離婚を考えたとき、何から話し合えばいいのか、何を決めるのか、どうすれば相手に納得してもらえるかなど、不安に感じることも多いはずです。
自己判断で離婚を進めることもできますが、進め方を間違えると、相手の態度が硬くなって話し合いが進まなかったり、離婚後に条件面で後悔したりすることもあります。
スムーズに離婚を成立させ、金銭や親権といった重要な条件でも損をしないためには、早い段階で弁護士に相談するのも一つの方法です。
ここでは、離婚の話し合いの基本的な流れや、話し合うべき内容、話し合いができないときの対処法などをわかりやすく解説します。
目次
離婚の話し合いの流れや進め方
まずは、離婚の話し合いの流れについて簡単に説明します。
まずは離婚の意思を確認する
離婚の話し合いで最初に確認しなければならないのは、双方の離婚の意思です。
一方だけが離婚したいと思っていても、相手にその意思がなければ話は進みません。
まずは冷静に気持ちを伝え、相手の考えを丁寧に聞き取るところから始めましょう。
ここで感情的になってしまうと、無視をされたり、取り合ってもらえなかったりして、今後の話し合いが難航する可能性があります。
離婚条件について話し合う
離婚に合意できたら、次は条件面を詰めていく必要があります。
財産分与や親権、養育費、慰謝料など、話し合うべき項目は多岐にわたります。
早く離婚したいという思いで、条件面を妥協してしまうと、後々後悔する可能性があります。
細かい部分をあいまいにせず、納得できるまで話し合いを行いましょう。
離婚条件を書面化する
話し合いで決まった内容は、必ず書面にまとめておくことをおすすめします。口約束だけでは、後から言った・言わないの争いになりかねません。
特に金銭の支払いや親権などの重要事項は、離婚協議書や公正証書に残しておくと安心です。
公正証書を作成しておくと、たとえば養育費の不払いなどがあった場合に、速やかに回収しやすくなります。
将来的なトラブルを防ぐための備えとして、文書化は非常に効果的です。
離婚届を提出する
すべての条件が整ったら、最後に離婚届を提出して手続きを完了させます。
離婚届には双方の署名・捺印が必要で、未成年の子どもがいる場合は親権者も記載しなければなりません。
提出先は市区町村の役所です。届出が受理されれば、法的に離婚が成立します。
スムーズな提出のために、必要書類を事前に確認しておきましょう。
【関連】離婚届の提出と同時&同日にできる10個の手続きを解説
離婚時に話し合うことリスト
離婚時に話し合うことを一覧で紹介します。
話し合うこと | 内容 |
本当に離婚するのか | ・双方に離婚の意思があるのかを確認する |
財産分与 | ・婚姻期間中に夫婦で築いた財産を、原則半分ずつ分ける
・不動産なども売却するか、価値に応じて他の財産で調整などをする |
親権 | ・子どもがいる場合は、どちらが子どもを育てていくかを決める |
面会交流 | ・親権者ではない方の親が、子どもの会うためのルールを決める |
養育費 | ・親権者ではない方の親が、定期的に払う子育てのためのお金の金額を決める |
慰謝料 | ・不倫やDV、モラハラなどで離婚にいたった場合の慰謝料の金額を決める |
離婚後の住まい | ・離婚後にマイホームに住み続けるのはどっちか、引っ越し先はどうするかなどを決める |
年金分割 | ・婚姻期間中に納めた夫婦の年金の記録を分け合う |
離婚時の取り決めについて、もっと詳しく知りたい人は、下記の記事をご覧ください。
【関連】離婚が認められる条件は?必要な手続きや法定離婚事由について解説
離婚の話し合いのコツ・気をつけることは?
