離婚後の子どもの養育費について、「いくらもらえるのか」「払ってもらえないときはどうすればいいのか」など、不安や疑問を抱える方は少なくありません。
とくに相手との直接交渉が難しい場合や、すでにトラブルが生じている場合には、弁護士への相談が有効です。
この記事では、養育費の基本から、無料で相談できる窓口、弁護士費用の考え方まで、わかりやすく解説します。
養育費とは
養育費とは、子どもが自立するまでに必要となる生活費や教育費などを、離れて暮らす親が負担するものです。子どもを養育する義務は、離婚後も両親に等しくあります。
ここでは、養育費の対象となる費用や支払い期間、相場、決め方、請求方法について整理します。
養育費の支払い期間
養育費は、原則として子どもが成人するまで支払われます。かつては20歳までとされていましたが、民法の改正により、2022年4月から成年年齢は18歳に引き下げられています。
ただし、養育費の終了時期は“高校卒業まで”や“大学卒業まで”と取り決めることもあり、当事者間の合意があれば延長も可能です。
家庭裁判所の調停や審判では、進学の有無や生活状況などを踏まえた判断がされる傾向があります。期間について曖昧なままにせず、事前に取り決めておくことが望ましいです。
養育費の相場
養育費は、子どもの人数や年齢、両親の収入をもとに算出されます。
一般的には、家庭裁判所の養育費算定表に基づき、たとえば年収400万円と100万円の親で子どもが1人の場合、月4〜6万円程度が目安です。
ただし、教育費や医療費などの事情により増減することもあります。
【関連:養育費算定表は高すぎる?養育費を払えないときの対処法】
養育費額の決め方
養育費の金額は、まず当事者間の協議で決めます。まとまらない場合は家庭裁判所で調停を行い、それでも解決しなければ審判で裁判所が判断します。
いずれの方法でも、収入や子どもの年齢などを踏まえて金額が算定されます。合意内容は文書化し、将来の未払いに備えることが大切です。
養育費を請求する方法
養育費の請求には、協議・調停・審判の3つの方法があり、まずは当事者同士の話し合いを行い、まとまらなければ家庭裁判所での調停に進みます。
調停で解決できない場合は、裁判所が審判によって支払い内容を定める形です。
いずれの方法でも、文書化しておくことで未払い時の差し押さえなどが可能になります。
養育費の相談を弁護士にするメリット
養育費の支払いに関しては、話し合いだけでは解決できないケースも少なくありません。
支払額が妥当か判断できない、相手と交渉がうまく進まない、支払いが滞っているなど、悩みの内容はさまざまです。
こうした場面では、弁護士に相談することで、適切な対応や解決への道筋を見つけることができます。
養育費の適正額が分かる
養育費は、子どもの年齢や人数、両親の収入などをもとに算出されますが、妥当な金額かどうかを自分で判断するのは難しいこともあります。
弁護士に相談すれば、養育費算定表をもとに適正額を確認でき、私立進学や障害などの個別事情にも対応した助言が受けられます。
不利な合意を防ぐためにも、早めの確認が重要です。
減額交渉ができる
離婚後に収入が減ったり、再婚で扶養義務が増えたりすると、養育費の支払いが難しくなることがあります。
ただし、自己判断で減額や支払い停止をするとトラブルの原因になるため、弁護士に相談して状況に応じた減額交渉や調停・審判による再設定をするのが望ましいでしょう。
未払いが発生した場合に回収できる
養育費の支払いが滞ると、生活への影響は避けられません。こうした場合でも、養育費を定めた合意書が公正証書や調停調書として整っていれば、法的手続きによって回収することが可能です。
弁護士に依頼すれば、内容証明郵便の送付や差押えなど、回収に向けた具体的な対応を進めてもらえます。
とくに相手が任意に支払わない場合には、裁判所を通じて給与や預金を差し押さえる強制執行の手続きが有効です。
泣き寝入りせず、法的な枠組みのなかで適正に対応することが大切です。
精神的な負担の軽減ができる
