係から物理的に脱するためにもまずは別居を検討しましょう。

別居に不安がある場合には事前に配偶者暴力相談支援センター婦人相談所に依頼を行い、一時保護を目指すことも検討できます。生活資金に不安がある場合や、母子で別居をスムーズに行いたい場合には、公的機関の支援を受けることもおすすめです。

医療機関や警察に相談をする

身体的DVの場合には暴力行為を受けているため緊急性が高く、医療機関や警察に相談をすることも大切です。医療機関や警察を経由して保護命令※につなげる方法もあります。

※保護命令とは 配偶者を始めとする相手からの暴力や付きまといに対して被害者が裁判所に申立を行うことで、接近の禁止などを命じることです。

参考:裁判所 保護命令手続きの流れ

弁護士に相談をする

別居からDVの証拠集め、離婚調停や訴訟などについては弁護士への相談も可能です。ご自身で離婚の交渉を夫側に行うことが難しい場合には、弁護士が代理人として交渉することが可能です。DVをするような相手であっても、弁護士が第三者として介入すると落ち着くことも多く、離婚に向けて協議が開始できる事案もたくさんあります。

また、離婚に関する包括的なアドバイスが可能なので、離婚後の生活も視野に相談ができます。養育費や財産分与など、DVを行う相手であっても相談者の利益を追究し、弁護士が交渉を行います。

【関連】離婚調停の弁護士費用の相場と依頼するメリット

DV夫に関して弁護士に相談をするリスクはない?

DVに遭われている方は精神的に疲労している方も多く、法律相談を躊躇ってしまう方がいます。また、モラハラを受けるようなケースでは監視されているような感覚に陥る人も多く、弁護士に相談をすることを恐れる人も居るようです。

しかし、弁護士には守秘義務があるため、相談内容を第三者に漏洩させるようなことはありません。借金問題など離婚以外の相談でも言えることですが、たとえ家族の問い合わせであっても相談内容を伝えることはないのです。

DVに関する相談も夫に漏れてしまうようなリスクはありません。まずは気軽な気持ちで法的アドバイスを受けてみることがおすすめです。

離婚してくれないDV夫に弁護士はどう対処するの?

ご自身で交渉をしてもDV夫が離婚してくれない、このようなご相談はDVを伴わない場合でも法律事務所には多く寄せられます。では、DV夫が離婚に応じてくれない場合には弁護士はどのように対処しているのでしょうか。

書面を送付後、弁護士が代理人として協議を行う

離婚に応じてくれない夫に対しては、弁護士が代理人として書面を送り、協議を開始します。DVを行うような相手であっても弁護士が交渉を開始するとスムーズに協議の段階で離婚が成立することもあります。

離婚調停を申立する

協議に応じない夫に対しては、離婚調停を申立することが可能です。離婚調停は家庭裁判所に申立を行い、調停委員の下で話し合いを進めます。調停は相手方と顔を合わせず進行できます。離婚調停はご自身で行うことも可能ですが、調停委員が必ずしも自分に有利に協議を進めてくれるわけではありません。

DVがあるようなケースでは証拠を準備し、調停委員に結婚生活がどうして破綻したのか冷静に伝える必要があります。この点も弁護士に依頼をすると事前にリハーサルを行い、調停委員への対応をレクチャーします。調停は相手方がDVを認めず、嘘をつく可能性もあり不調に終わる可能性もあります。

【関連】DVで離婚する場合の慰謝料相場や必要な証拠

訴訟を行う

調停が不調の場合には弁護士が速やかに訴訟へ移行させます。訴訟は調停とは異なり、裁判官が様々な証拠を確認し、一般的には和解離婚に落ち着くことが多くなっています。和解離婚は裁判官が関与し養育費や財産分与などに関しても条件を整えますが、和解も不調に終わった場合には判決を下します。判決が不服な場合には控訴を行いますがケースとしてはとても少ないでしょう。

このように離婚してくれないDV夫に対して弁護士が離婚を求めていく場合には、法的な手段でアプローチを重ねます。当事者間で話し合うよりも調停委員や裁判官の下で手続きを進めるため、安全に離婚に同意を得ることが可能です。

まとめ

この記事ではDV夫が離婚に応じない場合の対処法について解説しました。身の危険を伴うDVもありますが、経済的なDVや暴言を吐く、嫌味を言う行為なども心身を蝕ませる行為です。一人で悩んでしまう女性が多いですが解決方法はありますので、まずはお気軽に弁護士にご相談ください。