離婚の話し合いは感情的になりがちですが、冷静に進める工夫が必要です。
ここでは、スムーズに話し合うためのポイントを紹介します。
感情的にならない・暴言を吐かない
離婚の話し合いでは、過去の不満や怒りが噴き出しやすく、つい感情的になってしまうことがあります。
しかし、怒りや悲しみのまま話すと、建設的な議論ができなくなり、相手の反発を招くだけです。
特に暴言や人格否定にあたる言動は、信頼関係を壊す原因になります。
それだけでなく、喧嘩になると、相手に『まだ関係修復の意思がある』と誤解される可能性もあります。
自分の気持ちを伝えることは大切ですが、感情をコントロールし、落ち着いて冷静に話すことを意識しましょう。
話し合いを成功させるには、相手を非難するのではなく、自分がどうしたいのかを明確に伝えることが大切です。
【関連】離婚前にやってはいけないこと|不利になる言葉・やることリストを紹介
話し合いの目的を明確にしておく
話し合う前に、何を決めたいのか、どこまで合意したいのかといった目的をはっきりさせておくことが重要です。以下を参考にしてください。
- 配偶者に離婚を認めてもらいたい
- 子どもの親権についての方針を決めたい
- 財産分与の大枠を確認したい など
話し合いの目的を明確にしておかないと、いつの間にか話題がそれたりする原因になります。
話し合いのテーマを絞ることで、感情的になりにくく、話が脱線しにくくなるため、建設的な会話がしやすくなります。
同席者・場所・時間帯を選ぶ
話し合いをスムーズに進めるには、誰とどこで話すかも非常に大切な要素です。自宅では感情的になりやすく、冷静な話し合いが難しくなることもあります。
できれば第三者が立ち会えるような場や、公共の施設、カフェなど人目のある場所を選ぶと安心です。
加えて、同席者として両親や信頼できる友人、場合によっては弁護士などの専門家に立ち会ってもらうのも一つの手段です。
話し合いの時間帯も、互いに余裕のあるときを選びましょう。時間がないときに話し合うと、スムーズに進まなかったときにイライラしやすいです。
子どもを巻き込まない
離婚の話し合いに子どもを巻き込むことは、精神的な負担を与えるだけでなく、今後の親子関係にも悪影響を及ぼす可能性があります。
親同士の争いや感情的なやりとりを目の前で見せてしまうと、子どもは不安や罪悪感を抱えてしまうことがあります。
話し合いの際は、子どもがいない時間や場所を選び、親の都合で巻き込まないようにする配慮が必要です。
親権に関しては、子ども本人の意思も大切ですが、悪い形でやり取りに巻き込まないようにしましょう。
【関連】円満離婚とは?子ありでの切り出し方やよくある理由を解説
メモや録音で記録する
離婚の話し合いでは、何を決めたか、どこまで合意したかを記録に残しておくことがとても重要です。
口頭だけのやりとりだと、後になって「言った・言わない」のトラブルに発展することも少なくありません。
話し合いの前に、記録用のノートやスマートフォンの録音機能などを準備しておくと安心です。
相手に無断で録音することはトラブルになる場合もあるので、事前に了承を得るか、記録する目的を説明するようにしましょう。
法律知識を最低限知っておく
離婚に関する話し合いを進めるうえでは、最低限の法律知識を身につけておくと、相手に振り回されずにすみます。
たとえば、養育費の相場、財産分与の原則、親権の決め方などは、あらかじめ知っておくと判断材料になります。
インターネットで調べるだけでなく、自治体の法律相談窓口や弁護士の無料相談などを活用するのも効果的です。
間違った情報に惑わされることなく、自分にとって不利な合意を避けるためにも、事前の情報収集は欠かせません。
無理に結論を出そうとしない
離婚の話し合いは、一度で結論を出す必要はありません。むしろ、焦って決断を急ぐことで、不利な条件を飲んでしまったり、後悔する結果になることもあります。
話し合いは数回に分けて行い、冷静に考える時間を挟むことが大切です。
そして、相手の都合や感情もある程度は尊重し、無理に合意を迫らないようにしましょう。
どうしても話が平行線になってしまう場合は、第三者に相談したり、調停を利用することも視野に入れるべきです。
【関連】離婚調停の流れ・費用・弁護士に依頼するメリットを解説|Q&Aも紹介
離婚の話し合いが怖いときはどうする?
相手との関係性や過去の出来事によっては、離婚の話し合いに強い不安を感じることもあります。
そんなときは、無理をせず工夫して話し合いに臨みましょう。
まずはLINEやメッセージで気持ちを伝える
直接顔を合わせて話すのが怖いときは、無理に対面せず、まずはLINEやメールなど文章で気持ちを伝える方法があります。
文章なら冷静に伝えたいことを整理でき、感情的なやりとりも避けやすくなります。
話し合いをしたいという意志だけでも伝えておけば、相手が冷静になったタイミングで応じてくれる可能性があります。
いきなりすべてを話そうとせず、少しずつ対話のきっかけを作っていくことが大切です。
両親に同席してもらう
相手と2人きりで話すのが怖い場合は、自分の両親など信頼できる第三者に同席してもらう方法もあります。
身近な人がいることで、精神的な安心感が得られるうえ、相手が威圧的になりにくくなる効果も期待できます。
ただし、話し合いを円滑に進めるには、同席者が感情的に介入しすぎないよう配慮が必要です。
可能であれば事前に立ち会う目的や、どこまで関与してもらうかを共有しておきましょう。
人が多いところで話し合う
自宅などで二人きりになると、相手から暴言や暴力を受けるのではないかと不安を感じる人もいるかもしれません。
そうした場合には、人目のある場所で話し合う方法もあります。
たとえば、カフェやファミレス、公民館の会議室など、適度にプライバシーを保ちつつも周囲の目が届く場所を選ぶと安心です。
相手が感情的になりにくくなり、自分自身も落ち着いて話ができる可能性が高まります。
ただし、周囲に聞かれたくない内容がある場合は、それに配慮して場所を選ぶようにしましょう。
離婚について話し合いにならない場合はどうする?