養育費をめぐるやりとりは、相手との関係が悪いと大きな負担になります。
感情的になりやすく、冷静な交渉が難しいこともありますが、弁護士に依頼すればやりとりを任せることができ、先の見通しも立ちやすくなります。
専門家の支援により、不安やストレスの軽減が期待できるでしょう。
【関連:養育費請求で争点になりそうなことは?】
無料で養育費の相談ができる窓口
養育費に関する悩みを抱えていても、「弁護士に依頼するのはハードルが高い」と感じている方は少なくありません。
そのような場合には、まず無料で利用できる公的機関や支援窓口を活用する方法があります。ここでは、養育費に関する相談先として代表的な5つの窓口についてご紹介します。
養育費・親子交流相談支援センター
養育費・親子交流相談支援センターは、厚生労働省の委託事業として全国各地に設置されています。
養育費の取り決め、回収、親子交流の方法など、子どもをめぐる離婚後の課題について無料で相談できる窓口です。
相談は電話や来所、場合によってはオンラインでも受け付けており、予約制のところが多くなっています。
必要に応じて、調停や公正証書の作成支援など、法的手続きに関する情報提供も行っていますが、自治体によっては別名称で運営されていることもあるため、住んでいる地域の情報を事前に確認するとよいでしょう。
母子家庭等就業・自立支援センター
母子家庭等就業・自立支援センターは、ひとり親家庭の生活支援を目的とした公的な窓口です。
就業支援が中心ではありますが、養育費の取り決めや回収に関する相談も可能です。
センターの相談員は、福祉や法律の知識を持ったスタッフが対応するため、生活全般に関する不安を包括的に相談できます。
たとえば、養育費が支払われていない場合の対応策や、制度の利用方法などについてアドバイスを受けることができます。
地域ごとに設置状況が異なるため、お住まいの自治体のホームページなどで所在地や相談日時を確認してください。
法律事務所
弁護士による法律相談も無料で受けられる場合があります。
多くの法律事務所では、初回相談を30分〜60分程度無料で提供しているところもあり、養育費に関する状況整理や今後の対応方針を相談することが可能です。
弁護士費用が気になる場合でも、まずは相談だけであれば費用がかからないことも多く、ハードルはそれほど高くありません。
費用体系や相談の範囲は事務所によって異なるため、事前に確認のうえ、安心して相談できる事務所を選ぶことが重要です。
市役所や区役所
市区町村の役所でも、養育費に関する無料相談が行われている場合があります。
主に女性相談、法律相談、ひとり親家庭支援などの枠で対応しており、家庭相談員や法律相談員が担当します。
内容によっては、弁護士による面談相談が受けられることもあり、利用は予約制のケースが一般的です。
窓口では、制度の紹介や関係機関への橋渡しも行われるため、「どこに相談すればよいかわからない」という方の最初の相談先として適しています。
住民票のある自治体の相談制度を確認するとよいでしょう。
NPO法人
養育費や離婚後の子育て問題に取り組むNPO法人も、無料相談の窓口として利用できます。
電話やメール、オンラインでの相談を受け付けている団体もあり、時間や場所に制限されずにアクセスしやすい点が特徴です。
法的アドバイスは難しいものの、制度の概要や公的支援の活用方法などについてわかりやすく案内してもらえるケースや、家庭裁判所の調停に関する情報提供、必要書類の準備の流れを案内している団体もあります。
信頼できる団体を選ぶためには、自治体や弁護士会が紹介している情報源を参考にするとよいでしょう。
養育費の請求を弁護士に依頼した場合の費用
弁護士に養育費の請求を依頼する場合、「どのくらい費用がかかるのか」が気になる方も多いのではないでしょうか。
費用の内訳は依頼内容によって異なり、交渉、調停、裁判のいずれを選ぶかによっても変わってきます。
ここでは、弁護士費用の基本的な相場と、各手続きごとの費用の目安についてご紹介します。