相手が話し合いに応じてくれない、感情的になって話が進まないなど、離婚の話し合いができないケースは珍しくありません。
そんなときは、無理に進めようとせず、状況に応じた工夫が必要です。
感情的にならないタイミングを選ぶ
話し合いがこじれる原因の一つは、タイミングの悪さです。相手が仕事で疲れているときや、何かにイライラしているときに切り出すと、冷静な話し合いが難しくなります。
なるべくお互いが落ち着いているときに、あらかじめ「大事な話がある」と予告してから話すようにしましょう。
落ち着いたタイミングで冷静に伝えることで、こちらが一時の感情で離婚を望んでいるわけではないことも伝わりやすくなります。
お互いに余裕のある時間帯を選び、相手の状態にも配慮することで、対話の糸口が見えてくることがあります。
書面やLINEなど文章で伝える
対面で話すのが難しいときは、LINEやメールなどで文章にして気持ちを伝えるのも一つの方法です。
文章であれば、感情的にならずに内容を整理して伝えることができ、相手も落ち着いた状態で読むことができます。
直接話すと感情がぶつかりやすいような内容でも、文章にすることで比較的穏やかにやり取りできる可能性があります。
ただし、表情や口調が伝わらないぶん、意図がうまく伝わらなかったり、きつく受け取られたりしてしまうこともあるので、言葉選びには注意しましょう。
弁護士に代理人になってもらう
相手との話し合いがどうしても難しい場合は、弁護士に代理人として交渉を任せることができます。
本人は話し合いの場に出る必要がなく、弁護士が代わりに相手とやり取りを進めてくれます。
自分では伝えにくい内容や、感情的なもつれがある場合でも、法律の専門家が冷静に対応してくれるため、無用なトラブルを避けやすくなります。
精神的な負担を減らしたい人や、安全に話を進めたい人にとって有効な方法です。
【関連】離婚に強い弁護士の特徴と弁護士に依頼するメリットとは?
離婚の話し合いで復縁に至ることはある?
離婚の話し合いをきっかけに、お互いの気持ちを見つめ直し、復縁に至るケースもあります。
特に、価値観のズレやすれ違いなど、比較的修復可能な理由であれば関係が改善することもあります。
一方で、不倫やDV、長年の不信感といった深刻な問題がある場合は、感情の修復が難しく、復縁に至る可能性は低いでしょう。
離婚の話し合いに関するよくある質問
話し合いで離婚は回避できる?
離婚の話し合いを通じて、お互いの本音を初めて確認できたことで、気持ちが変わり離婚を回避するケースもあります。
特に、誤解やすれ違いが原因であれば、対話によって関係修復に向かう可能性も十分あります。
ただし、どちらか一方が離婚の意思を固めている場合は、回避は難しいでしょう。
セックスレスは離婚の話し合いに発展する?
セックスレスは、夫婦関係の不満や距離感の象徴として深刻な問題になりやすく、離婚の原因として認識されることもあります。
話し合いによってお互いの認識を共有し、改善の意思があれば修復できる可能性もありますが、長期間のすれ違いがある場合は、離婚の話へ進むことも少なくありません。
モラハラ夫との話し合いのポイントは?
モラハラ夫との話し合いは、精神的に大きな負担になるため、無理に2人きりで進めるべきではありません。
第三者や弁護士を交えることで、冷静な話し合いの場を確保しやすくなります。加えて、会話を記録に残すなど、安全面への配慮も重要です。
自分の身を守ることを第一に考えて対応しましょう。
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まとめ
離婚の話し合いは、感情的になりにくい環境を整えることが大切です。
まずは、何を話し合うのか、どこまで決めたいのかを明確にし、話し合いの内容は記録に残すようにしましょう。
対面で話すのが怖いと感じる場合は、信頼できる人に同席してもらったり、人目のある場所で話すと安心です。
それでも話し合いが難しい、相手と直接やり取りしたくないという場合は、弁護士を代理人に立てることで、安全かつ確実に離婚条件を交渉することが可能になります。