弁護士費用の相場
弁護士に養育費の請求を依頼する際の費用は、法律相談料、着手金、報酬金、日当・実費など、複数の項目に分かれています。
依頼する内容や手続きの種類によって金額は異なりますが、おおよその相場は以下のとおりです。
費用項目 | 内容 | 相場の目安 |
法律相談料 | 初回または継続相談にかかる費用 | 無料〜1時間1万円程度 |
着手金 | 手続きを開始する際に支払う費用 | 10万円〜40万円程度 |
報酬金 | 解決・成功した場合に発生する費用 | 得られた経済的利益の10〜20%が目安 |
日当・実費 | 交通費や郵便代などの実費遠方出廷時の日当など | 数千円〜数万円程度 |
これらの金額は事務所ごとに設定が異なります。費用面での不安がある場合は、契約前に見積書や報酬基準の説明を受けることが大切です。
また、事務所によっては分割払いや法テラスの利用が可能な場合もあります。
交渉・調停を依頼した場合の相場
相手との直接交渉が難しい場合や、話し合いがこじれてしまった場合には、弁護士に依頼して交渉や家庭裁判所での調停を行う方法があります。
これらの手続きにかかる弁護士費用の目安は、以下のとおりです。
費用項目 | 内容 | 相場の目安 |
着手金 | 交渉または調停手続き開始時に支払う費用 | 約10万円〜30万円程度 |
報酬金 | 合意成立・解決時に支払う成功報酬 | 約10万円〜30万円程度または得られた養育費総額の10〜15%前後 |
実費 | 調停申立書の印紙代、郵送費、交通費など | 数千円〜1万円程度 |
調停においては、1~2か月ごとに期日が設定され、平均して2~4回ほどの出廷が必要となることが一般的です。
弁護士が代理人として出廷することで、主張が整理され、より有利な条件での合意につながる可能性があります。
事務所によっては、着手金と報酬金をまとめて設定しているところもあるため、事前確認が重要です。
裁判を依頼した場合の相場
調停が不成立となった場合や、相手が話し合いに応じない場合には、審判や訴訟によって養育費を請求することになります。
裁判手続きは準備や対応に時間と労力がかかるため、弁護士費用も相応に高額になる傾向があります。主な費用の目安は以下のとおりです。
費用項目 | 内容 | 相場の目安 |
着手金 | 審判や訴訟に着手する際に支払う費用 | 約20万円〜40万円程度 |
報酬金 | 勝訴や有利な審判結果を得た場合の成功報酬 | 着手金と同程度、または経済的利益の10〜20%前後 |
実費 | 訴訟費用・収入印紙郵送費・交通費など | 5,000円〜1万円程度(別途、証人旅費などがかかることもあり) |
裁判になると、書面作成や証拠収集、複数回の出廷など、弁護士の対応範囲も広くなります。そのため、交渉・調停と比較して費用が高額になる傾向があります。
事案の複雑さや請求する金額によっても費用は変動するため、依頼前に見積もりや費用説明を受けることが重要です。
養育費の請求で弁護士費用が払えない場合の対処法
弁護士に依頼したいものの、費用の支払いが難しいという場合には、“法テラス(日本司法支援センター)”の民事法律扶助制度を利用できる可能性があります。
収入や資産が一定基準以下であれば、弁護士費用の立替えを受け、分割で返済することが可能です。
そして、事務所によっては分割払いや後払いに柔軟に対応しているケースもあります。
まずは無料相談を活用し、費用の見通しや支払い方法について説明を受けたうえで、納得できるかたちで依頼を検討することが大切です。
まとめ
養育費は、子どもの生活と将来を支える重要な支出です。しかし、金額の決め方や請求方法、未払いへの対応など、当事者だけで解決するのが難しい場面も少なくありません。
弁護士に相談することで、法的な根拠に基づいた適正な対応が可能になります。
費用面が不安な場合でも、法テラスの利用や分割払いに対応する事務所を選べば、無理のない形での依頼も可能です。
まずは無料相談などを活用し、自分に合った方法を見つけることが大切です。